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(工業用、食品用、家庭用)
2020.3.4作成開始


▼塩 半分以上が海上輸送 鉄道は内陸の長距離 (1994年9月 26日付『運輸タイムズ』5面)


 日本の塩産業は専売制度の下にあり、年間124万トンを製造する国内塩工場、輸入塩精製工場は全て臨海工業地帯に立地している。このため海上輸送の比率 が高いが、内陸SP向けや定型出荷する顧客直送に貨車、コンテナで鉄道輸送も行っている。


 国内で流通している塩は需要の円滑化と価格安定を目的に、専売制度により日本たばこ産業(株)(JT塩専売事業本部)が管理している。塩は国内塩と輸入 塩に分けられ、1993(H5)年の生産量は国内塩76万トン、輸入塩48万トン、合計124万トン(JT扱い専売塩)。年間120万トン台の生産量は近 年変わっていない。

 国内塩は海水から塩結晶を取り出すイオン交換膜法により製造されている。福島、兵庫、香川、徳島、長崎の各県に1工場、岡山県に2工場の計7工場があ る。

 輸入塩(メキシコ、オーストラリアなど)は、日本食塩製造(株)(神奈川県)が天日塩(原塩)を精製している。このほか、JT倉庫またはJT指定の営業 倉庫で天日塩を粉砕加工して、袋詰めしている会社が10社ある。これらも国内塩同様、臨海工業地帯に立地している。

 需要はソーダ工業(苛性ソーダ、塩素、ソーダ灰)、一般工業(染料、顔料、皮革)、食品工業(味噌、醤油)、家庭用で、このうちソーダ工業の需要が全体 の8割程度を占め、一般工業1.9%、食品工業12%、家庭用4%、家畜ほか4%。

 輸送手段は船舶、トラック、鉄道(貨車、コンテナ)などで、シェアは船舶53%、トラック45%、鉄道2%となっている。船舶は国内塩製造工場が立地する臨海部から全国 の主要港への主力輸送手段で、瀬戸内地域から需要の中心地である関東(東京港)、関西(大阪港)へ大量輸送している。また福島県いわき市の工場は、小名浜 港から北海道(釧路港)へ船輸送している。トラックは中近距離を中心に全国各地で利用されている。

 鉄道は貨車とコンテナが利用され、1993年度の貨車輸送量は8,500 トン、コンテナは9,900トンの計1万 8,400トン(同年度の塩の全輸送量は120万5千トン)。かつて船舶に次ぐシェアをもっていたが、貨物駅集約などでトラック輸送に転換し激減した。因 みに1976(S51)年の鉄道輸送のシェアは42%と半分近くを占めていた。

 現在、コンテナ輸送しているのは川崎貨物駅から東北東青森秋田貨物盛岡(タ)駅など)と中部四日市駅ほか)、関西中国向け。東北、中部向けはJT倉庫(消費地SP)へ納入しており、川 崎工場からSPへは全量コンテナ輸送。関西、中国向けはロットがまとまる顧客への直送で、これも全てコンテナで送っている。

 貨車を利用しているのは天日塩を加工している日塩(株)(横 浜市)と国内塩の赤穂海水(株)(兵庫県赤穂市)の2社。日 塩は東高島駅から倉賀野駅南松本駅へ、赤穂海水は赤穂線の西浜信号場から金沢梅小路の両駅。受荷主はJTのSPと卸売業者(塩元売人)である。

 需要者へ安定供給できることが輸送手段選択の大きな要素だが、JTでは輸送手段の経済計算を基礎データに輸送距離、輸送力、出荷数量などの要素を加味し ており、内陸の長距離輸送の適合性と運賃メリットからコンテナを選んでいる。

 荷姿は紙袋、段ボール箱で貨車、コンテナとも一貫パレ輸送(1987年にT11型で実施)。一般工業塩の顧客直送は1トンフレキシブルコンテナ入りで、 これもパレット化している。パレットの管理はJTの出資会社、日本ソルトサービス(株)が行っている。

 トラックから鉄道への転換について、JTの塩専売事業本部では、「コスト面で荷主ニーズを満たすことが条件。同時にリードタイムの短縮、輸送ロット・輸 送時期に対する弾力性も必要」という。


▽出荷波動への対応力を 日本塩回送(株)東京支店川崎事業所
 日本食塩製造(株)が精製する輸入塩をJTのSP向け と顧客直送にコンテナ(1ケ月180〜200個)を利用 している。輸送力、納期、安全性に問題が無く、計画的な出荷が行える。接着剤で荷崩れ防止しているが、ほぼ完全である。 
 強いてJR貨物に望むことは、金沢駅向け輸送量が多い 時、輸送枠の関係で当日発送分が全て消化できないことがあるため、輸送力をつけてほしい。


▽出荷単位よい貨車輸送 日塩(株)
 東高島駅分岐工場専用線から輸入塩を貨車輸送しているが、1両15トン単位なので便利だ。また、発駅構内の一部を利用させてもらっていることも鉄道輸送の有効性を 高めている。過去にトラック輸送に切り替えたこともあり鉄道輸送は僅かだが、福島県へトラック輸送しているものを鉄道に移したい。


▽中継貨車制限の改善を 日本塩回送(株)赤穂支店
 赤穂海水(株)の国内塩を貨車で輸送している。梅小路駅向けは1ケ月10両だが、金沢駅へは多い月は40両以上にもなる。
 コンテナでパレット輸送すると、パレット1枚の荷重が1.5トンなので、3パレットで4.5トン。しかし貨車(ハワム)は10パレット積めるし、積卸しの作業性も良い
 荷主からは1ケ月前に出荷予定数量が示されるので、貨車操配や輸送力は問題ない。また発送の翌日到着するので、納期の面でも満足している。
 このため、今まで通り貨車輸送を続けたいと考えているが、姫路貨物駅中継となる金沢駅向けは、中継貨車数に制限がある。JR貨物はこれを改善してほし い。



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