日本の鉄道貨物輸送と物流:目次へ
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サッポロビール株式会社
2002.2作成 2017.7.1更新開始
<目次>
1.サッポロビールの概要
2.サッポロビールの沿革
3.サッポロビールのトピックス
4.サッポロビールの鉄道貨物輸送
 @各工場の専用線
 A麦芽輸送
 B札幌工場、北海道工場
 C仙台工場
 D北関東工場
 E川口工場
 F千葉工場
 G恵比寿工場
 H静岡工場
 I名古屋工場
 J大阪工場
 K九州工場


@各工場の専用線  

◆工場から貨車輸送側線消える 
『サッポロビール120年史』サッポロビール、平成8年、622頁
 昭和51年11月、国鉄の貨物輸送運賃が平均約54%アップされた。それまでトラックに比べて割安であったビール輸送コストは、この値上げでビール1箱 辺りの輸送単価がほぼ同じ水準となった。
 その後も国鉄は貨物輸送の合理化の一環として、昭和57年に貨物取扱駅の大幅な削減策を打ち出した。同社ビールを取り扱う駅数も、58年当時の206駅 から125駅へとほぼ半減される見通しとなった。
 このような中で、同社はしだいに鉄道からトラックへのシフトを強め、昭和56年に73%であったトラック利用率が、平成元年には100%近くになった。 かつてはビール工場に不可欠であった専用線も次々と廃止された。
 なお各工場における専用線廃止は以下のように進められた。
工 場名
専 用線廃止年月日
接 続駅
恵比寿工 場
北関東工場
札幌工場
静岡工場
大阪工場
九州工場
名古屋工場
川口工場
仙台工場
昭和57 年10月31日
昭和58年10月31日
昭和61年3月31日
昭和61年10月31日
昭和61年10月31日
昭和61年10月31日
昭和61年11月30日
昭和62年1月27日
平成元年8月31日
恵比寿
木崎(東武鉄道)
苗穂
焼津
茨木
門司
千種
川口
名取
※接続駅は筆者    


A麦芽輸送について  

 『サッポロビール120年史』サッポロビール(株)、1996年発行より


◆日本農産加工(株)

 埼玉県白岡町に日産60トン、年産1万5,600トンの能力を持つ製麦専用工場を建設することとした。同地は関東平野の中央に位置し、ビール大麦の生産 地にも近く、川口、目黒両工場への麦芽供給が容易、という利点があった。昭和38年6月から日産30トン、翌39年4月からは日産60トンのペースで操業 を開始した。

◆麦芽の輸入から工場までの輸送
 昭和42年、カナダ産麦芽については三井物産(株)と昭和海運(株)に、オーストラリア産麦芽については(株)東食と山下新日本汽船(株)に、それぞれ 麦芽専用コンテナの共同開発を提案し、開発を進めた。そして海運会社のフルコンテナ船が昭和43年10月カナダ航路に、翌44年10月にはオーストラリア 航路に就航し、麦芽のコンテナ輸入が始まった。昭和46年にはヨーロッパの航路にコンテナ船が就航し、麦芽輸入のコンテナ化はさらに進展することになっ た。

 コンテナには麦芽約15トンが収納でき、到着後はトレーラーでビール工場まで輸送し、ホッパーに落としてサイロに納めた。
 その一方で、昭和40年代の終わり頃から将来の大量輸送システムに備えて、年に1、2回麦芽輸送に穀物専用船を使用し、その施設と運用面のノウハウの取 得を図った。この場合、1万トン級の穀物専用船の1つの船倉に3,000〜4,000トンの麦芽をバラ積みし、他の穀物と一緒に運び、港湾のサイロに荷揚 げしたのち、ダンプ車で順次工場に搬入する、いわゆるバルク輸入の方法をとった。
 コンテナや穀物専用船による輸入が始まるとともに港湾に保税サイロが必要となり、横浜港に4本(計1,800トン)借り上げたほか、名古屋、神戸、九州 の各港においても収容できる保税サイロを整えた。

 陸上輸送の面では、これよりさきに昭和38年9月に麦芽の鉄道輸送専用の貨物車を開発した。日本農産加工白岡工場で製造した麦芽1万6,000トンを川 口(現、埼玉)、目黒(のち恵比寿)両工場、のちには仙台工場にも搬送するためであった。
 同社が発注した車両数は、昭和48年5月までに合計14両となった。白岡駅に6両、輸入麦芽用として山下埠頭に8両常備した。その後国鉄の合理化計画で 各工場の側線が次々と廃止され、工場間輸送が不可能となってきたので、昭和59年5月に国鉄から廃止補償を得て全両廃車とした。

       麦芽(山下埠頭→各工場)    麦芽(恵比寿・川口←白岡) 計画では名取にも発送
   ━━━━━━━ ━━━━┳━━━━━━━──────────
山下埠頭駅      恵比寿駅               白岡駅           名取駅
[麦芽陸揚港]   サッポロビール  川口駅      日本農産加工      サッポロビール
(ホキ8両常備)   恵比寿工場  サッポロビール  <麦芽工場>       仙台工場
            <麦酒工場>  川口工場    (ホキ6両常備)      <麦酒工場>
                      <麦酒工場>

◆専用線について
◇『昭和58年度版専用線一覧表』より(1983) 『トワイライトゾ〜ン・マニュアル6』
上記麦芽輸送に関連すると思われる専用線は以下の如し

駅名 備考
川口 サッポロビール(株)(川口工場)
白岡 サッポロ農産加工(株)
山下埠頭 横浜市、上組、東海運、鶴見倉庫、相仙冷凍、山九、横浜運輸倉庫、 日新運輸倉庫の共用の専用線の第三者利用者にサッポロビール(株)
名取 サッポロビール(株)


◆私有貨車について
◇『昭和54年度版私有貨車番号表』より(1979) 『トワイライトゾ〜ン・マニュアル10』
白岡 サッポロビール ホッパ車(麦芽専用) ホキ6600 14両

◇『私有貨車図鑑』より
ホキ6600 総両14両 S38.6-H1.10 サッポロビール私有であろう。
社史と廃車年月にギャップがあるが、しばらくは休車措置がとられていたのであろう。



C仙台工場  

ビール輸送をコンテナ化
 『鉄道ジャーナル3月号』第24巻第3号、通巻281号、1990年、109頁
 平成元年12月1日、名取駅に隣接するサッポロビール仙台工場にコンテナホームが新設され、製品輸送が車扱からコンテナに切り替えられた。ビール工場内 にコンテナホームが作られたのは初めてのことで、12月4日には同ホームで出発式が行われた。これは同工場が生産量を増やすのに伴い従来の専用線と車扱 ホームがバックスペースとして転用されることとなったためで、一時はトラック輸送への全面切り替えも検討されたが、効率的な敷地利用が可能なコンテナ化に より列車輸送が存続されることになったもの。JR貨物東北支社は平成2年3月改正以降、現行の1往復体制から2往復体制への増強を図る計画。


H静岡工場  

 静岡工場 は、サッポロビール(株)11番目の工場として、1980(昭55)年4月に建設された。総工費250億円、工場敷地60,000坪、工場緑地面積 15,000坪、貨車側線能力百数十両、設備の大型化、コン ピュータ導入、省エネルギー、省力化推進を目的として建設された最新鋭の工場であった。

 出荷エリアは静岡全県下、山梨、神奈川の一部を受け持っているが、需給の状況に応じて北海道から九州まで供給を行い、その輸送手段はトラック、貨車、海 上コンテナを利用していたが、国鉄の民営化、合理化等による貨物取扱駅の集約化、廃止により専用線も1986(昭61)年に撤去された。今は側線跡地に新 製品倉庫が建設され、建設当時の面影は全く無い。

 貨物取り扱いが廃止されるまで、静岡工場より貨車で出荷されていたビール(当時の工場出庫量の約20%)の大部分はトラック出荷に切り替わり、残りは5 トンコンテナ輸送に置き換わっている。その取扱数量は1987(昭62)年度で年間2,000個弱、年間出荷数量の約4.2%に過ぎず、残りは全てト ラック輸送となっている。

 トラックに比べてコンテナの利用が少ない理由は、
(1)コンテナの荷役作業はトラックに比べて作業性が悪い。
  (ビールのトラック積み込みは10〜15分程度に対して、5トンコンテナの場合は8パレット積みの場合、2パレット手積みとなり作業時間が40〜50 分かかり構内が輻輳する)
(2)必要な時に必要な輸送をすることができない(出荷波動の対応が不十分)。
(3)コンテナ輸送は日数がかかりすぎる
等の欠点があり、これらの欠点を解決することにより、5トンコンテナの利用はもっと増大していくのではないかと思われる。

(『Monthlyかもつ』1988年8月号、p23)



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