日本の鉄道貨物輸送と物流:表紙へ
とはずがたりな掲示板  鉄 道貨物輸送研究スレ  繊 維スレ
帝人株式会社
2015.9.21作成開始・公開
<目次>
帝人の概要
帝人の沿革
帝人のトピックス
帝人の鉄道貨物輸送
 岩国事業所
 三原事業所
 松山事業所
 徳山事業所


■帝人の概要  
 帝人は日本で初めてレーヨンの商業生産を開始した帝国人造絹絲(株)が起源である。近年は1兆円企業を目指し、数多くのM&Aを行い規模を拡大 している。ポリカーボネート樹脂やポリエステルを中心とした化成品事業が収益の柱である。繊維事業ではポリエステル繊維が主力だが、利益の中心は競合が デュポンのみのアラミド繊維である。(『繊維』日本経済新聞社、2006年)

本 社所在地
(大阪本 社)大阪市中央区南本町1丁目6番7号 帝人ビル
(東京本社)東京都千代田区霞が関3丁目2番1号 霞が関コモンゲート西館
創 立年月日 1918 年(大正7年)6月17日
資 本金
70,816 百万円(2015年3月末現在)
連 結売上高
7,862 億円(2014年度)
従 業員数
(連結) 15,780名(2015年3月末現在)


■帝人の沿革  
年   月
項  目
1918 (大正07)年06月
帝国人造 絹絲(株)設立
1927 (昭和02)年02月
岩国工場 (現岩国事業所)開業、レーヨン長繊維操業開始
1934 (昭和09)年10月
三原工場 (現三原事業所)開業、レーヨン長繊維操業開始
1936 (昭和11)年05月
岩国工 場、レーヨン短繊維操業開始
1938 (昭和13)年06月
三原工 場、レーヨン短繊維操業開始
1942 (昭和17)年09月
三原工 場、強力レーヨン操業開始
1950 (昭和25)年11月
岩国工 場、強力レーヨン操業開始
1951 (昭和26)年12月
名古屋工 場開業、化学繊維紡績糸操業開始
1955 (昭和30)年11月
松山工場 (現松山事業所北地区)開業、アセテート長繊維操業開始
1957 (昭和32)年01月
帝人、東 レ(株)、英国ICI社のポリエステル繊維およびフィルムなど、製造技術導入許可を取得
1957 (昭和32)年06月
帝人、東 レ、ポリエステル繊維の商標名を「テトロン」に決定
1958 (昭和33)年06月
松山工 場、「テトロン」操業開始
1960 (昭和35)年10月
帝人化成 (株)ポリカーボネート樹脂生産開始
1962 (昭和37)年11月
帝人株式 会社へ社名変更
1963 (昭和38)年11月
三原工 場、ナイロン操業開始
1968 (昭和43)年04月
徳山工場 「テトロン」短繊維操業開始
1970 (昭和45)年10月
愛媛工場 (現松山事業所南地区)、「テトロン」長繊維操業開始
1971 (昭和46)年08月
岐阜工場 (現帝人デュポンフィルム(株)岐阜事業所)開業、「テトロン」フィルム操業開始
1971 (昭和46)年10月
レーヨン 事業撤収
1972 (昭和47)年04月
岩国工 場、メタ系アラミド繊維「コーネックス」操業開始
1978 (昭和53)年04月
ボトル用 PET樹脂事業化
1978 (昭和53)年08月
紡績事業 から撤収、名古屋工場閉鎖
1985 (昭和60)年08月
宇都宮工 場(現帝人デュポンフィルム(株)宇都宮事業所)開業、「テトロン」フィルム操業開始
1987 (昭和62)年07月
松山・愛 媛両工場を統合し、松山工場に改称
1987 (昭和62)年09月
松山工 場、高強力のパラ系アラミド繊維「テクノーラ」操業開始
1999 (平成11)年09月
東邦レー ヨン(株)(現東邦テナックス(株))へ資本参加
2002 (平成14)年04月
衣料用ポ リエステル繊維事業を分社化し、帝人ファイバー(株)設立
帝人ファイバー徳山事業所で「原料リサイクル」操業開始
2013 (平成25)年04月
帝人化成 (株)を帝人に統合
(帝人web サイトより作成)


■帝人のトピックス  
▼東洋紡績と帝人ファイバー 共同配送を開始 (『物流ウィークリー』2008 年11月25日付)

 東洋紡績と帝人ファイバーはこのほど、両社の山口県岩国市にあるそれぞれの事業所から大阪方面への共同輸送を開始したと発表した。
 両社は、環境に配慮した物流活動の取り組みの一環として、08年度からCO2削減を目標に共同輸送を検討していた。

 両社の拠点が5km圏内と近い岩国地区が出荷元候補として取り上げられたことから、両社の出荷先を検証。その結果、大阪方面への製品をトラックで共同輸 送することで、CO2排出量の削減が可能となり、それに伴う物流コストアップが発生しない見込みが立ったため、今回の取り組みが実現した。

 両社によると「積載の相性がいい東洋紡の製品(容積対比重量が軽い)と帝人ファイバーの製品(重い)を岩国でまとめて積載することで、岩国から大阪への トラック幹線輸送の台数を削減する。この共同配送で、CO2排出量を40%削減できると見込んでいる」という。岩国地区からの輸送は従来、東洋紡ロジス ティクスと帝人物流が担っていたが、東洋紡ロジスティクスに一本化された。

▼帝人ファイバー、松山の高性能ポリエス長繊維増強完了 (『化学工業日報』 2008年12月10日付)

 帝人ファイバーは9日、高性能耐久制電ポリエステル長繊維「ビーウェル」を増強、月産90トン体制を構築したと発表した。スポーツ衣料に加え、裏地やイ ンナー、ユニホーム、ファッション向けなどに拡販していく。このほど、松山事業所(愛媛県松山市)内で生産能力を従来比4.5倍となる月産90トンに引き 上げた。ビーウェルは、鞘にポリエステル、芯にはポリエステル内に制電機能剤を均一にナノ分散した芯鞘構造状のもの。高制電性と極細形状を生かし、春物衣 料向け花粉付着防止素材や冬物衣料向け静電撥水素材などに使用されている。

▼帝人、ポリエステル長繊維の国内生産から撤退 (『日本経済新聞』2009年 8月4日付)

 帝人は3日、ポリエステル繊維事業のリストラ策を発表した。衣類や自動車内装材に用いる長繊維は、2010年度末までに松山事業所(愛媛県松山市)での 生産を停止、タイの生産拠点に集約し国内生産から撤退する。布団の中綿などに使う短繊維は国内生産拠点を2カ所から1カ所に集約する。景気低迷で繊維需要 が減少する中、生産体制を大幅に見直して収益改善を急ぐ。

 松山事業所のポリエステル長繊維の生産能力は年6万5,000トンと全世界の約30%を占める。国内生産からの撤退で生産は今後、タイの子会社2社に集 約し、国内向けは輸入する体制とする。海外生産でコストを削減し赤字脱却を目指す。

 短繊維は松山事業所での生産を停止し、徳山事業所(山口県周南市)に集約する。松山事業所は今後、高機能品の研究開発拠点とするほか、使用済みの衣類な どを原料に戻して再利用するリサイクル事業などを担う。(07:00)

▼ポリエス縮小・撤退相次ぐ 繊維、事業リストラ加速 (『日経産業新聞』 2009年8月19日付12面)
帝人・三菱レイヨン… 代替収益源の育成急務

 繊維業界が不採算事業の見直しに動き始めた。帝人と三菱レイヨンはポリエステル繊維の生産縮小・撤退を決定。昨秋以降の経済環境激変が伝統ある繊維事業 の再編に及んだ格好だ。ただ、各社の事業構造改革は緒についたばかり。リストラの徹底や新事業育成など、残された課題は多い。

 「創業の地で生産をやめることになった」。3日にポリエステル繊維の構造改革策を発表した帝人の亀井範雄常務は会見の席上で厳しい表情を浮かべた。
 「創業の地」とは松山事業所(松山市)のことだ。衣類や自動車内装材に使う長繊維は2010年度末までに国内唯一の拠点である松山での生産を停止し、タ イに集約。クッション材などに使う短繊維は国内生産拠点を2カ所から1カ所に統合する。

 帝人が国内初のポリエステル繊維「テトロン」の生産を松山で始めたのは1958年。高度経済成長の波に乗り、合繊各社の国内生産が本格化したころだっ た。繊維業界はその後、60〜70年代に日米繊維紛争や石油ショック、80年代以降には輸出競争力低下の危機に見舞われる。90年代以降は繊維事業再編が 段階的に進んだが、松山はそれでも一貫して長繊維の生産拠点であり続けた。
 だが、衣料品の生産拠点は中国などにシフト。中国国内で合繊の生産設備の整備も加速した。規模に劣る国内拠点ではコスト削減にも限度があり、不況や原燃 料乱高下などの逆風を克服するため「グローバルで生産を最適化する」(亀井常務)体制に動き出した。

 「聖域にようやくメスを入れられた」(証券アナリスト)と前向きに評価する声もある。昨年6月に就任した帝人の大八木成男社長は90年を超える同社の歴 史で初の非繊維事業出身社長。「繊維に過度な思い入れやしがらみがないことが決断を支えた」(業界関係者)側面もありそうだ。

 帝人だけではない。
 三菱レイヨンも豊橋事業所(愛知県豊橋市)でのポリエステル長繊維の自社生産を09年度末で停止することを決めた。今後はユニチカに生産委託し、自社ブ ランドでの加工や販売など、テキスタイル事業に特化する。

 旭化成も9月末でポリエステル長繊維の自社生産から撤退し、帝人への生産委託に切り替える。いずれも赤字基調が続いていたが、今回の米金融危機が引き金 となって決断に至った。
 帝人は11年度には汎用素材の売上高比率を50%から40%に引き下げ、代わりに高機能素材や新事業を10%から15%に高める計画を掲げている。高機 能素材の代表は鉄に代わる先端素材である炭素繊維だ。そして、新事業には水処理事業など成長分野である環境関連ビジネスが含まれる。この成長シナリオを実 現するには、まず、ポリエステル繊維事業でのリストラの実効性が問われることになる。今回含まれなかった樹脂やフィルムといったほかの汎用素材についても 合理化の推進が必要だ。

 三菱レイヨンも同様にアクリル繊維などのほかの汎用素材事業について、もう一段のリストラ余地が残っている。
 ただ、帝人と三菱レイヨンともに重点分野に掲げる炭素繊維や水処理事業は主力事業といえるほどには育っていない。市場が本格化していないせいもあるが、 繊維の変わりの収益源に据えるには心もとない。リストラとともに、構造改革完了後を見据えた個別事業の成長戦略をどう描くかが今後の課題と言えそうだ。 (中川渉)

▼繊維各社の構造改革
◇帝人 ◇ポリエステル長繊維の国内生産撤退、短繊維の国内生産を1拠点に集約
◇三菱レイヨン ◇ポリエステル長繊維の生産撤退
◇旭化成 ◇ポリエステル長繊維の生産撤退
◇ユニチカ ◇ナイロン長繊維の生産撤退

▼帝人ファイバー「ポリエステル再生技術」 中国にも衣料品リサイクルの輪  (『Fuji Sankei Business i.』2009年10月19日付) 

 再生利用が困難で、なかなか進んでいなかった衣料品のリサイクルが定着しつつある。普及の主導的役割を果たしているのが帝人の子会社、帝人ファイバー (大阪市中央区)だ。衣類などに使われたポリエステル繊維を原料のテレフタル酸ジメチルにいったん戻した後、再びポリエステルによみがえらせる技術を 2000年に世界で初めて確立。同時にアパレルメーカーなどから賛同企業を募り、回収から繊維の再生、再利用に至るリサイクルシステム構築を目指す活動を 強化。今年9月には、技術を高く評価した中国の大手企業とも提携するなど、“エコの輪”は海外にも広まっている。

◆高純度で永久的に何度でも

 帝人ファイバーの再生技術はまず、回収した衣類などを工場の破砕機で粉々にし、ポリエステルだけをより分ける。その後、溶媒を使ってポリエステルを分子 レベルまで分解して色素を落とし、蒸留と濾過(ろか)を繰り返すことで新たなポリエステルを生み出す仕組み。

 特筆すべきは、回収した衣類がポリエステルを80%以上含んでいれば、99.9%という極めて純度の高いポリエステルを再生できる点だ。石油からつくる ポリエステルと比べても品質面で劣らず、しかも劣化しないため、半永久的に何度でも再生できる。せっかく高度な技術を持っていても、使う場面がなければ宝 の持ち腐れになってしまう。そこで同社は、リサイクルシステム「エコサークル」を運営し、協力企業を国内外から募ることで、技術の活用シーンを広げようと している。

 今月15日には、生活雑貨チェーン「無印良品」を運営する良品計画と組み、店頭で使い古したスケジュール帳のカバーを回収し始めた。ボールペンをプレゼ ントする代わりに、回収したカバーからポリエステルを再生する試みだ。消費者へのライフスタイル提案を得意とする無印良品の影響力は大きいだけに、帝人 ファイバーでは回収に対する理解が深まると大いに期待する。これに先立つ9月には、中国のスポーツウエア大手、李寧とも提携した。ポリエステル再生事業で 中国メーカーと組むのは初めて。帝人ファイバーのポリエステルを使ったウエアを李寧が製品化するとともに、不要になったウエアを李寧が回収し、回収後は帝 人ファイバーが引き取り、ポリエステルに再生する予定だ。
 CSR(企業の社会的責任)活動の一環ととして自社製品の環境対応を強化する企業が増えていることもあって、エコサークルの賛同企業はすでに120社を 超えた。

◆繊維生き残りの切り札

 ただ、再生ポリエステルのさらなる普及に向けて足かせとなるのが、石油からつくる場合に比べて1〜2割高い製造コストだ。消費者の環境意識が高まる半 面、景気悪化の影響もあって、“使い捨て”を念頭に置いたアジア産などの低価格衣料品が市場を席巻するなど追い風ばかりが吹いているとはいえない。

 帝人の再生技術は、単に古くなった衣類をリサイクルするだけでなく、衣料品製造工程の消費エネルギーと二酸化炭素排出量をそれぞれ約8割減らせるなど、 環境負荷低減への貢献はきわめて大きい。帝人ファイバーでは「回収作業の効率化などで製造コストも石油からつくる場合と同程度に引き下げ、競争力を高めた い」と意欲的だ。ポリエステル再生技術は、日本の繊維産業生き残りの切り札になろうとしている。(井田通人、山田泰弘)

▼帝人、パラ系アラミド繊維の生産能力増強 (『日刊工業新聞』2010年05 月28日付)

 帝人はパラ系アラミド繊維の生産能力を増強する。日本とオランダの両工場合わせて年間約2万5,000トンの生産能力があり、紡糸スピードを上げるなど 既存設備の生産効率改善により2012年までに少なくとも10%の能力アップを見込む。その後、13年以降に需要動向を見ながら設備増設を伴う投資を検討 する。同繊維は軽くて強度があり、耐熱性にも優れているのが特徴で、省エネルギーなどに貢献し、今後も需要は拡大すると見られている。

 帝人は10年3月期に当期損失357億円と2期連続の当期赤字となった。11年3月期を当期損益の黒字化を実現する年と位置づけ、キャッシュフローの確 保を優先、グループ全体で大型の設備投資を凍結している。アラミド繊維でも需要増を見込んでいるものの、まずは既存設備の生産効率の改善に取り組む。11 -12年を目標に、生産の最適化により強度など品質を維持しつつ紡糸のスピードをアップさせる。

▼帝人 ポリエステル繊維事業強化策 黒字定着へ環境シフト加速 (『Fuji Sankei Business i.』2010年6月17日付)

 帝人は16日、衣料品などに使うポリエステル繊維事業の強化策を発表した。衣料品を回収してポリエステル繊維を再生する「エコサークル」事業など需要拡 大が期待でき、技術力が生かせる環境関連分野へのシフトを加速するほか、コスト競争力強化にも取り組む。赤字基調が続いてきた同事業を今年度に黒字化さ せ、2012年度に50億円以上の営業利益を確保する計画だ。

 環境関連では、植物由来の原料を使った繊維の商品化も検討していく。また、原糸を外部調達するほか、テキスタイル(生地)生産についても外部工場に協力 を仰ぐなど自社内での事業展開にこだわらず、コスト競争力のあるビジネスモデルを確立する。一方で、衣料品需要が拡大する新興国での事業を強化。生地販売 に占める中国の割合を09年度の22%から12年度には40%まで高める考えだ。同日大阪市内で会見した亀井範雄常務は、「構造改革にめどがついたので攻 めに出たい」と語り、黒字定着に全力を挙げる考えを強調した。

                   ◇

■低価格志向…コスト面に課題
 合成繊維は中国などのメーカーが低価格を武器に台頭し、国内勢が押されていたところに景気低迷に伴う需要減が追い打ちをかけ、国内各社は大打撃を受け た。このため2009年度は旭化成と三菱レイヨンがポリエステル長繊維の生産から撤退するなど、他の製品も含め合繊各社による事業撤退が相次いだ。

 帝人も昨年8月、ポリエステル繊維事業にメスを入れた。衣料品に使う長繊維は10年度末までに松山事業所(愛媛県松山市)での生産を停止し、タイの工場 に生産を全面移管して国内生産から撤退。自動車の内装材などに用いる短繊維も松山での生産を終了し、徳山事業所(山口県周南市)に集約する。

 これにより、収益面での体質改善はかなり進む見通しだ。同事業の売上高は約1,000億円で、今後しばらくは大きな伸びが見込めないとみられるが、その 中で12年度に50億円の営業利益目標を掲げたのは“自信回復”の表れとも受け取れる。

 ただ、環境関連を事業の柱に据えるのは簡単ではない。消費者の間で環境意識が高まっているとはいえ、低価格志向が強まる中で割高の環境配慮型繊維を付加 価値として認めさせるにはもう一段の努力が必要だ。エコサークルも国内に加え、中国でも協力企業を増やし順調に事業を拡大しているが、コスト面などで課題 が残る。試行錯誤はなお続きそうだ。(井田通人)

▼帝人は植物由来、東レは海外で「再生」 合繊各社、エコ繊維で攻勢  (『Fuji Sankei Business i.』2010年12月9日)

 大手合繊メーカーが環境負荷の少ない「エコ繊維」で攻勢をかけている。帝人グループの帝人ファイバー(大阪市中央区)は、植物由来の原料を使ったポリエ ステル繊維の販売を9日に開始する。東レは、再生ポリエステル繊維を海外生産する方向で検討に入った。環境配慮型商品を求める消費者意識の高まりを受け、 国内外で新規需要の創出を目指す。

CO2排出3割減
 帝人ファイバーは、植物由来の原料を一部に使ったポリエステル繊維を「プラントペット」と名づけ、原糸や生地を販売する。再利用品の使用が進む衣料品や 自動車用シートに加え、回収できず環境負荷低減の方法が限られるナプキンなど衛生材料の素材としても売り込む。ポリエステル繊維の原料の一部であるエチレ ングリコールを、サトウキビから砂糖を精製する際の副産物である糖蜜を使った植物由来の原料に置き換えた。これにより、二酸化炭素(CO2)排出量は石油 由来の製品に比べ2〜3割削減できるという。

 耐久性や染色性などの品質は石油由来の製品と同等の水準を確保。コストはやや割高となるものの、「消費者が付加価値として受け入れられる範囲に収める」 (同社)という。当面はタイの工場で既存設備を活用して生産し、欧州や中国など海外でも販売していく。潜在的には、同社が生産するポリエステル繊維の約5 分の1に当たる年3万トン程度の需要があるとみている。

 帝人はエコ繊維事業として、衣料品などを回収してポリエステル繊維を再生する取り組みも実施しており、今回の製品によって顧客の選択肢を広げる。
 同様の植物由来原料を使ったポリエステルは、米コカ・コーラが昨年からペットボトル素材に採用し、日本法人も今年3月から「爽健美茶」など3製品に取り 入れた。トヨタ自動車も、来年初頭に発売する「レクサスCT200h」で荷室用内装材に自動車で初めて使用する予定。また同グループの豊田通商は台湾で現 地の化学大手と合弁会社を10月に設立し、11年末に植物由来原料の生産を始める。

生産は中国が有力
 ポリエステル繊維は東レも廃ペットボトルや液晶用フィルムの端材を回収し、化学処理などによって再生して販売する事業を行っている。現状は国内のみで生 産し、販売も大半が国内だが、海外でも事業を展開する方向で検討に入った。生産は中国が有力。海外でも需要拡大が見込まれており、今後は他社の海外進出も 加速しそうだ。

 ポリエステル繊維は、汎用(はんよう)品生産量で、価格競争力に勝る中国やインドのメーカーが日本勢を大幅に上回っている。日本勢の技術的優位性を生か せるエコ繊維は、こうした海外メーカーに対抗する有力な武器となりそうだ。(井田通人)

▼帝人、炭素繊維で量産車に照準 鉄より軽くて丈夫 (『Fuji Sankei Business i.』2011年12月1日付)

 帝人は30日、鉄より軽くて丈夫とされる先端素材の炭素繊維について、量産タイプの自動車での採用を目指し、2012年夏に試験生産を始めると発表し た。松山事業所(愛媛県松山市)内に二十数億円をかけて設備を導入。軽量化の効果が大きい車体骨格などでの搭載を狙っており、自動車メーカーを巻き込んだ 開発が加速しそうだ。

 試験生産では自動車メーカーなどと共同で安全性や軽量化の効果を検証。欧州で自動車の二酸化炭素排出量の規制強化が12年以降、段階的に進むのを踏ま え、15年以降に発売される次世代の電気自動車(EV)などエコカーでの採用を働きかける。

 帝人は炭素繊維を樹脂で固めた複合材料の成形で、作業時間を従来の最短5分程度から、量産車の生産に適した1分以内に短縮する量産技術を3月に確立。試 験設備ではこの技術を用いて連続生産する。

 これまで自動車への炭素繊維の導入は、生産台数が限られる高級車やスポーツカーの部品に限られていた。帝人は、重量の約3割を占める骨格など量産車の主 要部材での採用を目指す。
 自動車向けでは、東レが独ダイムラーとの合弁で、炭素繊維複合材料を使った自動車部品の製造販売会社を設立。12年に発売されるメルセデス・ベンツの上 級車向けから供給を始める。

 三菱レイヨンも独の炭素繊維メーカーとの合弁会社で4月、炭素繊維の原料の量産を開始。この原料をもとに成形加工された炭素繊維複合材料は、独BMWが 13年に発売予定のEVの構造材料として全面採用される。
 炭素繊維は、鉄の10倍の強度を持ちながら重さが4分の1と軽量な高機能繊維。帝人、東レ、三菱レイヨンの日本3社が世界シェアの約7割を握る。

▼優等生・帝人の目算なぜ外れた 苦境に立つ「繊維の名門」 (『Fuji Sankei Business i.』2013年5月28日付)

帝人の売上高と営業利益の目標

 繊維の名門、帝人が苦境に立たされている。成長を見込んでいた高機能繊維など素材事業の採算が軒並み悪化し、2012年度の連結最終損益は赤字に転落。 「脱繊維」を合言葉としたライバル各社の経営多角化戦略が明暗を分ける中、帝人は炭素繊維や医薬品などをてこに堅実な経営を続け、東レに次ぐ国内2位の地 位を築いた優等生。目算が外れた背景には何があったのか。
 「すべて(の事業)が悪い。こういった状態は過去にあまりなかった」。今月9日、都内で13年3月期の決算説明会に臨んだ園部芳久・最高財務責任者 (CFO)は、事業分野ごとに業績を振り返り、苦渋の表情を浮かべた。

最終赤字291億円

 売上高は前期比12.7%減の7,457億円、営業利益は同63.7%減の123億円。防弾チョッキなどに使われるアラミド繊維や、機械部品などに使わ れるポリカーボネート樹脂など素材分野の採算悪化が響き、期中に業績予想の下方修正は4度に及んだ。期初に220億円の黒字を予想していた最終損益も 291億円の赤字となり、悪化幅は500億円を上回った。
 帝人は昨年2月、12〜16年度に取り組む中期経営計画と、20年頃を見据えた長期的展望を抱き合わせた「中長期経営ビジョン」を発表。アラミド繊維や 炭素繊維複合材料などを「成長ドライバー」と位置づけ、年平均1,000億円の“成長投資”と、製造効率の向上などによる400億円超(11年度比)のコ スト削減で、16年度に売上高を1兆3,000億円、営業利益を1,000億円とする目標を掲げた。

 この計画は発表時から「見通しが甘い」(アナリスト)と指摘されていたが、初年度にあたる13年3月期の実績が期初予想を大きく下回ったことで、それが 的中した格好となった。同社は16年度の収益目標を修正し、6月末までに公表する予定だ。
 誤算だったのは、成長エンジンの一つであるアラミド繊維の需要低迷だ。主力の防弾・防護用途が米国の財政再建に伴う防衛費削減で減少し、欧米の自動車関 連向けも昨年度後半から調整局面に入った。「計画上は先進国向けだけでキャパシティー(生産能力)がいっぱいになるはずだった」(園部CFO)が、このシ ナリオが崩壊した。

 アラミド繊維は高機能繊維の代表格で、米化学大手デュポンとシェア争いを繰り広げてきた帝人にとって看板ともいえる素材の一つ。同社は採算改善のため、 オランダの生産拠点で10%の人員削減に向けた希望退職者の募集を開始。中国・上海の用途開発拠点を活用して新興国でも拡販を図り、欧米に偏っていた収益 源を分散する方針だ。

川下産業との連携

 みずほ証券の佐藤和佳子シニアアナリストは「素材事業は、少しでも景気に左右されにくい収益構造の構築が重要。そのためには川下産業との連携を加速させ る必要がある」と強調する。
 素材メーカーは技術力や開発力はあるものの、消費者との距離が遠く、ニーズをつかみにくい。消費者に近い川下産業と組んでニーズに合った素材を開発し、 付加価値の高い製品が確実に売れる仕組みを作れば、利益率の向上や安定的な収益源の確保につながるからだ。

立て直し取り組みを業界注視

 帝人は昨年8月、家具チェーン大手ニトリとの共同開発事業を立ち上げ、12月には高機能素材の開発や商品の企画・提案などを担う専門組織「ニトリプロ ジェクトチーム」を新設。丈夫で軽い合成皮革を使ったランドセルや、着火しても燃え広がりにくいこたつ布団などを展開してきた。今後も両社で年間2〜3商 品を新たに開発し、順次市場に投入していく計画だ。

 米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)と取り組んでいる炭素繊維複合材料を使った自動車部材の共同開発も期待が大きい。炭素繊維は車体の軽量化に役 立つ素材として市販車にも採用が広がったが、部材の製造にコストと手間がかかるため一部の高級車にとどまっているのが現状だ。

 そこで帝人は世界最速の1分で部材を連続成型する技術を開発。量産車への採用に道筋を付けた。現在は「量産化プロセス確立に向けた検証が最終段階に入っ た」(同社)という。
 日本の繊維産業は石油危機や輸入品急増などの中で生き残りをかけた多角化を進め、帝人のように繊維を基幹事業に据えるメーカーは少なくなった。それだけ に、帝人の高機能繊維事業立て直しに向けた取り組みは業界内でも関心を集めている。(豊田真由美)

▼帝人、ポリエステル原料生産から撤退 需給緩み採算悪化 (『日本経済新聞』 2014年1月20日付)

 帝人は20日、ポリエステル繊維・フィルムの原料であるパラキシレンの生産から撤退すると発表した。2014年3月に同社唯一の生産拠点だった松山事業 所(松山市)の年産29万トンの設備を止める。韓国、シンガポールの化学メーカーによる新増設が相次ぎ、世界的に需給が緩み採算悪化が続いていたため、完 全撤退を決めた。

 パラキシレンはナフサから抽出される原料で、国内ではJX日鉱日石エネルギーや出光興産など石油精製会社が生産している。帝人は1973年に松山事業所 で生産を開始。同社の生産能力は国内全体の7%程度にとどまる。

 帝人は設備停止で14年3月期中に約10億円の特別損失を計上する。15年3月期以降は外部からのパラキシレン調達に切り替えることで、年約13億円の 固定費削減効果を見込む。松山事業所の従業員は配置転換で雇用を維持する考えだ。

▼帝人、エアバスに炭素繊維複合材を供給へ (『日本経済新聞 電子版』 2014年3月13日付)
次世代中型機向け、年内にも

 帝人は年内にも就航する欧州エアバスの次世代中型機に炭素繊維の複合材を供給する。航空機の骨格に当たる1次構造材に初めて採用される見通し。中型機は 20年間で約7,300機の需要が見込まれる成長市場。炭素繊維シェア首位の東レは米ボーイングとの関係を強化しており、帝人はエアバスに基幹部材を供給 することで対抗する。

エアバスの新型機「A350XWB」はすでに全世界で約820機を受注している

 世界で既に約820機の受注がある「A350XWB」の試験飛行機に、炭素繊維複合材でつくった積層板の採用が決まった。胴体や翼といった主要な構造材 に使われる見通し。安全性が確認され次第、実用機への供給を始める。

 帝人はこれまで、エアバス社の機体の骨格部分向けに炭素繊維の原糸などを供給してきた。素材だけでなく主要部材の供給に乗り出し協力関係を固める。 A350XWBの1号機は14年中に就航する予定だ。日本では日本航空が約50機を発注しているという。

 航空機向け炭素繊維の需要は拡大している。20年の市場規模は13年に比べ約2倍に膨らむ見通し。航空機市場はボーイングとエアバスが二分。帝人はエア バスの大型旅客機「A380」向けでは炭素繊維の素材供給でシェアの過半を握っていた。座席数250〜400の中型機は今後の航空機市場の需要の2〜3割 を占めるとされる。帝人は次世代中型機の部材供給を始め、成長市場でシェア拡大を狙う。

 東レは既にボーイングの中型機「787型機」に炭素繊維の複合材を供給している。帝人のエアバスへの部材供給が始まることで、炭素繊維の航空機分野では ボーイング陣営の東レと、エアバス陣営の帝人という構図がより鮮明となる。

▼帝人、一転200億円の赤字に 通期見通し 徳山事業所閉鎖などで特損  (『Fuji Sankei Business i.』2014年11月6日付)

 帝人は5日、2015年3月期の連結最終損益が従来予想の100億円の黒字から200億円の赤字(前期は83億円の黒字)になる見通しだと発表した。ポ リエステル繊維を生産する徳山事業所(山口県周南市)を閉鎖するといった構造改革を17年度までに実施するのに伴い、特別損失を計上するため。12年に策 定した中期経営計画も見直し、16年度の数値目標を下方修正した。

 構造改革では、赤字体質になっている化学原料事業を縮小する一方、高い収益が見込める高機能素材やヘルスケア、ITの各事業に重点的に投資する。
 徳山事業所の閉鎖は松山事業所(松山市)やタイの工場に生産を集約し、コストを削減するのが狙い。岩国事業所(山口県岩国市)でのポリエステル繊維の生 産もやめ、三原事業所(広島県三原市)では加工業務を停止。大阪研究センター(大阪府茨木市)は閉鎖し、ポリエステル繊維に関する国内の機能は松山事業所 に一本化する。

 徳山事業所や大阪研究センターで働く従業員は近隣の工場などへ配置転換し、雇用を維持する方針。低迷が続いている米国の在宅患者向け医療機器レンタル事 業に関しても「抜本的な対策を講じる」とした。
 一連の事業再編などに伴い、14年9月中間連結決算で422億円の特別損失を計上し、最終損益は223億円の赤字となった。

 中期経営計画の見直しでは、連結売上高を従来の1兆3,000億円に比べ約4割減の8,000億円に、営業利益を1,000億円から半分の500億円に それぞれ引き下げた。
 都内で会見した鈴木純社長は「単なる素材供給だと韓国、台湾、中国が勝負にならないレベル(の低価格)で攻めてくる」と説明。強みを持つ事業を中心にし た新規ビジネスの創出で生き残りを図ると強調した。

▼帝人、高機能繊維に集中投資 5年で200億円 (『日本経済新聞 電子版』 2014年11月28日付)

 帝人は高機能繊維の増産やフィルターなど付加価値品の製造に集中投資する。資源開発用資材の補強に使う高強度アラミド繊維の生産能力を2年以内に約2割 高めるほか、汎用ポリエステル繊維を使った製品の量産にも乗り出す。今後5年で約200億円を投資。素材提供にとどまらず、製品の量産まで事業領域を広げ て、収益力向上につなげる。

 アラミド繊維では、年約2,500トン規模の主力生産拠点である松山事業所(松山市)がフル生産となっている。松山事業所か、2015年に開業予定のタ イの新工場を対象に増産投資を行い、高強度繊維の生産能力を2年内に約2割高める。エネルギー需要の増大を受け、油田やシェールオイルの掘削工事に使う ホースの補強材など向けに高強度品の需要が伸びているのに対応する。

 タイの新工場では防護服などに使う耐熱性アラミド繊維を主に生産する。アラミド繊維はナイロンの一種で燃えにくいほか、強度が鉄の8倍もある。帝人が米 デュポンと世界シェアを二分する得意分野だ。さらに自社で生地に加工したり、縫製して防護服などにして売り出す方針だ。

 汎用品のポリエステル繊維でも高機能フィルターに組み立て加工する工場の建設を検討する。工場の薬品回収や飲料工場などに使う液体向けフィルターを自社 開発する。これまでは綿状の繊維を販売するだけだった。

 帝人の高機能繊維は15年3月期に前期比9%増の1,350億円を見込む。衣料品向けも含む繊維分野の売上高は約4,000億円で、競合する東レの半分 程度にとどまる。東レは繊維事業で、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングと機能性衣料を共同開発するなど付加価値路線で収益を確保している。帝 人も得意分野で付加価値を高めて東レを追撃する。



■帝人の鉄道貨物輸送  
 各繊維メーカーの主力工場は鉄道貨物輸送を行うために専用線を敷設することが多いのだが、帝人の場合は相対的に鉄道貨物輸送への依存度が低かったのか、 専用線の敷設すら無い事業所が多い印象である。各事業所が臨海部に立地しており、海運による輸送が主力となっているものと予想される。車扱輸送の実態は不 明な点が多いが、コンテナ輸送については国鉄時代からホッパコンテナによる輸送を行っており、注目される。ただ新型コンテナの登場が無く、ISOタンクコ ンテナの活用も確認できないなど、鉄道貨物輸送に対して積極的な姿勢はあまり感じられないのも事実である。

▼岩国事業所  
 帝人岩国工場は、岩国駅に接続する専用線を1926(大正15)年5月に敷設している(『中国支社30年史』日本国有鉄道中国支社、 1966年、p307)
 「昭和45年版 専用線一覧表」によると当該専用線の概要は下記の 通りとなっている。
所 管駅
専 用者
第 三者利用者
通運事業者等
作 業
方法
作  業
キ ロ
総 延長
キ ロ
岩 国
帝 人 (株)
日本通運 (株)
岩国通運(株)
池田興業(合)
私有機
1.4
3.4

 しかし「昭和50年版 専用線一覧表」では使用休止(総延長キロは0.2kmに短縮)となっており、「昭和58年版 専用線一覧表」では消滅している。 昭和40年代後半には実質的に専用線は廃止された状態になったものと思われる。
 鉄道コンテナ輸送としては、2006年1月から大竹〜沼津間 で樹脂の輸送をトラックから鉄道にモーダルシフトした。荷主は帝人物流 (株)岩国営業所、着荷主は御殿場市内とのこと。2006年第一四半期(1-3月)の輸送量は85トンであった。(『地球環 境にやさしいモーダルシフト事例集』国土交通省中国運輸局、2007年)


▼三原事業所  
 三原事業所は三原駅の南部、三原港に面した場所に立地している。専用線は存在せず、鉄道貨物輸送の活用は限定的だったと思われる。
 帝人化成(株)三原工場はポリカーボネート樹脂を生産している(2013年に帝人(株)に統合)。一部はJRコンテナで出荷を行っている。(『Monthly かもつ』2011年8月号、鉄道貨物協会)


▼松山事業所  
 帝人の中では最も鉄道貨物輸送を活用しているのが松山事業所と思われる。専用線こそ存在しなかったが、松山駅を拠点にワム車、ホッパコンテナ、JRコン テナを活用して繊維製品や化学製品を発送している。ただ最寄りの松山駅が20ft級コンテナの取り扱いは可能だが、20t級のISOタンクコンテナの取り 扱いが不可能であり、この点が帝人の鉄道貨物輸送拡大の制約になっている可能性がある。帝人がISOタンクコンテナで化成品輸送を行う需要はあるのではな いだろうか。

▽「北陸号」による輸送
 帝人物流(株)愛媛支店の主業務は、日本の主織物産地である北陸、新潟地区に帝人テトロン糸綿を供給することである。国鉄貨車の依存度は高く、日発約15両の輸送を実施しており、1984年2月ダイヤ改正において も帝人物流のニーズが理解され、「北陸号」として存続した。北陸号は松山〜富山(操)の4866列車で、帝人物流が50%以上のシェアを占めている。北陸 号には日発1両再託送で新潟を経由し鶴岡駅まで運ばれる貨車 がある。着荷主は帝人の主要顧客の1つである松文産業(株)で ある。同社の本社は福井県勝山市だが、鶴岡市上山添に鶴岡工場があり、テトロン長繊維を運んでいる。(『貨物』1984年12月号、鉄道貨 物協会)

▽瀬戸大橋開通による影響
 1988年4月の瀬戸大橋開通による物流環境の変化による影響は大きかった。松山工場などで生産される北陸向けテトロン糸については、全体の90%が瀬 戸大橋ルートでJRのコンテナ輸送を利用しているが、輸送日数は3日間で従来のフェリー時代に比べて1日短縮できた(『日本経済新聞』 1988年8月1日付15面)。瀬戸大橋開通前は繊維輸送で1日車扱15車前後だったが、開通後は1日5トンコンテナ32個(160トン)、フィルムチップを1日6個(30トン)などを松山〜北陸地区へ輸送している(『交 通新聞』1993年4月20日付2面)

▽ポリエチレンテレフタレート輸送
 帝人は物流合理化3カ年計画を纏め、その1つとしてフィルム原料のレ ジン輸送を遠距離輸送に限ってタンクローリーから私有コンテナ(UH1形式)を使った貨車輸送に切り替える。1981年4月から松山工場、愛媛工場と岐阜相模原のユーザー間で輸送実験を始めているが、今後対象工場と仕向け地 を拡げ輸送量を増やして、全社的に導入する計画。
 コンテナの製作個数は18個、当面毎日2個ずつ発送されている。ポリエチレンテレフタレートは写真用フィルムだけでなく、カセットテープ、ビデオテープ などを作る際の原料になる。
(『貨物』1981年7月号、鉄道貨物協会)

 岐阜と相模原のユーザーは、帝人デュポンフィルム(株)と 思われる。(以下同 社webサイトより抜粋)
*1968年3月:帝人小西六フィルム(株)相模原工場にてPETフィルムの操業開始
*1971年4月:帝人(株)岐阜工場(現帝人デュポンフィルム(株)岐阜事業所)が開業、テイジン®テトロン®フィルムの操業開始

 同コンテナは宇都宮(タ)駅での目撃があり、同社宇都宮工 場向け輸送にも活用されている模様。
*1985年8月:帝人(株)宇都宮工場(現帝人デュポンフィルム(株)宇都宮事業所)が開業、テイジン®テトロン®フィルムの操業開始

(『Monthlyかもつ』1988年7月号、p11より転載)

▽帝人物流(株)愛媛支店
 松山地区の帝人本体工場と帝人化成の2社の物流を担当。帝人の繊維製品が年間10万トン、帝人化成のポリカーボネートを同12万トン、樹脂関係が同15 万トンを生産。JRコンテナは繊維製品の約3割で、樹脂製品 は無い。(『Monthlyかもつ』2001年12月号、鉄道貨物協会)

 尚、松山港を2003年訪問した際には、帝人関係の海上コンテナが並んでいた。

2003.1松山港

2003.1松山港


▼徳山事業所  
 徳山事業所は櫛ヶ浜駅付近にあり、やはり専用線は存在しなかった。
 鉄道コンテナ輸送の活用は以前からあり、新南陽(帝人)〜山形・刈谷で JRコンテナやJOTのUR18A形式コンテナが運用(品目は不明)されているのを1998〜1999年に目撃している。
 また2005年6月からボトル用チップの輸送がトラックから鉄道にモーダルシフトした。発駅は新南陽駅、着駅は羽生ORSで荷主は帝人物流(株)徳山支店、2006年第一四半期(1-3月)の輸送量は 773トンであった。(『地球環境にやさしいモーダルシフト事例集』国土交通省中国運輸局、2007年)


日本の鉄道貨物輸送と物流:表紙へ
とはずがたりな掲示板  鉄 道貨物輸送研究スレへ  繊 維スレへ

inserted by FC2 system