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釧路地区の貨物取扱駅 〜臨海部に拡がる貨物線と専用線の痕跡を辿りつつ、その輸送体系を考察する〜
2016.10.20作成開始


■はじめに
 第14回「貨物取扱駅と荷主」では専用線が集積していた八戸地区を取り上げたが、今回の北海 道の釧路地区もまた貨物線や専用線の集積地帯であった。
 そして、このページの作成を始めてから気付いたことなのだが、八戸と釧路には色 々と共通点がある。

 例えば、思いつくままに挙げていくだけでも
@非県庁所在地ながら、その地域(八戸は南部地方、釧路は道東地方)の代表的拠点都市 A我が国を代表する漁港を抱え、水産業が古くから盛ん B戦前から 鉱業が盛ん(八戸は石灰石、釧路は石炭) C大手製紙メーカーが立地(八戸は三菱製紙、釧路は日本製紙及び王子製紙) D大手肥料メーカーが立地(両都市 ともコープケミカルの工場があった) E東西オイルターミナルなど大型臨海油槽所が立地 F火力発電所が立地 …等々何かと共通する点がある。

 そして釧路地区の臨海部にも、八戸地区と同様に、いやむしろそれ以上の密度で貨物線と専用線が網の目のように張り巡らされていた。しかし一方で、大きく 異なるのは、八戸には今なお「臨海鉄道」が盛 業中だが、釧路西港に延びていた臨海鉄道の釧路開発埠頭≠ヘ廃止され、会社は解散されてしまった点である。しかしそれでも釧路には、JR貨物の拠点とし て釧路貨物駅=A我が国唯一の運炭専用鉄道である太平洋石炭販売輸送≠ェあり、かつての専用線集積地帯の面影がかろうじて残っている。

 近年では、2012年に設立されたJXエルエヌジーサービス(株)は、本社を八戸市内とし、八戸と釧路にLNGターミナルを建設した。八戸のLNGター ミナルは海外 からLNGを輸入する一次基地で、そこから内航船で釧路の二次基地にLNGを供給している。まさに八戸と釧路の両都市を拠点とする企業である。
 また2016年夏の台風による被災で根室本線の一部区間が不通 になり、JR貨物は貨物列車の代替として釧路港〜八戸港でチャーター船による代行輸送を行うなど釧路と八戸は浅からぬ縁がありそうである。

 このように釧路と八戸は、ともに北日本を代表する臨海産業都市と言える。「貨物取扱駅と荷主」の第16回は、釧路地区に点在していた貨物取扱駅の輸送体 系を ひも解いてみたい。


■釧路市内各駅と関連事項の年表
年 月
内 容
1897(明30)年
安田炭鉱(現、太平洋炭鉱)が開鉱
1901(明34)年
前田製紙(現、日本製紙(株)釧路工場)が竣工。道内初の紙パルプ工場




































■釧路貨物駅

■釧路開発埠頭(西港駅、北埠頭駅)


■太平洋石炭販売輸送(臨港駅)

■大楽毛駅
■釧路駅
■浜釧路駅
■天寧駅

■釧路地区からの石油輸送
 釧路港には石油元売り各社の油槽所が古くから立地しており、雄別鉄道の北埠頭駅と釧路臨港鉄道の臨港駅を発駅に道東各地にタンク車輸送が行われていた。 両駅とも国鉄の貨物駅では無かったところが興味深いが、雄別炭鉱の閉山に伴う雄別鉄道の廃止と釧路開発埠頭への事業継承、釧路西港の開港に伴う油槽所の移 転、釧路臨港鉄道の太平洋石炭販売輸送の吸収合併と路線の廃止と釧路地区の石油輸送は1970〜80年代にかけてドラスティックに変化を遂げる。

 結果、1987年のJR貨物発足時までには、釧路地区からの石油輸送は釧路開発埠頭の西港駅に集約されていたのだが、内陸油槽所の閉鎖やローリー輸送等 への転換により1999年をもって釧路地区からの石油タンク車輸送は全廃となった。

▼「1975年版専用線一覧表」より道東の石油輸送
元売会社
発 駅
着 駅
元売会社・燃料会社・
需要家
備 考
日本石油(株)
北埠頭
帯 広(貨)
帯 広(貨)
札 内
根 室
中斜里
美 幌
日本石油(株)
日本甜菜製糖(株)
日本石油(株)
根室石油(株)
ホクレン農協連
日本石油(株)


エネオス系列。日石系列は予想
三菱石油(株)
北埠頭 帯 広
中斜里
三菱石油(株)
ホクレン農協連

日本鉱業(株)
共同石油(株)
北埠頭
浜釧路
帯 広(貨)
中斜里
上常呂(池北線)
共同石油(株)
ホクレン農協連
(株)リョーユウ


共同石油(株)特約販売店
出光興産(株)
北埠頭
帯 広(貨)
札 内
中斜里
東相ノ内(石北本線)
出光興産(株)
出光興産(株)
ホクレン農協連
出光興産(株)

大協石油(株)
本輪西
帯 広(貨)
東相ノ内(石北本線)
大協石油(株)
大協石油(株)
室蘭地区から到着?
室蘭地区から到着?
丸善石油(株)
北埠頭
札 内
中斜里
上常呂(池北線)
元紋別(名寄本線)
丸善石油(株)
ホクレン農協連
丸善石油(株)
北日本石油(株)



丸善石油(株)系列
昭和石油(株)
石油埠頭
木野(士幌 線)
昭和石油(株)
苫小牧地区から到着?
シェル石油(株)
北埠頭
根 室
美 幌
北海シェル(株)
シェル石油(株)

ゼネラル石油(株)
臨港
端野(石北本 線)
ゼネラル石油(株)

モービル石油(株)
臨港
札 内
根 室
端野(石北本線)
モービル石油(株)
(株)ヒシサン
モービル石油(株)

モービル系列。根室港に油槽所あり
留萌駅から到着?
日本漁網船具(株)
北埠頭
-
-
到着先不明


▼「1975年版専用線一覧表」より想定される道東の石油需要家(含む候補)
所管駅
専用者
備 考
十勝清水
日本甜菜製糖(株)

帯広(貨)
日本甜菜製糖(株)

大楽毛
本州製紙(株)

勇足(池北線)
北海道糖業(株)

磯分内(釧網本線)
ホクレン農協連 磯分内製糖工場

中斜里
ホクレン農協連 中斜里製糖工場
日石、三石、共石、出光、コスモ
上常呂(池北線)
北海道糖業(株)

元紋別(名寄本線)
北見パルプ(株)

上渚骨(渚骨線)
北海道糖業(株)

北見
北見パルプ(株)
1979年:天塩川製紙(株)と合併し北陽製紙(株)
1983年:名寄市に工場集約
美幌
日本甜菜製糖(株)



■釧路地区からのLPG輸送
 臨港駅には、(株)ほくさんや太平洋興発(株)の専用線があり、LPGタンク車による輸送が行われていた。

所管駅
専用者
備 考
帯広
帯広ガス(株)

帯広(貨)
(株)ほくさん
帯広市産業開発公社(第1)から分岐
札内
岩谷産業(株)

根室
(株)ヒシサン
ハローガス
上常呂(池北線)
(株)リューユウ
共石系。1966年8月上常呂プロパン充填工場建設(2002年3 月閉鎖)
元紋別(名寄本線)
(株)ほくさん

美幌
(株)ほくさん



■釧路地区からの石炭輸送


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