石巻港駅　株式会社七星社

株式会社七星社（石巻港駅）

2016.2.7作成

1998.8石巻港駅　(株)七星社専用線

2007.9石巻港駅　(株)七星社専用線　コキが2両停車中

　『貨物時刻表』の巻末に近い後半に「コンテナ取扱駅　構内図」がある。当初は主要駅の構内図のみの掲載であったが、やがてフロント扱いのある駅は全て掲載されるようになった。その中には当然、石巻港駅も含まれているのだが、当初はなぜか〝石巻港駅〟ではなくて〝石巻駅〟の構内図が載っており、不可思議であると同時にがっかりもした。貨物時刻表は旅客時刻表に比べて編集・校閲が甘いのか、列車ダイヤの時刻が抜けていたりといったミスはありがちではあるが、駅そのものを取り違えるというのはさすがに考えにくく、いずれ訂正されるだろうとは思っていたのだが、案の定『2011貨物時刻表』から間違いなく〝石巻港駅〟の構内図に改められた。

　ところがその構内図を見ると、石巻港駅本屋の左隣に〝七星社〟という見慣れぬ文字と〝専用線境〟がある。慌てて「昭和58年版　専用線一覧表」をめくってみるが、やはり石巻港駅に〝七星社〟に該当するような専用線は存在しない。石巻港駅を訪問した際に撮影した写真（上記2枚）を見返すと、確かに構内図が示す場所に線路があり、2007年9月撮影の写真ではコキ車すら入線しているではないか！撮影した当時は、もちろん専用線という認識はなく、駅構内の配線を記録する程度の気持ちで撮ったのであるが、実は専用線だったのか！！と驚愕した(株)七星社を第3回の「専用線とその輸送」に取り上げることにする。

（『2011貨物時刻表』p274より抜粋）

　まずは(株)七星社の会社沿革をwebサイトから確認する。

年　月	出　来　事
1948(昭 23)年7月	資本金 30万円。合資会社「七星社」創立。東北パルプ(株)石巻工場で抄造された洋紙の加工販売
1962(昭 37)年2月	紙仕上工場新設操業、東北パルプ(株)石巻工場の抄紙機増設に伴い、紙の断裁、撰別、包装、荷造、貨車積みまでの一貫作業開始
1964(昭 39)年6月	資本金 2,000万円に増資。株式会社「七星社」と組織変更
1967(昭 42)年6月	本社社屋並びに総合工場完成移転
2011(平 23)年3月	東日本大震災と、それに伴って発生した津波により全損
2011(平 23)年11月	三河町へ本社移転
2012(平 24)年10月	洋紙加工工場新築

（七星社webサイトより）

　沿革から判断すると、1962年の紙仕上工場の操業時に専用線を敷設し〝貨車積み〟までの一貫作業ができるようになったと考えられる。「専用線一覧表」に名が無いのは謎だが、国鉄時代は構内側線扱いで、JR貨物に移行後に専用線とされたのかもしれない。

　また2013年当時の同社のホームページでは、積込作業としてワム車の写真が載っており、確かに専用線を使った輸送を行っていたようだ。

（2013年頃の同社webサイトより）

　同社の洋紙加工事業部は、創業部門であり、主に日本製紙(株)石巻工場で作られた紙を使いやすいサイズ・形に加工し、小巻に仕上げている。紙を巻き直すワインダーや規格の枚葉に巻取を断裁してゆくカッターといった大型の機械設備は、〝国内有数の生産能力〟を誇っているとのこと。断裁機ではさらに小型の洋紙サイズに仕上げ、〝日本全国へと出荷〟しているともあり、鉄道輸送による出荷先は首都圏だけでなく、全国に拡がっていたのかもしれない。

　写真からコキ2両程度の輸送量であると仮定すると、13,000～14,000トン／年の取扱量（平日のみ稼働）と試算され、専用線を維持するには絶対量が少ないようにも思われるが、線路が1本だけの簡易な専用線であり、維持コストが低く、専用線として残すことができていたのかもしれない。

　2007年9月当時に専用線を使用していることが写真から確認できた同社ではあるが、2011年3月に発生した東日本大震災で石巻港駅は壊滅的な被害を受け、七星社の専用線も工場と共に津波に流されてしまった。2012年10月に元の場所に洋紙加工工場が新築されたものの、残念ながら専用線は再度敷設されることはなかった。工場は石巻港駅のコンテナ取り扱い設備に隣接していることもあり、もはや専用線を必要としないと判断したのかもしれない。

　同じ石巻港駅では、日本製紙(株)石巻工場の専用線が規模は縮小されたものの復活を遂げ、その詳細は『Monthlyかもつ』や『JR貨物ニュース』といった媒体で華々しく報告がされている。しかし、その陰でひっそりと小さな専用線が被災により姿を消していたという事実は、記録として残しておきたいところである。

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