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出 光興産株式会社 (下里駅)
2017.12.24作成開始 2017.12.31公開

2017.12下里駅 ダイワエネルギー(株)勝浦営業所

2017.12下里駅 ダイワエネルギー(株)勝浦営業所


 2013(平25)年3月に鵜殿駅からの北越紀州製紙(株)専用線からのコンテナ 輸送が終了し、紀勢本線の定期貨物列車は消滅した。
 しかし紀勢本線沿線には製油所や化学工場、製紙工場などが点在し、国鉄末期までは石油、セメント、製紙といった車扱輸送がそれなりに維持されていた地域 であっ た。紀伊半島は、紀勢自動車道が未だに整備中など道路事情が悪く、相対的に鉄道貨物輸送の競争力があるようにも思われるが、取扱量がそれほど多くないこと もあって国鉄末期に一気に拠点の整理が進み、特 に紀勢本線の西半分(紀伊佐野駅以西)は、貨物取扱駅が皆無となった。

 その時期に廃止された貨物取扱駅の1つに下里駅がある。名古屋からも大阪からも200km以上離れた那智勝浦町内の小駅であり、普通列車しか停まらない 地味な駅であるが、かつてはLPGの到着が見られた。専用線が廃止されて久しいが、今も駅構内に隣接して当時と所有者は異なるものの、LPGの充填所が稼 働しており、貨物取扱駅 だった頃の雰囲気を残している。南紀地方の小駅に過ぎない下里駅で人知れず消え去ったLPG輸送を第8回「専用線とその輸送」で紐解いてみたい。



 下里駅には出光興産(株)の専用線が存在した。「専用線一覧表」を比較することで、1964(昭 39)〜1967(昭42)年の間に開設されたことが分かる。また廃止時期は、1983(昭58)年版の同表から姿を消していることから、1982(昭 57)年 11月ダイヤ改正頃と思われる。専用線は、第三者利用者も無く、作業キロは100m程度のシンプルなものだった。

所 管駅
専 用者
作 業方法
作 業キロ
総 延長キロ
下里
出光興産 (株)
国鉄機  作業機
0.1
0.2
(「昭和50年版 専用線一覧表」より抜粋)

 現在、同地には出光興産(株)ではなく、和歌山市に本社を置くダイワエネルギー(株)の勝浦営業所があり、LPGの充填所として機能しているが、出光は どうであったのだろうか?
 それを確かめるべく、出光興産(株)時代である1976(昭51)年1月の同駅周辺を国土地理院の「地図・空中写真閲覧サービス」 の航空写真を見てみよう。


1976(昭51)年1月31日現在の下里駅周辺で囲んだ場所が出光興産(株)、タンク車らしきものも確認できる)

 航空写真では、現在と同じ配置でLPGタンクと思われる細長いタンク体が設置されており、出光興産(株)もLPGの充填所として使用していたようだ。一 方で石油タンクのような設備は見当たらず、油槽所ではなかったと判断できる。専用線には2両ほどのタンク車も留置されているようだ。

 次に輸送体系を考察する。この時期の出光興産(株)が所有するLPG専用のタンク車の常備駅を抜粋したのが下表である。

所 有者名
形 式
専 用種別
常 備駅
両 数
出光興産 (株)
タサ 5700形
LPガス
西港
2
出光興産 (株)
タサ 5700形
LPガス
石油埠頭
20
出光興産 (株)
タサ 5700形
LPガス
塩釜埠頭
13
出光興産 (株)
タサ 5700形
LPガス
前川
37
出光興産 (株)
タサ 5700形
LPガス
下里
2
出光興産 (株)
タサ 5700形
LPガス
徳山
18
(「私有貨車番号表 昭和54年3月31日現在」より抜粋)

 下里駅常備のタサ5700形があったことに、まずは驚いて しまうが、LPガスのタンク車で着駅側が常備駅となっていた例としては、岩谷産業(株)や鈴与(株)等でも見ら れるなど、決して珍しくはない。
 上記6駅の内、LPGの供給という観点で見ると、一次基地が石油埠頭、前川、徳山、二次基地が塩釜埠頭で、下里は三次基地という位置付けである。三次基 地は、一次基地又は二次基地からLPGの供給を受け、ガスボンベ等に充填する基地である。

 下里駅には、出光興産(株)のLPGタンク車の常備駅から想像すると、距離的に最も近い徳山駅か らLPGが到着していたと思われる

 これまでそのような運用があったという情報は確認できていないため、あくまでも筆者の想像になってしまうのだが、自社内での輸送を前提に考えるとほぼ間 違いないだろう。
 ちなみに京葉臨海鉄道の発行する「輸送概況」で前川駅からの主な輸送先を知ることができるが、昭和55年度は西長岡や新発田、小山、日越といったLPG の輸送先と思われる着駅は確認できるが、全て東日本であり、下里の名は無い。



 参考までに、現在の状況として出光興産グループと三菱商事グループのLPG事業を統合して2006(平18)年4月に発足したアストモスエネルギー (株)のwebサイトか ら供給体制を確認してみる。


 出光興産(株)の自社拠点で下里駅に最も近いのは、同社愛知製油所だが同製油所には専用線は無かった。石油類は、汐見町駅に出光興産(株)の油槽所があ り、そ こから南松本や沢渡へ石油類のタンク車輸送が行われていた。しかしLPGの輸送は行われていなかったようで、同じく国土地理院の「地図・空中写真閲覧サービス」 で同地を確認したところ油槽所内にLPGタンクは見当たらない。

 また神戸や坂出の拠点は鉄 道輸送と関係無いと思われ、これらの点からも、徳山〜下里間でタサ5700形を用いてLPGの輸送が行われていたと考えても無理はないだろう。
 一方、アストモスエネルギーの充填所であるダイワエネルギー(株)勝浦営業所は、出光の愛知製油所や神戸のティー・エム・ターミナルから供給を受けてい るのかもしれない。

 LPGのタンク車輸送は、石油輸送とは異なって長距離、少量輸送が行われていた事例は、今回の下里駅に限らず少なくない。取扱駅も地味で渋いことも相 まって、これら輸送体系の解明は、筆者にとって非常に興味深いものとなっている。


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