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黒井駅 〜車扱輸送の落ち込みを大型コンテナによる化成品及び鉄鋼輸送で挽回し活 路を見出した駅〜
2010.3.18作成開始 2010.3.22公開
2010.11.13更新 2013.1.3訂補


《目次》
はじめに
黒井駅の貨物取扱の概況
黒井駅と同駅の荷主企業に関する年表
黒井駅に接続する専用線の推移
黒井駅の海上コンテナ及びISOコンテナ取扱いの沿革
黒井駅に発着する信越化学工業(株)直江津工場が 荷主の鉄道貨物輸送
黒井駅に発着するダイセル化学工業(株)新井工場 が荷主の鉄道貨物輸送
黒井駅に発着する日本曹達(株)二本木工場が荷主の鉄道貨物輸送
黒井駅に発着する大同特殊鋼(株)及び理研製鋼(株) の鉄鋼輸送
黒井駅から発送されるシュレッダーダスト輸送
黒井駅着の三菱電機(株)のブラウン管輸送
黒井駅から発送される佐渡のおけさ柿輸送
黒井駅に発着するその他のコンテナ輸送


■ はじめに      

 「貨物取扱駅と荷主」の第2回は黒井駅を選択した。同駅は私にとって決して訪れやすい場所ではないわりに、訪問回数は決して少なくはない。最初の訪問は 1995年夏…の筈が台風の直撃に遭い、断念した苦い思い出に始まる。翌年(1996年)8月にはリベンジを果たしたのだが、その当時それだけ黒井駅 に拘ったのは、その頃収集していた昭文社ニューエスト地図(都道府県別の地図帳)の新潟県を見て、黒井駅の信越化学工業(株)や日本ステンレス(株) 〔現、(株)住友 金 属直江津〕などの長大な専用線の存在を見つけて以来ずっと気になっていたことが大きい。また黒井〜青海間に電気化学工業(株)向けの石炭列車(1996年 3月 廃止)の設定 があるものの、港に面していない黒井駅でどのように積み込みを行っているのか?ということも含めて車扱輸送に対する興味を中心に、黒井駅に非常に行きた かったと 記憶している。一方同駅のコンテナ扱いは12ftコンテナだけであり、至って地味な印象であった。

 しかし黒井駅はその後の車扱輸送の急速な衰退に対して、コンテナ輸送は1998(平成10)年の大型荷役機械の導入により、急激にバラエティに富んだも のになっ ていく。数年おきに調査に同駅を訪れているのだが、毎回新しいコンテナ輸送を確認できるほどになったのだ。そもそも上越地区のコンテナ基地としては直江津 駅に元々は設 置されていたのだが、1985(昭和60)年3月に黒井駅に移設された経緯もあり、そういったことも含め黒井駅は車扱輸送からコンテナ輸送へと華麗な転身 を遂げた という印象が強い。



■ 黒井駅の貨物取扱の概況         

1996.8 黒井駅
 信越化学工業(株)の苛性ソーダタン ク車などが並ぶ

1996.8 黒井駅
当時は12ftコンテナのみを取 り 扱っていた

▼黒井駅の年度別発送トン数の推移
年  度
発 送トン数
年  度
発 送トン数
年  度 発 送トン数
1990 (平02)年度
344.2 千t
2000 (平12)年度 79.5 千t 2010 (平22)年度 91.9 千t
1991 (平03)年度
342.4 千t
2001 (平13)年度 82.2 千t 2011 (平23)年度 89.2 千t
1992 (平04)年度
330.8 千t
2002 (平14)年度 71.7 千t 2012 (平24)年度 92.5 千t
1993 (平05)年度 261.7 千t 2003 (平15)年度 72.6 千t 2013 (平25)年度 103.0 千t
1994 (平06)年度 232.9 千t 2004 (平16)年度 63.7 千t 2014 (平26)年度 103.4 千t
1995 (平07)年度 140.6 千t 2005 (平17)年度 69.5 千t 2015 (平27)年度 103.3 千t
1996 (平08)年度 110.4 千t 2006 (平18)年度 80.9 千t 2016 (平28)年度 99.1 千t
1997 (平09)年度 102.7 千t 2007 (平19)年度 98.2 千t 2017 (平29)年度 106.6 千t
1998 (平10)年度 91.4 千t
2008 (平20)年度 107.8 千t 2018 (平30)年度 105.8 千t
1999 (平11)年度 91.4 千t 2009 (平21)年度 100.0 千t

(『新潟県統計年鑑』より筆者作成)

 『新潟県統計年鑑』による黒井駅の貨物取扱量に関する統計は発送トン数のみの掲載で、到着トン数は分からず、車扱とコンテナに区別もされていないという 非 常に残念な%搆vになっている。また『上越市統計要覧』では黒井駅の貨物取扱トン数に関する統計は無い。

 しかし、発送トン数だけでも黒井駅の状況の一端は伺える。1995年度までは青海駅向けの石炭輸送があり、発送トン数が多いのもそれが主因と思われる。

 但し1993年度、1994年度、1995年度と統計が入手できた年から連続して落ち込んでおり、これはまさに石炭輸送が大きく減少し廃止されたと想像 される。
 コンテナ輸送がメインとなってからは、発送トン数が2004年度の約6.4万トンを底に2008年度は約10.8万トンまで回復しており、コンテナ輸送 が 大きく伸張しているようだ。大手荷主の信越化学工 業鰍フ鉄道貨物輸送へのモーダルシフトやダイセル化学工業鰍ェ新井駅の専用線を廃止し黒井駅に発着するコンテナ輸送へ転換するといった動向が背景にはある と考えられる。


2003.5 黒井駅 20ft 海上コンテナ (KLINE、NOL、MOL)が並ぶ

2007.3 黒井駅  四塩化珪素やアセトンなどの ISOタ ンクコンテナが並ぶ



■ 黒井駅と同駅の荷主企業に関する年表         
年. 月.日
黒 井駅の鉄道貨物輸送の沿革
荷 主企業に関する出来事など
1902 (明 治35).07.01
黒井駅開業(貨物駅)

1926 (昭 和元).

信越窒素肥料(株)が発足
1927 (昭 和02).
親不知〜黒井で石灰石輸送開始
信越窒素肥料(株)直江津工場を建設、カーバ イド・石灰窒素の製造開始
1934 (昭 和09).

日本ステンレス(株)がステンレス鋼の製造開始
1940 (昭 和15).

信越窒素肥料(株)が信越化学工業鰍ノ社名変更
1951 (昭 和26).09.22

直江津港が重要港湾に指定される
1957 (昭 和32).

信越化学工業(株)直江津工場は工業塩の電解工 場新設、
苛性ソーダ、塩素、塩化ビニル樹脂の製造開始(JRFN2005.9.1号3面)
1959 (昭 和34).

信越化学工業(株)直江津工場でクロロメタン類 の製造開始
(JRFN2005.9.1号3面)
1960 (昭 和35).12.10

(株)鐵興社、ダイセル(株)などの共同出資で日本 海水化工(株)設立
1966 (昭 和41).11.4
ホッパコンテナ(H10形式)が製作され 黒井(信越)〜大宮操間で運 用開始
(『鉄道貨物輸送近代化の歩み』貨物近代化編集委員会編、1993年、28頁)

1971 (昭 和46).04.29

直江津市と高田市が合併して上越市となる
1977 (昭 和52).05.01
親不知駅の貨物取扱廃止
(但し1975年時点で信越化学工業(株)専用線休止)

1981 (昭 和56).
黒井〜大宮操間のH10形式ホッパコンテ ナによる塩ビ輸送廃止
(『大宮通運五十年史』大宮通運(株)社史編纂委員会、2001年、85頁)

1981 (昭 和56). 黒井〜青海間で電気化学工業(株)向けの石炭輸送 開始
1985 (昭 和60).03.06
直江津駅の貨物取扱機能を代替させるため黒井駅に8億円をかけ
コンテナ扱設備新設や車扱設備の拡充などを行う
(『鉄道ピクトリアル』第35巻第6号、通巻第449号、1985年、101頁)

1992 (平 成04).

日本ステンレス(株)が住友金属工業(株)と合併し 直江津製造所になる
1996 (平 成08).03.
黒井〜青海間の電気化学工業(株)向けの石炭輸送 廃止

1998 (平 成10).
20トントップリフター導入 (JRFN2002.7.15号)

1999 (平 成11).

直江津港にガントリークレーン設置
2000 (平 成12).
この頃、信越化学工業(株)直江津工場の専用線 廃止

2000 (平 成12).春
24トントップリフター導入 (JRFN2000.4.15号)
黒井〜東京(タ)間でダイセル化学工業(株)のタンクコンテナ輸送開始

2000 (平 成12).04.01

住友金属工業(株)は直江津製造所を(株)住友金属 直江津として分社化
2000 (平 成12).06
(株)日 輪が黒井駅の第2種鉄 道利用運送事業の免許取得

2001 (平 成13).05.
黒井〜神栖間で信越化学工業(株)のISOタン クコンテナ輸送開始

2001 (平 成13).12.
倉賀野〜黒井間で信越化学工業(株)のISOタ ンクコンテナ輸送開始

2002 (平 成14).05.
倉賀野〜黒井間にコキ200形式を導入 (JRFN2002.3.15 号)

2002 (平 成14).06.
倉賀野〜東京(タ)間にコキ200形式を導 入 (JRFN2002.3.15号)
2002 (平 成14).07.

信 越 化学工業(株)が肥料事業をコープケミカル鰍ノ譲渡
2003 (平 成15).秋
椎津〜新井のタンク車によるアセトラルデ ヒド輸送が京 葉久保田〜黒井
のISOコンテナ輸送に転換
(JRFN2005.9.15号)

2004 (平 成16).02.24
黒 井〜高松(タ)で クロロメタン輸送をローリーからISOタンクコンテナへ転換

2004 (平 成16).10.
中越地震を機に上屋の一部撤去、コンテナ ホーム拡張(JRFN2005.9.15 号)

2006 (平 成18).10.
名 古屋南貨物〜黒井で大同特殊鋼(株)の線材コイル輸送開始

2007 (平 成19).03.18
ダイヤ改正で名古屋南貨物〜黒井のリード タイムが翌日着に短縮
車扱貨物の取扱廃止

2007 (平 成19).03.20

信越化学工業(株)直江津工場のメチルセルロー ス製造工程で爆発事故
2007 (平成19).03.30
二本木駅の貨物取扱が廃止

2008 (平 成20).

(株)住友金属直江津が住金からチタン薄板・厚 板の事業継承
2008 (平 成20).03.15
ダイヤ改正で黒井〜名古屋(タ)にコンテナ 列車設定
新井駅の貨物取扱が廃止(コンテナ扱いは黒井駅に移管か)

2009 (平 成21).09

日本海水化 工(株)が工場を閉鎖
※JRFN:『JR貨物ニュース』

 2000年以降、大型荷役機械の導入を機にISOタンクコンテナや海上コンテナ等の輸送が次々と開始されたことが分かる。尚、信越化学工業(株)、ダイ セル 化学工業(株)、大同特殊鋼(株)などの鉄道貨物輸送 に関する詳細は下記で個別に詳述している。



■ 黒井駅に接続する専用線の推移         
専   用 者
第 三者利用者
真荷主
第 三者利用者
通運事業者等
総 延長
キロ
備 考
1983
年版
1975
年版
1970
年版
1967
年版
1964
年版
1961
年版
1957
年版
1953
年版
1951
年版
日本ステンレス(株)
大平洋金属(株)
日本ステンレス
加工運輸(株)

3.9










日本海水化工(株)


0.1
日本ステンレス 線
に接続










信越化学工業(株)
高助(合名)
シンエツ化成(株)
直江津海陸運送 (株)
日本通運(株)
日新興業(株)
三井物産(株)
直江津産業(株)

5.7









閉鎖機関日本石 炭株式
会社整理委員会

三燃商会

0.6










新潟県


4.4
公共臨港線









小林石油(株)


0.1










○:存在 ◎:コンテナ貨物も取り扱う −:存在せず

*日本ステンレス(株)、信越化学工業(株)、新潟県の3者の専用線はいずれも総延長3kmを超える規模を持ち、専用線を利用した鉄道貨物輸送が盛んに行 われてい たことが窺える。
*信越化学工業(株)の専用線は、1999年4月には黒井駅発送の苛性ソーダ輸送を中条駅で目撃しているのに対し、インターネットの掲示板等の運用目撃で は 2000年には黒 井駅発送のタンク車輸送が見当たらなくなることから2000年初め頃に廃止になったと予想される。
*小林石油(株)はweb サイトに よると、新潟県長岡市福住に本社を置く石油販売会社で、前身の小林合名会社は1912(明治45)年に設立され、戦後は日本石油(株)の特約店となったと のこ と。そのため黒井駅の同社専用線には、沼垂駅の日本石油(株)新潟製油所の専用線や柏崎駅の日本石油加工(株)専用線から石油が到着していたと想像され る。


1996.8黒井駅  信越化学工業(株)専用線

1996.8黒井駅  日本ステンレス(株)専用線跡


  ※信越化学工業の専用線は筆者追加
   尚、三菱化成新潟工場(直江津工場の誤りだが)は直江津駅接続
『保 存版 新潟県の廃線鉄道−創業から廃線までを網羅し た感動のドキュメント』郷土出版社、2000年
203頁(左記地図も)
 石炭荷役場専用線=電気化学の石炭の輸送方法の変 更で、 線路は赤錆。


 石炭埠頭の専用線があんな所にあるとは、知らなかった・・・。
 YAHOO!地図の写真では分岐部分の線路跡がくっきり残っている。⇒上 越市春日新田3丁目
 この川沿いの細い土地が石炭埠頭だとはにわかに信じ難いが、現在は全く石炭荷役には使
っていないようなので、当時の荷役設備などは全て撤去されてしまったのだろう。

 さて石炭の輸送方法の変更というのは、姫川港に陸揚 げに変更だ と思われる。
 糸 魚川市のwebにおける姫川港の「貨物取扱量内訳」を見ると、2004年の輸・移入の石炭は
約69万トンに上る。また姫川港の「貨物取扱量の推移」によると、黒井〜青海間の石炭列車が
廃止された1996年は前年比53万トン増加しており、まさに石炭が姫川港の船舶輸送にシフトし
たことが伺える。
 黒井〜青海間の営業キロは48.1km。この程度の距離では鉄道貨物輸送が有利さを発揮す
ることは難しいだろう。さらに青海に隣接する姫川港で石炭を陸揚げすることができるようにな
れば、より最適な輸送方法と言えよう。
(補遺)
鉄 道貨物輸送研究スレッド」に急行越前様から情報を戴きましたので、転載させて戴きます。
急 行越前様からの情報2010.03.28
 石炭線は昔は直江津接続だっ たそうですが、貨物 扱いを黒井へ集約したときに黒井に無 理やり接続し たようです。
 荷扱い施設ですが、野積の石炭を ショベルカーで貨車に積んでい た記憶があります。
 船からどうやって卸したかは?ですが。
 黒井からの石炭列車の画です。http://expechizen.exblog.jp/10980620/

1993.8.7 黒井駅  黒井〜青海間の石炭列車
急行越前様から大変貴重な写真をご提供して戴きました。

1993.8.7 黒井駅  青海駅常備、電気化学工業 所有ホキ10260(石炭専用)
急行越前様から大変貴重な写真をご提供して戴きました。

⇒筆者註;「1983年版専用線一覧表」には直江津駅に日本通運梶E電気化学工業鰍フ専用線(国鉄側線)0.3kmがある。

▽急行越前様からの情報2010.03.30
 黒井駅の専用線の地図のところに石炭埠頭への直江津方からの分岐の記載がありますが、
 同じ地図で見ると黒井方からの分岐はきれいさっぱりなくなっています。
 分岐のあった場所は、黒井から直江津寄りの短い鉄橋を渡ったところで、下り線から直接分岐してい ました。
 地図で示すとこ の辺です。

▽阿久津 浩様のwebサイト東高円寺写真館R (貨車・せんろ) 」に黒井の引き込み線≠ニいうタイトルで石炭荷役線の貴重な現役時代の写真があります。必 見です!!



■ 黒井駅の海上コンテナ及びISOコン テナ取扱いの沿革      

『JR貨 物ニュース』2000年4月15日号4面
黒井駅 40ft海上コンテナ取扱可能に
24トンタンクコンテナも

 信越本線黒井駅(上越市)で今春から40ftと、総重量24トンの20ft海上コンテナの取扱いが可能になった。従来同駅では総重量20トンまでの 20ft海上コンテナの取扱いしか行っていなかったが管内のお客様の要請を受けさらに大型のトップリフターを導入したもの。

 同駅では3月16日、トップリフターのデモンストレーションを行い岡野関東支社長が、「黒井駅は小さな貨物駅だが、周辺に大きな企業が数多くあり、発着 ともに重要な駅である。今回導入されたトップリフターは、支社内の東京(タ)駅、横浜本牧駅にあるのと同等の大きさのものだ」と、40ft海上コンテナ取 扱いルートの拡大をアピールした。

 総重量24トンタンクコンテナは、ダイセル化 学工業(株)が使 用。これまでも同社は総重量20トン適合の仕向け先に同種の海上コンテナを黒井駅から鉄道輸送 しているが、新たに総重量24トンのタンクコンテナを内陸鉄道輸送して欧州に向け輸出することを検討している。

 これとは別に40ft海上コンテナ貨物に ついても現在折衝 中であるが、輸送品目は家電製品で 行き先は欧州・米国になる 予定。鉄道での輸送区間はどちらも黒井駅〜東京(タ)駅間で、 そ の後は東京港から各仕向け先港へ運ばれる。

 このルートでの40ft海上コンテナ輸送は今回が初めて。調査によると背高タイプの海上コンテナ輸送には第三笠島トンネルの高さがやや不足し ていたが、 これについて黒井営業所は、「9ft6in高の海上コンテナ輸送には今しばらく時間を頂くことになる。しかし8ft6in高のものについては今後も多くの 海上コンテナをレールに誘致していきたい。」と話した。

 なお、これまでの黒井駅のトップリフターは貨物金沢駅で、LNG輸送のタンクコンテナの積み卸しに使用されており、同駅でも総重量20トンの海上コンテ ナ取扱いが可能になっている。
1999.4 黒井駅 20トンまでの海上コンテナしか取り扱えなかったころである

『JR 貨 物ニュース』2001年5月1日号7面
黒井駅のトップリフター 導入後1年で 1.8倍に

 信越本線黒井駅で総重量24トンの20ft海上コンテナ取扱いが可能になって1年。近くに工業薬品を取り扱う企業が多く、その要請を受けて導入された大 型のトップリフターは黒井駅の貨物取扱量を大きく伸ばした。20ft海上コンテナ扱いが平成11年度は発着それぞれ500個だったが、12年度は同900 個で1.8倍になった。

 総重量24トンコンテナが利用できるようになり、既存の荷主企業がローリーから鉄道にシフトしたり、ドライタイプボックス型海上コンテナで発送する新規 の貨物もあるそうだ。殆どのコンテナは東京 (タ)行きで、一部 は横浜本牧駅にも運ばれるが、連休明けには神 栖駅行きも動き出す。


2001.9 黒井駅
 上記の神栖駅行きと見られる(株)ボルテックスセイグン所 有のUT14C-8033(四塩化珪素専用)
上部には「コキ100形式貨車限定」「黒井−神栖 専用」の文字も見える

『JR 貨 物ニュース』2002年2月1日号1面
トップリフター配備増に

 倉賀野駅に昨年末、総重量24tまでの20〜40ftタイプ・大型コンテナを荷役できるトップリフターが配備さ れた。倉賀野 −黒井間では20ftタイプのISOタンクコンテナが、月間十数個のペースで発着し始めている。

 倉賀野駅は現状では大型コンテナを取り扱えるホームが限定されているが、管 内化学メーカーの要請に応えて、黒井駅間で総重量24トンのISOタンクコン テナを輸送し始めた。現在、ISOタンクコンテナを載せているのは106形式のコンテナ貨車。だが高崎営業支店では、今後、48トン対応の200形式貨車 運用による輸送効率化や、駅構内の整備やレイアウト見直しを進めて、トップリフターの導入効果を最大限生かしたいとしている。

『JR 貨 物ニュース』2002年3月15日号1面
200形式コンテナ車 5月までに続々投入

 倉賀野−黒井間では、ゴールデンウィーク明け頃から運用を始める。黒 井駅 に入るコキ200形式は5両で、同駅利用の荷主企業が工場間の化成品輸送に利用 する。2両ずつ使って倉賀野−黒井間を 輸送する予定で(1両 は予備)これまでは、総重量24トンまでのISOタンクコンテナをコキ106形式に1個載せて 運んでいたので、やはり輸送力が増えて便利になる。6月頃からは東 京(タ) 向けにも2両を導入予定だ。

『JR 貨 物ニュース』2002年7月15日号4面
ここにも貨物駅 黒井駅

▽大型コンテナの取扱い拡大
 JR貨物の黒井駅は上越市の北東、化学工業品の大規模工場が集中する黒井工業団地に隣接している。国際貿易港の直江津港も近い。
 直江津港は佐渡への窓口であり、また韓国及び中国との国際貿易港として近年重要な位置を占めてきている。そのため黒井駅では以前から、大型海上コンテナ 取扱いの要望が強かった。
 平成10年に総重量20トンのトップリフター を導入。その 2年後にこれを金沢駅に移し、新たに総重量24トン、40ft対応のトップリフターが入った。 その結果、平成13年度の大型コンテナの取扱量は3,000個以上と急激に伸びた。
 今日、大型コンテナの発着は月に250個から300個、この内ドライコンテナが80個から100個、残りはISOタンクだ。
 「普段、直江津港に陸揚げされ、駅に持ち込まれた輸出入貨物の積み下ろしで、駅が最も活気づくのは午前10時から11時頃。列車が出線する13時までが 1日の作業のピーク」とのこと。
 一方、国内貨物用ISOコンテナのやりとりを通して「神栖倉 賀野大阪(タ)と 繋がりが深くなっ た」と黒井営業所の永野所長と所長代理の墨岡さん。
2003.5 黒井駅
倉賀野−黒井で運用される信越化学工業(株)所有UT16C-8009(メチルジクロロシラン(KA-12)専用)

▽2面のコンテナホーム
 旅客・黒井駅近くの踏切から長岡方面を見ると構内に大きく開く線路群の先に貨物上屋と東西2面のコンテナホームが臨める。
 東側のホームは長さが226.5メートルありコンテナ車を9両収容できる。ちょうど列車の入換作業中で東西ホームの連絡通路が塞がれていたため、コンテ ナを積み終えたトラックはホームをUターンして駅を出て行った。この駅にはトラックの入口がひとつ、出口が二つある。
 列車の発着はコンテナ車9本、車扱が6本、そのうち二本木・新井と黒井間の車扱列車が1本。貨物取扱量は昨年度、全体で発送が9万トン、到着は年によって波動が あって、だいたい3万5千トン前後で す。」(永野所長)という。
 一方西側のホームは上屋があるため積み下ろしスペースは105メートル、コンテナ車を5両しか収容できないが、路面強度の関係でトップリフターを使えるのはこちらだけ

▽秋には佐渡の柿を発送
 ホーム奥には袋入りの化成品輸送に使っているJR貨物の20ftコンテナもあり、化学工業品輸送用の大型コンテナが目立つ同駅だが、むろん12ftコン テナの取扱いも多い。
 佐渡の味噌全農新潟の米、秋口に賑わう「おけさ柿」は12ftコンテナの大切 な荷物だ。特に10月、佐渡の羽茂農協で 柿の出荷が始まると、同駅の発送量は一挙に膨れ上がる。佐渡 の小木港から船で直江津港に着く12ftコンテナを黒井からレールで全国へ運ぶ。
 永野所長は「黒 井駅のE&S化の計画もあるようですし、関東支社で新規の産廃輸送の準備も進めています。現場サイドでは既存 の荷主をフォローしつ つ、環境、安全、少子化による将来の労働力不足から鉄道貨物輸送を強くアピールし、新規利用荷主を開拓していきたい」と意欲を覗かせた。

『JR貨 物ニュース』2005年9月15日号2面
駅の構内改良 黒井駅

 関東支社の黒井駅では昨年の中越地震を機に、3 スパンのみ残し て上屋を撤廃コ ンテナホームとコンテナ置き場が 拡張された。
 車扱輸送時代から引き継いだ同駅の上屋は、もと13スパンの大きさだったが、コンテナ荷役するには屋根が低く、発着荷物のコンテナ積み替えなどに使う程 度だった。
 一方、トップリフター導入後、ISOタンクコンテナの発着が増えて、コンテナホームはますます狭くなる。そのため同駅では以前から上屋の撤廃が検討され ていた。
 それが中越地震で同駅と新潟(タ)間で自動車代行を行うに当たり、急遽撤廃が決まり即断行。代行トラックが何台も出入りするので、輻輳を回避し、コンテ ナ置き場を混乱させないための措置だった。
 ただ、緊急仕上げだったので、ホームに柱の痕が少し盛り上がっている。この地方に不可欠な融雪設備もまだ設備されていない。



■ 黒井駅に発着する信越化学工業(株)直江 津工場が荷主の鉄道貨物輸送    

『JR 貨 物ニュース』2005年9月1日号3面
企業各社のエコロジー&モーダルシフト 信 越化学工業(株)直江津工場の物 流担う直江津産業

 信越化学工業(株)は、塩化ビニル樹脂、半導体シリコ ン、シリコーン樹脂、セルロー ス誘導体、合成石英を始め多種多機能の製品を、日本はもとより世界各国の幅広い分野に供給している世界トップクラスのハイテク素材メーカーである。今回は 同社直江津工場の鉄道利用について、同社事務部松下義一部長と、物流業務を元請けしている直江津産業鰍フ佐藤全四郎社長、同社業務部の藤田秀夫取締役部長 に話を聞いた。

1996.8 黒井駅 信越化学工業(株)所有タキ4278(カセイソーダ液専用)

 信越化学工業(株)は1926年に「信越窒素肥料梶vとして発足した。翌年完成した直江津工場は、親不知の石灰石を原料にカーバイドや石灰窒素肥料を製 造し ていたが、1957年、工業塩の電解工場を新設し、化学産業の基礎素材である苛性ソーダ・塩素・塩化ビニル樹脂の製造を開始して有機合成化学に転換。さら に1959年にはクロロメタン類の製造を開始した。
 これら基礎素材は、場内をぐるりと巡る専用線を使い、タンク車で車扱輸送していた。「鉄道との付き合いは古いのですよ」と直江津産業(株)の佐藤社長 は、工 場内をSLが走る写真を見せてくれた。

 その後同社は、苛性ソーダやクロロメタン等、基幹素材を製造部門は残しながらも、製造品目のファイン化を推進。
 直江津工場の製品ラインナップも、建築材料や医薬材料品等に使うセルロース誘導体、各種素材の性能・品質向上に役立つシリコーン製品、新しいタイプの害 虫防除剤合成フェロモン、液晶パネル製造などに使う合成石英、さらに半導体工程材料のフォトレジストなど、多種多彩になった。
 基礎素材に比べてこれら製品は品種も多く、性状とニーズに合わせ、紙袋、フレコン、ドラム缶、5ガロン缶、1キロ缶あるいは瓶詰め等の荷姿で出荷してい る。

 直江津工場で、こうした製品の充填・包装梱包・保管から輸送手配・出荷業務等、物流業務全般を請け負うのが、グループ会社の直江津産業(株)だ。ルート 別に 輸送手段も選択する。
 同社によると、昨年度、直江 津工場が出荷した数量 のうち、黒井駅発の5トンコンテナISOタンクコンテナで鉄道輸送した製品は約7%だった。
 JRの5トンコンテナで出荷するのは、中長距離にあるセルロース誘導体などの仕向け先。「5トン単位にオーダーをまとめてもらえないか」「ユーザーサイ ドにSPを設けられないか」等、ユーザーに働きかけながら鉄道利用を拡大してきた。
 紙袋製品を運ぶことも多いが、積載時には利用運送の日本通運(株)が補助資材で養生するので、「トラックの路線便などに比べて荷傷みがない」と、鉄道コ ンテ ナ輸送の評価は高い。

▽鉄道シフトで「一石三鳥」の効果
 一方、専用線からタンク車で鉄道輸送していた基礎素材は、モータリゼーションの流れとともにタンクローリー輸送に変わり、構内線路も殆どが剥がされた
 しかし全国的にもタンクローリーの事故が絶えない状況下で「安全第一で輸送手段を選ぶように」と、信越化学の金川社長自ら指示したのを受け、直江津工場 では直江津産業の佐藤社長が先頭に立って、特に危険性の高い基礎素材について、ISOタンクコンテナによる鉄道輸送を検討し始めた。

 総重量24トンのISOタンクコンテナは、タンクローリーより過積載が比較的多いので輸送単価も有利になる。また環境負荷の少ない鉄道で運べば、環境対 策としても有利だ。だが肝心の安全性に関して、「鉄道は危険物の危険・有害性をどのように分類しているのか、保険はどうなっている」など知らないことが多 い。

 JR貨物に詳細な説明を求めたところ「安全輸送体制が非常にしっかり確立されている」。また発着駅両端の集配では道路輸送と同様、イエローカードの携帯 なども確認できたので、まず信越化学の工 場間で輸送していた製 品をISOタンクコンテナに転換、ついでユー ザー向け製品でも転換を進め、2003 年度には国土交 通省から実証実験の認証を受け、坂 出向けの製 品を鉄道にモーダルシ フトした。
 ISOタンクコンテナによる鉄道輸送は安全・コスト・環境面で「一石三鳥の効果がある」と佐藤社長。
 昨年秋の新潟中越地震では長岡周辺の鉄道ルートが分断されたが、代行輸送や迂回ルート輸送により「ユーザーには迷惑をかけずに済んだ」という。

2010.11黒井駅
 黒井−高松(タ)で運用される(株)ボルテックスセイグン所有のUT19C-8001(液化クロルメチル専用)

しんえつ・リポート 第127 期事業報告書(平成15年4月1日〜平成16年3月31日)
<6頁>
 地球温暖化問題の対策の1つとして、当社は2004年2月24日より、新潟県・直江津工場近くの信越本線黒井駅か ら香川県の高松貨物ターミナル駅ま でのクロロメタン輸送を、タンク ローリーから鉄道にモーダルシフトしました。
 国土交通省は2002年度から、物流において二酸化炭素排出量の削減効果が大きいと認められる計画を認定し、支援助成しています。今回のモーダルシフト は、当社と当社の100%子会社で出荷業務などを行う直江津産業、日本貨物鉄道(JR貨物)、日本通運が共同提案し、2003年度に第1次認定された21 件のうちの1つです。
 今回の鉄道へのモーダルシフトによって、タンクローリーでの輸送に比べて二酸化炭素の排出量を年間191トン、85.3%削減できると試算しています。

▼黒井駅に発着する信越化学工業(株)直江津工場が荷主の車 扱輸送
発 駅
発 荷主
品 目
着 駅
着 荷主
貨  車
確 認・備考
黒 井
信 越化学工業(株)
苛性ソーダ
石巻港
十條製紙(株)?
タキ12657 信越化学工業(株)
1981.5石巻港(福 田孝行氏 webサイトより
黒 井
信 越化学工業(株)
苛性ソーダ
藤寄
日本曹達(株)
タキ52600 信越化学工業(株)
1996.8.26藤寄で確認
黒 井
信 越化学工業(株)
苛性ソーダ
中条
(株)クラレ
タキ42670 信越化学工業(株)
1999.4.1中条で確認
黒 井
信 越化学工業(株)
クロロホルム
奥野谷浜
信越化学工業(株)?
武田薬品工業(株)?
タキ9000 信越化学工業(株)
『鉄道ピクトリアル』第43巻第7号、 1993年、88頁
ク ロロホルムは高い溶解力を持ち主にフッ素樹脂製造用原料に用いる、
医薬・農薬用抽出溶剤、分析用試薬分野でも高い評価

黒 井
信 越化学工業(株)
クロロホルム
安治川口
関西化成品輸送(株)?
タキ9012 信越化学工業(株)
1992.12安治川口『鉄道ピクトリア ル』第44巻第4号、 1994年、3頁
黒 井
信 越化学工業(株)
塩化メチレン
八王子
小西六写真工業(株)
タム7701 信越化学工業(株) 1975.7八王子(吉 岡心平氏webサイトより
太郎代
三菱瓦斯化学(株)
メタノール
黒 井
信 越化学工業(株)
タキ5200形 三菱瓦斯化学(株)
1996.8.26黒井で確認(信越化学の 専用線に入線を確認)
親不知
信越化学工業(株)
石灰石
黒 井
信 越化学工業(株)
貨車不明
(トキ?ホキ?)
親不知〜黒井・武生の石灰石輸送量は417 千t(1965年度)
(『貨物』第16巻第7号、1966年、28頁)
「1975年版専用線一覧表」で親不知駅の信越化学工業
の専用線は休止のため、その頃廃止か。
神岡
鉱山前

神岡鉱業(株)
濃硫酸
黒 井
信 越化学工業(株)
タキ5750形、
タキ46000形など
『鉄道ダイヤ情報』第23巻10号、 1994年、49-50頁
 黒井駅の信越化学工業(株)の車扱輸送は1999〜2000年にかけて全廃された模様。同時に専用線も廃止になったようだ。

▼黒井駅常備の信越化学工業(株)所有のタンク車

車   種
荷重
1979年3月現在
1985年9月現在
両  数
両  数
タ ム 3900(カセイソーダ液専用)
15t
4

タ ム 7600(カセイソーダ液専用)
15t
4

タ キ 2600(カセイソーダ液専用)
30t
64
75
タ キ 4200(カセイソーダ液専用)
35t
5 14
タ ム 7700(塩化メチレン専用)
15t
3
3
タ サ 6100(塩化メチレン専用)
20t
4
4
タ サ 3800(メタノール専用)
20t
2
2
タ キ 7000(四塩化炭素専用)
35t
1
1
タ キ 9000(クロロホルム専用)
35t
10
16
タ キ 16200(酢酸ビニール専用)
35t
2
1
合 計
99
116
『私有貨車番号表』より筆者作成


1996.8藤寄駅
 信越化学工業(株)所有タキ52600(苛性ソーダ液)

1996.8藤寄駅
 黒井→藤寄:日曹側入
 尚、藤寄駅構内にあった日本曹達(株)の苛性ソーダのストックポイント(タンク)は2001年4月に解体され た。(『トワイライトゾ〜ン MANUAL10』ネコ・パブリッシング、2001年、204頁)

 上記の車扱輸送の表でも苛性ソーダの輸送が多い(判明している分だけだが…)のが分かるし、黒井駅常備の信越化学工業(株)所有のタンク車も苛性ソーダ 専用が圧倒的に多かったのも分かっている。さてそのような汎用化学品の代名詞的な苛性ソーダは、信越化学工業はもう注力していないかと思いきや、下記の記 事の通り新潟地区の供給体制を強化している。このストックポイントは藤寄駅にあった日本曹達(株)のタンクが廃止されたことの代替基地としての役割もある よう に思われる。立地的にも共に新潟東港地区であるし。

 基礎化学品が多い車扱輸送だったので、タンク車輸送の廃止理由は信越化学工業(株)が事業撤退しているように思っていたのだが、決してそうとは限らない よう で、まだコンテナ輸送できる可能性は残っているのかもしれぬ…(笑)。

『化 学工 業日報』2004年3月26日付1面
信越化学 カ性ソー ダ拡販 専用タンクなど 新潟に大型物流 基地

 信越化学工業は、カ性ソーダ販売で攻勢をかける。新潟県に専用タンクを中心とした大型物流基地をこのほど確保。物流効率化によるコスト減とサービス体制 の強化で、信越、東北方面における地域販売を拡大する体制を整えた。同社では昨年、今年と引き取り枠を拡大し、国内市場におけるカ性ソーダのシェアを急速 に伸ばしている。さらに地域展開を強め、市場でのプレゼンスを高めていく方針だ。
 信越化学は、このほど新潟市内に、専用タン ク、充填設備などからなるス トックポイントを確保した。東 港の肥料コンビナート内にあるコープケミカルの敷地にコープケミカルが建設したもので、タンク容量は2千立方メートルとなって いる。50% カ性ソーダを約3千トン貯蔵できる。コープケミカルが運用することで長期契約を結んだ。
 信越化学では、新潟など下越地区については、これまで鹿 島から直江津工場に船で運んだうえで陸送していた。しかし、直江津での自 家消費が増える一方下越でも需要 が拡大する傾向に ある。直江津では船からタンクまでローリーでのピストン輸送を強いられるうえタンク容量が小さいこともあって、効率の悪さに直面していた。新しい物流拠点 は、大 型船での直接搬入 も可能なため、コストや安定供給、安全面で大幅な向上が見込める。
 当面は製紙メーカー化学メーカーなど既存需要家への供給を中心に していくが、ストックポイント新設 を機に新規需要の開拓、販売地域の拡大も進める。将来的にはタンク増設なども視野に入れていくことになる。
 信越化学は、共同出資で運営している鹿島電解での引き取り枠を従来の年12万トンから15万6千トンに今年から増やした。直江津工場の 6万トンと 合わせ計22万トン体制を確立し、五指に入る国内シェアの獲得に成功しつつある。鹿島での電解製品の引き取り拡大は、原料塩素の安定確保という観点から塩 ビ樹脂事業の強化にもつながる。そのためカ性ソーダの拡販は、電解−塩ビのチェーン全体の基盤を強めることになる。米国西海岸など輸出市場へのアプローチ とともに、物流体制を拡充し国内でも積極的な展開を図る。

▼黒井駅に発着する信越化学工業(株)直江津工場が荷主のコ ンテナ輸送
発 駅
発 荷主
品 目
着 駅
着 荷主
コ ンテナ
確 認・備考
黒 井
信 越化学工業(株)
トリクロロシラン
倉賀野 信越化学工業(株) UT13C 信越化学工業(株) 2007.3.24黒井駅
黒 井
信 越化学工業(株)
ジメチルジクロロシラン
(KA-22)
倉賀野
信越化学工業(株)
UT17C 信越化学工業(株)
2010.11.6黒井駅
黒 井
信 越化学工業(株)
四塩化珪素
倉賀野
信越化学工業(株)?
UT13C 中央通運 (株)
2010.11.6黒井駅 コンテナの表記より
黒 井
信 越化学工業(株)
四塩化珪素
神栖
信越化学工業(株)
UT13C 信越化学工業(株)
UT13C 中央通運(株)
UT14C (株)ボルテックスセイグン
2001年5月開始 (JRFN2001.5.1号p7)
2001.9.24黒井駅、2008.7.20神栖駅
黒 井
信 越化学工業(株)
塩化ビニル樹脂
大宮操
信越ポリマー(株)
東京工場
H10形 国鉄
1966.11開始(『鉄 道貨物輸送近代化の歩み』28 頁
ホッパコンテナの耐用年数が切れる1981年まで
輸送は続き、その後ローリーに転換
(『大宮通運五十年史』大宮通運且ミ史編纂委員会、
2001年、84〜85頁)
黒 井
信 越化学工業(株)
トリクロロシラン
東京(タ)

UT13C 信越化学工業(株) 2007.3.24黒井駅
黒井
信越化学工業(株)
塩化メチル
安治川口
関西化成品輸送(株)
U19A 中央通運(株)
2010.11.6黒井駅 返空を目撃
黒 井
信 越化学工業(株)
液化クロルメチル
高松(タ)
東亞合成(株)
坂出工場?
UT19C (株)ボルテックスセイグン
着荷主は坂出の荷主ということで…
(JRFN2005.9.1号p3)
黒 井
信 越化学工業(株)
四塩化珪素
新南陽
信越化学工業(株)?
UT13C 中央通運 (株)
2010.11.6黒井駅 コンテナの表記より
(信)黒井
信 越化学工業(株)
粒状
土浦

18D 複数
1998.3.22土浦駅
(信)黒井
信 越化学工業(株)
メチレン
百済
三和
19A
1999.3.27百済駅
タンク車では「塩化メチレン専用」があった
(信)黒井
信 越化学工業(株)
粒状
米子

C36
1998.8.10米子駅
(信)黒井
信 越化学工業(株)
防酸
米子

C36
1998.8.10米子駅
倉賀野
信越化学工業(株)
メチルトリクロロシラン
黒 井
信 越化学工業(株)
UT16C 信越化学工業(株)

2003.5.10黒井駅、2009.9.6 倉賀野駅
2001年12月開始(JRFN2002.2.1号p1)
倉賀野
信越化学工業(株)
メチルジクロロシラン
(KA-12)
黒 井
信 越化学工業(株)
UT16C 信越化学工業(株)
2003.5.10黒井駅、2009.9.6 倉賀野駅
2010.11.6黒井駅
2001年12月開始(JRFN2002.7.15号p4)
*黒井〜倉賀野、黒井〜神栖、倉賀野〜黒井と工場間輸送で積極的に鉄道コンテナ輸送を活用しているのが分かる。
*拙webの「貨物取扱駅と荷主」に おける倉賀野駅の「信越化学工業褐Q馬事業所の 鉄道貨物輸送」の項も参照。
*四塩化珪素のUT13Cコンテナは中央通運鰹蒲Lのコンテナが信越化学工業鰹蒲Lに変更されているのを確認。(UT13C-8011、 2008.7.20神栖駅で確認)
*JR12ftコンテナ輸送の荷票で見られた「(信)黒井」は信越化学の黒井を意味するのか?


2007.3黒井駅  信越化学工業(株)所有UT13C- 8015(トリクロロシラン専用)
黒井駅〜倉賀野駅専用
黒井駅〜東京(貨)駅専用 の運用区間表示あり

2008.7神栖駅
信越化学工業(株)所有UT13C-8011(四塩化珪素専用)
荷票には「返空回送 黒井駅へ」と記載

2003.5黒井駅
信越化学工業(株)所有UT16C-8004(メチルトリクロロシラン専用)
倉賀野−黒井専用 の運用区間表示あり

2007.3黒井駅
NRS所有NRSU341140_3(メチレンクロライド専用)
メチレンクロライドは塩化メチレンのこと。以前はタンク車輸送。
*黒井→倉賀野でトリクロロシランを輸送し、群馬事業所にてメチル化(アルキル化の一種)して倉賀野→黒井はメチルトリクロロシランとして輸送しているこ と が分かる。


2010.11黒井駅
信越化学工業(株)所有UT17C-8097(ジメチルジクロロシラン(KA-22)専用)

2010.11黒井駅
黒井〜倉賀野間で運用

2010.11黒井駅
UT16C-8008及び8009 メチルジクロロシラン(KA-12)専用 倉賀野駅〜黒井駅間専用


2010.11黒井駅 中央通運(株)所有のU19A- 56、U19A-58


2010.11黒井駅


2010.11 黒井駅 NRSU181515_5 四塩化珪素専用

2010.11黒井駅
UT13C-8020 中央通運(株)所有 四塩化珪素専用

2010.11黒井駅
UT13C-8020 黒井駅〜神栖駅・新南陽駅・倉賀野駅・東京(貨)駅専用



■ 黒井駅に発着するダイセル化学工業(株)新井工場が荷主の鉄道貨物輸送      

『JR 貨 物ニュース』2005年9月15日号3面
ダイセル化学工業(株)新井工場の調達原料 車 扱輸送をISOコンテナ化  Y・S物流(株)

 ダイセル化学工業(株)の新井工場には引込線があり、安 治川口駅からタンク車で化学 原料が届く。2年前まで同工場には千葉の京葉久保田駅からもタンク車で原料が届いていたが、同ルートは今ISOタンクコンテナ輸送に切り替わっている。調 達物流である本輸送をコンテナ化したY・S物流にその経緯を聞いた。

 ダイセル化学工業(株)の出発点はセルロイド製造。同社は今日酢酸セルロース・有機合成品などを基幹事業として、たばこのフィルターや写真フィルムなど 他用 途の各種製品を生産している。
 2年前に京葉久保田駅発(筆者註:椎津駅の誤り、発荷主は住友化学)ダイセル化学工業の新井工場にタンク車で車扱輸送していた調達原料をコンテナ化した 時の経緯を同輸送を 請け負うY・S物流(株)の藤本憲治取締役事業本部長は、次のように語った。
 「調達資材については、通常、納入側で輸送してもらいますが、新井工場の同原料は従来からダイセル化学工業のタンク車で運んでいたので、タンク車の老朽 化に伴い輸送手段をどう切り替えるか、ダイセル化学の支援を受け検討しました」。
 ISOタンクコンテナは総重量24トンまでしか積めないが、製品比重は0.78なので22キロリットルになる。30キロリットル用のタンク車よりは少な いが許容範囲だった。
 輸送容器をコンテナに切り替えると、専 用線上の抜き取り装置を 使えないので、他所に新設する必要もある。また発駅側はごく短距離だが、着駅の黒井駅か ら は新井工場まで22kmの配送が新たに生じる。
 これら様々な要素を一つ一つ検討しながらアセスメントを行った結果、コンテナ化後も継続的に輸送することになった。
 製品が危険物なので、タンク車で長年利用してきた鉄道の安全性を評価したためだ。コンテナは日本陸運産業(株)の保冷機能付きタイプをリース して、集配も同社に依頼することに した。
 2年を経過した現在、月間300〜350トンが、 新井工場にISO タンクコンテナで到着している。「中越地震の時もJR貨物から迅速に情報を流してもらったので適切な対応が取れた」とか。
 一方、安治川口駅発新井工場行き車扱輸送で運用して いるタンク車(筆者註:タキ 18700などによる氷酢酸輸送、下記参照も、耐 用年数が迫っている本 ルートのコンテナ化も 今後の検討課題で あること、またダイセル化学工業轄芻H場の機能が2007年末に大竹工場に移転するのに伴う、輸送手段の変更についてもアセスメントが既に始まっているこ とを、藤本部長は明らかにした。
 同社の製品物流は鉄道利用の目安として、500km以 遠としてい る。殆どが5トンのJRコンテナで、 その利用量は、新井工場が黒 井駅発で年間1万トン、網干 工場が姫路貨物駅発で同5万トン、大竹工場は大竹駅発で同1万トンに上る。


2008.7京葉久保田駅 NRS 所有アセトアルデヒド 専用
上:NRSU421152_3 下:NRSU421151_8

2008.7京葉久保田駅  左写真の下段 NRSU421151_8の荷票
引火性液:京葉久保田(日通千葉)→黒井(日通黒井)


2003.5黒井駅 NRS 所有グリオキザール専用

2003.5黒井駅 NRS 所有グリオキザール専用
  先に紹介した「黒井駅 40フィート海上コ ンテナ取扱可能に 24トンISOタンクコンテナも」(『JR貨物ニュース』
2000年4月15日号4面)の記事の写真には、NRS所有「グリオキザール専用」のISOタンクコンテナ写真が写って
いる。ちょうど上部左のタイプのコンテナだ。
 記事中には、24トンタンクコンテナは、ダイセル化学 工業(株)が使 用。欧州に向け輸出することを検討。
 鉄道での輸送区間は黒井駅〜東京(タ)駅間 で、その後は東京港から 仕向け先港へ運ばれるとのこと。
 また同社はグリオキザール専用のタキ8250形を所有し、新井〜関西方面に運用されていたので、国内輸送用
のISOタンクコンテナである可能性もあろう。
 ただ、2007年3月に黒井駅を訪問した際にはこのグリオキザール専用のISOタンクコンテナを目撃しておらず
現在も輸送が継続しているのか、気になるところではある。


2007.3黒井駅 JOT 所有ジエチルアミン専用  JOTU671377_7

2007.3黒井駅 NRS 所有アセトン専用  NRSU381056_9
ジエチルアミンはダ イ セル化学工業のwebサイトには、有機合成カンパニーの
合成品事業の製品として載っている。
また製法はアセトアルデヒドにアンモニアや水素を反応させるというもの。
原料から製品までISOタンクコンテナで鉄道輸送されているわけで、興味深い。
ダ イセル化学工業のwebサイトによると1940年に新井工場でアセトンの製造
を開始したとあるが、これは石油化学が発達する前のカーバイド化学の時代
であるし、原 燃料購買のページに は、購入する原料の1つにアセトンがあり、
現在は新井工場でアセトンの製造は行っていないと思われる。そのためこの
ISOタンクコンテナはダイセル化学工業への原料輸送ではないか。


2003.5新井駅 ダイセル化学工業(株)所有のタキ 18701・タキ3710(氷酢酸安治川口→新井〔ダイセル入〕)、またタキ3732もあり。

2009.1安治川口駅 JOTU671534_2 無 水酢酸専用

2010.11黒井駅 JOTU671532_1 無水 酢酸専用
 安治川口〜新井間で行われていたタンク車による氷酢酸輸送は、 ISOタンクコンテナ化されたようで安治川口駅と黒井駅の両駅で無水酢酸専用コンテナを目撃した。これらは全く同じコンテナではないが、共にJOT所有の 形式番号の近い両コンテナの目撃からコンテナ化は確実だと思われる。

▼その他の黒井駅に発着するダイセル化学工業叶V井工場 が荷主のコンテナ輸送
発 駅
発 荷主
品 目
着 駅
着 荷主
コ ンテナ
確 認・備考
東水島
日合
ゴーセノール
黒井
ダイセル化学
V18C
1999.4.2黒井 ゴーセノールはポリ ビニルアルコール。
日本合成化学工業(株)は水島工場あり。(→拙 web参照
黒井駅発送のダイセル化学工業が発荷主である12ftコンテナ輸送の目撃をこれまでしたことがない。年間1万トン程の輸送があるとのことなのに限られた地 域向けなのか。



■ 黒井駅に発着する日本曹達(株)二本木工場が荷主の鉄道貨物輸送      

 日本曹達(株)二本木工場はかつて二本木駅に接続する専用鉄道から大量の車扱・コンテナ輸送を行っていた。特に化成品タンク車輸送は同車所有の多数のタ キを 中心に各地に運用されていた。しかし二本木工場は主力の炭酸カリ事業が用途の殆どを占めるテレビのブラウン管向けが激減したため事業環境が悪化。2006 (平成18)年11月には香料や有機薬品などの原料となる金属ソーダの製造を停止した。更に2007(平成19)年4月に二本木工場の工業薬品事業を分社 化し「上越日曹ケミカル」を設立した。(『日経産業新聞』2006年11月27日付16面)

 また急激な需要構造の変化に伴うカリ電解関連製品生産体制の縮小、競争力低下が顕著になった飼料添加物メチオニンの生産停止及び委託生産への移行といっ た抜本的な生産体制の見直しが行われた。(日 本曹達(株)『第138期 年次報告書 平成18年4月1日から平成19年3月31日まで』3頁

 このような事業構造の大きな変化は鉄道貨物輸送にも大きな影響を及ぼし、二本木駅の専用鉄道からの鉄道貨物輸送は2007年3月で廃止された。

2003.5新井駅 安治川口駅常備の日本硫炭工業 (株)所 有の二硫化炭素専用タキ10112(返空安治川口→二本木〔日本曹達〕)

2010.11黒井駅 UT7C-5012 関西化成品 輸送(株)所有 二硫化炭素専用
 二本木工場からは苛性カリ、二硫化炭素、金属ナトリウムなどがタンク車によって発送されていたのだが、上述の事業体制の見直しによりこれらの製造そのも のを撤退・縮小したため、現在もコンテナによる鉄道貨物輸送が行われている可能性は殆どないのではないかと考えていた。しかし2010(平成22)年11 月、黒井駅において関西化成品輸送(株)の二硫化炭素専用コンテナを目撃した。これはまさにかつて二本木〜安治川口間でタンク車によって行われていた二硫化炭素輸送がコンテナ化されたものではないだろうか。



■ 黒井駅に発着する大同特殊鋼(株)及び理 研製鋼(株)の鉄鋼輸送      

 黒井駅はISOタンクコンテナによる化成品輸送の開始によって駅として大きく成長した感がある が、さらに充実・飛躍させた 輸送として大同特殊鋼(株)→理研製鋼(株)で開始された線材コイル輸送が挙げられよう。鉄鋼関係の輸送で日本海側の駅を着地とする輸送は、古くから車扱 輸送で活 発に行われ、船舶やトラックが中心の鉄鋼関係の輸送において、日本海側は鉄道貨物輸送が競争力を持っている地域であるようだ。さらに黒井駅は鉄鋼輸送にお いて着駅だけでなく、発駅としても機能し出しており、この大同特殊鋼や理研製鋼の輸送は目が離せない状況だ。

▼名古屋南貨物駅〜黒井駅間の線材コイル輸送
『日 経産 業新聞』2006年10月16日付13面
大同特殊鋼 線材コイル 鉄道輸送 環境負 荷軽く 専用コンテナ開発

 大同特殊鋼は日本貨物鉄道(JR貨物)などと共同で月内にも、愛知−新潟間の線材コイルの輸送に貨物鉄道輸送を導入する。線材コイルを貨車に積み込むた めの専用コンテナを開発した。環境負荷の少ない輸送手段に切り替える「モーダルシフト」の一環。国内の中長距離区間での鉄道利用を加速するため、コンテナ の形状などを自社製品を積みやすいように工夫した。
 愛知県内の大同特殊鋼の拠点から専用コンテナに積み、トレーラーで搬出。JR貨物が株主である名古屋臨海鉄道の名古屋南貨物駅か ら鉄道貨車に コンテナを積み替え、北陸ルートでJR貨物の黒井駅に 運ぶ。トレーラーで納 入先の理 研製鋼の柿崎工場(新潟県 上越市)に搬入する。
 専用コンテナは大同特殊鋼の持ち分法適用会社の丸太運輸などと開発した。積載量は10トン。工場でのクレーン作業でコイルを上から積み込めるように天板 をなくし、へりも低くした。搬送時にコイルを固定するためコンテナ内に支柱を取り付ける。風雨対策用のシートも設置。空コンテナを新潟から愛知に回収する 際は3−4段に重ねて鉄道貨車に積める。ふたのない線材コイル用コンテナを導入するのはJR貨物でも珍しい。
 大同特殊鋼が理研製鋼柿崎工場に納入している線材コイルは月間3千トン 程度と みられ、大型トレーラーで配送している。当面はこのうち月間2千トン程度をめどに鉄道輸送に移す。実績を踏まえて段階的に増やし、早ければ来年中の全量 シフトを視野に入れる。 この区間の物流に伴う二酸化炭素(CO2)排出は約8割の削減効果を見込める。
 大同特殊鋼はこれまでに東海−北陸 間の丸棒鋼材の配送でも貨物 鉄道を利用。納入先企業の理解も得ながら今後もモーダルシフトを検討する。

『MONTHLY かもつ』2007年6月号8頁
大同特殊鋼株式会社 知多工場
モーダルシフト月間6,000トンの目標を 計画通り達成

 大同特殊鋼(株)は今年4月、自動車の保安部品の素材として使われているコイル鋼の輸送を、トラックから鉄道に切り替えました。これにより環境問題に対 する 社会的責任を果たすために2003年度から取り組んできた月間6,000トンの製品を鉄道で運ぶ<a[ダルシフト拡大目標を達成しました。
 同社が、現在運用している62個の20ft無蓋コンテナは、回送する時に4段積みできるコンパクトさが特徴です。同社では環境問題への対応と同時に、年 々トラック輸送量が増大していく中で、いかにしてトラック輸送量を減らすかを物流効率化の課題としていました。そこで、工場が名古屋地区にあることから、 海上輸送の難しい日本海側へは、船ではなく鉄道へシフトすることを検討しました。最 初は棒鋼製品からスタートしましたが、今回はコイル輸送用に改良した 新たなコンテナを 製作しました。
 知多工場生産管理室主任部員の磯谷昌都さんと富田定雄さんは、コイル鋼輸送について「当初の目標は月間1,500トンでしたが、3月のダイヤ改正で輸送日数が1日短縮し たので、4月からは新潟方面向けのコイル製品全 量2,600トンを、モー ダルシフトできました」と、喜んでいます。
 名古屋南貨物駅から黒井駅まで輸送していますが、従来、南長岡駅で積み替えていたため到着まで2日かかっていたルートが、ダイヤ改正で黒井駅への直行列車ができて1 日で届けられるようになった のです。
 「輸送時の品質もトラックと遜色ありません。輸送日数の短縮で利便性が上がりましたから、納期面でもトラックに負けないようになりました」。
 今後はさらに製品のモーダルシフトについて対象地域を広げて取り組みたいと、話していました。

 素晴らしい!当初の目標通り、理研製鋼(株)向けの全量を鉄道輸送へモーダルシフトしたわけだ。尚、2003年度にスタートした棒鋼製品のモーダルシフ トは 名古屋南貨物→南長岡で行われているもので、月間3,000トンの輸送とのこと。(『JR貨物ニュース』2003年12月15日号2面)


2007.3黒井駅  線材コイルを載せて到着した UM14形式コンテナ

2007.3黒井駅 4 段積みで返送されるUM14形式 コンテナ

理研製鋼(株)柿崎工場
新潟県上越市柿崎区柿崎7402-2
 柿崎工場は 1935(昭和10)年に高速度工具鋼の溶解からの一貫体制によるドリル等切削工具の
専門工場として創設され、早くから「理研のドリル」の名声を確立。戦 後、製鋼部門を軸受鋼等に拡充し、ベアリング素材メーカーとしても定評を得ていたが、1984(昭和59)年以降は大同特殊鋼か ら素材の供給を 受け、さらに高品 質の製品を生産している。
<製 造品目> 特殊鋼部門/高炭素クロム軸受鋼、高速度工具 鋼、合金工具鋼、
ステンレス鋼等の引抜品・研磨品
切削工具部門/ ストレートシャンクドリル、テ−パシャン クドリル、特種ドリル
その他/各種異 形品、熱処理加工

▼黒井駅〜西岡山駅の鋼鉄線材・コイル輸送
 国土交通省による2004(平成16)年度の「環境負荷の小さい物流体系の構築を目指す実証実験」の第一次募集に理研製鋼葛yび大同特殊鋼鰍ェ応募し認 定された。
 上記輸送とは逆に黒井駅から発送される輸送である。
▽ 認定された計 画
実 験名称
新潟県黒井駅〜岡山県西岡山間鉄道活用実証 実験
実 験概要
・長距離トラック輸送を鉄道輸送に転換
・専用パレットにより荷崩れを防止
申 請者
(荷主等)
大同特殊鋼(株)
理研製鋼(株)
申 請者
(物流)
日本貨物鉄道(株)新潟支店
岡山通運(株) 中越通運(株)
実 験期間
2004(平成16)年8月〜2005(平 成17)年8月(1年間)
輸 送経路
 【現行】 新潟県中頚城郡柿崎←(トラック)→岡山県邑久郡長船
【転換後】新潟県中頚城郡柿崎←(トラック)→黒井駅← (鉄道)→西岡山駅←(ト ラック)→岡山県邑久郡長船
貨 物品目
長船行き:鋼鉄線材 コイル
柿崎行き:積み付け用品パレット
貨 物量
長船行き:6,000トン
柿崎行き:600トン

 『JR貨物ニュース』2004年7月15日号3面によると「荷役用機械を導入して大同特殊鋼(株)・理研製鋼(株)のコイルや線材を、汎用コンテナで 鉄道 輸送する」とのこと。
 つまり、私有無蓋コンテナを導入するのではなく、JR12ftコンテナで輸送を行うようだ。

 そして気になるのが着 荷主だ。調べたところ岡山県長船町内には目ぼしい企業は見当たらないが、長船町に隣接する備 前市畠田NTN(株)の 「自動車事業本部 岡山製作所」が存在する。備前市の中心部からは離れ、むしろ長船に近い場所に位置する同社を着荷主の候補にするのは無理があるだろうか・・・。
 さて、この実証実験は2005年8月までとのことだが、現在も継続しているのだろうか、その点も気になるところだ。



▼ 東水島駅〜黒井駅の線材コイル・ブルーム輸送

 理研製鋼(株)が着荷主と思われる輸送としては、さらに下記がある。ポイントとしては、取扱貨物が「線材コイル」である点だ。これらは上記の名古屋南貨 物→ 黒井の輸送と同じ品目であり理研製鋼(株)が着荷主である可能性は十分あろう。また黒井駅からユーザーまで「10km」とのことだ。黒井駅〜柿崎駅の営業 距離 は14.9kmで、理研製鋼(株)は柿崎駅の新潟寄り約1.2kmにあるため、黒井駅〜理研製鋼間は約16kmという計算になるが、まぁ約10kmと言え ない 距離ではないと思われる。

▽ モーダルシフト事例集 国土交通省 中国運輸局(2007 年1月)
●荷主企業
JFEスチール(株)西日本製鉄所
●モーダルシフトした取扱貨物
線材コイル、ブルーム
●導入時期
2005年(平成17)11月
●シフトの内容

 
●導入の経緯
@CO2排出削減対策でトラックから切り替 えた。
A荷崩れしやすい線材コイルを、振動の少ない鉄道コンテナに切り替えた。
●シフトへの工夫した点
(生産調整、出荷調整等)
治具を使用しており、その回収が発生するた め、治具の回転を睨みながら
の生産・出荷調整を行っている。



■ 黒井駅から発送されるシュレッダーダ スト輸送


2007.3黒井駅  同和通運鰹蒲LのUM13A- 126
『JR 貨 物ニュース』2004年1月15日号5面
マル環コンテナ 東へ西へ 新潟
自動 車部品工場から回収されたシュ レッダーダスト
月8〜10個、無蓋私有コ ンテUM13Aに積み込ま れ、
黒 井駅か ら大 館の処理施設へ送られる。」


さて、問題は「自動車部品工場」だ。
上越界隈の自動車部品メーカーで探してみた。
太 平洋 精機(株)上越工場
 上越市三和区野
日 信工業(株)直江津工場
 上越市上千原



■黒井駅着の三菱電機(株)のブラウン管 輸送     

『JR 貨 物ニュース』2001年11月1日号5面
三菱電機(株)映像表示デバイス製作所

梅小路−黒井、長崎間
 京都府の長岡京市にある三菱電機(株)映像表示デバイス製作所では、パソコンディスプレイ用のブラウン管を鉄道コンテナで長崎のユーザー工場や、黒井のユーザー指定倉庫に送っている(黒井向けの製品は直 江津港から中国に輸出される物も含む)。
 発駅は同製作所から40分ほどの梅小路。昨年度の同製作所鉄道コンテナ利用実績は、黒井、長崎行き合わせて上期で3,300個、下期で3,600個だっ た。うち梱包材返送は約4分の1である。

▽積載効率の確保に腐心
 三菱電機(株)映像表示デバイス製作所がブラウン管輸送に鉄道コンテナを使い始めたのは、5年前。CRT統括事業部と呼ばれていた頃だ。
 多くが輸出用なので、梱包は基本的に40ft海上コンテナに合うサイズで作られている。そのため、当時需要の中心を占めていた17型を18D形式コンテ ナなどに積むと積載効率が悪い。だが背高で幅も広い19A形式コンテナならうまく積めると、コンテナの形式を限定して利用を開始した。
 その後、同社は鉄道コンテナの積載効率や作業性の向上をJR貨物に求め、また結露を防ぐ通風機能などについても要請した結果、JR貨物が背高タイプの20B形式コンテナを開発した経緯もある。
 同製作所にはリードタイムを問わない駅留置品もあるが、急ぎのオーダー等の関係で日程ギリギリに出荷するものもある。黒井行きは翌日着に改善されて、ほ ぼ100%を鉄道で送られるようになった。

1999年4月2日に黒井駅で下記コンテナの荷票を目撃。品目は記載されていなかったが明らかにブラウン管輸送だろう。
発 駅
発 荷主
品 目
  着駅
着 荷主
コ ンテナ
確 認・備考
梅小路
三菱電機

黒井
上越デバイス
20B
1999.4.2黒井 多数あり
こちらのweb サイトでは、(株)上越デバイスはブラウン管加工をしているようだが、その他に詳しいwebサイトが見つからず詳細不明。
そもそも輸出用含めて近年ブラウン管の需要は急減したと思われ、現在この輸送は消 滅したの ではないかと思われる。



■ 黒井駅から発送される佐渡のおけさ 柿輸送     

『JR 貨 物ニュース』2001年11月1日号7面
▼佐渡からおけさ柿
 佐渡特産おけさ柿のコンテナ出荷が、10月2日、例年よりやや早くスタートした。
 種が無く、とろけるような食感が特徴のおけさ柿。これらは、アルコールや炭酸ガスで渋抜きされたあと箱詰めされ、12ftの通風コンテナに積み込まれる。
 佐渡には両津港と新潟港、小木港と直江津港を結ぶ2つの鉄道コンテナ複合一貫輸送ルートがあり、新潟(タ)・黒 井駅から鉄道輸送。
 輸送先は、北海道が70%京浜地区が15%で、その他がもろも ろだ。
 出荷は毎年10月中旬〜11月中旬がピーク。多い時で、日 発50〜60個の コンテナが運ばれる。

『JR 貨 物ニュース』2009年10月15日号2面
▼貨物バラエティ 鉄道輸送中に渋抜き 佐 渡のおけさ柿
 新潟地方で栽培される種無しの渋柿、刀根早生(とねわせ)と平核無(ひらたねなし)は、「おけさ柿」として流通している。9月29日、佐渡のJA羽茂 (はもち)では、おけさ柿の収穫が始まった。
 選果場に集まった柿は、密閉装置の中で炭酸ガスとアルコールで35〜40時間かけて渋抜きをして、選果ラインで計測、選別、箱詰めが行われる。
 今年のコンテナ輸送の予定量は約2,500トン。 炭酸ガスで渋抜き をした柿の需要が多いこともあり、北海道向けなど、8割はこの方法を採る。
 かつて、鉄道の輸送時間を活用して、焼酎で渋を抜く方法が主流だった。今も残りの2割はこの方法で行われる。
 JA 羽茂営農課の 渡辺昌彦指導販売係長は「箱詰めを終えた柿に、95度のアルコールを21CCたらしてから密閉します。気化するので、箱が損傷することはありませんが、段 ボール箱は強度のあるものを使っています。関西方面向けが多いですが、鉄道コンテナの輸送中に渋が抜け、市場に出る頃にちょうど甘くなります。収穫が集中 するので、渋抜きを2通りにすることで、販売時期の平準化もできます」と話した。
 羽茂選果場から小木港に運ばれフェリーで直江津港へと輸送されたコンテナは、黒 井 駅から鉄道に載り、各地へ運ばれる
 佐渡では、渋を抜くことを「アルコールで醂す(さわす)」という。甘くなった柿は醂柿(さわしがき)という。コンテナ輸送中に醂柿ができている。
  ●
 コンテナ手配を担当するのは佐渡汽船運輸梶B新潟支店万代島営業所の月岡昭二通運部長は、「北海道から夏野菜が輸送されてくる8月に入ると、その空コン テナを集めます。コンテナの移動やフェリーで運ぶために、港湾荷役用トラック100台を活用して、佐渡の両津港、小木港、赤泊港へ輸送し出荷に備えていま す」と話した。




■ 黒井駅に発着するその他のコンテナ 輸送     

発 駅
発 荷主
品 目
着 駅
着 荷主
コ ンテナ
確 認・備 考
黒 井
トライネット
合成ゴム
東京(タ)
中央 ISOタンクコンテナ
1999.4.2黒井
黒 井
トライネット
メチオニン
東京(タ)
中央
ISOタンクコンテナ
1999.4.2黒井 メチオニンは日本曹 達(株)二本木工場で製造
京葉久保田
出光石油化学
合成樹脂
黒 井

ICPU 出光 石油化学
2004.8.29京葉久保田
川崎貨物
セントラル化学 
工業薬品
黒 井

UR4 JOT
1999.4.2黒井
姫路貨物
ユニ
ポリ
黒 井

19A 19B
1999.4.2黒井 複数
新南陽
東ソー(株)
トーソーパール 
黒 井

UR18A JOT
2003.5.10黒井 「トーソーパー ル」は東ソー(株)の粒状苛性ソー ダ
新南陽
日本ゼオン(株)
ラテックス
黒 井

ISOタンクコンテナ
2004年開始予定(『JR貨物ニュース』2004年12月1日号)
下関
三井化学
トリポリ
黒 井
第一工業 
18D
1999.4.2黒井 トリポリ燐酸ソー ダ?


2001.9黒井駅
HOYER所有の4‐THIAPENTANAL専用ISOタンクコンテナ

2007.3黒井駅
出光石油化学(株)のISOコンテナ、NRSのアセトアルデヒドコンテナ




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