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日本パーオキサイド株式会社
2012.11.23作成 2012.12.16訂補  2013.1.8訂補
<目次>
日本パーオキサイド(株)の会社概要
ストックポイント一覧
鉄道貨物輸送について
 車扱輸送
 コンテナ輸送


■日本パーオキサイド(株)の会社概要
 日本パーオキサイド(株)は、1963(昭38)年7月、過酸化水素の製造・販売会社として保土谷化学工業(株)、日本化薬(株)、三徳化学工業(株) および英国ラ ポート社の4社の合弁によって設立された。
 1973(昭48)年10月ベルギー ソルベー社があらたに資本参加した。福島県郡山市にあるその製造プラントは世界17カ国に生産網をもち、世界最 大規模で、かつ最も近代的な製造技術を誇るラポート社が開発した自動酸化法を導入したものである。

 2000(平12)年3月に日本パーオキサイドは三菱瓦斯化学(株)と生産で提携し、共同過酸化水素(株)(三菱瓦斯化学75%出資、日本パーオキサイ ド 25%出資)を設立した。三菱瓦斯化学が鹿島工場に建設し、7月に稼動する新プラントを共同過酸化水素社に譲渡する。年産能力は、国内最大の5万トン。製 造コストは従来設備に比べ3割程度抑制できる。『日本 経済新聞』2000年3月30日付
 2001(平13)年保土谷化学工業(株)は、日本化薬(株)及びソルベー社の持株を総て追加取得し、現在に至っている。

本 社所在地
東京都中 央区八重洲二丁目4番1号(常和八重洲ビル9階)
設 立年月日
1963 年7月10日
資 本金
8億円
株 主
保土谷化 学工業(株)(株主比率:97%)
三徳化学工業(株)(株主比率:3%)
事 業所
大阪支店  大阪府大阪市中央区高麗橋4-1-1 大阪興銀ビル
郡山工場 福島県郡山市谷島町2-54



■ストックポイント一覧  
SP 名
所 在地
備   考
北 海道SP
北海道苫 小牧市字沼ノ端134-450(地図
岩倉化学工業(株) 同社は化成品工場で過酸化水素水の製造を行ってい る同 社webサイトよ り)
化成品工場
小 名浜SP
福島県い わき市小名浜字高山312(地図
小名浜石油埠頭(株)本社
同社は1984年3月、日本パーオキサイドの過酸化水素の船積みを 4号埠頭で開始(同社『会社概要』p2、発行年不詳より)
2003.10小名浜石油埠頭(株)
東 京SP
埼玉県さ いたま市北区大成町4-884(地図
三和倉庫(株)大宮事業所
日本パーオキサイドから受託した過酸化水素保管用貯蔵タンク (50t)が建設された。過酸化水素の希釈作業は
60%の過酸化水素を30%に希釈して小詰めをするものである(『三和倉庫50年史』2000年、p39より)

名 古屋SP
愛知県名 古屋市港区正徳町1-70(地図
森洋運輸(株)
高 岡SP
富山県高 岡市伏木湊町5-1(地図
伏木海陸運送(株) 過酸化水素のSPはこ こ
日本海側唯 一の過酸化水素SPであり、専用船で海上輸送し伏木港に到着した専用船から揚荷され、
塩素に代わって環境にやさしく、漂白や洗浄の用途に使用されている。
伏木海陸運送(株)
大 阪SP
大阪府大 阪市此花区北港2-1-67(地図
(株)辰巳商会 北港ケミカル・ターミナル
川 之江SP
愛媛県四 国中央市川之江町717(地図
村上産業(株)川之江支店
同社は1957年3月、三徳化学工業(株)(現 日本パーオキサイド)の過酸化水素の販売開始同社webサイトよ り)
川 之江三豊SP
愛媛県四 国中央市川之江町487-1(地図
三豊運送(株)川之江営業所
今 治SP
愛媛県今 治市恵比須町1-3-2(地図
(株)藤本商店
彦 島SP
山口県下 関市彦島西山町1-1-1(地図
彦島製錬(株)
九 州SP
福岡県福 岡市東区東浜1-9-4(地図
タイキ薬品工業(株)本社・福岡工場
同社は1972年7月、過酸化水素ストックポイントとして九州一円に出荷開始同社webサイトより)
本社・福岡工場
(『日本 パーオキサイド株式会社 会社案内』2012年4月、p7より作成)



■鉄道貨物輸送について   
 日本パーオキサイドは郡山駅に接続する専用線を介してタンク車による過酸化水素の輸送やハワム車による過炭酸ソーダの輸送を長年に亘り行ってきた。専用 線廃止後は、ISOタンクコンテナやJRコンテナに移行して、現在も鉄道貨物輸送を積極的に利用している。

▼車扱輸送  
 日本パーオキサイドの所有していた過酸化水素専用のタンク車は、1985(昭60)年9月30日現在で、タム8000形2両、タサ5600形7両、タ キ1150形4両、タキ22800形9両の計22両で、常備駅はいずれも郡山駅であった。これらのタンク車は北海道、関西、四国、九州などの遠隔地を中心 に運用されていたようだ。郡山駅からの輸送先を下記の通り纏めた。
 同社所有のタンク車は、1996(平8)年3月に全廃となっているため、専用線も同時に廃止されたものと思われる。

▽タンク車による過酸化水素輸送
着  駅
専用線(1983年現在)
備   考
港 北
岩 倉化学工業(株)
◆タキ22808が運用。青函トンネル開通後は運用廃止吉岡心 平氏のwebサイトの「タ キ22800形22808」より)
◆現在もストックポイントとして活用されている。
日 進
三 和倉庫(株)
2006.6三和倉庫(株)大宮事業所
◆三和倉庫(株)は1967年4月に大宮事業所を開設。同社webサイトより)
◆日本ゼオン(株)の塩化ビニルパウダー専用のタキ6550形が能町(後に東水島)〜日進間で運用されていた。
◆日進駅の貨物取扱いは1984年2月に廃止されたものと思われる。
◆現在もストックポイントとして活用されている。
西 名古屋港
森 洋運輸(株)
◆現在もストックポイントとして活用されている。
伏 木
伏 木海陸運送(株)
タンク車による輸送は筆者予想
2011.10伏木海陸運送(株)
タンクが新しそうであるし、専用線側 には荷扱設備が見当たらないので、タンク車輸送とは関係無さそうか…。当初から内航海運による輸送なのかもしれない。
更に下記の記事中に日本パーオキサイドが私有タンク車で過酸化水素を出荷していた先が羅列されているが、伏木は入っていない点も考慮する必要あり。
浪 速
(株) 辰巳商会
◆福崎ケミカル・ターミナルを利用していた。
1995.3 浪速駅・(株)辰巳商会 福崎ケミカル・ターミナル
◆辰巳商会は1957年6月に大阪市港区福崎に専用側線を建設し、通運事業開始。同社webサイトより)
◆日本パーオキサイドは関西方面への販路拡張のため、大阪に出荷センターを作る計画を立て、三井物産(株)大阪支店の斡旋で辰巳商会が中継輸送業務
を引き受けた。1966年7月に福崎作業所内に中継タンク2基を 建 設し、郡山から国鉄貨車で到着した過酸化水素をいったん希釈した後、容器詰めの分は雑貨
車で、ばら輸送の分はタンクローリーで、京阪神各地や岡山方面の需要家に配達を始めた。1968年8月にタンク1基を増設し、月間400トンを扱っている。
(『創業五十年史』株式会社辰巳商会、1970年、p197-198)
◆1982年11月現在で、浪速駅にタサ5608が運用。福田孝行氏のwebサイトの「タサ5600形」 より)
◆1994年9月現在で、浪速駅にタキ22807が運用。福田孝行氏のwebサイトの「タキ22800形」 より)
◆タンク車輸送廃止後に北港ケミカル・ターミナルに拠点を移した模 様。
川 之江

◆1976年1月現在で、川之江駅にタキ22802が運用。福田孝行氏のwebサイトの「タキ22800形」 より)
◆専用線が無かったため、駅頭でローリー荷役され ていたものと思われる。
◆1984年2月に川之江駅の貨物取扱いが廃止された。
◆郡山(タ)〜東水島で過酸化水素のISOタンクコンテナ輸送が行われているが、これは四国向けの輸送かもしれない
宇 部港
宇 部興産(株)
◆1977年3月現在で、宇部港駅にタキ1158が運用。福田孝行氏のwebサイトの「タキ1150形」 より)
博 多港
タ イキ薬品工業(株)
◆タイキ薬品工業(株)は1972年7月、過酸化水素ストックポイント とし て九州一円に出荷開始。(同社webサ イトより)
◆1993年頃の同社専用線は月1回程度タキ 1150形が入線する。(田中 大介「博多港駅・福岡港駅探訪日記」『トワライトゾ〜ンマニュアルV』1994年、p78)
◆現在もストックポイントとして活用されている。
◆郡山(タ)〜福岡(タ)で過酸化水素のISOタンクコンテナ輸送が行われているため、鉄道輸送を継続しているものと思われる。



▼コンテナ輸送  
▼モーダルシフト 日本パーオキサイド株式会社 (『Monthlyかもつ』 2010年3月号、p7-10)

 日本パーオキサイド(株)郡山工場は、工業用・医薬品用・家庭用の漂白剤や洗剤、除菌剤の原料となる過酸化水素、過炭酸ソーダ、オキシペール、過酸化カ ルシ ウムなどを生産している。物流購買部の伊藤部長は「過酸化水素も過炭酸ソーダも、分解したら酸素と水等になる製品。当社は化学と環境の調和を目指し、環境 に優しい製品作りを目標に掲げると同時に、製品物流や原料調達においても鉄道利用拡大を図っている」と会社の方針を説明した。
 このような方針のもと製品輸送における鉄道利用率(トンキロ)は約20%に上り、さらに 2009年10月には、仕入先と協議して調達している原料輸送の一部を、船とトラックから鉄道コンテナへとモーダルシフトした。

▽鉄道利用は1966年から

 日本パーオキサイドは1966年に福島県郡山市に工場と出荷センターを完成させて生産を開始した。出荷センターには専用線が設置され苫小牧大宮名古屋大阪四国福岡の出荷基地へ私有タンク車で製品を輸送していたが、1983年に国 鉄の合理化が始まると、北海道向けや四国向けを船 輸送に切り替えざるを得なくなり、鉄道の利用率は一時低下した。
 利用率が再び上向いたのは、JR貨物からISO規格タンクコンテナによる鉄道輸送の 提案を受けた2000年以降である。当時、郡山貨物ターミナル駅には20t対応のトップリフターしかなかったため、宇都宮貨物ターミナル駅から長距離集荷 して鉄道を利用する提案を行ったところ、船輸送の見直しを考えていた日本パーオキサイドは、コストダウンが可能で環境にも配慮できる点を評価してこれを採 用。2003年6月に郡山(タ)駅に24t対応トップリフターが配置されると、その他ルートについてもISOタンクコンテナによる鉄道輸送への切り替えを 進めた。

積込作業

卸し作業
※JR貨物関東支社webサイトより(現在閉鎖)
 また紙袋やフレコン等で出荷する製品についても、ハワム車で輸送していた 洗剤メーカー向け過炭酸ソーダ(酸素系漂白剤)コンテナ化を 手始めに、年々鉄道利用を拡大した。伊藤部長は「日本パーオキサイドは今後も総合物流会社の保土谷ロジスティックス(株)や運送事業者と、さらなる環境に 配慮 した輸送を構築して行きたいと考えている」と話した。

▽IBCs入りオキシペール輸送 空容器も鉄道で返送
 IBCsで出荷している「オキシペール」(飲料容器や装置の除菌に使う薬剤)は、JRコンテナに4基を積んで発送し、納入後、ユーザーがそのコンテナに 空のIBCsを積んで戻す往復輸送をしている。
 物流購買部の国分課長は「オキシペールを安全確実に輸送するためには、発側の利用運送事業者はもちろん、着側の利用運送事業者の乗務員にも製品の特性を 理解してもらう必要がった。そこで社内チームを設けて取扱要領を収録したCDを作成し、それを携えて日本フレートライナーと一緒に全国約20カ所に及ぶ事 業者を訪問し安全教育を要請するとともに、万日の事故に備えるべき七つ道具のヘルメット・ゴーグル・防護マスク・ゴム手袋・長靴・カッパ・リトマス紙を配 布した。大変だったが、その成果は十分現れている」とオキシペールをモーダルシフトした時を振り返った。
 物流購買部の渡辺さんと佐藤さんは「12ftコンテナは工場から客先まで荷物の積み替えがないので荷崩れ・荷傷みが起きない。そこを一番評価している」 「お客様が希望する納期に合わせて届けることが大切なため、確実に届けられるコンテナは重宝している」「関西以西向けならば5tに満たなくても路線便よりもコストメリットがあ る」「異常時も素早く代行輸送してもらえるので助かっている」とそれぞれコンテナ輸送の利点を挙げた。
 また渡辺さんは「青函トンネルを通れないので、船で輸送している危険品が あるが、こうした製品も鉄道で輸送できるとよいのだが」と付け加えた。

▽郡山貨物ターミナル駅
 日本パーオキサイドのコンテナは全 国約40カ所に輸送されている。中でも大阪(タ)行 きの4086列車を最も多く利用している。ISOタンクコンテナは東水島大竹福岡(タ)各駅へ月間約20個発送している。


2003.8横浜本牧駅 NRSU174101_0 過酸化水素水
 返回送:大竹(三井化学)〜郡山(タ)(日本パーオキ)という運用で あった。

 日本パーオキサイドのタンク車による過酸化水素の輸送で、郡山〜大竹という目撃情報はネット上を探した限り見当たらない。そのためISOタンクコンテナ 導入後に鉄道貨物輸送を利用し始めたのかもしれない。

 一方、2000年3月の日本パーオキサイドと三菱瓦斯化学の生産提携によると、「日本パーオキサイドの関西の顧客には三菱瓦斯化学の四日市工場から出荷 するなど地域ごとに調整し、物流費を削減する」とあり『日本 経済新聞』2000年3月30日付、郡山から岩国の出荷が残っているのは矛盾するようにも思われる。段階的に切り替えるため、 2003年8月時点ではまだ残っていたということも考えられるが…。

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