■企業各社のエコロジー&モーダルシフト 信越化学工業(株)直江津工場の物
流担う直江津産業(株) (『JR貨物ニュース』2005年9月1日号、3面) 信越化学工業(株)は、塩化ビニル樹脂、半導体シリコン、シリコーン樹脂、セルロー ス誘導体、合成石英を始め多種多機能の製品を、日本はもとより世界各国の幅広い分野に供給している世界トップクラスのハイテク素材メーカーである。今回は 同社直江津工場の鉄道利用について、同社事務部松下義一部長と、物流業務を元請けしている直江津産業(株)の佐藤全四郎社長、同社業務部の藤田秀夫取締役 部長 に話を聞いた。 信越化学工業は1926年に「信越窒素肥料(株)」として発足した。翌年完成した直江津工場は、親不知の石灰石を原料にカーバイドや石灰窒素肥料を製造 し ていたが、1957年、工業塩の電解工場を新設し、化学産業の基礎素材である苛性ソーダ・塩素・塩化ビニル樹脂の製造を開始して有機合成化学に転換。さら に1959年にはクロロメタン類の製造を開始した。 これら基礎素材は、場内をぐるりと巡る専用線を使い、タンク車で車扱輸送していた。「鉄道との付き合いは古いのですよ」と直江津産業の佐藤社長は、工 場内をSLが走る写真を見せてくれた。 その後同社は、苛性ソーダやクロロメタン等、基幹素材を製造部門は残しながらも、製造品目のファイン化を推進。 直江津工場の製品ラインナップも、建築材料や医薬材料品等に使うセルロース誘導体、各種素材の性能・品質向上に役立つシリコーン製品、新しいタイプの害 虫防除剤合成フェロモン、液晶パネル製造などに使う合成石英、さらに半導体工程材料のフォトレジストなど、多種多彩になった。 基礎素材に比べてこれら製品は品種も多く、性状とニーズに合わせ、紙袋、フレコン、ドラム缶、5ガロン缶、1キロ缶あるいは瓶詰め等の荷姿で出荷してい る。 直江津工場で、こうした製品の充填・包装梱包・保管から輸送手配・出荷業務等、物流業務全般を請け負うのが、グループ会社の直江津産業だ。ルート別に 輸送手段も選択する。 同社によると、昨年度、直江津工場が出荷した数量 のうち、黒井駅発の5トンコンテナやISOタンクコンテナで鉄道輸送した製品は約7%だった。 JRの5トンコンテナで出荷するのは、中長距離にあるセルロース誘導体などの仕向け先。「5トン単位にオーダーをまとめてもらえないか」「ユーザーサイ ドにSPを設けられないか」等、ユーザーに働きかけながら鉄道利用を拡大してきた。 紙袋製品を運ぶことも多いが、積載時には利用運送の日本通運鰍ェ補助資材で養生するので、「トラックの路線便などに比べて荷傷みがない」と、鉄道コンテ ナ輸送の評価は高い。 ▼鉄道シフトで「一石三鳥」の効果 一方、専用線からタンク車で鉄道輸送していた基礎素材は、モータリゼーションの流れとともにタンクローリー輸送に変わり、構内線路も殆どが剥がされた。 しかし全国的にもタンクローリーの事故が絶えない状況下で「安全第一で輸送手段を選ぶように」と、信越化学の金川社長自ら指示したのを受け、直江津工場 では直江津産業の佐藤社長が先頭に立って、特に危険性の高い基礎素材について、ISOタンクコンテナによる鉄道輸送を検討し始めた。 総重量24トンのISOタンクコンテナは、タンクローリーより過積載が比較的多いので輸送単価も有利になる。また環境負荷の少ない鉄道で運べば、環境対 策としても有利だ。だが肝心の安全性に関して、「鉄道は危険物の危険・有害性をどのように分類しているのか、保険はどうなっている」など知らないことが多 い。 JR貨物に詳細な説明を求めたところ「安全輸送体制が非常にしっかり確立されている」。また発着駅両端の集配では道路輸送と同様、イエローカードの携帯 なども確認できたので、まず信越化学の工場間で輸送していた製 品をISOタンクコンテナに転換、ついでユーザー向け製品でも転換 を進め、2003 年度には国土交通省から実証実験の認証を受け、坂 出向けの製品を鉄道にモーダルシ フトした。 ISOタンクコンテナによる鉄道輸送は安全・コスト・環境面で「一石三鳥の効果がある」と佐藤社長。 昨年秋の新潟中越地震では長岡周辺の鉄道ルートが分断されたが、代行輸送や迂回ルート輸送により「ユーザーには迷惑をかけずに済んだ」という。 しんえつ・リポート 第127 期事業報告書(平成15年4月1日〜平成16年3月31日) <6頁> 地球温暖化問題の対策の1つとして、当社は2004年2月24日より、新潟県・直江津工場近くの信越本線黒井駅か ら香川県の高松貨物ターミナル駅までのクロロメタン輸送を、タンク ローリーから鉄道にモーダルシフトした。 国土交通省は2002年度から、物流において二酸化炭素排出量の削減効果が大きいと認められる計画を認定し、支援助成している。今回のモーダルシフト は同社と同社の100%子会社で出荷業務などを行う直江津産業、日本貨物鉄道(JR貨物)、日本通運が共同提案し、2003年度に第1次認定された21件 のうちの1つである。 今回の鉄道へのモーダルシフトによって、タンクローリーでの輸送に比べて二酸化炭素の排出量を年間191トン、85.3%削減できると試算している。 |
発
駅 |
発
荷主 |
品
目 |
着
駅 |
着
荷主 |
貨
車 |
確
認・備考 |
黒井 |
信越化学工業(株) |
苛性ソーダ |
石巻港 |
十條製紙(株)? |
タキ12657 信越化学工業(株) |
1981.5石巻港(福田孝行氏
webサイトより) |
黒井 |
信越化学工業(株) |
苛性ソーダ |
藤寄 |
日本曹達(株) |
タキ52600 信越化学工業(株) |
1996.8.26藤寄で確認 |
黒井 |
信越化学工業(株) |
苛性ソーダ |
中条 |
(株)クラレ |
タキ42670 信越化学工業(株) |
1999.4.1中条で確認 |
黒井 |
信越化学工業(株) |
クロロホルム |
奥野谷浜 |
信越化学工業(株)? 武田薬品工業(株)? |
タキ9000 信越化学工業(株) |
『鉄道ピクトリアル』第43巻第7号、 1993年、88頁 ク ロロホルムは高い溶解力を持ち主にフッ素樹脂製造用原料に用いる、 医薬・農薬用抽出溶剤、分析用試薬分野でも高い評価 |
黒井 |
信越化学工業(株) |
クロロホルム |
安治川口 |
関西化成品輸送(株)? |
タキ9012 信越化学工業(株) |
1992.12安治川口『鉄道ピクトリアル』第44巻第4号、
1994年、3頁 |
黒井 |
信越化学工業(株) |
塩化メチレン |
八王子 |
小西六写真工業(株) |
タム7701 信越化学工業(株) |
1975.7八王子(吉 岡心平氏webサイトより) |
太郎代 |
三菱瓦斯化学(株) |
メタノール |
黒井 |
信越化学工業(株) |
タキ5200形 三菱瓦斯化学(株) |
1996.8.26黒井で確認(信越化学の専用線に入線を確認) |
親不知 |
信越化学工業(株) |
石灰石 |
黒井 |
信越化学工業(株) |
貨車不明 (トキ?ホキ?) |
親不知〜黒井・武生の石灰石輸送量は417 千t(1965年度) (『貨物』第16巻第7号、1966年、28頁) 「1975年版専用線一覧表」で親不知駅の信越化学工業 の専用線は休止のため、その頃廃止か。 |
神岡 鉱山前 |
神岡鉱業(株) |
濃硫酸 |
黒井 |
信越化学工業(株) |
タキ5750形、 タキ46000形など |
『鉄道ダイヤ情報』第23巻10号、 1994年、49-50頁 |
車 種 |
荷重 |
1979年3月現在 |
1985年9月現在 |
両
数 |
両
数 |
||
タム
3900(カセイソーダ液専用) |
15t |
4 |
− |
タム
7600(カセイソーダ液専用) |
15t |
4 |
− |
タキ
2600(カセイソーダ液専用) |
30t |
64 |
75 |
タキ
4200(カセイソーダ液専用) |
35t |
5 | 14 |
タム
7700(塩化メチレン専用) |
15t |
3 |
3 |
タサ
6100(塩化メチレン専用) |
20t |
4 |
4 |
タサ
3800(メタノール専用) |
20t |
2 |
2 |
タキ
7000(四塩化炭素専用) |
35t |
1 |
1 |
タキ
9000(クロロホルム専用) |
35t |
10 |
16 |
タキ
16200(酢酸ビニール専用) |
35t |
2 |
1 |
合 計 |
99 |
116 |
■信越化学 カ性ソーダ拡販 専用タンクなど 新潟に大型物流
基地 (『化学工
業日報』2004年3月26日付、1面) 信越化学工業は、カ性ソーダ販売で攻勢をかける。新潟県に専用タンクを中心とした大型物流基地をこのほど確保。物流効率化によるコスト減とサービス体制 の強化で、信越、東北方面における地域販売を拡大する体制を整えた。同社では昨年、今年と引き取り枠を拡大し、国内市場におけるカ性ソーダのシェアを急速 に伸ばしている。さらに地域展開を強め、市場でのプレゼンスを高めていく方針だ。 信越化学は、このほど新潟市内に、専用タンク、充填設備などからなるス トックポイントを確保した。東 港の肥料コンビナート内にあるコープケミカルの敷地にコープケミカルが建設したもので、タンク容量は2千立方メートルとなっている。50% カ性ソーダを約3千トン貯蔵できる。コープケミカルが運用することで長期契約を結んだ。 信越化学では、新潟など下越地区については、これまで鹿 島から直江津工場に船で運んだうえで陸送していた。しかし、直江津での自家消費が増える一方、下越でも需要が拡大する傾向に ある。直江津では船からタンクまでローリーでのピストン輸送を強いられるうえタンク容量が小さいこともあって、効率の悪さに直面していた。新しい物流拠点 は、大型船での直接搬入 も可能なため、コストや安定供給、安全面で大幅な向上が見込める。 当面は製紙メーカーや化学メーカーなど既存需要家への供給を中心にしていくが、ストックポイント新設 を機に新規需要の開拓、販売地域の拡大も進める。将来的にはタンク増設なども視野に入れていくことになる。 信越化学は、共同出資で運営している鹿島電解での引き取り枠を従来の年12万トンから15万6千トンに今年から増やした。直江津工場の 6万トンと 合わせ計22万トン体制を確立し、五指に入る国内シェアの獲得に成功しつつある。鹿島での電解製品の引き取り拡大は、原料塩素の安定確保という観点から塩 ビ樹脂事業の強化にもつながる。そのためカ性ソーダの拡販は、電解−塩ビのチェーン全体の基盤を強めることになる。米国西海岸など輸出市場へのアプローチ とともに、物流体制を拡充し国内でも積極的な展開を図る。 |
発
駅 |
発
荷主 |
品
目 |
着
駅 |
着
荷主 |
コ
ンテナ |
確
認・備考 |
黒
井 |
信
越化学工業(株) |
トリクロロシラン |
倉賀野 | 信越化学工業(株) | UT13C 信越化学工業(株) | 2007.3.24黒井駅 |
黒
井 |
信
越化学工業(株) |
ジメチルジクロロシラン(KA-22) |
倉賀野 |
信越化学工業(株) |
UT17C
信越化学工業(株) |
2010.11.6黒井駅 |
黒
井 |
信
越化学工業(株) |
四塩化珪素 |
倉賀野 |
信越化学工業(株)? |
UT13C 中央通運(株) |
2010.11.6黒井駅 コンテナの表記より |
黒井 |
信越化学工業(株) |
四塩化珪素 |
神栖 |
信越化学工業(株) |
UT13C
信越化学工業(株) UT13C 中央通運(株) UT14C (株)ボルテックスセイグン |
2001年5月開始(JRFN2001.5.1号p7) 2001.9.24黒井駅、2008.7.20神栖駅 |
黒
井 |
信
越化学工業(株) |
塩化ビニル樹脂 |
大宮操 |
信越ポリマー(株) 東京工場 |
H10形 国鉄 |
1966.11開始(『鉄道貨物輸送近代化の歩み』28
頁) ホッパコンテナの耐用年数が切れる1981年まで 輸送は続き、その後ローリーに転換 (『大宮通運五十年史』大宮通運且ミ史編纂委員会、 2001年、84〜85頁) |
黒
井 |
信
越化学工業(株) |
トリクロロシラン |
東京(タ) |
? |
UT13C 信越化学工業(株) | 2007.3.24黒井駅 |
黒井 |
信越化学工業(株) |
塩化メチル |
安治川口 |
関西化成品輸送(株) |
U19A 中央通運(株) |
2010.11.6黒井駅 返空を目撃 |
黒井 |
信越化学工業(株) |
液化クロルメチル |
高松(タ) |
東亞合成(株) 坂出工場? |
UT19C (株)ボルテックスセイグン |
着荷主は坂出の荷主ということで… (JRFN2005.9.1号p3) |
黒
井 |
信
越化学工業(株) |
四塩化珪素 |
新南陽 |
信越化学工業(株)? |
UT13C 中央通運(株) |
2010.11.6黒井駅 コンテナの表記より |
(信) 黒井 |
信越化学工業(株) |
粒状 |
土浦 |
? |
18D 複数 |
1998.3.22土浦駅 |
(信) 黒井 |
信越化学工業(株) |
メチレン |
百済 |
三和 |
19A |
1999.3.27百済駅 タンク車では「塩化メチレン専用」があった |
(信) 黒井 |
信越化学工業(株) |
粒状 |
米子 |
? |
C36 |
1998.8.10米子駅 |
(信) 黒井 |
信越化学工業(株) |
防酸 |
米子 |
? |
C36 |
1998.8.10米子駅 |
倉賀野 |
信越化学工業(株) |
メチルトリクロロシラン |
黒
井 |
信
越化学工業(株) |
UT16C
信越化学工業(株) |
2003.5.10黒井駅、2009.9.6 倉賀野駅 2001年12月開始(JRFN2002.2.1号p1) |
倉賀野 |
信越化学工業(株) |
メチルジクロロシラン(KA-12) | 黒井 |
信越化学工業(株) |
UT16C
信越化学工業(株) |
2003.5.10黒井駅、2009.9.6 倉賀野駅 2010.11.6黒井駅 2001年12月開始(JRFN2002.7.15号p4) |
信越化学
塩ビ樹脂を鉄道へ 鹿島工場が20ftタンクに転換 (1997年3月17日付『運輸タイムズ』3面) 信越化学工業(株)鹿島工場が製造する塩化ビニール樹脂の輸送手段として鉄道を利用しており、最近はコンテナによる輸送実績を伸ばしている。300km 以上の長距離では運賃コストの削減が図れること、安定した輸送力と定時・定型化している鉄道の輸送特性を活かすことにより、供給の安定が確保できることの 2点がコンテナ輸送を増やした要因。 発駅は神栖。12ftと20ftの私有タンクコンテナで輸送しており、ユーザーへの直送。全国のユーザーへ供給しているが、鉄道による向け先は中部地区 以遠の西日本が主体。日本海側のユーザーへもコンテナ輸送している。昨年来コンテナ個数を伸ばしているのは、中部、関西、中国、北陸他の各地。 個数増加の要因は、他機関からの切り替えと、需要増に伴う出荷量の増加。トレーラーとローリーによる専用車両の輸送は帰り荷が運べないという難点があ る。 |