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黒 鉱
2020.5.4作成開始


北鹿地帯 (『あきた』通巻57号、1967年2月1日発行)

 黒鉱開発は、秋田湾地区新産業都市建設の二本柱の一つ、化鉱コンビナート実 現のキーポイント。

 同和鉱業(株)花岡鉱山の松峰鉱床(花矢町)と日本鉱業(株)釈迦内鉱床(大館市)では、1966(S41)年10月からともに月産2万トンの黒鉱採掘 を開始し た。これで最近5年間に北鹿地方で新しく開発された鉱床からの出鉱は同和・内(うち)の岱(たい)の月産3万5千トンを最高に、日鉱花輪、三菱金属古遠部 (ふるとおべ)、日東金属相内などを合わせて月産10万4千卜ンにのぼり、本格的な黒鉱開発が開始されたとみてよい。

 白黒鉱というのは、黒鉱鉱床の総称で、銅2.5%(全国平均1.2%)、鉛・亜鉛5〜7%のほか、トン当たり金3.5グラム、銀70〜80グラムを含ん でいる"宝の石"なのである。同和も日鉱も、それぞれ黒鉱埋蔵量3千万トン以上というわが国有数の鉱床を持っているとあって、月産量を順次増加する計画を 立てている。

北鹿鉱山地帯略図
(1965年11月現在埋蔵量 6,400万トン)
『貨物』1967年7月号

黒鉱ブームに湧き立つ北鹿(大館)地区 (『国鉄線』No.200、1966年 1月号)

 秋田県大館市の北部一帯地下300m前後から発見された黒鉱の埋蔵確認量は、これまで3,800万トン以上にのぼり、今後各社の探鉱及び金属鉱物探鉱促 進事業団の探査によっては、更に5,000万トン以上が発見される可能性がある。

 黒鉱とは、銅を中心を金、鉛、亜鉛を含んだ複合鉱石のことで、埋蔵量は我が国最大、質的にもかつてない高品位のものである。銅鉱床はあと数年しかもたな いと言われるほど世界的な枯渇資源であり、黒鉱の発見は非鉄金属業界から一大注目を集め黒鉱ブームを起こしている。

 黒鉱の目標は銅で、その含有率は2.5%と全国平均の2倍強である。また粗鉱に含まれる金や銀、鉛、亜鉛も超高品位で、現在までの確認量を地金にした金 額は1兆円近いものになり、最低50年は掘れるという。

 日本鉱業(株)は、開発のトップを切って1965 (S40)年4月から試験操業に入ったが、処理能力月間3万トンの選鉱場が完成し、同年10月から月1万トンの本格操業を開始した。さらに1967 (S42)年からは月間3万トンに引き上げる計画である。

 また松峰の同和鉱業(株)も坑道や選鉱場の建設中であり、 一連の設備が完成する1968(S43)年度には月間5万トンの出鉱が見込まれている。新産業都市と絡み、秋田臨海工業地域か大館に大型の精錬所の新設計 画も進んでいる。

年度別出貨計画 (単位:千トン)
荷  主
発 駅
1964 年度
(実績)
1965 年度
1966 年度
1967 年度
1968 年度
以降

同 和鉱業(株)(小坂)
大 館
262
286
377
452
460
同 和鉱業(株)(花岡)
大 館
365
393
471
592
615
三 菱金属鉱業(株)(松峰)
大 館



144
144
日 本鉱業(株)(釈迦内)
白 沢

35
96
172
172
三 菱金属鉱業(株)(古遠部)
碇ヶ 関
54
49
55
55
55
合  計
681
763
999
1,415
1,446
指  数
100
112
147
208
212
着駅の60%強は船川港

 この大規模な黒鉱の開発によって、輸送問題がクローズアップされており、1965年5月に発駅の白沢駅に、日本鉱業の専用線3線(有効長延長687m、収容車数69両)を敷設 し、当面これに対処しているが、生産がコンスタントに開始される1968年以降は、既存の鉱石輸送も含めて輸送量は現在の2倍強の144万6千トンが見込 まれており、抜本的な対策を講じない限り輸送は不可能である。

 秋田鉄道管理局としては、鉱石輸送の主要ルートである大館〜船川港の整備を強力に推進するため、第三次長期計画に策定されている羽越、奥羽本線の全面複 線化を完遂し、輸送力の飛躍的な向上を図り、同時に大館駅、秋田操駅、船川港駅等拠点駅の輸送施設の大幅改善及び鉱石輸送専用貨車の新造または増備を図っ て、1日4千トンに及ぶ大量の鉱石をスムーズに輸送する体制をつくり、地域産業の発展に寄与したいとしている。


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