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苅田港駅  〜石炭、石灰石、セメント、自動車部品と主力到着品目が流転を続けた貨物駅〜
2015.9.26作成開始
<目次>
はじめに
苅田港駅関連の年表
苅田港駅の専用線概要の推移
石炭輸送
石灰石輸送
セメント輸送
日立金属(株)の輸送
自動車部品輸送


■はじめに  
 北部九州の代表的な港湾と言えば、関門港や博多港であることは異論を挟まないだろう。両港は外貿コンテナの取扱量が多く、国際拠点港湾に位置付けられ、 数多くの外航・内航の定期コンテナ船が寄港している。一方、同じ福岡 県内には「苅田港」という重要港湾も存在している。定期コンテナ航路は無く、コンテナ埠頭も無いためか、やや地味な印象を持たれがちだが、苅田港には三菱 マテリアル(株)、宇部興産 (株)、麻生セメント(株)といった各セメント会社の主力級の製造拠点や日産自動車(株)九州工場などが立地しており、産業港湾として確固たる地位を占め ている。

 一方、鉄道貨物輸送における同港の拠点として、「苅田港駅」が存在していたのだが、2005年1月をもって貨物列車の運行が中止された。その後もコンテ ナ荷捌所として活用されていたが、その機能も無くなり実質的に廃止されてしまった。しかし廃止に至るまでの道のりは複雑で、石炭の積み出し港であった苅田 港への貨物線として戦時中に開業、戦後も石炭積み出しの拠点として活躍した。しかしエネルギー革命の進展により、昭和40〜50年代にかけてセメント工場 向け石灰石の到着とセメン ト積み出し拠点へと変化し、更に平成に入りセメントの輸送が終焉。一時休止状態を経て自動車部品の到着を主眼としたコンテナ駅へと生まれ変わった。

 福岡や大分両県を中心に北部九州は、日産、トヨタ、ダイハツといった自動車メーカーの生産拠点が相次いで進出し、関連する自動車部品の製造・物流拠点の 新設も活発である。その一翼を担う拠点として苅田港駅は再生したわけだが、結局15年ほどの活躍に止まった。

 苅田港駅がコンテナ取扱駅にリニューアルされたのは、当時の北九州地区の鉄道コンテナ輸送の拠点であった浜小倉駅の構内が狭隘で、取扱量の増加に対応で きないことの救済目的であった。そのため、2002年3月に門司地区に最新鋭設備と広大な敷地を備えた北九州(タ)駅が誕生した時点で、苅田港駅の命運は 決まったと言えよう。

 第15回の「貨物取扱駅と荷主」は、主力取扱品目の流転の果てに営業を終えた薄幸の貨物駅=u苅田港」を取り上げることにする。

2002.8苅田港駅


■苅田港駅関連の年表  
年 月
内 容 (赤字:苅田港駅関連)
1920(大 09).05
豊国セメ ント(株)苅田工場(現、三菱マテリアル(株)九州工場)操業 開始
1938(昭 13)
筑豊炭の 積出港として、苅田港の修築計画が閣議決定
1944(昭 19)
岸壁桟橋 一部竣工し送炭開始
1944 (昭19).09
苅 田港駅(かりたこう えき)として開業
1945 (昭20).05
苅 田港駅廃止、苅田港 事務所(かりたこうじむしょ)開業
1949 (昭24).06
苅 田港事務所廃止、苅 田港駅(かりたこうえき)開業。苅田港線の起点を行橋駅から小波瀬駅に変更
1951(昭 26)
重要港湾 に指定(同年、特定重要港湾に指定)
1956(昭 31)
九州電力 (株)苅田発電所の発電開始
1959 (昭34).10
「か んだこうえき」に 呼称変更
1960 (昭35)
県 営臨港鉄道で石炭輸 送開始
1964(昭 39).06
麻生産業 (株)(現、麻生セメント(株))苅田工場操業開始
1964(昭 39).12
宇部興産 (株)苅田セメント工場操業開始
1968(昭 43)
貿易港と して開港
1969(昭 44)
木材輸入 港の指定
1972(昭 47)
豊鋼材工 業(株)苅田スチールコンビナート(現、苅田工場)本格操業開 始
1973(昭 48)
日産自動 車の進出に合わせて日立金属(株)苅田分工場を建設
1974(昭 49).06
日本セメ ント(株)苅田包装所新設
1975(昭 50)
日産自動 車(株)九州工場一部完成、操業開始
1976(昭 51).11
トピー工 業(株)系列の九州ホイール工業(株)設立
1976 (昭51).12
勾 金駅接続の日本セメ ント(株)香春工場の専用線が開通し勾金〜苅田港間にセメント列車運転開始
1977(昭 52).06
日産自動 車(株)九州工場完成
1978(昭53).02
石原町:東洋セメント(株)〜苅田港:宇部興産(株)に石灰石専用列車1往復新設
苅田港駅到着の石炭輸送廃止
1980(昭 55)
日立金属 (株)戸畑工場が苅田に移転し九州工場に改称
1989 (平元).07
勾 金駅発、苅田港駅着 の日本セメント(株)のセメント列車の輸送終了
1990 (平02).10
苅 田港駅でコンテナ取 扱いを開始
2004(平 16).03
香春太平 洋セメント(株)が解散、セメント出荷は麻生セメント(株)に 生産委託
2005 (平17).01
苅 田港駅の貨物列車発 着が廃止。日立金属(株)専用線が廃止
2006(平 18).01
トヨタ自 動車九州(株)苅田工場操業開始(エンジン工場)
2006(平 18).02
東九州自 動車道の北九州JCT - 苅田北九州空港IC間開通
『苅 田港要覧 平成27年版』、『セメント年鑑』、『貨物輸送年報』、各社webサイト、Wikipediaを参照)



■苅田港駅の専用線概要の推移  
専  用 者
第 三者利用者
総 延長
キロ

S58
S50
S45
S42
S39
S36
備   考
上田鉱業 (株)
山一運輸 (株)
古河鉱業(株)
三井鉱山(株)
日豊石炭販売(株)
0.8
×
×




S45: 一部使用休止
山一運輸(株):S42〜S36
福岡県

2.6






公共臨港 線
福岡県
三井鉱山 (株)
(株)上組
0.3






三井鉱山 (株)は真荷主
三井鉱山 (株)
(株)上 組
0.3






国鉄側線
日本セメ ント(株)
末広海運 (株)
2.4






専用貨車 に限る
九州電力 (株)
九州火力 工業(株)
日本通運(株)
材 料線1.7
石炭線1.9
×
×




九州火力 工業(株)は真荷主
日豊石炭 販売(株)
国土産業 (株)
三井鉱山(株)
九州商運(株)
0.1






国土産業 (株)は真荷主:S58〜S50
三井鉱山(株)、九州商運(株)は真荷主:S45〜S36
国土産業 (株)
日産自動 車(株)九州工場
苅田港海陸運送(株)
0.2






一部国鉄 側線
日産自動車(株)九州工場は真荷主、S58のみ
専用者は九州商運(株):S42〜S36 アッシュ線:S39〜S36
麻生セメ ント(株)

6.4
×






九州電力 (株)
九州火力 工業(株)
3.5





発電線に 接続
九州火力工業(株)は真荷主、S50のみ
専用者は西日本共同火力(株):S45〜S39
宇部興産 (株)
(株)上 組
2.6







○:存在 △:使用休止 ×:記載無し −:未開通


■石炭輸送  



■石灰石輸送  

荷主
発駅
着駅
1980年度
1981年度
住友セメント
石原町
苅田港
171,240トン
155,130トン
(『貨物輸送年報』門司鉄道管理局)

荷主
発駅
着駅
1980年度
1981年度
三井鉱山
船尾
苅田港 374,498トン
270,859トン
(『貨物輸送年報』門司鉄道管理局)

荷主
発駅
着駅
1980年度
1981年度
日鐵鉱業
船尾
苅田港
173,060トン
166,658トン
(『貨物輸送年報』門司鉄道管理局)


■セメント輸送  

荷主
発駅
着駅
1980年度
1981年度
日本セメント
勾金
苅田港
589,878トン
621,148トン
(『貨物輸送年報』門司鉄道管理局)

1985年3月ダイヤ改正では、勾金〜苅田港に3本/日のセメント列車の設定あり



■日立金属(株)の輸送  

▼10月以降、専用線から コンテナ輸送量も増加 日立金属九州工場  (1990年6月18日付『運輸タイムズ』3面)

 日立金属(株)九州工場は1990年10月以降、苅田港駅分岐の専用線から製品のコンテナ輸送を開始し、現在浜小倉駅からの輸送より数量を増やす計画。

 今秋、JR貨物が苅田港駅でコンテナ取り扱いを開始するのに合わせて専用 線を敷設、同線からの輸送に切り替えるもの。
 同工場は昨年から関東向けの自動車部品の一部を船舶、トラックからコンテナに移し現在、1カ月に約350個のコンテナで宇都宮(タ)、越谷(タ)その他 の駅に輸送している。

 10月以降の輸送量は、地元運送事業者等との絡みではっきりしていないが、浜小倉駅からの出荷より増える見込みで、輸送先も中部地区などへ拡大する。コ ンテナによる輸送量を増やすのは、顧客の小ロット・多頻度納入の要請に、スピードがあり発着時間が明確なコンテナ輸送で対応する。

 現在、主力送り先の宇都宮(タ)駅では駅頭でコンテナから製品を取り出し、顧客へ必要量をトラックで納入しており、保管スペース削減効果を挙げている。
 自動車部品は鋳造品を中心に各種あり、専用ボックスパレットに詰めて、12ftコンテナに6パレット積んでいる。



■自動車部品輸送  
 日産自動車(株)は、関東地方に次ぐ生産拠点として九州工場を苅田港に新設した。一部操業開始は1975年4月である。同社と苅田港駅の縁は深く、操業 開始直後から鉄道貨物輸送を利用したようだ。

 国鉄時代には、苅田港〜相模貨物間でワキ5000形を用いて自動車エンジン輸送を行っていた。10数種類のエンジンを固定積載できる特殊パレットを用い て遠隔地工場間の往復輸送を行っていた。(『貨物』1981年5月号、目次)
  おそらくは九州工場と今は無き座間工場の間の工場間輸送が行われていたものと思われる。

 モノフォトショップ添田カメラのwebサイトに1981年 当時の苅田港駅の貴 重な写真が多数掲載されている。その写真の中にワキ車の入れ替えも含まれており、自動車部品輸送用のワキであろう。

▼九州向け自動車部品をカーフェリーから転換 (株)東京精鍛工所 六日町工場  (1994年2月28日付『運輸タイムズ』5面)

 (株)東京精鍛工所六日町工場(新潟県六日町)は昨年8月、関東へトラック輸送してカーフェリーで九州へ送っていた自動車部品を、鉄道コンテナ輸送に切 り替えた。週2便のカーフェリー輸送に比べて、コンテナは毎日輸送できるため顧客のニーズに合わせた納品ができ、品質保全(カーフェリーでは海水などによ る腐食の心配がある)にも効果があるほか、関東へのトラック輸送が無くなったため、物流コストが節減された。発駅は南長岡、着駅は苅田港駅である。

 (株)東京精鍛工所(本社・千葉県市川市)が六日町工場を新設したのは1976年。同工場が製造する自動車部品の出荷先は関東と九州で、関東向けは全て トラック輸送。九州へは関東へトラックで送り、フェリーで海上輸送していたが、これを昨年8月、鉄道コンテナ輸送に替えた。

 工場からの出荷手段はトラックで変わらないが、関東の港でフェリーに積み替えていた九州向けを、地元の南長岡駅で鉄道に積み替えることにしたが、これに より物流コストが節減された。フェリーの運賃はコンテナに比べて高くはないが、港までのトラック運賃の負担が大きかった。これをコンテナ輸送にしたことで トラック運賃が節減され、トータルの物流コストが安くなった。空パレットの返回送が不要になった分も含めて、九州向けは約30%運賃が軽減した。

 従来は特殊パレット使用後は運賃をかけて返送していたが、これをコンテナ輸送を機に親会社の九州工場が関東へ送っていた製品のコンテナ輸送に使うように したため、管理及び返回送コストが不要になった。ただ、部品の顧客である自動車メーカーが今後、自社指定のパレットに替える計画のため、現在のパレットは 使えなくなり、メーカーのパレット搬入のための運賃が必要になるとみている。

 カーフェリーは週2便運航と便数が少ないため、着地にデポ(営業倉庫)を置いて部品を保管し、顧客の納入指示に対応していたが、安定供給に不安があっ た。しかし、コンテナは毎日輸送できるので、顧客のオーダーに合わせて工場出荷ができ、定時定型輸送なので指定日に確実に届けることができる。緊急オー ダーにはデポ在庫部品を充当する体制をとっているので、顧客への安定供給が一段と強化された。

 鍛造素材部品は錆びやすいので雨水、海水を嫌う。カーフェリーでは海水による錆びのおそれがあるが、気密性の高いコンテナにはその心配がなく、梅雨時は 通風コンテナを使うことで、品質を完全に保持できる。

 同工場は稼働以来、鉄道コンテナ輸送を考えていなかった。しかし、トラック輸送は運転手不足になると運賃値上げが避けらないこと、500kmを超す長距 離輸送はコンテナに運賃メリットがあること、環境問題にも対応できる――などから物流改革に取り込んだ。

 そしてコンテナ輸送で実績のある親会社の九州工場から話を聞き、地方の通運会社を窓口にJR貨物とも折衝し、輸送手段変更に踏み切った。


▼自動車部品の輸送 九州向けを増やす 定時制、低コストで 奥羽自動車部品工業  (1996年3月11日付『運輸タイムズ』3面)

 奥羽自動車部品工業(株)(本社・山形県)は日産系の部品メーカーで、昨年秋から九州向け新車用部品のコンテナ輸送を増やした。山形駅から発送して苅田 港駅へ着けており、日産自動車(株)九州工場が納入先。コンテナ輸送個数を増やしたのは、昨年10月以降で従来の1ケ月120〜150個(平均140個) を170〜180個にした。
 コンテナ利用増について同社では、「新車生産台数の増加に伴い、ユーザーの発注量が右肩上がりに上向いてきたため」と説明している。

 コンテナ輸送しているのは、鉄道の定時性を生かしてジャスト・イン・タイム納品するため。山形駅を発送して苅田港駅に到着するのは4日目の8時。着地で は親会社の桐生機械(株)(本社・群馬県桐生市)の部品専用デポへ配達し、顧客の指定で自動車製造ラインへ納入している。拠点間をコンテナ輸送すること は、物流コストの削減にもなり、顧客の値下げ要請に対応できることになる。

 苅田港駅に着けるようになったのは、昨年の10月から。それ以前は浜小倉駅着だった。浜小倉駅は3日目朝着で苅田港駅は1日多くかかるが、配達距離が近 いので、輸送個数を増やしたのは機に着駅を変更した。

 コンテナ輸送しているのは、自動車の足回りに使用するブレーキドラム。専用のボックス型パレット(11型)に直接積んでおり、コンテナ1個に6パレット 積み。使用後はコンテナで回収している。回収の便を図るため昨夏から折り畳み式に切り替え、10月に全面的に切り替えた。これにより積載量は約3倍に増え た。

 なお、同社はJR貨物に対して、@山形駅を10トンコンテナ取扱駅にすること A輸送を効率化するためにJR貨物が10トンコンテナを保有し、荷主へ提 供すること B鉄道運賃の割引率を引き上げること C雨水などが入らない、整備の行き届いたコンテナで集配すること――などを注文している。




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