日本の鉄道貨物輸送 と物流:表紙へ
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鐘紡株式会社
2020.3.10作成開始

《目次》
はじめに
防府工場
その他工場


■はじめに  
 日本屈指の名門企業であった鐘淵紡績(株)〔鐘紡(株)〕は、戦前には日本一の売上高を誇った時期もあるなど栄光を極めたが、戦後は繊維事業から化粧 品、菓子、食品、製薬など多角化を進め、ペンタゴン経営≠ニして知られた。しかし、その多角化が赤字事業の温存に繋がるなど経営の合理化を妨げ、最終的 に会社の解体にまで至ってしまうのは皮肉なものである。ライバルの大手繊維メーカー各社、例えば東レ、クラレ、帝人、東洋紡、日清紡などは繊維事業で培っ た技術をベースに特色ある素材メーカーとして生まれ変わっており、鐘紡の多角化は結果的にはシナジーを無視した無謀なものだったのであろう。

 そんな鐘紡だが、工場は全国各地に点在し、他の繊維メーカー同様に近隣の駅に専用線を設置することも多かった。しかし鐘紡が消滅した今では、工場そのも のが姿を消していることが多く、専用線の痕跡すら辿れない所も少なくない。最早、そこで行われていた輸送の実態を調べる資料を見つけることも困難で、不明 なことが多い。そんな中にあって、防府工場のみ鉄道コンテナ輸送の興味深い実態が『運輸タイムズ』によって明らかになっている。

 現状では鐘紡の鉄道貨物輸送について、全体の解明は難しいが、防府工場以外の資料も何とか発掘していきたいところである。


■防府工場  

▼ナイロン 糸原料 輸送手段に鉄道コンテナ 防府貨物から南福井へ (1996年6月24日付『運輸タイムズ』5面)

 鐘紡(株)防府合繊工場は1995(H7)年度まで、ナイロン糸を防府貨 物駅から南福井駅へコンテナ輸送していた。こ れを1996(H8)年度から糸に 加工する前の原料の段階で出荷し、納品先工場でナイロン糸に加工することにした。この結果、糸原料の輸送が新たに発生し、輸送手段として鉄道コンテナを選 んだ。

 同社は財務体質の再建策として事業の再構築を推進している。その一環で繊維部門の生産効率化策としてナイロン糸原料と、糸原料を加工する糸製造を分離独 立させ、 糸の製造を北陸合繊工場へ移管した。

 ナイロン糸当時の鉄道コンテナ利用は、1ケ月10個台程で、例えば1995年度4月は16個、5月は8個だった。これを糸原料に転換した1996年度は 利用が伸びており、4 月120個、5月156個の実績である。糸当時はトラックが主体の輸送だったのを、鉄道コンテナメインに切り替えたためで、日・祝日を除く月〜土曜日、1日最大6個の輸送を計画 している。鉄道輸送の特性である定時定型によって安定供給を確保することや、コンテナの保管機能を利用して物流の効率化を図ることを狙っている。

 試験輸送では作業性、安全性を確認した。糸原料(樹脂チップ)はフレコン(825s)入りで、12ftコンテナに6袋積載するため18Dコンテナを使用 している。 従来のフレコン(トラック輸送に使用)ではサイズ的に6袋積載することができないため、細身のサイズに変更し、背丈を高くした。

 試験輸送では新しいサイズにしたフレコンの到着地における状態を調べたが荷崩れは無く、安全に輸送できることが分かった。背高タイプの18D使用は、フ レコンを背高にしたためフレコンの紐にフォークリフトのツメを差し込んで行う積卸しの作業性を調査するためだが、到着地における作業に問題ないことを荷主 のカネボー物流(株)、JR貨物、通運が確認した。

 また、受け入れ工場(原料倉庫)の保管スペースに余裕がない場合、JR貨物の輸送閑散期にはコンテナの保管調整機能を活かすことで着駅頭に一時留置する ことができる。通運に配達指示を行うことによって受け入れ工場は必要とする時に必要量の供給を受けられる。更にSP倉庫中継の輸送が省略できるために中間 物流費が抑制でき、在庫管理の簡略化も図ることも可能となる。

 尚、防府合繊工場は顧客向けにポリエステル樹脂(原料チップ)を、防府貨物駅から八王子駅1日10個の定型枠を組んで専用ホッパコンテナで輸送する一方、八戸貨物駅にはアクリル綿を汎用12ftコンテナで月間40個輸送している。また、1995年秋にはトラックから転換した フレコン入り原料チップを新座貨物ターミナル駅へ汎用 12ftコンテナで月間40個輸送している。今回、糸原料の コンテナ輸送を実施したことにより、同工場の1日当たりのコンテナ発送個数は20〜25個となった。

▼糸の生産拠点 北陸に移す コンテナで原料樹脂 鐘紡防府工場 (1997年 4月28日付『運輸タイムズ』5面)

 鐘紡(株)防府工場は防府貨物駅から全国16貨物取扱駅に コンテナ輸送を行っており、1996年度の個数は約3,600個で、 95年度を約8%上回った。主要着駅は八王子南福井金沢八戸貨物安治川口名古屋(タ)など。

 南福井駅向けの個数は、96年度は約1,320個で対前年 380%と増加した。金沢も増加して前年の約890個が約2倍の1,560 個となり、75%の伸びとなった。金沢向けの増加も、需要の発生に伴い出荷量が大幅に増えたためである。

 北陸地区へは汎用12ftコンテナを使用しており、原料樹脂はフレコン詰め。関東はポリエステル樹脂専用のホッパコンテナ(UH6A形式)を使用してお り、バラ化が実現している。八王子駅の着通運はダンプアップ機構付きの専用 トラックで配送を行っている。防府貨物駅〜八王子駅間を専用運用しており、ダイヤと枠を決めて定型化している。

 同工場では「トラック輸送に比べ鉄道は所用日数に若干問題はあるが、北陸の大量需要の向け先へは、早めに計画を立てて出荷を行っているため、供給上リー ドタイムの問題は生じていない」と話している。

2009.9熊谷(タ)駅

 UH6Aコンテナによるポリエステル輸送は、防府貨物駅が発駅だったが、2000 年秋より南福井駅に発駅が変更された。到着は 引き続き八王子駅で日野市内のフィルムメーカーに納入さ れる。日発8個の 輸送量。(参考文献:『JR貨物ニュース』2000年11月1日号)

 これはカネボウ防府工場が発荷主だったものが、越前ポリマー(株)(福 井県鯖江市水落町47字三反田30-1)に変更になったことによるものである。同社は、2000(H12)年4月にカネボウ合繊(株)の固相重合設備を資 産取得し、ボトル用ポリエステル樹脂生産を開始した。

 また越前ポリマーの設立時は、三菱化学(株)50%、カネボウ50%の出資比率だったが、2005(H17)年10月には三菱化学の出資比率が95%と なった。さらに2017(H29)年度に越前ポリマーは、生産設備を完 全に停止し、ペットボトル原料の樹脂などの生産は三菱化学(株)四日市事業所等に集約することになった。

 八王子駅の着荷主は、日野市に工場があるコニカ(株)と思 われるが、2006年3月に写真用フィルムから撤退しており、その頃までにこの輸送は終了したと 思われる。
 一方、熊谷(タ)駅に到着する分の着荷主は不明だが、例えば東洋製罐 (株)埼玉工場(埼玉県比企郡吉見町下細谷950-2)は飲料用PETボトルを製造しており、着荷主かもしれない。


■その他工場  

駅 名
専用者
作業
キロ

S42
備 考
静岡
鐘淵紡績(株)
1.5

専用鉄道
南四日市
鐘淵紡績(株)
0.4


高岡
鐘淵紡績(株)
1.5

高岡、二塚間途中分岐
福知山
鐘淵繊維(株)福知山工場
0.1


防府
鐘淵紡績(株)
3.2


中津
鐘淵紡績(株)
0.3


丸子鐘紡
鐘淵紡績(株)
0.8

上田丸子電鉄





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