日本の鉄道貨物輸送と物流:表紙へ
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株式会社日本触媒
2016.10.30作成開始
<目次>
1.日本触媒の概要
2.日本触媒の沿革
3.日本触媒のトピックス
4.日本触媒の鉄道貨物輸送
 @川崎製造所 千鳥工場
 A川崎製造所 浮島工場
 B姫路製造所


@川崎製造所 千鳥工場
 (株)日本触媒は浮島町駅にあった専用線からタンク車によるエチレングリコール(EG)や液化酸化エチレン(EO)の輸送を行っていたのだが、千鳥町駅 の同 社専用線はその浮島町駅の専用線が定修などで使えない時に臨時に使うという位置付けのなのか普段は使われていないようであった。

 これまでの筆者の調査では、千鳥町駅の専用線からのタンク車輸送としては、EGを三島の東レ(株)や敦賀の東洋紡(株)に輸送していたようである。
 1997年1月に川崎製造所千鳥工場が千鳥町駅発、敦賀、南福井駅着 でタンク車輸送していた化学薬品を廃止し、海上輸送に転換した。理由は、東港駅経由に変わり輸送日数がかかり運賃が高くなったためである。新南陽駅向けの タンク車輸送は現在も続けているが、これも見直したいと考えている。従来は直送していたが、前回ダイヤ改正で東港駅経由となったことから、日数、運賃に問 題点が生じたためだ。
 また工場専用線を4社で管理していたが他社が廃止して同社だけになり、維持費が問題となっている。
(『運輸タイムズ』1997年4月21日付、3面)

 敦賀駅の東洋紡(株)の専用線は1998年3月に現地訪問した際は、ちょうど廃止されたばかりという雰囲気であったため、その頃までに千鳥町〜敦賀の EG輸 送は消滅したようだ。

 一方、三島駅の東レ(株)専用線向けのEG輸送は、「ここ数年浮島町駅からの発送されていましたが、2001年8月からは千鳥町駅からの発送が復活し」(梨 本 貴宏「私有貨車クラブ第107回」『レイル・マガジン』通巻222号、2002年、92頁)たという情報もあり、末期は三島向けの輸 送 が残っていたようだ。しかし、いつ頃この輸送が廃止になったかは不明である。三島駅でEGのタンク車を見かけなくなったのはいつ頃だったか…?

 さて、そんなEG輸送用の専用線だが2008年1月現在では残っており、まだ使えそうな雰囲気であったが、翌年の5月には撤去されて間もない状態 になっており、下記のEO輸送が本格化する中で、EG輸送復活の可能性は潰えたように思われた。ただもしかしたら、EO輸送の荷役線でEGの積込みもでき るのであろうか?それならば撤去されても何ら問題は無いのだが…。


『JR貨 物ニュース』2004年4月1日号、2面
2種規定に該当した日触物流(株) ISOタンクに転換 大量に鉄道シ フト

 日触物流は、化成品製造企業、日本触媒の連結物流子会社である。
 化成品輸送を担う同社では87年より、タンクローリーから私有10トンタンクコンテナでの鉄道利用に輸送切り替えを実践してきた。年間数百トン単位の モーダルシフトだったが、姫路貨物駅での24トン級トップリフター導入を機に、総重量24トンISOタンクコンテナ・大型私有コンテナへの切替を行った。 01〜02年にかけて姫路貨物駅− 東京(タ)間を中心に、月間3千トンをモーダルシフト し、輸送コストダウンと環境負荷低減の効果を上げた。

 全社を挙げてモーダルシフトに取り組んだ結果が、物流連を通して公表されたことに、同社牧井社長を始め社内では、「長年取り組んできたことが社会的に評 価され喜んでいます」とのこと。公表後は社外から問い合わせも寄せられている。

 牧井社長は「一般貨物等、多品種の貨物が錯綜する東京(タ)での危険品用コンテナ荷役には神経を使います。そこで川崎貨物駅の使用を考えていま す。ダイヤの関係もあるでしょうが、きめ細かい対応を希望しています」と話した。
 さて、このように当初、日本触媒は東京(タ)を活用していたのだが、記事中にあるように川崎貨物駅の使用に変更し、やがて千鳥町駅にコンテナ用の新荷役線を建設するま でになる。まさに段階的かつ着実にモーダルシフトを進めてきたこ とが窺える。

 そのモーダルシフトを進める大きな理由の1つに下記の酸化エチレン製造能力増強が 挙げられる。この点が重要だろう。いくらモーダルシフトが進んでも、物流需要を産み出す製造拠点が無くなってしまっては意味がない。上記で記した旭化成や 昭和電工が行っていた日本曹達の青化ソーダの輸送がまさにそうだ。特に旭化成は同輸送をISOタンクコンテナ化するなど輸送の効率化・近代化を行い、 鉄道貨物輸送を維持していこうという姿勢が感じられた中での需要側の生産停止・輸送終了・専用線廃止という流れだっただけに、この日本触媒が行っている モーダルシフトの場合は川崎の工場の増強という裏付けが あるだけに非常に心強い。

 千鳥町駅は近年の鉄道貨物輸送の明暗をはっきりと感じさせる荷主が揃っているのが興味深いところだ。

『日経産業新聞』2007年6月25日付、18面
日本触媒 川崎臨海部に新工場 化学品 年産能力3万5,000トン

 【川崎】日本触媒は川崎市の臨海部に機能性化学品などを生産する新工場を建設する。エクソンモービルグループの東燃化学(東京・港)から、川崎区千鳥町 の土地約1万5千平方メートルを購入、近くにある自社工場とパイプラインで結び、コンクリート混和剤の原料や高級アルコールなどを生産する。生産能力は年 間3万5千トン。2008年10月の完成を目指す。

 日本触媒は川崎製造所として、川崎区に浮島工場(浮島町)と千鳥工場(千鳥町)を置き、国内最大級の酸化エチレン製造設備を備える。酸化エチレンを原料 とする機能性化学品は少量多品種生産のため、これまで既存設備の増改造で新規製品に対応してきたが、敷地が手狭となり、新工場建設を決めた。

 新工場は敷地面積1万5,390平方メートル。反応器や蒸留釜、処理槽を備えたプラントを建設、10基のタンクからなる貯蔵設備を配置する。事務所は既 存の4階建て建物を改修して利用する。既存の千鳥工場との間に全長約600メートルのパイプラインを敷設して、原料となる酸化エチレンの供給を受けること で、効率化や環境配慮を図る。

『化学工 業日報』2008年3月18日付、2面
日本触媒 EOコンテナ輸送開始 川崎製造所に体制整備

 日本触媒は、川崎製造所(川崎市川崎区)に酸化エチレン(EO)のコンテナ輸送体制を整備した。同製造所・千鳥工場に鉄道貨物輸送施設を整え、コンテナ 荷役新充填設備を活用したEOの輸送を開始した。17日午前10時から現地で、神奈川臨海鉄道との共催によりEOのコンテナ輸送開始出発式を行った。

 同社は川崎地区でEO誘導品を拡充させるEOセンター化構想≠掲げ、事業全体の高付加価値による高収益化と収益安定化を推進。09年をめどに同製造 所・浮島工場で年産7万トンの能力増強を実施 するほか、さらなる誘導品展開のための拡張用地も確保している。並行して物流面の整備も推進してきた。

 環境対応面などからニーズが高まっているコンテナ輸送については、浮島で以前行っていたことがあるが、 現在は実施していない。今回、千鳥工場に接する貨物用地の一部を譲り受け、コンテナ輸送体制を整えた。

 出発式であいさつした中嶋常幸代表取締役専務は「川崎製造所では主力製品の生産見直しを進めている。並行して千鳥工場からのコンテナ輸送が喫緊の課題と なっていた。今後はグループの日触物流や輸送会社などと協力し、安全を第一に取り組んでいきたい」と語った。

上記輸送は下記の千鳥町駅からの輸送が開始されるまでの暫定的に行われていたものと思われる。記事中の「浮島で以前行っていたことがある」というのはこの ことか?
『JR貨 物ニュース』2008年4月1日号、1面
酸化エチレンの車扱輸送をコンテナ化 (株)日本触媒

 3月17日、神奈川臨海鉄道(株)千鳥町駅西群線において「コンテナ荷役新充填設備による酸化エチレン輸送開始出発式」が行われた。今春のダイヤ改正に 伴 い、(株)日本触媒千鳥工場から出荷される酸化エチレンのコンテナ輸送が始まった。

神奈川臨海鉄道(株)千鳥町駅から名古屋臨海鉄道(株)東港駅へ

 (株)日本触媒(本社・大阪、近藤忠夫社長)の川崎製造所は、国内最大級の酸化エチレン製造装置を有し、浮島・千鳥の2工場がある。製品は両工場で製造 され ているが、浮島工場から名古屋臨海鉄道の東港駅へ輸送していたタンク車輸送分を、今回コンテナに転換した。
 日本触媒の中嶋常幸専務取締役は「酸化エチレンの生産体制を見直し、千鳥地区からコンテナ輸送できる体制を整えることが当社の喫緊の課題でした。工場に 隣接する千鳥町駅の用地を川崎市より譲り受け、設備を整えました。今後は当社・日触物流・神奈川臨海鉄道・JR貨物とともに、サプライチェーンをより強固 なものとして、安全第一を徹底してお客様に製品をお届けしたい」と挨拶した。
 川崎市港湾局の梅田裕史局長は「今回のコンテナ輸送は、川崎市臨海部におけるモーダルシフトの貴重な実例として全国に誇れる取組み。持続可能な社会の実 現は、このような地道な取組みの積み重ねによってなされるもの」と評価する祝辞を述べた。

 日本触媒の川崎製造所・浮島工場は酸化エチレンの増産体制を整えている最中で、来年秋には設備が完成する予定だ。一方、JR貨物が進めている化成品タン ク車輸送のコンテナ化に応えることと、酸化エチレンの安全輸送及びCO2削減・道路混雑緩和など環境保全を推進する観点から、コンテナへと転換することに なった。
 コンテナ化にあたり同社では、まず千鳥工場に隣接する神奈川臨海鉄道千鳥町駅西 群線の5番線(筆者註、元は神奈川臨海鉄道鰍フ専 用線!)を川崎市より取得。また、線路部の改造としては、酸化エチレンを充填したコンテナを5番線から4番線へ移動するために、ポイントの 付け替えを行った。
 工場内には、酸化エチレンの製品タンクから約200mの配管を引き、線路上のコンテナに直接充填できる設備を整えた。

 一方、東港駅から専用線で繋がる受け入れ先ユーザー〔筆者註、三洋化成工 業(株)〕とも折衝を重ね、事前にコンテナを持ち込んで荷役等支障がないことを確認している。ユーザーサイドの取り下ろしも専用線で車上荷 役さ れるため、トラックドレージがない。コンテナを用いながらも貨車輸送さ ながらの輸送形態となっている。
 これを機に、日本触媒の鉄道による酸化エチレンの出荷は千鳥町駅発に一方化された。トラックで川崎貨物駅に持ち込み、姫路貨物駅へ出荷していた製品についても同じく千鳥町駅から出荷する運びとなり、1日計6個の20ft級タンクコンテナが出発する。
 輸送には、総重量24トンのタンクコンテナが2個積載可能な200形式コンテナ車が運用されるため、出荷は2個単位。106形式より短い40ftの 200形式は、充填設備にも合う。
 酸化エチレンは、高圧ガスで毒性物質に指定されており、非常に燃焼しやすい物質である。日本触媒では「燃焼性の非常に強い製品の輸送ですから安全に万全 を期し、ユーザーへのスムーズな製品提供に努めています。今後、酸化エチレンの設備増強が完成すれば、より一層の安全輸送体制が求められます。そのために も今回の設備対応には意義があります」と話した。

『MONTHLY かもつ』2008年5月号、16〜18頁
SPOT LIGHT 株式会社日本触媒 川崎製造所

酸化エチレンをコンテナ車上で充填して安全輸送

 日本触媒・川崎製造所では酸化エチレン及びその誘導品を製造しています。コンクリート混和剤、合成洗剤原料、ポリエステル繊維原料、印刷インキ原料な ど様々な用途がある酸化エチレンは、基本的に輸入等が出来ないため、国内消費分は国内で生産されています。「日本触媒川崎製造所は増産体制を整えている最 中で、来年秋には国内で生産量について最大規模になる見込みです」と生産管理センターの小島保郎センター長は説明しました。
 酸化エチレンはマイナス15度前後の液化した状態で輸送します。「高圧ガスで毒性物質に指定されており、非常に燃焼しやすい物質で安全には特に留意して います。輸送途上事故の軽減及び輸送の効率化のために、2002年に姫路向け輸送をローリーから鉄道タンクコンテナにシフトしました」と生産管理センター の柿本行彦主席は話しました。

 また名古屋臨海鉄道東港駅向けの車扱輸送も、今年3月からタンクコンテナ輸送に転換しました。同社は「鉄道コンテナは時間が読めるし、コンテナ車上で 充填できるので作業効率が向上した」と評価しています。
 日本触媒は、今回の千鳥町駅からのタンクコンテナ出荷計画について、1年あまりの期間をかけて、環境を整えました。「川崎市が所有している線路を充填設 備として使えるのか、線路上に充填設備を設置することが可能なのか、など課題は山積していました。市との交渉に1年以上かかりましたが、環境問題や港湾事 業の活性化など、ご理解をいただいて対応を取ることが出来ました」と小島センター長は経緯を振り返りました。

 日本触媒ではコンテナ化にあたり、工場内の製品タンクから直接製品を充填できる架台を設け、当該タンクから架台まで配管を敷設しました。また線路側で は、架台の設計等初めての経験も多く、苦労がありました。小島センター長は「神奈川臨海鉄道、名古屋臨海鉄道、JR貨物、川崎市をはじめ、物流の実務を担 当する日触物流の各社の御支援があって初めてできました」と話しました。

○専用線を生かしたコンテナ輸送を
神奈川臨海鉄道株式会社

 神奈川臨海鉄道は、横浜地区では輸出入貨物を含むコンテナ輸送が主なものですが、川崎地区では輸送量の9割が車扱輸送です。とはいえ川崎地区でも日本 触媒さんのコンテナ化で化成品の車扱輸送はゼロになり、残るは殆ど石油輸送です。

 営業部の井口部長は「お客様と弊社の要望が3月のダイヤ改正で実現し、姫路貨物駅からの5064列車が川崎貨物駅に停車することになり、台車を開放して そのまま千鳥町駅に輸送することが可能になりました。また新たに東港行きルートとなる川崎貨物駅発名古屋(タ)行きの列車ができました。専用線を生かした コンテナ化は安全性が高く、集配の手間も要りません。そこで専用線を維持しているお客様にタンクローリーで輸送している貨物をターゲットとして専用線発の コンテナ輸送を働きかけていきたいと考えています」と話していました。

『日刊工 業新聞』2010年02月18日付
日本触媒、川崎で酸化エチ レン輸送貨車設備を増設−能力2倍

 日本触媒は川崎製造所千鳥工場(川崎市川崎区)内に、酸化エチレン(EO)を輸送するための貨車充填設備を2010年末までに増設する。 数億円を投じて、貨車充填に必要な設備を建設。増設後の輸送能力は、現在の1回当たり56トン(2車両分)から2倍の同最大112トン(4車両分)に拡大する。家庭・工業用洗剤や自動車塗料 などの原料に使われるEO事業の競争力強化の一環。輸送コストの削減とともに、EOの拡販につなげる。

 日本触媒の千鳥工場は、川崎市の川崎コンビナートを縦断する神奈川臨海鉄道千鳥線に隣接。2008年3月から千鳥線沿いに設けた輸送用設備でEOの出荷 を始めた。この既設設備にEOの冷凍装置やプラットホームを増設して対応する。輸送のモーダルシフトを進めることで、コスト削減や環境面での対応を加速す る。



B姫路製造所

■化学工業品を鉄道で 姫路〜横浜で新規に (『運輸タイムズ』 1997年4月7日付、3面)

 日本触媒姫路製造所が新たに鉄道輸送を始める化学工業品は高吸水性の合成樹脂で非危険品。素材原料である合成樹脂を受け入れるユーザーは、関東地区にあ り受け入れた樹脂を中間原料に作り変えて最終製品を製造するメーカーへ供給する。

 今回の鉄道輸送は新規需要の発生に伴うもので、ユーザーの所在地である関東地区へはタンクコンテナで供給する。このため同社は12ft専用タンクコンテ ナUT5E形式6個常備した。コンテナは姫路貨物駅〜横浜羽沢駅間の区間限定運用となる。

 今回の新規ユーザーへの供給量は約50トン/月のためローリー車を動員する輸送水準を大きく下回る。鉄道輸送はコンテナ固定費(リース料)は必要だが、 輸送量が100トン/月以下でも運賃メリットを生かすことができる。

姫路貨物駅開業後 コンテナ化が進む
 同社姫路製造所は1994年3月に姫路貨物駅が新しく稼働して以降、ローリー車で輸送していた化学工業品を鉄道輸送に切り替えた。現在、関東(東京、川 崎)、東北(青森)、九州(八代)にタンクコンテナ輸送を行っている。

 東京へは10トンタンクコンテナで輸送している。新駅開業前から計画していたが、旧駅は10トンコンテナの取り扱いができないため見送りとなっていた。 神戸からの輸送を検討したが集荷距離が問題となり実現しなかった。現在の東京向け個数は15〜20個/月である。

 川崎、八代向けも新駅開業後、ローリー輸送を10トンタンクに切り替えた。青森向けは新駅開業前に5トンタンクに切り替えたが開業後は10トンの輸送も 始め、現在は5トン、10トンの両方で輸送している。

 また旧姫路貨物駅には姫路製造所に工場専用線がありタンク車輸送を 行っていた。新駅は専用線が無く、貨車輸送の一部は海上輸送に移行した。コンテナ輸送に切り替えたものもある。富山地区向けは海上輸送、コンテナ輸送に切 り替える一方、この時、川崎製造所から富山地区へタンクコンテナ輸送を新たに始めた。川崎製造所は姫路製造所へも現在はコンテナ輸送を行っている。


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