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株式会社クボタ
2017.5.7作成開始


 鋳物から農業機械、建設機械、住宅建材まで幅広い事業分野を抱える(株)クボタであるが、ここでは小田原工場で製造される建材(カラーベスト)の鉄道貨 物輸送を中心に纏めることにする。

▼短距離車扱列車で東京をバイパス 商品を安定供給  (『Monthlyかもつ』1989年12月号、p2-3)

 久保田鉄工(株)小田原工場では、西湘貨物駅と越谷(タ)駅間の約100km余りの短距離区間で車扱列車を利用している。スレート製の屋根材を埼玉県越 谷市周辺の得意先に安定供給している。
 正月を除く毎日、パレット荷役が便利なハワム車で1日15車を利用している。また越谷(タ)駅に設けたテントハウスをこの地区の流通センターと位置付け ている。

 工場でトラックに屋根用建材を積み込み、西湘貨物駅の上屋内で一貫パレでハワム車に積み込まれる。小田原工場は西湘貨物駅に隣接し、将来専用線での出荷 も検討中である。

▼だから鉄道コンテナで (株)クボタ 小田原工場 (1994年 2月7日付『運輸タイムズ』3面)

 (株)クボタ小田原工場は1992年の夏、福島県の取引先へトラックで輸送していた建材(屋根材)を鉄道コンテナ輸送に切り替えた。これは1987年以 降、JR貨物が全国で推進してきたコンテナ輸送拡大策に呼応したもので、輸送力の安定確保、長期視点に立った物流費の抑制、首都圏をトラックで通過するこ とによる道路混雑の回避の3点が目的。着駅に在庫、販売の拠点となるSP機能を持った施設をJR貨物との話し合いで設置したことも、コンテナ輸送実現の要 因の1つ。

 福島向けコンテナ輸送の発駅は西湘貨物、着駅は郡山貨物ターミナル駅で、1日の輸送個数は5〜6個、1ケ月では100個を超える。

 コンテナ輸送に転換した理由は、以下の通り。
@輸送の安定確保…トラックは景気変動に影響されやすく、景気が上向くと輸送力が足りなくなるなど不安定要素が多いが、コンテナは輸送力の不安が無く、適 正ロットで出荷可能。
A物流コスト対策…小田原工場では、運賃が同レベルならコンテナ輸送にするのが基本方針。鉄道運賃が経済動向で左右されないため、長期的視点で見るとコス ト抑制効果がある。
B首都圏の交通渋滞回避

 また着駅の郡山貨物ターミナル駅構内に在庫・販売の拠点となる施設をJR貨物との話し合いで設置できたことが転換の大きな要因となった。

 同工場によると、この施設は製品保管、物流拠点として利用しており、受注の波動を吸収する機能を持っており、在庫調整に役立っている。同工場の建材は、 工場から着駅(拠点)♀ヤの輸送であり、JR貨物の協力で着駅を利用しているが、これが無かったらコンテナ輸送が実現しなかったという。

 郡山(タ)駅だけでなく宮城野、南松本、川崎貨物、越谷(タ)、赤塚の着駅でも同じように駅施設を物流拠点として利用している。

 同工場は1994年春には千葉県の取引先向けもトラックからコンテナ輸送に替える。都内の道路混雑による納品の遅れを解消するのが狙いで、千葉貨物ター ミナル駅に着ける。現在、駅施設の利用についてJR貨物と話し合っている。

 同工場では全国各地へ建材をコンテナ、貨車で鉄道輸送しており、1ケ月のコンテナ利用は250〜300個、ハワム1日15両。東京など関東の主要消費地 へはトラック輸送しているが、遠隔地はコンテナが主力輸送手段。

 製品は、小田原工場からトラックで西湘貨物駅へ運んで同駅構内で保管し、コンテナ、貨車へ積んでいる。

▼調達物流加え鉄道で三角輸送 (1996年2月26日付『運輸タ イ ムズ』2面)

 屋根材などを製造している(株)クボタ小田原工場は現在、西湘貨物駅から越谷貨物ターミナル駅へハワム12〜13車、赤塚駅へハワム3車で、屋根材を車 扱輸送しているが、赤塚駅行きを1996年3月のダイヤ改正でコンテナ化する。JR貨物のコンテナ化推進にクボタが同意したもので、改正後は到着駅を赤塚 から水戸に移す。

 JR貨物は、越谷(タ)駅行きについても1996年3月のダイヤ改正でコンテナ化を希望していたが、輸送量が多いため帰り荷の確保を目指してコンテナ化 は1997年春に先送りし、原材料輸送をコンテナ化して、西湘貨物−越谷(タ)−横浜本牧各駅間の三角輸送を実現したいと提案。クボタはこの提案を受け、 4月には横浜港に陸揚げしている原材料のコンテナ輸送を開始する見込み。

 クボタは、これまでコンテナの利用拡大を、到着駅構内に保管施設を確保しながら推進してきた。同社が構内に保管施設を持つ駅は、発駅の西湘貨物駅をはじ め越谷(タ)、郡山(タ)、宮城野、南松本など。いずれもJR貨物の協力で構内に施設を借りており、そこで受注の波動調整を行う。

 車扱の到着駅である赤塚にも保管施設があり、当初、再開発事業のためこの施設が使用できなくなると考えられていたが、当面、施設を継続利用できることに なり、水戸駅到着になっても製品を赤塚駅の保管施設まで横持ち輸送する予定。

 ハワム3車はコンテナ9個になるので、水戸から赤塚まではコンテナのまま運ばず、水戸駅で10トントラックに積み直す。製品の性質上、早くからパレット 化が進んでおり、水戸駅で新たに積み替えることになっても、さして負担にならないという。ハワム車からコンテナへの変更についても、同社の製品は重量品な ので体積が小さく、ハワム車でも容積に余裕があり荷役作業も同じなので問題無い。

 ただ越谷(タ)駅行きを全量コンテナ化すると赤塚行きと合わせ、50個近い空コンテナを西湘貨物駅で用意する必要がある。今でも同駅では発送が到着を上 回るため、空コンテナを他駅から回送しており、JR貨物神奈川営業支店はコンテナを効率的に運用するため、原材料を鉄道コンテナで到着させられないかと同 社に提案した。

海コンのトレーラー輸送 徐々に鉄道へ移す

 クボタ小田原工場には、横浜港に陸揚げした原材料が海上コンテナで到着しているが、これを港で鉄道コンテナに積み替え横浜本牧駅から西湘貨物駅に輸送す ると、横浜本牧駅には石巻港や水戸駅から越谷(タ)駅経由で輸出用の紙製品が到着しているため、西湘貨物−越谷(タ)−横浜本牧の3駅間の全ルートに貨物 が載る三角輸送が実現。3ルートとも比較的短距離でトラックとのコスト競争が厳しいが、全行程の財源を確保できれば、競争力がアップする。

 1995年秋、この提案を受けたクボタは1996年1月、横浜港に20ftの海上コンテナで到着した原材料を横浜本牧駅で鉄道コンテナに積み替え、西湘 貨物駅までテスト輸送した。原材料はフレコン入りでパレット積みの上、シュリンク包装してあり、荷崩れ発生も無く技術的にも問題が無い。同年4月以降から 徐々に海コンのトレーラー輸送を鉄道コンテナに転換していきたい考え。同社が鉄道を利用するのは環境負荷の少ない輸送手段であることに加え、鉄道の輸送力 が安定しているため業務を平準化できるメリットが大きいためだという。

 JR貨物神奈川営業支店では、テスト輸送は現行ダイヤの横浜本牧駅から東京(タ)駅中継で西湘貨物駅まで運んだが、本格輸送開始後は横浜本牧駅から西湘 貨物駅まで直行ダイヤとする。クボタ小田原工場では従来から全国各地にコンテナを利用しているため、新たにコンテナ化したものと合わせ、一列車を新たに編 成できる見込み。同支店では、原材料の帰り荷も発送と同等量誘致し、往復列車で運行する構想ももっている。


(株)クボタ 小田原工場 輸送コスト節減に利用 屋根材を鉄道コンテナで 西湘貨物駅から月 間700個 (1999年1月18日付『運輸タイムズ』3面)

 小田原工場は、1960年の開設当初から建材工場として屋根材やビニルパイプ等を生産してきた。鉄道コンテナはこのうち屋根材の社内倉庫(DP)間一次 輸送に輸送コストの節減と輸送計画を立てやすい時間の正確さで利用している。

 同工場では、屋根材の国内物流は住宅機材事業本部の工務課が管理し、鉄道コンテナは西湘貨物駅から各地の一次DPに向け発送、コンテナの発送作業は西湘 貨物駅に駐在している神奈川エルシー(株)が元請けで行っている。

 また小田原工場のコンテナの発送を一手に引き受けるこの神奈川エルシーは、同工場の外部倉庫の役割も兼ねているため、工場で生産され出荷される屋根材や その施工部品は、コンテナに積み込む前に同貨物駅内で一時保管される。

 このためコンテナへの荷物の積込は、貨物駅構内で行われており、駅が工場のすぐ裏手にあるため、かつて車扱で荷物を運んでいた当時は、駅から工場内まで 専用線を敷いていたこともある。

 しかし車扱をコンテナ輸送に転換後は専用線を廃止。また1997年2月には越谷(タ)駅のDP向けだけ残っていた車扱貨物も全てコンテナ化。小田原工場 で利用する鉄道コンテナの利用割合は現状、倉庫間の一次輸送に関しては約80%〜90%で、同工場でコンテナを多用するのは、従来から屋根材の保管倉庫に ついてはコンテナ輸送を前提として、各地とも貨物駅を中心に転換してきたため。

 小田原工場から出荷される鉄道コンテナの利用個数は現在、1日に約34個から35個あり、工場の月平均稼働日数が20日としても1ケ月680個から 700個になり、コンテナの発送先も多岐に渡る。

 そのうち西湘貨物駅から発送されるコンテナの行き先は主なところで、越谷(タ)、水戸、郡山(タ)、宮城野、仙台港、札幌(タ)、広島(タ)、福岡 (タ)等で、比較的コンテナ輸送に依存している地域DPは全国で10ヵ所ぐらいはあるという。

 しかしリードタイムの地域差には不満もあり、特に利用頻度の少ない地方の貨物駅は不便になってきており、トラック運賃も下落している中、こうした状況が 続く限り、同工場での今後のコンテナ利用は減ることはあり得るが、さらに増えることはあまり考えられないとしている。



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