《目次》 ■はじめに ■西武生駅の専用線 ■福井都市圏の鉄道によ る石油輸送 ▼専用線一覧 ▼石油輸送に関連する 年表 ■まとめ |
2019.3西武生駅 |
福井都市圏は、福井鉄道とえちぜん鉄道が放射状に広がり、JRに依存
しない民鉄による都市型輸送を構築している。JRは北陸本線や越美北線といった路線網を持つものの、普通列車の
本数は相対的に少なく、都市圏内の鉄道輸送の主力は福井鉄道とえちぜん鉄道が担っている感が強い。 そして興味深いのは、鉄道貨物輸送の特に石油輸送においても、福井鉄道と京福電鉄(現 えちぜん鉄道)が福井都市圏で大きな存在感を放っていたのだ。今回取り上げる西武生駅(福井鉄道)には大協石油(株)と共同石油(株)の2社、京福電鉄は 福井口駅にシェル石油(株)[一時は日本石油(株)]、西福井駅に丸善石油(株)、三国港駅に出光興産(株)といった石油元売各社の専用線が点在していた ほ か、福井鉄道・花堂駅には三菱石油(株)特約店の専用線もあった。福井周辺の油槽所は、当時の国鉄ではなく私鉄沿線に数多く立地していたのだ。このような 内 陸油槽所の私鉄沿線への立地は、東武鉄道や遠州鉄道などでも見られるが、福井都市圏は特に私鉄2社に集中しているのが特徴的である。 西武生駅の貨物取り扱いが廃止されて久しいが、奇跡的に今なお2カ所の内陸油槽所が残り、鉄道貨物輸送が現役だった頃の雰囲気が色濃く残っている。既に 石油元売会社所有の油槽所ではなく、タンク車輸送も行われていないものの、石油タン ク群が線路の両側に立ち並び、今なお往時のように石油タンクローリーが行き交っている。 臨海型共同油槽所へと集約が進む前の鉄道貨物輸送全盛期の石油輸送を彷彿とさせる西武生駅を中心に、福井都市圏の石油輸送の概観を、第18回「貨物取扱 駅と荷主」のテーマと したい。 |
下表は「専用線一覧表」から西武生駅における専用線の有無を纏めたも
ので、大協石油(株)と共同石油(株)では開設時期に、10年以上の開きがある。
『大協石油40年史』(1980年)によると、大協石油(株)武生油槽所は、1959(昭34)年3月に完成した。完成時の貯蔵能力は100klと小規 模である。当時は、四日市駅の大協石油(株)四日市製油所からタンク車で石油類が到着していたと思わ れる。閉鎖は1979(昭54)年11月である。 一方、同社が出資する東西オイルターミナル(株)福井油槽所が、 同年同月に開所しており内陸油槽所から臨海油槽所に転換されたと考えられる。尚、この福井油槽所は、1999(平11)年6月に閉鎖されており、2005 (平17)年4月に当時の新日本石油(株)から運営を受託された現在の同社福井油槽所とは別である。 尚、大協・武生油槽所は現在、藤井防災エネルギー(株)北府油槽所として現役であり、同社webサイトによると灯油 200kl、軽油100kl、A重油300klの地上タンクや倉庫を備えている。同社は、大協石油(株)武生油槽所の配送業務部門を1968(昭43)年 8月に分離独立して、(有)藤井オイルサービスを設立しており、大協石油の時代から運営に携わっていたようだ。 一方、『共同石油20年史』(1988年)には、共同石油(株)武生油槽所に関する記述が無く、開所や閉所時期は不明である。専用線が存在した時期は、 1970年代初頭から1980年代初頭前後までの10年程度と見られ、短命であった。前述の社史によると、1978(昭53)年12月に共同石油(株)福井油槽所(坂井郡三国町新保)が開所しており、大 協石油と同様に内陸油槽所から臨海油槽所へのシフトにより廃止されたと思われる。 武生油槽所へは、知多駅の東亜共石(株)からタンク車で石油類が到着していたと思われる。 現在の共石・武生油槽所は、福鉄商事(株)武生配送セン ターとして現役である。石油タンクには今なお、共石マーク≠ェうっすらと残っており現役ながらも貴重な遺構となっている。 |
2019.3西武生駅 |
2019.3西武生駅 |
2019.3西武生駅 |
2019.3西武生駅 |
2019.3西武生駅 今なお共石時代の看板が残存 |
2019.3西武生駅 共石マークが懐かしい! |
路
線 |
駅
名 |
専
用者 |
1953 |
1957 |
1961 |
1964 |
1967 |
1970 |
1975 |
1983 |
想定される 発駅
|
備
考 |
国
鉄・北
陸本線 |
森田 |
出光興産
(株) |
− |
− |
− |
− |
○ |
○ |
× |
× |
徳山 |
LPG充
填所 |
京福電鉄 |
三国港 |
出光興産
(株) |
− |
− |
○ |
○ |
○ |
× |
× |
× |
汐見町又
は 発送のみ |
室 新太
郎 専用線の第三者利用 臨海油槽所か? |
京福電鉄 |
福井口 |
シェル石
油(株) |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
× |
○ |
× |
塩浜 |
福井油槽
所 |
京福電鉄 |
福井口 |
エッ
ソ・ スタンダード石油(株) |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
× |
× |
× |
伏木又は 汐見町 |
福井油槽
所 |
京福電鉄 |
福井口 |
日本石油
(株) |
− |
− |
− |
− |
− |
○ |
× |
× |
汐見町 |
1970
年版だけ現れるのは不自然なため シェル石 油(株)の誤りか? |
福井鉄道 |
花堂 |
田中油商
店(株) →(株)田中油本店 が正 |
− |
− |
− |
○ |
○ |
○ |
× |
× |
汐見町 |
現、タナ
カエネルギー(株) 三菱石油(株)の福井県特約店 |
福井鉄道 |
江端 |
青山石油
(株) |
− |
− |
− |
○ |
○ |
○ |
× |
× |
不明 |
|
京福電鉄 |
西福井 |
福井鉱油
(株) |
− |
○ |
○ |
○ |
○ |
× |
× |
× |
不明 |
|
京福電鉄 |
西福井 |
丸善石油
(株) |
− |
− |
− |
− |
− |
○ |
× |
× |
下津及び 加茂郷 |
福井油槽
所 |
福井鉄道 |
西武生 |
大協石油
(株) |
− |
− |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
× |
四日市 |
武生油槽
所 |
福井鉄道 |
西武生 |
共同石油
(株) |
− |
− |
− |
− |
− |
− |
〇 |
× |
知多 |
武生油槽
所 |
国
鉄・北
陸本線 |
敦賀 |
共同石油
(株) |
− |
− |
− |
− |
○ |
○ |
○ |
× |
桜島及び 知多 |
旧
日本鉱業(株)敦賀油槽所 発駅は、桜島駅の日本鉱業(株)桜島油槽所から 知多駅の東亜共石(株)に変更となった可能性あり |
国
鉄・北
陸本線 |
敦賀 |
エッ
ソ・ スタンダード石油(株) |
− |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
× |
× |
伏木又
は 汐見町 |
東洋紡績
(株)専用線の第三者利用 |
年
月 |
内
容 |
1913(大
正03).01 |
鉄道院三
国線 三国港荷扱所が開設(翌年貨物駅に変更) |
1914(大
正03).02 |
京福電鉄
福井口駅が開業 |
1924(大
正13).02 |
福井鉄道
西武生駅が開業 |
1925(大
正14).07 |
福井鉄道
花堂駅、江端駅が開業 |
1928(昭
和03).12 |
京福電鉄
西福井駅が開業 |
1959(昭
和34).03 |
大協石油
(株)武生油槽所が開所 |
1962(昭
和37).11 |
エッソ・
スタンダード石油(株)三国油槽所が開所(福井油槽所を廃止) (『オーバルのもとに エッソ石油20年の歩み』1982年、p19) |
1971(昭
和46).03 |
京福電鉄 西福井駅の貨物取り扱い廃止(『北陸・山陰820駅』p172) |
1973(昭
和48).04 |
北陸本線
森田駅の貨物取り扱い廃止 |
1976(昭
和51).11 |
北陸自動
車道の福井IC〜武生ICが開通 |
1977(昭
和52).06 |
福井鉄道 花堂駅の貨物取り扱い廃止(『北陸・山陰820駅』p176) |
1977(昭
和52).12 |
北陸自動
車道の武生IC〜敦賀ICが開通 |
1978(昭
和53).07 |
福井港の
堀込港湾が供用開始 |
1978(昭
和53).11 |
福井港の
石油配分基地操業(オイルイン)開始 日本石油(株)福井油槽所が開設(『日本石油百年史』1988年、p804) |
1979(昭
和54).11 |
大協石油
(株)武生油槽所が閉鎖 東西オイルターミナル(株)福井油槽所(旧)が開所 福井鉄道 西武生駅の貨物取り扱い廃止(『北陸・山陰820駅』p176) |
1980(昭
和55).04 |
北陸自動
車道の敦賀IC〜米原Jctが開通 |
1980(昭 和55).08 | 京福電鉄 福井口駅の貨物取り扱い廃止(『北陸・山陰820駅』p168) |
1999(平
成11).06 |
東西オイ
ルターミナル(株)福井油槽所(旧)が閉鎖 |
2000(平
成12).04 |
福井港が
重要港湾の指定を解除され、地方港湾に格下げ |
2005(平
成17).04 |
新日本石
油(株)福井油槽所の運営を東西オイルターミナル(株)が受託し、 同社福井油槽所が開所 |
2017.10福井港 東西オイルターミナル(株)福井油槽所 |
2017.10福井港 ジャパンオイルネットワーク(株)福井油槽所 |
*
重油(2017年度)
|
*
石油製品(2017年度)
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