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三菱鉱業セメント株式会社
2020.4.25作成開始

《目次》
■1.三菱鉱業セメント(株)の鉄 道貨物輸送
■2.各生産拠点の鉄道貨物輸送
 ▼2.1苅田工 場
 ▼2.2黒崎工 場
 ▼2.3東谷鉱 山及び東谷工場
 ▼2.4田野浦 工場
 ▼2.5横瀬工 場
■3.SS配置と鉄道貨物輸送
 ▼3.1東北地 方
  塩釜SS
 ▼3.2関東甲 信地方
  隅田川SS 鶴見SS 相模原SS 高麗SS 甲 府SS 松本SS
 ▼3.3近畿地 方
  大阪SS

黒崎工場([1] p85)


■1.三菱鉱業セメント(株)の鉄道貨物輸送  

 三菱鉱業(株)は、1950年代に入るとエネルギー転換による石炭産業の斜陽化を見据えて多角化を進め、その一環としてセメント産業に進出することにな り1954(昭29)年2月に三菱セメント(株)が設立された。同じく石炭業界の名門・三井鉱山(株)が、セメント 産業に進出したのも同じ背景であるが、参入した時期は三菱セメントの方が約10年程度早いのは注目すべき点だ。

 三菱セメントは、生産拠点を北九州地区に次々と展開していき、石炭事業に代わる会社の主力事業として育て上げていった。鉄道貨物輸送の面では、既に磐城 セメント(株)〔後の住友セメント(株)〕小倉工場の専用線のあった石原町駅に鉱山までの専用線を敷設し、工場のある黒崎駅や外浜駅に向けて原料の石灰石 やクリンカがホッパ貨車 で大量輸送された。石原町駅の貨物取扱量は、国内有数の規模となり、宇部興産(株)の原料輸送で隆盛を極めた美祢駅と共に我が国を代表する石灰石・クリン カ積み出し駅となった。

 昭和40年代に入ると、三菱セメントは関東地方の生産拠点として秩父地方に横瀬工場を設置し、西武鉄道を介して製品のセメント輸送がタンク車や有蓋車を 用 いて行われた。北九州地区では原料を中心に鉄道輸送されたのに対し、関東では原料ではなくセメントを中心に鉄道輸送されたという点で対照的であった。また 西 武鉄道・秩父線が、このセメント輸送を主な目的の1つとして建設されたことは、今日ではすっかり忘れられてしまった感がある。

 この北九州地区と関東地方の車扱輸送は、三菱金属(株)と合併し三菱マテリアル(株)となった1990(平2)年以降も続いたが、バブル経済崩壊に伴う セメント需要の減少が顕在化すると一早く合理化の対象となり、1996(平8)年3月ダイヤ改正をもって共に廃止となった。同 時期に旧東北開発(株)の三菱マテ リアル(株)岩手工場からの車扱輸送も全廃となり、三菱マテリアル(株)は一斉に貨車輸送から手を引いた形となり、個人的に強い衝撃を受けた。

 尚、この時点では三井鉱山は北九州地区におけるセメントの鉄道輸送を継続していたが、遅れること8年後の2004年3月にセメント事業撤退に伴い鉄道輸 送も全廃となった。三菱マテリアルは、その頃には東谷工場におけるセメント生産を中止する一方、苅田港に立地する九州工場は年産700〜800万トンを誇 る国内最大級のセメント工場として盛業中である。三井鉱山は、三菱鉱業よりもセメント事業への進出が遅れたことにより企業の成長力に差が生じ、最後まで出 荷を鉄道輸送に依存する内陸工場から脱却ができなかった点で、命運が尽きたと言えよう。

 三菱鉱業セメント(株)の頃から貨車輸送に依存する内陸SSよりも、船舶輸送を前提とした臨海SSの設置に積極的であり、その点は宇部興産(株)とよく 似ている。そのため各SSへの貨車輸送の輸送体系は全体的にシンプルであり、住友セメントや秩父セメント、電気化学工業のような複雑さから来る面白さには 欠けるという面はあるだろう。



■2.各生産拠点の鉄道貨物輸送  

▼2.1苅田工場  
1918(大 07)年12月
豊国セメ ント(株)が設立([2]p903)
1920(大 09)年05月
豊国セメ ントは苅田工場を建設し、第1号キルンに火入れ([2]p903)
1922(大 11)年08月
豊国セメ ントは名古屋セメント、佐賀セメントを合併し、我が国第3位のセメント会社となる([2]p903)
1941(昭 16)年11月
戦時統制 令により、豊国セメントは磐城セメント(株)に吸収合併され消滅([2]p903)
1948(昭 23)年03月
磐城セメ ント苅田工場を譲り受け、豊国セメント(株)を設立([2]p904)
1954(昭 29)年12月
原料石灰 石の保有が貧弱で、大きな供給源を持たないという体質的欠陥があったため、古河鉱業(株)と
共同出資で大分鉱業(株)を設立。津久見市の石灰石鉱山の開 発を行った([2]p904)
1955(昭 30)年01月
苅田工場 に新鋭の乾式第5号キルンの増設が行われて、月産能力3万トンに達した([2]p904)
1959(昭 34)年03月
大分鉱業 の開発で失費を生じて、三菱セメント(株)が豊国セメントに資本参加を行う([2]p904)
1964(昭 39)年03月
旧来工場 の敷地に隣接する海面を埋め立てて、新工場敷地を造成し、
第6号湿式マンモスキルン(後に第1号キルンと改称)及び一連の付帯設備を建設([2]p905)
1968(昭 43)年05月
三菱セメ ントは豊国セメントの全株式を保有する([2]p904)
1968(昭 43)年12月
SP方式 の第7号キルン(後に第2号キルンと改称)の火入れ([2]p905)
1969(昭 44)年09月
第1号キ ルンをSP方式に改造し火入れ。これにより完全なSP方式の工場に切り替わった([2]p905)
1971(昭 46)年02月
苅田駅構 内を経由する苅田鉱業(株)苅田鉱業所〜豊国セメント(株) 苅田工場間の石灰石の貨車輸送廃止
(『福岡駅風土記』夕刊フクニチ新聞社、1974年、p220)
1972(昭 47)年03月
第3号 SPキルンの火入れ実施([2]p905)
1973(昭 48)年04月
三菱鉱業 (株)、三菱セメント、豊国セメントの3社が合併([2]p903)
1973(昭 48)年05月
第4号 SPキルンの火入れ実施。これにより苅田工場の生産能力は年産500万トンに達し、
世界的な新鋭大工場となった([2]p905)



▼2.2黒崎工場  
1955(昭 30)年04月
黒崎工場 第1号キルン火入。三菱セメント(株)がセメント生産開始([1]p152)
原料の石灰石は日鉄鉱業(株)及び位登産業(株)から購入([2]p849)
1955(昭 30)年05月
三菱鉱業 (株)古賀山炭砿向けセメント15トンが貨車による初出荷([2]p866)
1956(昭 31)年02月
黒崎工場 第2号キルン火入([1]p152)
1956(昭 31)年09月
筑豊石灰 工業(株)東谷鉱山が操業開始([1]p152)
1957(昭 32)年01月
黒崎工場 第3号キルン火入([1]p152)
1958(昭 33)年02月
黒崎工場 第4号キルン火入([1]p152)
1958(昭 33)年08月
黒崎工場 第5号キルン火入([1]p152)
1960(昭 35)年05月
黒崎工場 第6号キルン火入([1]p153)
1963(昭 38)年12月
黒崎工場 第7号キルン火入([1]p153)
1964(昭 39)年03月 北九州事 業所を設置(黒崎・東谷・田野浦3工場及び東谷鉱山を所管)([1]p153)
1966(昭 41)年07月
黒崎工場 乾式第1号キルン(第7号キルンの改造)火入([1]p153)
乾式第1号キルンは重油専焼([2]p843)
1966(昭 41)年12月
黒崎工場 の湿式キルンの重油転換を進め、第5号キルンで実施([2]p843)
1968(昭 43)年04月
黒崎工場 乾式第2号キルン(第6号キルンの改造)火入([1]p154)
2000(平 12)年11月
黒崎工場 が九州工場に統合され、九州工場黒崎地区となる

黒崎工場のセメント生産高

1965
1970
1975
1980
1985
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1999
2000
トン
1,012,000
1,680,500
1,178,800
1,541,100
1,056,700
1,183,635
1,320,554
1,493,546
1,270,874
1,320,674
871.293
1,135,492
700,078
624,150
(『セメント年鑑』より作成)



▼2.3東谷鉱山及び東谷工場  

東谷鉱山 石灰石貨車積設備([1]p100)


1952(昭 27)年12月
筑豊石灰 工業(株)(東谷鉱山の前身)設立([1]p152)
 開発計画は下記([2]p849)
*採掘方法はグローリーホール方式を採用
*設備能力は月産5万トンまでは可能なものとするが、差し当たり月産2万トンを目標
*山元から黒崎工場までの輸送はピストン列車輸送とし、住友金属工業から買収した
専用線を坑口下まで延長し、貨車ポケットで積み込んで石原町駅より搬出する
1956(昭 31)年07月 筑豊石灰 工業(株)の専用線試運転実施([2]p849)
1956(昭 31)年09月
筑豊石灰 工業(株)東谷鉱山が操業開始(第1グローリーホール完成)([1]p152)
黒崎工場向けに送鉱を開始([2]p849)
1959(昭 34)年06月
筑豊石灰 工業(株)東谷鉱山第2グローリーホール完成([1]p152)
1959(昭 34)年下期
増産によ り出鉱が月平均5万トンを超えた。
鉄道のみに依存していた黒崎工場送りにトラックを併用して輸送を強化([2]p850)
1961(昭 36)年01月
筑豊石灰 工業(株)東谷鉱山第3グローリーホール完成([1]p153)
1962(昭 37)年度
月産10 万トンを達成し、黒崎工場の原料石灰石の殆ど全量を供給([2]p850)
1963(昭 38)年04月
筑豊石灰 工業(株)を三菱セメント(株)が吸収合併([1]p153)
1963(昭 38)年05月
東谷工場 第1号キルン火入([1]p153)
1963(昭 38)年11月
東谷工場 製品の出荷として田野浦工場及びセメント積出施設を完成([2]p842)
1964(昭 39)年03月
北九州事 業所を設置(黒崎・東谷・田野浦3工場及び東谷鉱山を所管)([1]p153)
1964(昭 39)年04月
第2号貯 鉱場及び抗外2次破砕設備が新設され、専用線や貨車積込みポケットなどの
増設工事が相次いで完成。
1964年度以降、月産能力30万トンに達し、我が国屈指の石灰石鉱山に成長([2]p851)
1964(昭 39)年05月
東谷鉱山 第5グローリーホール完成([1]p153)
1965(昭 40)年01月
東谷工場 第3号キルン火入([1]p153)
1967(昭 42)年02月
東谷鉱山 第6グローリーホール完成([1]p154)
1967(昭 42)年12月
東谷工場 セメントミル設置、セメントの出荷開始([1]p154)
1968(昭 43)年01月
東谷工場 第4号キルン火入([1]p154)
1999(平 11)年06月
東谷工場 が九州工場に統合され、九州工場東谷地区になる
2002(平 14)年12月
九州工場 東谷地区におけるセメント製造を中止

東谷工場のセメント生産高

1967
1968
1970
1975
1980
1985
1987
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
トン
8,500
306,500
341,000
359,800
345,300
136,300
177,700
297,829
326,772
291,229
237,967
213,118
192,973
195,282
(『セメント年鑑』より作成)




▼2.4田野浦工場  

([1]巻頭カラー)

クリンカ輸送列車到着(1963年) ([1]p62)

1962(昭 37)年09月
三菱セメ ント(株)は東谷工場製品の出荷ルートを田野浦経由とする方針を決定。ミル工場及びセメント積出基地用として
田野浦埠頭埋立地を買収([2]p842)
1963(昭 38)年11月
田野浦工 場が操業開始(第1号セメントミル完成)([1]p153)
東谷工場製品のセメント積出基地及びミル工場として活用([2]p842)
1964(昭 39)年02月
田野浦工 場第2号セメントミル完成([1]p153)
1964(昭 39)年03月
北九州事 業所を設置(黒崎・東谷・田野浦3工場及び東谷鉱山を所管)([1]p153)
1966(昭 41)年07月
田野浦工 場第3号セメントミル完成([1]p154)
1969(昭 44)年10月
田野浦工 場に輸出専用の袋詰及び積出設備を建設し、セメントの本船直積が可能となる([1]p23)



田野浦工場(粉砕工場)のセメント生産高

1965
1966
1967
1970
1975
1980
1981
1982
1983
1984
1985
1986
1987
トン
752,500
944,000
1,393,000
1,421,600
1,500,300
1,587,400
1,681,900
1,407,500
1,226,800
1,143,600
813,900
102,200

(『セメント年鑑』より作成)



▼2.5横瀬工場  

([1]巻頭カラー)

横瀬工場専用線([1]p104)

1967(昭 42)年07月
西武鉄道 は吾野〜秩父間延長工事に着手([2]p844)
1968(昭 43)年06月
三菱セメ ント(株)は横瀬工場建設計画を正式に決定([2]p844)
1969(昭 44)年06月
横瀬工場 操業開始。第1号キルン火入([1]p154)
1969(昭 44)年07月
横瀬工場 はトラック輸送にて初出荷([2]p845)
1969(昭 44)年10月
横瀬工場 第2号キルン火入([1]p154)
1969(昭 44)年10月
西武鉄道 秩父線の吾野〜秩父間が開通し、直ちにセメントの貨車輸送開始([2]p845)





横瀬工場のセメント生産高

1969
1970
1972
1975
1980
1985
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
2000
トン
267,000
921,700
1,414,00
1,283,800
1,693,100
1,390,000
1,651,908
1,730,644
1,663,933
1,479,680
1,321,047
1,378,484
1,314,307
1,278,684
(『セメント年鑑』より作成)



■3.SS配置と鉄道貨物輸送  

▼3.1東北地方

▽塩釜SS (塩釜埠頭駅)
1971(昭46)年9月 東京支店管轄の仙台営業所を開設し、東北地 方に本格的販売を開始([2]p878)
1971(昭46)年10月 塩釜SSが完成、九州よりセメントタン カーでセメントを輸送([2]p878)



▼3.2関東地方

▽隅田川SS (隅田川駅)
1969(昭44)年11月 設置([1]p154)

2006.3隅田川駅 東京セメント運輸(株) 三菱マテリアルのサイロ

▽鶴見SS (新興駅)
1959(昭34)年9月 三菱鉱業(株)旧貯炭場を借地して、鶴見 SSを設置することに決定([2]p873)
1960(昭35)年4月 設置([1]p152)
1960(昭35)年10月 2期工事としてセメントサイロ2基増設完 成、セメント貯蔵能力15,000トンに拡大([2]p873)

1963.6新興駅  「地図・空中写真閲覧サービス」より

2010.7新興駅

▽相模原SS (南橋本駅)
1969(昭44)年10月 設置([1]p154)
1996(H8)年3月 鉄道輸送廃止後すぐに閉鎖

1979.10南橋本駅
  「地図・空中写真閲覧サービス」より

1989.10南橋本駅
  「地図・空中写真閲覧サービス」より

南橋本駅の車扱貨物取扱量(到着)の推移
  年 度
トン数
  年 度
トン数
  年 度
トン数
1969
26,425
1978
132,924
1987
72,314
1970
96,687
1979
129,922
1988
115,786
1971
128,156
1980
129,162
1989
125,799
1972
131,625
1981
117,458
1990
168,641
1973
141,680
1982
117,876
1991
170,390
1974
138,124
1983
99,484
1992
117,002
1975
128,212
1984
98,648
1993
79,140
1976
134,064
1985
98,648
1994
70,642
1977
132,772
1986
105,754
1995
51,984
(『神奈川県勢要覧』より作成)


▽高麗SS (高麗駅)
1969(昭44)年10月 設置([1]p154)

1975.1高麗駅  「地図・空中写真閲覧サービス」より

2002.12高麗駅

高麗駅の車扱貨物取扱量(到着)の推移
  年 度
トン数
  年 度
トン数
  年 度
トン数
1969
104,114
1978
285,722
1987
250,800
1970
286,813
1979
288,420
1988
256,500
1971
340,274
1980
297,540
1989
264,100
1972
376,466
1981
294,880
1990
272,080
1973
389,500
1982
277,020
1991
256,500
1974
323,418
1983
241,300
1992
236,360
1975
273,562
1984
235,980
1993
184,300
1976
221,540
1985
223,820
1994
186,580
1977
253,460
1986
241,680
1995
144,020
(『埼玉県統計年鑑』より作成)


▽甲府SS (南甲府駅)
1974(昭49)年3月 設置([4]p51)
1996(H8)年3月 鉄道輸送廃止後すぐに閉鎖

1995.9南甲府駅

1995.9南甲府駅

▽松本SS (南松本駅)
1985(昭60)年 開設([5]p111)

1997.3南松本駅

2011.4南松本駅
 タンク車輸送の実績は無いと思われるが、専用線開設の計画があった可能性あり


▼3.3近畿地方

▽大阪SS (大阪東港駅)
1957(昭32)年6月 設置([1]p152)

1979.9大阪東港駅  「地図・空中写真閲覧サービス」より
 大阪市専用線の第三者利用者に三菱セメント(株)あり




[1]『15年のあゆみ』三菱セメント株式会社、1970年
[2]『三菱鉱業社史』三菱鉱業セメント株式会社、1976年
[3]『セメント年鑑 1973年版』セメント新聞社、1973年
[4]『セメント年鑑 1975年版』セメント新聞社、1975年
[5]『セメント年鑑 1995年版』セメント新聞社、1995年

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