■はじめに ■磐田駅の関連年表 ■磐田駅に接続する専用線一覧 ■磐田駅の貨物取扱量(ト ン)の推移 ■日本たばこ産業(株)の鉄道貨物輸送 ■富士製粉(株)の鉄道貨物輸送 ■(株)遠州日石の鉄道貨物輸送 ■鈴木自動車工業(株) の鉄道貨物輸 送 ■最後に |
1995.7磐田駅 |
第16回「貨物取扱駅と荷主」で、筆者の故郷・静岡県掛川市の身近に
ある貨物取扱駅として、天竜川駅を
取り上げたが、もっと近くに忘れられない駅が
ある。それが磐田駅である。 Jリーグチームの名門「ジュビロ磐田」(2021年シーズンはJ2に降格したままだが…)によって、「磐田」の名は全国 的に知られることになったが、ジュビロ磐田の前身がヤマハ発動機サッカー部であることに象徴されるように、磐田市は静 岡県内有数の工業都市で あり、その代表駅・磐田駅も工業都市らしく貨物取扱駅として1990年代半ばまで機能していた。 その頃の磐田駅構内には貨物用の側線や貨物上屋が残り、日通のトラックが出入し、JRコンテナが積み上げられ、ワムやタキがたむろするといった風景があ り、筆者にとってある 意味、天竜川駅より貨物取扱駅としての雰囲気は色濃く残っていた印象だ。 接続する日本たばこ産業(株)(JT)の専用線は、距離はそれほどでもなく、天竜川駅の日本通運(株)専用鉄道のような謎めいた雰囲気こそ無いものの、 窓の少ない 巨大な倉庫にワムやタキ が出入りして独特な雰囲気が漂っていた。車窓からも線路が倉庫内に引き込まれていく様子がよく見えて、電車で傍を通る度にいつも夢中で観察したものだ。 そんな磐田駅の記憶が筆者には残っているものの、現在では橋上駅舎化され、貨物ホームの敷地にはビジネスホテルが建ち、躍動する浜松大都市圏の一旅客駅 といった佇まいである。この程、『磐田市統計書』から品目別貨物取扱量の推移のデータが入手できたため、第20回「貨物取扱駅と荷主」は磐田駅を取り上 げ、同駅の貨物輸送の歴史を辿ってみることにした。 |
年
月 |
内
容 |
1889(明 22)年04月 | 東海道本 線に中泉駅が開業 |
1938(昭 13)年03月 | 名古屋地 方専売局 中泉葉煙草再乾燥場が設立。試験作業開始([1] p2) |
1942(昭 17)年10月 | 中泉駅が 磐田駅に改称 |
1948(昭 23)年04月 | 磐田町は 市制施行により磐田市となる |
1949(昭
24)年04月 |
(株)遠
州日石が会社設立(同社webサ
イトより) |
1959(昭 34)年12月 | 富士製粉 (株)は磐田精麦工場を廃止([8]p436) |
1960(昭 35)年12月 | 富士製粉 (株)は磐田工場の精麦、澱粉跡地に月産1,000トンの配合飼 料設備完成([8]p436) |
1963(昭
38)年09月 |
日本専売
公社 磐田葉たばこ再乾燥工場の新工場が竣工([1]
p12) |
1965(昭
40)年02月 |
日本専売 公社 磐田葉たばこ再乾燥工場の新倉庫が竣工([1] p12) |
1966(昭
41)年02月 |
日本専売 公社は「磐田葉たばこ再乾燥工場」を「磐田原料工場」と改称([1] p12) |
1967(昭
42)年04月 |
磐田駅に
自動車基地が設置(『鉄道貨物輸送近代化の歩
み』1993年、p51) |
1967(昭 42)年08月 | 鈴木自動 車工業(株)磐田工場(四輪車)が完成(同社webサイトより) |
1968(昭
43)年06月 |
富士製粉
(株)磐田配合飼料工場に月産1万トンの近代化設備が完成([3]
p34、[8]p441) |
1970(昭
45)年 |
富士製粉
(株)磐田配合飼料工場は主原料用500トンサイロなどの増設
で月産能力1万2,000トンを達成([3]p34) |
1971(昭
46)年04月 |
貨物駅の
西浜松駅が開業 |
1973(昭
48)年01月 |
富士製粉
(株)磐田工場は副原料用鉄板サイロ(540トン)増設([8]p444) |
1978(昭
53)年08月 |
富士製粉
(株)磐田工場は製品バラタンク増設(250トン)、月産12,000トンになる([8]p446) |
1979(昭
54)年09月 |
日本専売
公社は最新鋭の東海工場の操業開始([2]
p169)、磐田原料工場が閉鎖 |
1990(平
02)年03月 |
富士製粉
(株)磐田配合飼料工場が廃止([3]p55) |
1995(平
07)年10月 |
日本たば
こ産業(株)磐田工場の専用線におけるタバコ輸送のハワム輸送
廃止。日本アルコール販売(株)のタンク車輸送のみ残る (澤木 良直「磐田の専用線終幕」『レイル・マガジン』No.155、1996年、p86) |
1996(平
08)年02月 |
日本たば
こ産業(株)磐田工場の専用線が廃止(前掲『レ
イル・マガジン』No.155、p86) |
専
用 者 |
第
三者使用 |
作
業方法 |
作
業 km |
S26 | S28 |
S32 |
S36 |
S39 |
S42 |
S45 |
S50 |
S58 |
備
考 |
日本専売
公社 名古屋地方局 |
日本通運
(株) 内外輸送(株) |
日通機 |
1.0 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
|
富士製粉
(株) |
日本通運
(株) 駿遠運送(株) |
国鉄機 手押 |
0.1 |
- |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
|
(株)遠
州日石 (有)磐田製材所 |
日本通運
(株) 駿遠運送(株) |
国鉄機 |
0.1 |
- |
- |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
(有)磐
田製材所は S39年版まで |
静岡県販
売購買農業協同組合 連合会 |
日本通運
(株) 磐田運送(株) |
手押 |
0.1 |
〇 |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
年 度 |
発
送 |
到
着 |
合
計 |
年 度 |
発
送 |
到
着 |
合
計 |
年 度 |
発
送 |
到
着 |
合
計 |
1960 |
78,100 |
124,800 |
202,900 |
1972 |
44,379 |
182,878 |
227,257 |
1984 |
41,875 |
117,008 |
158,883 |
1961 |
69,828 |
149,673 |
219,501 |
1973 |
38,247 |
183,373 |
221,620 |
1985 |
41,450 |
115,946 |
157,396 |
1962 |
70,811 |
146,686 |
217,497 |
1974 |
35,044 |
185,083 |
220,127 |
1986 |
37,107 |
94,723 |
131,830 |
1963 |
67,133 |
165,021 |
232,154 |
1975 |
36,789 |
159,007 |
195,796 |
1987 |
20,438 |
84,945 |
105,383 |
1964 |
58,135 |
169,518 |
227,653 |
1976 |
35,659 |
178,873 |
214,532 |
1988 |
19,762 |
73,293 |
93,055 |
1965 |
47,283 |
163,692 |
210,975 |
1977 |
34,537 |
166,704 |
201,241 |
1989 |
26,770 |
57,696 |
84,466 |
1966 |
46,273 |
182,561 |
228,834 |
1978 |
33,186 |
170,168 |
203,354 |
1990 |
21,207 |
23,075 |
44,282 |
1967 |
75,665 |
178,592 |
254,257 |
1979 |
38,833 |
171,900 |
210,733 |
1991 |
9,428 |
22,539 |
31,967 |
1968 |
102,556 |
190,791 |
293,347 |
1980 |
47,541 |
169,900 |
217,441 |
1992 |
8,772 |
18,729 |
27,501 |
1969 |
116,127 |
209,313 |
325,440 |
1981 |
54,205 |
156,848 |
211,053 |
1993 |
8,030 |
9,744 |
17,774 |
1970 |
122,208 |
232,106 |
354,314 |
1982 |
53,975 |
144,152 |
198,127 |
1994 |
5,617 |
12,592 |
18,209 |
1971 |
80,285 |
200,630 |
280,915 |
1983 |
45,017 |
133,766 |
178,783 |
1995 |
3,556 |
3,105 |
6,661 |
【 発 送 】
|
年
度 |
1980 |
1981 |
1982 |
1983 |
1984 |
1985 |
1986 |
1987 |
1988 |
1989 |
1990 |
1991 |
1992 |
1993 |
1994 |
1995 |
紙
巻たばこ |
29,792 |
35,486 |
34,333 |
27,777 |
30,503 |
28,127 |
24,607 |
12,137 |
12,287 |
16,126 |
9,955 |
1,166 |
1,584 |
- |
- |
- |
葉
たばこ |
5,595 |
6,158 |
7,799 |
7,054 |
5,866 |
7,777 |
8,020 |
5,831 |
5,929 |
8,529 |
6,070 |
4,283 |
3,306 |
3,849 |
1,372 |
1,058 |
ア
ルコール |
4,980 |
5,560 |
5,550 |
4,750 |
500 |
500 |
620 |
620 |
555 |
610 |
2,700 |
2,655 |
2,970 |
3,165 |
3,300 |
2,055 |
飼
料 |
822 |
427 |
374 |
372 |
- |
- |
年
度 |
1961 |
1963 |
1965 |
1967 |
1969 |
1970 |
1971 |
1973 |
1975 |
1977 |
1979 |
葉
たばこ |
13,235 |
14,952 |
10,238 |
25,932 |
22,201 |
24,088 |
23,508 |
22,301 |
26,288 |
25,040 |
25,902 |
ア
ルコール |
3,690 |
3,693 |
3,864 |
5,500 |
- |
||||||
繊
維 |
3,724 |
3,473 |
4,448 |
4,280 |
5,850 |
4,783 |
4,907 |
3,949 |
2,961 |
||
飼
料 |
12,832 |
17,331 |
26,611 |
23,328 |
33,041 |
27,220 |
19,516 |
16,613 |
7,395 |
5,651 |
5,389 |
米 |
2,029 |
1,967 |
2,935 |
2,135 |
3,833 |
6,571 |
7,898 |
10,529 |
9,975 |
8,294 |
8,900 |
麦 |
7,925 |
9,794 |
8,421 |
6,825 |
6,432 |
9,019 |
10,524 |
2,521 |
975 |
110 |
315 |
と
うもろこし |
- |
25,149 |
36,260 |
49,044 |
56,229 |
72,304 |
56,367 |
59,932 |
55,397 |
69,149 |
69,291 |
脱
脂大豆 |
6,078 |
10,024 |
22,299 |
84,950 |
91,574 |
114,855 |
21,500 |
17,071 |
13,357 |
12,273 |
14,073 |
糖
蜜 |
10,396 |
9,660 |
9,953 |
8,090 |
10,304 |
10,934 |
|||||
鉄
鋼(線材・銑鉄) |
3,807 |
2,510 |
3,244 |
7,017 |
7,407 |
9,582 |
11,107 |
10,850 |
7,329 |
5,436 |
11,522 |
肥
料 |
9,918 |
9,413 |
10,899 |
12,421 |
13,228 |
12,873 |
11,998 |
13,012 |
9,463 |
13,097 |
14,465 |
石
油・アルコール |
13,642 |
12,476 |
6,994 |
7,449 |
8,291 |
10,812 |
|||||
石
油 |
9,003 |
6,528 |
4,166 |
6,213 |
531 |
年
度 |
1980 |
1981 |
1982 |
1983 |
1984 |
1985 |
1986 |
1987 |
1988 |
1989 |
葉
たばこ |
29,021 |
30,583 |
29,918 |
29,540 |
25,421 |
28,127 |
25,783 |
26,019 |
13,418 |
14,861 |
飼
料 |
4,001 |
4,026 |
2,491 |
2,309 |
- |
- |
||||
米 |
11,709 |
9,220 |
11,030 |
7,818 |
3,840 |
7,110 |
||||
と
うもろこし |
70,020 |
67,290 |
62,160 |
61,620 |
58,530 |
54,900 |
53,340 |
52,920 |
51,740 |
34,380 |
脱
脂大豆 |
12,017 |
11,994 |
11,493 |
10,230 |
9,990 |
9,480 |
||||
線
材・銑鉄 |
8,642 |
4,115 |
1,704 |
2,015 |
143 |
- |
||||
肥
料 |
12,749 |
11,037 |
10,247 |
10,806 |
12,415 |
10,334 |
6,989 |
6,006 |
7,125 |
7,068 |
石
油 |
4,417 |
4,482 |
1,751 |
948 |
- |
- |
年
度 |
1990 |
1991 |
1992 |
1993 |
1994 |
1995 |
葉
たばこ |
15,686 |
15,716 |
15,951 |
9,108 |
11,236 |
2,729 |
肥
料 |
6,246 |
5,856 |
2,137 |
- |
- |
- |
1995.3磐田駅 |
名古屋地方専売局時代に始まり、日本専売公社を経て日本たばこ産業
(JT)まで、磐田駅の貨物取り扱いの発着における荷主であり続け、数量こそ多いわけではないが長年、安定的な取扱量が継続していた。1979(昭54)
年に
磐田原料工場としては廃止されても、倉庫として専用線が維持されたのは非常に興味深い。 輸送された「葉たばこ」や「紙巻たばこ」は、発送と到着のそれぞれがあり、日本全国にJTの専用線や工場や倉庫などの拠点があることから、輸送体系の解 明は困難である。 その中で輸送先として明確に分かっているのは、飯田町駅向けの輸送である。 1986(昭61)年11月にJTのタバコ輸送は大部分がコンテナ輸送に転換されたが、一部転換できなかったものがワム80000形で輸送していた。定 期的に運用しているのは磐田・西浜松〜飯田町間が ある。([6] p36) 1995(平7)年当時、JTの専用線は矢板、宇都宮(タ)、友部、倉賀野、西浜松、西富井の各駅に残存していたが、西富井駅の専用線はコンテナ化され ずワム80000の入線が残っており、磐田駅との間でワムハチの運用があったかもしれない。 |
JT専用線は、タバコ輸送廃止後も最末期までアルコールの発送が残っ
たわけだが、今でも磐田アルコール工場は、日本アルコール産業(株)磐田工場として稼働を続けており、JTの倉庫等の施設は全て撤去され宅地となったが、
アルコール工場やタンク群は宅地を取り囲むように立地している。 タンク車によるアルコール輸送の向け先は不明だが、日本アルコール販売(株)の新潟貯蔵所(新崎駅)、富山作業所(西富山駅)、内外輸送(株)横浜支店 (新興駅)といったアルコールの貯蔵先が考えられる。 尚、1979(昭54)年3月31日現在で、内外輸送(株)の磐田駅常備のアルコール専用貨車として、タサ3000形が3両、タキ3500形が5両あ る。 |
磐田原料工場の全景([1]巻頭カラー) |
富士製粉(株)磐田配合飼料工場([3] p35) |
富士製粉(株)は1959年まで精麦工場を磐田に設置していたのだ
が、この当時の鉄道貨物輸送の状況は詳細不明である。一方で、飼料工場となって以降、磐田駅で最大取扱量を誇る荷主として君臨した。 製品である飼料の発送でも鉄道輸送は活用されたようだが、飼料原料において貨車輸送の役割が大きかった。 物資別適合貨車として穀物専用バラ貨車のホキ2200形が1966(昭41)年9月に登場し、同年10月から全国各地で本格的に運用を開始した。そ の1つに清水港(荷送人:全購連)〜磐田(荷受人:富士製 粉)があり、品名は「とうもろこし」である。ホキ2200形の配置貨車は4両で、使用車両は1日3両、月間輸送トン数は2,250トンである。([4] p35) 1971(昭46)年7月に名古屋臨海鉄道の知多駅に東海サイロ(株)〔後の全農サイロ(株)〕の専用線が設置され、同年に は知多〜磐田間の飼料原料積のホキ8両を快速貨物列車で輸送 して いた。1973(昭48)年からホキ9両となり、1975 (昭50)年3月からは笠寺〜西浜松間のセメント専用列車に併結して輸送された。1980(昭55)年10月には、金指行 きの石油、飼料原料と磐田行きホキ9両、その他をまとめて専 用貨物列車を増設した。([5]p89、p97) |
(1) |
整備対象地域を東海4県(静岡、愛知、三重、岐阜)に山梨県を加えた5 県とし、域内6工場のうち、「岐阜県くみあい飼料」、「富士製粉磐田工場」、「伊勢湾飼料畜産飼料工場」、「山梨くみあい飼料」の4工場の飼料製造を停止 する |
(2) |
東海くみあい飼料、愛知くみあい飼料を合併し、この合併会社が静岡県臨 海地区に新工場を建設し、1会社3工場体制で5県に供給する |
(3) |
整備の実施時期は、1988(昭63)年度を目途とする |
1976.2磐田駅 「地図・空中写真閲覧サービス」より |
1983.10磐田駅 「地図・空中写真閲覧サービス」より |
([7]表紙) |
物資別適合輸送の花形であるク5000形による自動車輸送は、
1966(昭41)年7月に営業試験輸送、同年10月に本格輸送が開始された。鈴木自動車工業(株)がスタートしたのが1967(昭42)年4月で、磐田
駅が新基地として加わった。 4月1日から広島、志免行きで始まったが、同年10月1日のダイヤ改正で磐田駅発宮城野行き1両、岡山(操)行き1両、広島行き1両、志免行き2両の計5両の輸送を開始した。([7]p16-17) また1967年度時点で、磐田駅常備のク5000形は27両で ある。([7]p64) ▼磐田駅 鈴木自動車の自動車輸送実績 (単 位:千トン)
|