日本の鉄道貨物輸送と物流: 目次へ
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シンエツ化成株式会社
2016.7.23作成開始

◆肥料のコンテナ化 (『貨物』1984年3月号)

 信越化学の最近の輸送は27府県約250駅に車扱輸送しており、2〜3のまとまった駅を除くと、1駅あたり年間平均250トンと少量分散型となっている。
 肥料は本質的にはコンテナ物資でありながら、少量分散型であり、また着オンレール渡しが多いためコンテナ化されず、車扱輸送されてきた。

▼肥料輸送トン数
年 度別
生産量
レール輸 送量

昭和53 年度
100,000
75,000
75.0
昭和54 年度
100,000
79,000
79.0
昭和55 年度
98,000
69,000
70.4
昭和56 年度
96,000
65,000
67.7
昭和57 年度
85,000
62,000
72.9

 しかし拠点間直行輸送方式への転換により、少量分散型の肥料は直行輸送になじまない貨物となり、昭和59年2月のダイヤ改正では、年間2万5千トン、運 賃収入1億4千万円相当が輸送不可能となったため、トラック転移防止対策が必要となった。

 信越化学は、専用線を所有しているため、直江津駅への集積作業が伴うコンテナ化には消極的だったが、専用線内でのコンテナ扱いに対しては興味を示した。 しかし、肥料のコンテナ化は前例も無く、同社、通運会社と問題点を洗い出し、解決を図っていった。

 その結果、年間3万3千トンのコンテナ化の提示を受けた。今後も、問題解決に努力し、輸送の定着化を図り、将来的には専用線から全量コンテナ化したいと 考えている。

◆コンテナによる肥料の一貫パレ 推進状況について (『かもつ』 1989年4月号)

*輸送区間  発駅:黒井駅  着駅:相模貨物駅、千葉 貨物ターミナル駅、近々土浦駅着も検討

*開始日  1989年4月1日から

*利用事業者
 (1)発事業者  シンエツ化成(株)直江津工場
 (2)着事業者
   ・相模貨物駅  菱成産業(神奈川県経済連配送センター)、日本通運平塚支店
   ・千葉貨物ターミナル駅  前田運輸倉庫、日本通運千葉支店

◆わが社の鉄道コンテナ輸送 シンエツ化成(株)直江津工場  (1990年11月12日付『運輸タイムズ』3面)
『コンテナ輸送県』広げる
全出荷量の60% 一部はパレット輸送

 シンエツ化成(株)直江津工場(新潟県上越市)は、本州各県の農協へ出荷する肥料の約60%年間2万トンを鉄道コンテナで輸送しており、千葉貨物ターミナルほか2 駅向けは一貫パレを行っている。新潟県内や群馬、富山などの近県はトラック輸送だが、遠隔地向けはコンテナ輸送の比率が高く、山形、栃木などトラック輸送 していた県の一部も、今年9月からコンテナ輸送に替え、今後もトラックからコンテナへの転換を進める。パレット輸送はJR貨物、通運などの全面的協力で数 年前から実施しており、作業効率のアップなどで効果を上げている。しかし、荷崩れ防止に決定的な対策が無く、「コンテナ自体に防止策を施して欲しい」と JR貨物へ望んでいる。

 シンエツ化成直江津工場は化学肥料(石灰窒素)を製造しており、本州各県の農協へ出荷している。輸送手段はトラックと鉄道コンテナだが、コンテナ輸送比 率が高く、全出荷量の60%、約2万トンがコンテナ輸送。
 近県はトラック、遠隔地向けはコンテナ輸送を基本としているためで、トラック輸送しているのは秋田、群馬、新潟、富山、石川、福井の各県。これに対し青森、宮城、茨城、千葉、神奈川、静岡、愛知、岐阜、大阪、和歌山、兵庫、岡山、鳥取の 各府県へはコンテナで輸送している。コンテナとトラックを併用しているのは長 野、山形、栃木の3県である。
 このうち、トラック輸送していた栃木県宇都宮向け、山形県庄内向けの一部を、今秋からコンテナ輸送に替えた。長野県では松本向けを以前からコンテナ輸送 している。信越本線の黒井が発駅で、直江津工場からの距離は10kmと近い。

 コンテナを多く使っているのは、遠隔地向けはトラックより輸送力を安定的に確保できるだけでなく、運賃メリットもあるためだ。尚、肥料の出荷は9〜12 月が多く、4〜6月に比べ3〜4倍になる。また、新潟県内、富山、石川県など工場に近いユーザーは、自らトラックを仕立てて引き取っていく。
 県内や近県を除いて、これからもコンテナ輸送を増やしていく考えで、販売会社である信越化学工業(株)肥料部の渡辺課長は、「全量トラック輸送だった栃 木県向けの3分の1を今年9月以降、コンテナに移したが、今後はこれを3分の2に増やし、できれば将来、全量をコンテナ輸送にしたい」と言う。
 昔からトラック輸送してきたので、一挙にコンテナ輸送にすることはできないが、ドライバー不足や労働時間短縮などでトラック輸送事情が厳しくなっている ため、できるものからコンテナ化していく方針だ。

 コンテナ輸送拡大にあたって、JR貨物へ注文することもある。それは、繁忙期にコンテナ不足を起こさないことと、両側面開きコンテナの円滑な供給であ る。
 肥料の出荷期はJR貨物の秋冬繁忙期と重なるため、空コン不足に見舞われる。「今年、トラックからコンテナに切り替えたばかりの出荷先が空コン不足によ り、ユーザーの注文日時に着かないことがあった。コンテナへの転換にあたってJR貨物は、コンテナ不足は起こしません≠ニいったのに…」
 また両側面二方開きコンテナは、着地での取卸し作業が容易にできるため、円滑な供給を求めている。しかし、一方開きか側面一方と妻側の二方開きしか回っ てこない、という。
 パレット輸送は千葉貨物ターミナル駅、相模貨物駅、土浦駅向けで行っている。荷崩れ防止を中心とするテスト輸送を繰り返し行った後、数年前から実施した が、土浦駅向けは昨年から本格的に始めた。
 使用パレットはT11型(20kgポリ袋50袋積み)と1,100×1,400mm(同75袋積み)の2種で全てリース。自社パレットは使用後の管理が 難しいため使っていない。尚、SP納入分だけがパレット輸送である。通運事業者の強い要請と作業合理化のメリットが荷主側にもあるため、JR貨物のバック アップを得て実施したもので、合理化効果は十分。
 「コンテナ輸送の全量をパレット化することが目標」と渡辺課長は言うが、そのための課題は荷崩れの防止と農協倉庫におけるフォークリフトの常備。
 荷崩れ防止策として、ポリ袋に滑り止め(粘着テープ)を施したり、接着剤を使用しているほか、パレタイズ貨物の周囲に巻き物(プロテクター)を当てるな どしている。しかし、いずれの方法も完全とはいえず、滑り止めはパレタイズが難しく、接着剤はポリ袋に跡が残る。
 このため貨物とコンテナ内壁の間に生じる隙間にエアーパックを使用することを検討しており、テスト輸送で効果を調べることにしている。渡辺課長は、「小 手先的な対策で無く、コンテナの内壁が移動して隙間を埋めるようなコンテナを開発して欲しい。技術的に難しいとは思わない」という。


■肥料事業からの撤退

◆信越化学、肥料事業をコープケミカルに事業譲渡  (2002.2.25 信越化学工業(株)プレスリリース)

 信越化学工業株式会社(本社:東京、社長:金川千尋)は、肥料事業をコープケミカル株式会社(本社:東京、社長:岡本英誠)に事業譲渡することで合意に 達し、2月25日に契約・調印した。これによって、信越化学工業は創業以来続けてきた肥料事業から、全面的に撤退する事になった。

 譲渡する事業は、信越化学工業の100%出資子会社シンエツ化成株式会社(本社:東京、社長:坪倉弘明) が生産してきた「石灰窒素」等の化学肥料。信越化学工業の肥料事業は創業以来の基幹事業として、同社の発展に貢献してきた。しかし、信越化学工業の事業内 容の変遷による「選択と集中」の経営施策の一環と して、今回、事業譲渡に踏み切ったもの。

 譲渡先のコープケミカルは、昭和13年に設立された全農系の肥料専業メーカーの老舗で、主力の高度化成をはじめ燐酸質肥料、緩効性肥料、有機質肥料、 ペースト肥料、農薬入り肥料など、多岐にわたる品揃えと市場のニーズに対応した新肥料の開発・販売により競争力を強化している有力肥料メーカー。また同社 は、独自のユニークな技術を駆使して、事業領域を拡げてきている。

 今回の合意は、こうした両社の経営的背景により、そのニーズが合致した事から結実したもの。また、営業面でも、肥料業界・市場での信頼・ブランド力の高 いコープケミカルへの事業譲渡により、事業の承継がスムースに行われることから、ユーザーに対する供給責任も十分果たせることも大きな要因。

 なお、同事業の生産を担ってきたシンエツ化成は、溶解アセチレン事業等、残る事業を継続して行う事になっている。また、今回の事業譲渡に伴う両社間にお ける人員の移動はない。

 以 上

◆肥料事業から全面的に撤退 信越化学 (2002年2月26日付 『河北新報』9面)

 信越化学工業は25日、肥料事業を6月30日付で全国農業協同組合連合会(全農)系の肥料メーカー、コープケミカルに譲渡することで合意したと発表し た。信越化学は1926年の設立以来の基幹事業だった肥料部門から全面的に撤退する。

 半導体ウエハーやシリコン樹脂などの高収益事業に集中したい信越化学と、事業領域を拡大したいコープケミカルの思惑が一致した。

 譲渡するのは、信越化学の100%子会社、シンエツ化成(東京)の化学肥料事業。同社の直江津工場(新潟県上越市)の生産設備コープケミカルの新潟工場 (新潟市)に移設する。シンエツ化成は製造担当の従業員数を見直し、溶接アセチレン事業などを継続する。



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