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◆国際海上コンテナの鉄道輸送 2001.11作成  2003.4.19更新 2014.12.31更新開始 2015.2.8公開 2015.2.15訂補

 かつて国内の主な港湾には必ずと言って良いほど臨港線が整備され、鉄道貨物輸送と海運は密接に結び付いていた。海運の主流がコンテナ輸送に移行し始めた 際には、当時の国鉄はその潮流に対応すべく品川や西名古屋港、神戸港といった貨物駅に橋型クレーンを整備するなど、海上コンテナの国内輸送の需要を取り込 む投資を行ったのである。それはまさに物資別適合輸送の1つに位置付けられるべきものであった。しかし一度は軌道に乗り始めた海上コンテナの鉄道輸送は、 すぐに先細りになってしまう。国鉄のスト権ストや相次ぐ運賃値上げなどのサービス低下 による荷主離れ といった国鉄内部の問題も大きかったと思われるが、全国各地の港湾で海上コンテナを取り扱えるようになったことでフィーダー輸送の距離が短縮されたことや トレー ラーによるドレージ輸送の発達により鉄道輸送の需要が急減したのである。
 しかし京浜、名古屋、阪神の三大港湾で扱われる海上コンテナの国内全体に占める割合は依然として高いものがあり、フィーダー輸送やドレージ輸送において 鉄道貨物輸送を開 拓でき るマーケットは少なからずあるように思われる。実際、JR貨物発足後、様々な試行錯誤を繰り返しつつ、海上コンテナの鉄道輸送は徐々に全国的な広がりを見 せてい る。
 ここでは国鉄時代とJR貨物以後に分けて、海上コンテナの鉄道輸送の黎明期からの発展と挫折、JR発足後の再開と新たな展開、そして現状を纏めていく。 更に海上コンテナとは区別されるが、ISOコンテナの鉄道輸送の開始から現在までの動向についても、概略を纏めておく。

<目次>
国鉄時代の国際海上コンテナ輸送
JR貨物以後の国際海上コンテナ輸送
 全体の状況
 東京港・横浜 港〔東京(タ)・横浜本牧・本牧埠頭駅〕
 神戸港〔神戸 港・神戸(タ)駅〕
 室蘭港〔陣屋 町駅〕
 秋田港〔秋田 北港駅〕
 新潟港〔新潟 県営鉄道〕
 四日市港〔四 日市駅〕
 伏木富山港
 北九州港〔浜 小倉・北九州(タ)駅〕
 下関港〔下関駅〕
 そ の他の海上コンテナ取扱駅〔盛岡(タ)・静岡貨物・西大分駅〕
港湾別の海上コンテナ取扱量
海上コンテナの国内輸送に関するその他トピックス
ISOコンテナ輸送


■国鉄時代の国際海上コンテナ輸送  

(『東京人』通巻第265号、2009年、p23)
▽ 海上コンテナの輸送実績([1]p255、[2] p395)
年 度
輸送個数
(TEU)
輸送トン数
(t)
1968 (昭43)
1969(昭44)
1970(昭45)
1971(昭46)
1972(昭47)
1973(昭48)
1974(昭49)
1975(昭50)
1976(昭51)
1977(昭52)
1978(昭53)
1979(昭54)
8,448
12,116
20,956
18,049
12,700
7,157
5,812
2,627
2,163
1,784
980
576
97,700
137,615
250,360
287,211
219,238
不明
不明
不明
不明
不明
10,000以下
不明

▽海上コンテナの鉄道輸送の開始 ([1]p254- 255、[2]p394-395)
 1967(昭42)年8月、アメリカのマトソン社のフルコンテナ船「ハワイアンプランター号」の就航に よって、わが国の国際海上コンテナ輸送はスタートした。
 海上輸送のコンテナ化は、港湾荷役費が5分の1程度に節減できるほか、船舶の運航効率の大幅な向上や大型化、高速化、定員節減が実現できるなど、メリッ トが大きく、邦船中核6社では、郵船グループ(日本郵船・昭和海運)と4社グループ(大阪商船三井船舶・山下新日本汽船・川崎汽船・ジャパンライン)の2 グループを形成し、同年秋以降、一斉にコンテナ化に乗り出し、加州航路・豪州航路・北太平洋航路・欧州航路・ニューヨーク航路と、主要航路はすべてコンテ ナ化されて、1970年代初頭にはフルコンテナ船腹保有量は、アメリカに次いで世界第2位までに成長した。

 国鉄は、このような海陸協同一貫輸送の趨勢に対応するため、また、従来特に立ち遅れていた港湾貨物へのアプローチをはかるため、67年10月、海上コン テナ専用貨車コキ9100・コサ900形式各2両を試作して、海上コンテナの鉄道輸送の研究開発を進め、同月神戸港〜南延岡において、アメリカから輸送されてきたコンテナの直送試験など を行った。


 1968(昭43)年5月には、「海上コンテナの運送を試行する場合の運賃について」を通達し、国鉄による輸送が開始されたが、同年8月までは、海上輸 送も在来船による小規模な輸送が行われていたため、国鉄に対する輸送要請も少なく、当初は一般の無蓋車による試験輸送として20ftコンテナを神戸港〜北九州間、神戸港〜松尾寺間、品川〜燕間において試験的に実 施したに過ぎなかった。
 9月に入ってからは邦船6社が6隻の新造フルコンテナ船を就航させて、本格的な輸送を開始し、これに伴って国鉄に対する輸送要請も本格化した。10月に は西名古屋港〜品川間ではじめて、8×8× 40級(ISO−1A形式)のものを取り扱うなどしたが、当時国鉄の国際海上コンテナ用設備は、車両が前記試作車4両、新造専用車コキ1000形式20 両、改造兼用車チキ4500形式31両、計55両で、クレーンは神戸港で27.5トン自動車クレーン1基、品川が在来の重量物用20トン天井走行クレーン 1基のみであった。


 その後、緊急課題として適合貨車の増備、発着基地の荷役設備の整備、直行列車の設定などを進め、1969(昭44)年には長物兼用車チキ5000形式 (各形式1個積み)及び専用車コキ1000形式(20フィート形2個積み)170両を整備するとともに、神戸港駅 に 37.5トン橋型クレーン品川、西名古屋 港両駅に37トン自動車クレーンを それぞれ新設して、輸送体制を整備して、同年11月から翌年8月までに、91区間に1万5,578個を輸送した。


 海上コンテナ輸送体制の整備を契機に、英文リーフレットを作成し、在日アメリカのユニオンパシフィック鉄道、マトソン、シーランド等の船会社をはじめと する海外機関に積極的にPR活動を実施するとともに、中長距離の輸送区間について長期にわたり安定した輸送サービスを提供し、列車体系の整備、コンテナ ヤード(埠頭)に対応する荷役の整備を図り、外貿埠頭公団の建設による大井 埠頭神戸港ポートアイランド及び大阪南港への鉄道のアプローチなどについて検討を進める一方、各船会社の 需要動向を勘案して、車両設備の増強を進めていった。また、運用面での強化をはかるため、69年4月に「国際海上コンテナの取扱方について」を定め、運 賃、貨車積載方及び輸送許容区間等について規定された。


 このようにして体制を強化してきた国際海上コンテナは、専用貨車をコンテナ船の寄港地対象に、神戸港、品川及び西名古屋港駅などに常備し、輸送需要に即 応 できるようにするとともに、1972(昭47)年7月から神戸港〜西 名古屋港間に国際海上コンテナ専用直行列車を設定して、船会社のフィーダーサービス及び調整移送の定形化をはかった。しかし、この 列車は週1回のみの運転で あり、利用率が低いなど多くの問題があったため中止となった。また中京地区・東海地区から横浜港への直行輸送も実現される気運が醸成されることも期待され ていた。
 一方、地方都市へのいわゆるフィーダー輸送についてもコンテナ船の寄港地の増加とトラックによるドレージ輸送の拡大が進んだことから、1972年以降鉄 道輸送は急速に減少した。

 また、従来車扱とされてきた海上コンテナも1974(昭49)年3月の運賃改訂を契機に、コンテナ扱に包括されることになった。


▽海上コンテナ関係設備([1]p256)
港 別
コ ンテナ埠頭
取 扱駅
設 備能力
取 扱能力
1971 (昭46)年度
海コン取扱実績
荷 役機械
常 備専用貨車


東京港
品川埠 頭
品川
8万t/年
28個/日
0.6万t/ 年
20トン橋型 クレーン 1基
37トントラッククレーン 1基
コキ1000  10両
コキ9100 2両
コサ900 2両
チキ5000 10両
大井埠 頭
東京 (タ)






横浜港
本牧埠 頭
本牧埠 頭
12万t/年
50個/日
1万t/年
22.7トン リフトクレーン 1基
チヨ5000  15両
山下埠 頭
山下埠 頭
5万t/年

0.2万t/ 年
リフトは本牧 と山下で共用
チキ5000  5両
名 古屋港 金城埠頭 西名古 屋港
15万t/年
40個/日

45トントラ ベリフト 1基
コキ1000  10両
チキ5000 50両
八田 (タ)






神戸港
ポート アイランド
神戸港
18万t/年
50個/日
18万t/年
40トン橋型 クレーン 1基
コキ1000  50両
チキ5000 10両
摩耶埠 頭
摩耶埠 頭
8万t/年


40トントラ ベリフト 1基

大阪港
大阪南 港
大阪南 港





備考 (1)宇都宮 チキ5000 10両常備
    (2)臨港線 港湾法第2条に定める港湾区域に敷設される。営業線と公共臨港線に区分される。


 
本牧操駅及び本牧埠頭駅の海上コンテナの取り扱い実績の推移は下記の通りである。スタート時の1970(昭45)年度をピークに輸送量は下降線 を辿り、1981(昭56)年度を最後に消滅した。輸送の絶対量自体が数千〜数万トン程度と大きくはなく、当時の神奈川臨海鉄道や国鉄当局等が輸送の維持 に努力した形跡も社史を読む限り感じられない。

▽本牧地区 品目別輸送量(発着合計)の推移 
〔単位:千トン〕
年  度
1970
1971
1972
1973
1974
1975
1976
1977
1978
1979
1980
1981
海上コン テナ
57
33
26
13
1
10
11
7
5
2
2
1
([4]p33、p49、p58)

▽海上コンテナ取扱駅(1972年3月)
([2]p395)
管 理局
駅  名
新 潟
燕、中 条、黒井、二本木
東 京
品川、本 牧埠頭、山下埠頭
名古屋
西名古屋 港
大 阪
神戸港、 摩耶埠頭
門 司
外浜、葛 葉、門司、浜小倉、枝光、
二島、博多港、久留米、鶴崎
 三大都市圏以外の新潟・門司の両鉄道管理局内の充実ぶりが目立つ。JR貨物後も黒井駅が海上コンテナの輸送を積極的に行っていることや九州では大牟田〜 北 九州(タ)間の短距離海上コンテナ輸送が実施されているなど、海上コンテナ輸送に対する積極性の下地が、国鉄時代からのこのような流れと関係しているのか もしれない。

▽その他の海コン輸送
 [3]
1967(昭42)年8月5日
1968(昭43)年5月1日
糸崎〜品川で専用列車による海 上コンテナの輸送開始
神戸港新港第5突堤〜南延岡間で専用貨車による海上コンテナ輸送試験開始
 上記のような輸送もあったようだが、いずれも試験的な輸送と思われる。



■JR貨物以後の国際海上コンテナ輸送  
 国鉄時代に中断してしまった国際海上コンテナ輸送であるが、1987(昭62)年のJR貨物発足直後から国際海上コンテナ輸送に対する取り組みが始まっ ている。JR貨物が開発したコキ100系貨車は海上コンテナ輸送を踏まえた設計となっており、国鉄時代に潰えた海上コンテナ輸送を何とか再開したいという 意欲を感じさせるものがあった。

▼全体の状況
 1989(平1)年、JR貨物は国際海上コンテナ輸送を再開した。1979(昭54)年に中止して以来、10年ぶりである。横浜博覧会が開催された際に 横浜市内を通過するトラックの交通量を減らす目的で、横浜本牧〜東京(タ)間で開始した。1990(平2)年度に3,277TEUのコンテナを取り扱った が、首都高速湾岸線の整備などにより鉄道利用は減少し、1995(平7)年度に輸送中止となった。その間に輸出入貨物の増加と共にドレージ輸送の見直しが 進み、JR貨物も荷役機械とコキ100系などの海上コンテナ輸送に対応したコンテナ貨車の増備を図り、東京、横浜、神戸の各港からの国際コンテナ輸送体制 の整備に取り組んだ。([1]p416-417)

 そのような状況下で、国土交通省による海コン輸送の鉄道シフトに関する調査が実施された。
▽ 有望市場と言えず/国際海コン鉄道輸送、改善策から着手を…国土交通省 (『物流ニッポン新聞』2001年6月11日)
 国土交通省は国際海上コンテナ輸送システムの開発・構築に関する調査報告書をまとめた。鉄道と連携した国際海上輸送について「当面の潜在貨物量は、市場 としてとくに有望と言えない」と指摘。一方、「地域環境改善では一定の効果が期待できる」としている。
 トラックへの依存度の大きい国際海上コンテナ輸送で、環境負荷低減を視野に入れた鉄道利用促進が求められている。調査では、効率的な海陸一貫輸送システ ムの構築に向け、輸送の現況と潜在貨物量、輸送上の課題、システム開発の方策を検討した。国際海上コンテナの鉄道輸送は、横浜本牧〜仙台、東京貨物ターミ ナル〜横浜本牧など11ルートで実施。全国で取り扱い可能な貨物駅は、40フィートが8駅、20フィートは19駅。1999年度の輸送実績は40万 0173トンとなっている。
 輸出入コンテナ貨物流動データを基に、主要11港湾と70駅のルートについて、全潜在貨物量を37.5億トン、国際海上コンテナを取り扱っている駅間に 限定した潜在貨物量を12.7億トンと試算。
 年間予想収入は、それぞれ328億円(全鉄道コンテナ運輸収入の30.4%)、111億円(10.3%)となり、「当面の潜在輸送量である海コン取扱駅 間の潜在貨物量は、とくに有望な市場と言えない」との見解を示した。
 記事中にある37.5億トン、12.7億トンは単位がトンではなくて、トンキロ≠フ誤りではないかと思われる。

▽鉄道利用の海コン輸送の可能性と課題 国土交通省レポート (『交通新聞』 2002年3月4日付、3面)
 海上コンテナがそのまま国内輸送されるケースが目立ってきたが、国土交通省は鉄道利用による海コン輸送の可能性や今後に向けた課題をまとめた初めてのレ ポートを公表した。実際の輸送量は年間40万トン強(1999年度)と絶対量は大きくないものの、主要港湾の輸出入貨物量は月間400万トンを上回り、今 後の成長可能性は有望。貨物駅の機能充実の必要性を指摘している。

 海コンは鉄道輸送がスタートしてからまだ10年間程度の歴史しかなく、まだはっきりした輸送方法が未確立な物流分野。そこで国土交通省では一定の指針を 示すことを狙いに2000年10月、JR貨物と日本通運、海運事業者、東京都港湾局の各代表などをメンバーに「国際海上コンテナ輸送システムの開発・構築 に関する調査検討委員会」を設置。荷主企業へのヒアリングやトラックと比較したケーススタディ結果を今回レポートに集約した。
 それによると、全国の鉄道貨物駅のうち海コンを取り扱えるのは30駅足らずで、年間輸送量も現状では40万トン強にすぎないものの、東京港や横浜港、四 日市港といった全国の主要11港湾の取扱量は輸出と輸入を合わせ月間450 万トン程度に達し、トラックから鉄道へのモーダルシフトを上手に進めれば、まだまだ利用促進は可能。潜在需要の多い駅としては、姫路貨物千葉貨物梅小路の各駅など地方都市圏の駅が上位に並び、三大都市以外でも一定の 需要があることが分かった。
 輸送ニーズのある区間としては、横浜本牧〜静岡貨物間や四日市〜梅小路間のように100〜300km程度の中距離が殆ど。例外 的に900kmを超す梅田〜川内間のようなケースもあった が、「国内を長距離輸送するなら、最初から最寄り港に陸揚げした方が効率的」な特性を反映して、輸送需要の中心は中距離に あることが判明した。
 次いで、ビール原料のモルトを海コン輸送する東京貨物ターミナル〜郡山貨物ターミナル輸入自動車部品がオンレール輸送される神戸港〜広島貨物ターミナルの2区間を対象に、ケーススタディで鉄道の 問題点を摘出。その結果、鉄道は実勢運賃ではトラックと殆ど変らないものの、輸送時間は一長一短、さらに輸送線区が幹線筋の場合は、既に線路容量が一杯で 波動輸送への対応は困難。このほか、郡山(タ)では40ftコンテナを扱おうとすると荷役時の路盤強度が不足するため、20ftコンテナしか扱えないな ど、JR貨物のインフラ上の問題点が浮上。また、広島(タ)のように駅構内のスペースが狭い場合は、荷役が難しいことも明らかになった。
 レポートでは調査結果も基に、海コンの鉄道輸送システム構築に向けた課題を
 @定例的に海コン貨物を輸出入する安定荷主の確保
 A海コンが輸出入される港湾と最寄りの貨物駅の間のフィーダー輸送手 段整備
 B内陸部で国際貨物の通関業務を済ませられるインランド・デポの貨物 駅への展開
の3点に集約。「海コンの輸送は、ソフトや制度上の工夫でオンレール化が期待できる輸送分野。JR貨物自らが安定荷主確保に努めると共に、国や関係する自 治体が鉄道にシフトさせる施策を講じる取り組みも欠かせない」と結論付けている。

▽国際物流開発室を設置 JR貨物機構改革 海コンの鉄道利用促進 (『交通新 聞』2002年6月19日付、1面
 JR貨物は25日の定時株主総会に合わせた機構改革で、本社に海コンのオンレール化を進める専門セクションとして新たに「国際物流開発室」を設置する。
 日本のメーカーはここ数年、中国に生産拠点をシフトさせる動きを強めているが、それに伴って輸入貨物を載せて日本の港に着いた海コンがそのまま国内輸送 されるケースが増えてきた。JR貨物でも現在、横浜本牧〜仙台港間 や神戸港〜福岡貨物ターミナル間はじめ、いくつかの区間で海 コン輸送を手掛けているが、今後さらなる利用促進を図るには輸入貨物の動向をしっかり見極めるとともに、海上と国内輸送を一体化する一貫輸送システムの確 立が不可欠だ。
 そこで同社では、国際物流開発室を新設することにした。実際の物流面では、輸入された海コンは東京港や横浜港といった大都市最寄り港から陸揚げされる ケースが殆どだが、既に港の容量が限界に近付いている所も少なくなく、地方港に陸揚げして国内を鉄道輸送した方が所要日数を短縮できるケースもあるとい う。
 同室では、そうした新たな鉄道利用の方策をメーカーへのヒアリングなどを通して検討する構えで、伊藤社長も会見で「今年3月のダイヤ改正で開業した北九 州貨物ターミナル駅の最寄りとなる北九州港は中国に最も近い国内港湾。そうしたメリットをPRして、鉄道への誘致を図りたい」と指示を明示。社員は室長以 下4名で始動する。

▽国際海上コンテナの鉄道輸送実績 (単位:TEU)
年  度
輸 送量
備  考
1998 (平10)
19,706
4月:横 浜本牧〜仙台港 本格輸送開始
1999 (平11)
22,867
9月:横 浜本牧〜東京(タ) 輸送開始
2000 (平12)
19,101
4月:黒 井〜東京(タ) 輸送開始
2001 (平13)
17,055
5月:横 浜本牧〜東京(タ) 休止
2002 (平14)
18,100
2月:東 京(タ)〜宇都宮(タ) 日立物流が輸送開始
2003 (平15)
24,324

2004 (平16)
25,654

2005 (平17)
27,467

2006 (平18)
23,398

2007 (平19)
24,417

(『JRガゼット』通巻716号、2009年より作成)

 以下、港湾別の国際海上コンテナ輸送の展開を纏めていく。

▼東京港・ 横浜港〔東京(タ)・横浜本牧・本牧埠頭駅〕   
 東京港のコンテナ貨物の取扱量は486万TEU(2013年速報値)で国内1位、同じく横浜港は289万TEU(同)で国内2位となっており、 両港を合わせた京浜港はまさに我が国を代表する国際港湾である。古くから横浜港が外港、東京港が内港という棲み分けがされていたが、近年は大型コンテナ埠 頭の整備が進んだ東京港の成長が著しい。世界的に見るとコンテナ取扱量国内1位の東京港ですらトップ30位圏内にようやく入れる程度ではあるが、国内にお いては紛れもなく圧倒的1位の取扱量なのである。

▽コンテナ取扱個数の推移(単位:TEU)

2003 年
2013 年
伸 び率
東京港
331 万
486 万
147%
横浜港
250 万
289 万
116%

 海 上コンテナの鉄道輸送においても国鉄時代から東京港や横浜港で輸出入される貨物を主なターゲットとして展開してきた歴史がある。国鉄時代は品川駅や山下埠 頭駅といった拠点もあったが、現在の海上コンテナの取扱駅は、東京港が東京貨物ターミナル 駅、横浜港が横浜本牧駅と本牧埠頭駅である。いずれの駅もコンテナ埠頭からの距離は近く、海上コンテナを取り扱う立地としては優れていると言えよう。

区  間
輸 送開始、終了
荷  主
品  目
輸 送量など
@横浜本 牧〜東京(タ)
1989 年4月26日開始
1995年度中止
1999年9月16日開始
2000年6月26日増強
2001年5月31日休止
不明

三井倉庫梶A樺村荷役など
不明


輸出:自動車部品
積コンテ ナ20個/日、空コンテナ40個/日

コキ10両編成
コキ16両編成
A東京 (タ)〜宇都宮(タ)
1995 年10月2日開始
2003年2月
2004年
麒麟麦酒
日立物流
JUKI
輸入:麦 芽
輸入:日立グループの家電
輸出
栃木工場 は2010年閉鎖

ヨーロッパ向け、日立物流と協業
B横浜本 牧〜宇都宮(タ)
1995 年10月2日開始
潟uリヂ ストン
輸入:生 ゴム
輸出:スチールコード

C東京 (タ)〜郡山(タ) 1996 年11月開始
2002年度中止
2010年3月開始
アサヒ ビール

キヤノン
輸入:麦 芽

輸入:部品


タイ、ベトナムからの輸入
D東京 (タ)〜神栖
1997 年11月5日開始
2005年頃中止か?
不明
輸出

E横浜本 牧・本牧埠頭
〜仙台港
1998 年3月23日開始
樺村荷 役
電化製 品、電子部品、雑貨
上りはリ コー、キヤノン、ソニーなどの電気機器が多い
F東京 (タ)〜黒井
2000 年4月開始
ダイセル 化学工業
三菱電機鰍ゥ?
輸出:化 学薬品
輸出:家電製品
欧州向け (24tタンクコンテナ)
欧州、米国向け(40ft海上コンテナ)
G横浜本 牧〜新潟(タ)
2002 年頃開始か?
三菱瓦斯 化学
輸出:高 純度ア ンモニア水
台湾、中 国、米国向け
H東京 (タ)〜盛岡(タ)
2010 年3月13日開始
JUKI
タニタ
輸出
輸入:部品
横手工場  タニタとのラウンドユース
香港からの輸入部品、秋田工場向け
I東京 (タ)〜新潟(タ)
2013 年秋開始
タニタ
輸入:商 品
中国の工 場で生産、新潟ハブ倉庫向け
J東京 (タ)〜
仙台(タ)・仙台港
2011 年7月開始
不明




@
横浜本牧〜東京(タ)

▽海上コンテナの鉄道輸送開始 
 神奈川臨海鉄道では、かねがね内陸部における海上コンテナの鉄道輸送について、JR貨物と検討を続けていた。1989(平1)年3月15日から 開催された横浜博覧会の道路交通対策として、横浜市港湾局から横浜〜東京間の鉄道輸送の実施について検討の要請を受けた。このためJR貨物と共に船会社は じめ関係業者との協議を進め、同年4月26日から本牧操〜東京貨物ターミナル間で国際規格20ftの海上コンテナ輸送を開始した。
 本牧操駅は、開業当初は本牧線の貨車集配基地として設置されたもので、駅構内のレイアウトもヤードの配線になっていたが、海上コンテナ輸送の開始に当た り、抜本的な配線変更を行うとともに、1万3,553平方mのコンテナ基地を新設し、ヤードから貨物取扱駅に衣替えした。また輸送開始前日の同年4月25 日には本牧操駅にトップリフター1号機を投入し、更に同年5月25日にはトップリフター2号機を投入した。([4]p78、178)

 鉄道貨物輸送による海上コンテナ輸送は、従来スポット的なものはあったが、定期列車として輸送するのは全国でも初≠フ事例であり、輸 送量は1列車で積コンテ ナ20個空コンテナ40個の積載 を予定(『鉄道ファン』通巻339号、1989年、169頁)していたが、先に述べたように首都高速湾岸線などの道路整 備が進んだことで輸送量が減少し、1995(平7)年度に輸送を中止した。
([4]巻頭カラー)

神 奈川臨海鉄道 品目別輸送量〔単位:千 トン〕
年  度
1989
1990
1991
1992
1993
1994
海上コン テナ
6
27
19 12
7
4
([5]p85)
 神奈川臨海鉄道の1989〜1994年度の海上コンテナ輸送量は、殆 どが横浜本牧〜東京(タ)間の輸送と思われる。
 輸送開始2年目の1990(平2)年度の27千トンをピークに減少しており、定着しなかったことが窺われる。
 尚、本牧操駅は1990(平2)年3月10日にJRコンテナの取り扱いを開始すると同時に、駅名を「横浜本牧駅」に改称した。
 JRコンテナを取り扱う前にいきなり海上コンテナの取り扱いを 開始したという点は興味深いところだ。

 1995年度に輸送が中止された横浜本牧〜東京(タ)間の海上コンテナ輸送だが、1999(平11)年に復活をした。
▽海コン短距離輸送スタート JR貨物 横浜港−東京貨タ間で (『交通新聞』1999年9月17日付、1面)
 我が国を代表する貿易港・横浜港(神奈川臨海鉄道横浜本牧駅)から東京の物流拠点・東京貨物ターミナル駅に向けた鉄道による海上コンテナ輸送が、JR貨 物の手で16日、スタートした。横浜発の海上コンテナ列車は既に仙台向けに定期運行中だが、隣県への短距離輸送は全国的にも初めてで、鉄道の利用促進に向 けた新たな試みとしてJR関係者も期待を寄せている。

 今回の荷主は三井倉庫中村荷役などの物流事業者で、仙台行きの海コン列車を先行利用。横浜− 東京間は従来トラックで運んでいたが、大量の貨物を定時に運べる鉄道の機能性に着目、JR側に列車利用についての打診があった。
 両都市間は直線距離にすれば30km程度ながら、日々最大40個に上るコンテナを定期輸送するには相応のトレーラーとドライバーが必要で、道路輸送は渋 滞に巻き込まれるのも必至。そうした点を考慮すれば、短距離とは言え鉄道の方がコスト的に優位に立つわけだ。
 計画によると、輸送距離は両駅間の58q。列車は日曜日を除く毎日運転で、9:25に東京タを出て、10:32に横浜本牧着。帰路は14:30に横浜を 出発、16:18に東京タに戻る。貨車(1両当たり最大積載量40.5トン)は20両編成で、1列車当たり最大20ftコンテナで40個の積載が可能。
 JR貨物環境事業部では新列車を海コンの短距離輸送のモデルケースと位置付けており、引き続き荷主側に40ftコンテナを鉄道輸送にする意向もあること から、実現に向けて検討することにしている。

 当初は20ft海上コンテナのみの輸送だったが、荷主の要請に応えて2000(平12)年2月7日から40ftにも開放。40ftコンテナには、高さが 8.6ftのほか、背高ハイキューブと呼ばれる9.6ftタイプの2種類があるが、JR貨物で建築限界を調査したところ両タイプとも問題無く運べることが 分かった。(『交通新聞』2000年2月18日付、1面)

▽神奈川臨海鉄道梶@海上コンテナ輸送を拡大 (『JR貨物ニュース』2000年8月1日付、3面)
 神奈川臨海鉄道はJR貨物と連携して、1999(平11)年9月から横浜本牧駅〜東京(タ)駅間(約60km)に「よこはまシャトル便」を運行してい る。横浜港から東京港までは輸送距離が短くトラックやトレーラー向きと思われ、事実現状はこの間の輸出入コンテナの国内輸送は殆どトラック・トレーラーに よるドレージで行われてきた。
 しかし、横浜港と東京港で取り扱う輸出入貨物の数が増えるにつれて、船会社のコンテナフィーダーは複雑かつ多頻度化し、道路渋滞や埠頭の狭隘化が進み、 ドレージの能率やコストに影響が出てきている。
 この点、横浜港に隣接する横浜本牧駅、東京港の東京(タ)駅ともに適切なスペースを有しており、拡大する海上コンテナの国内輸送の需要を背景に、横浜本 牧〜東京(タ)間の「よこはまシャトル便」については、従来コキ106系貨車10 両編成で運行していたものを、コキ100系貨車16両に増結し て2000(平12)年6月26日から輸送力を増強した。
 また、シャトル便の輸送力増強と同時に横浜本牧駅近くの自動車関連工場の 輸出用部品も新たに運び始めており、今後は東海道線大船駅経由で静岡・浜松方面へも国際海上コンテナの輸送ルートを介して行いたいとしている。

▽国際海上コンテナの区間別輸送量(単位:TEU)
年  度
東 京(タ)〜横浜本牧
1998 (平10)
0
1999 (平11)
1,338
2000 (平12)
4,333
2001 (平13)
378
2002 (平14)
0
2003 (平15)
0
([2]p416)

 輸送量は上記の通りである。期待されたほどの輸送量を確保することができなかったため≠ノ2001(平13)年5月31日をもって運転休止となった。 ([5]p49)
 ちなみに2000年度の4,333TEUを年間稼働日数を300日と仮定して計算すると、1日あたり14.4TEUとなり、片道で20ftコンテナ7個 程度の輸送だったことになる。片道で最大40個を目論んでいたことからすると大失敗と言える輸送量であり、やはり横浜港〜東京港間は距離的には鉄道輸送に は厳しいのかもしれない。


A東京 (タ)〜宇都宮(タ)/B横浜本牧〜宇都宮(タ)
 横浜本牧〜東京(タ)間で始まった海上コンテナ輸送がなかなか定着しない中で、鉄道による海上コンテナ輸送の展開においてポイントとなったのが、宇都宮 (タ)駅向けの輸送である。北関東屈指の内陸工業地域である宇都宮周辺には工業団地が数多く存在し、輸出入に伴う海上コンテナ輸送の需要は大きい。そこで 1995 (平7)年10月から横浜本牧・東京(タ)〜宇都宮(タ)間で本格的な海上コンテナ輸送が開始された。
▽ 海上コンテナを国内陸送 JR貨物 東京貨タ〜宇都宮貨タなど (『交 通新聞』1995年9月8日付、1面)
 JR貨物は、キリンビール、ブリヂストンの2社と海上コンテナの国内輸送契約を結び、1995(平7)年10月2日から業務を開始する。海上コンテナの 国内陸送 はトラックが主流で、同社が荷主企業と恒常的な鉄道輸送契約を結んだのはこれが初めて。運賃、時間、サービスなど総合的な面での調整がついた。同社では、 今後もトラックより安い運賃設定と定時性を売り物に、海上コンテナの鉄道輸送の拡大につなげていきたい考え。同社の海上コンテナ輸送は、国鉄時代の 1967年から試験輸送を開始し、専用の荷役機械を設置するなどしていたが、コンテナ船の寄港地の増加などにより、71年をピークに減少。最近では、横浜 本牧−東京貨タ、下関−東京貨タ、岐阜貨タ間、また阪神大震災に際しての資材輸送などにとどまっていた。
 年間取扱個数は20フィートコンテナで、キリンビールがオーストラリア などから輸入する麦芽東京貨タ−宇都宮貨タ間で2,400個 ブリヂストンがマレーシアから輸入する生ゴム横浜本牧−宇都宮貨タ間で6,000個輸送するほか、タイヤ補強用の輸出用スチールコード3,360個復路輸送する。
 2社の取り扱いは、日発39個。同社では今後もビール、食 品、玩具メーカーを中心に輸送の拡大を図っていきたい考え。

▽国際海上コンテナの区間別輸送量(単位:TEU)
年  度
東 京(タ)〜宇都宮(タ)
1998 (平10)
609
1999 (平11)
148
2000 (平12)
206
2001 (平13)
819
2002 (平14)
1,218
2003 (平15)
4,012
([2]p416)

 キリンビール鰍フ麦芽は古くは山下埠頭駅からホキ9800形によって高崎工場(倉賀野駅)、仙台工場(仙台駅、工場移転後は仙台臨海鉄道・仙台西港駅) に輸送されてい た。この輸送は山下埠頭駅廃止後は横浜本牧駅に新たに荷役設備を設置して1997(平9)年度まで継続していた。(詳細は拙web「キリンホールディングス」を参照)
 このようにキリンビール鰍ヘ原料輸送に鉄道貨物輸送を活用することに積極的な姿勢があるように感じられる。しかしキリンビール鞄ネ木工場は2010(平 22)年10月に 閉鎖されたため、この海上コンテナの麦芽輸送は廃止されたと考えられる。

▽海上コンテナの短距離モーダルシフト (2005年2月1日付『交通新聞』2面)
 日立物流は2003年2月から、100km前後の短距離区 間で鉄道とトレーラーを効率的に組み合わせ、環境負荷を低減するモーダルシフト手法を開発した。
 同社では、日立グループが海外で生産した家電製品を、東京港からトレーラーを利用して宇都宮地区の工場に運んでいた。一般的には東京〜宇都宮間など 100km前後の短距離ではコスト面で鉄道利用が難しく、モーダルシフト効果が薄いと言われている。
 そこで東京〜宇都宮間の40ft海上コンテナ輸送のうち、大半を東京(タ)〜宇都宮(タ)間の鉄道輸送に切り替えるとともに、残 る一部の荷物を宇都宮まで運んだトレーラーを東京へ戻さずに、宇都宮(タ)と工場間でピストン輸送させることにした。
 また工場で加工した家電製品を全国へ出荷する際の中長距離輸送についても、12ftコンテナを利用した鉄道輸送にシフトすることで、全体の輸送コストを 抑えることに成功している。

▽国際海上コンテナの鉄道輸送で荷主の物流共同化が進む 牽引役のJUKIはコンテナのラウン ドユースを加速 (『カーゴニュース』2012年3月 29日付p43)
 JUKIがコンテナのラウンドユースに取り組み出したのが1993年。東北地方の輸入荷主が使ったコンテナをJUKI大田原工場(栃木県大田原市)から の輸出で使うことからスタートした。2001年からはコンテナのピックアップ先を京浜港から、北関東のインランドデポである宇都宮国際貨物ターミナル (UICT)に変更し、空コンテナの輸送距離を更に短縮した。
 コンテナのラウンドユースと国際海上コンテナの鉄道輸送という2つのグリーン物流のスキームを同時に実現させたのが2004年。北関東〜京浜港の中距離 のモーダルシフトは、駅の両端のショートドレージコストがネックとなり、難しいとされてきたが、日立物流との協業によってショートドレージコストの圧縮に成功し、鉄道 輸送に漕ぎ着けられた。
 日立物流は栃木県の工場向けに輸入コンテナをドレージし、空コンテナをUICTに返却。JUKIはUICTからヨーロッパ向け輸出に使うコンテナをピッ クアップする。日立物流は栃木〜京浜港の国際海上コンテナ輸送の半分を鉄道にシフトし、もう半分の幹線ドレージ車両が工場〜駅のショートドレージをアルバ イトする仕組みである。

▽積荷入りの45ft国際海上コンテナを宇都宮(タ)〜東京(タ)間で鉄道輸送の実証実験 (『Monthlyかもつ』2010年4月号、p11)
 45ftコンテナは2005年にISO規格として認定され、北米と中国間等の国際物流で多数利用されているが、日本にはまだ適合するシャーシも無い状況 である。しかし物流効率化に取り組む荷主企業の45ftコンテナに対する関心が高くなっていることから、京浜港の競争力強化を目指す京浜港物流高度化推進 協議会は、2010年2月24日に宇都宮(タ)〜東京(タ)駅間で45ft国際海上コンテナの鉄道輸送の実証実験を行った。今回は、潟Nボタの協力により輸出製品を実際に積んで輸送を行い、45ftコン テナを積載した列車の走行性や駅構内荷役の作業性等を検証した。
山九 のwebサイトより

▽横浜本牧駅〜宇都宮 海上コンテナが鉄路走る (『神 奈川新聞』2014年8月28日付)
 鉄道による国際海上コンテナの試験運行を、神奈川臨海鉄道とJR貨物が進めている。石油を輸送する既存の貨物列車にコンテナ車を増結することで、列車の 運行コストを低減。需要の高い京浜港−北関東間の新ルートの定着を目指す。運行は7月にスタート。同鉄道の横浜本牧駅(横浜市中区)からJR根岸駅を経由 し、宇都宮貨物ターミナル駅(栃木県)まで、平日に1往復している。根岸駅隣の製油所に発着する石油輸送列車に、コンテナ車を2両連結する形だ。

 横浜港で積み降ろしされる海上コンテナの鉄道輸送は2008年にも試行され、専用のコンテナ列車を仕立てていたが、定着せず廃止された経緯がある。今回 は1列車当たりの積載量が最大で40ftコンテナ2個と多く ないが、貨物列車の運行ダイヤを新設する必要がなく、経費が抑えられるメリットがある。

 積み荷は食品や園芸用土、金属製品など。目的地を北関東に設定した背景には、京浜港の輸出入貨物の8割が首都圏を発着している実績(国土交通省調査)が ある。JR貨物によると、トラック輸送の運転手不足や交通渋滞の課題にも貢献できるという。
 同鉄道の村井英樹・横浜本牧駅長は「石油列車にコンテナ車を連結する方法は効率的で、全国的にも珍しい」と話している。


C東京 (タ)〜郡山(タ)
 1996(平8)年11月に横浜本牧・東京(タ)〜宇都宮(タ)間の海上コンテナ列車が郡山(タ)駅まで延長された。積み荷はビール原料の麦芽で、荷主 はアサヒビール兜沒工場

▽国際コンテナの区間別輸送量
(単位:TEU)
年  度
東 京(タ)〜郡山(タ)
1998 (平10)
1,215
1999 (平11)
1,170
2000 (平12)
970
2001 (平13)
1,102
2002 (平14)
291
2003 (平15)
0
([2]p416)

 2001年度までは安定的な輸送を行っていたが2002年度に中止になってしまったようだ。トレーラー輸送にシフトしたのか、または輸入港を北米航路の ある仙台塩釜港に変更したのかもしれない。それでも仙台港〜郡山(タ)間で鉄道貨物輸送を行える可能性はありそうか…。

 キヤノンはモーダルシフトを積極的に進めてきたが、新規 に国際海上コンテナ輸送の鉄道輸送の検討している。2010(平22)年3月15日から東京(タ)〜盛岡(タ)間で運行を始めた海上コンテナ列車。同列車 は1日1往復、1列車20両編成で運行し、40ft国際海上コンテナ20基を輸送できる。そのうち15基が盛岡、5基が郡山まで行くため、郡山行きの5基の一部の利用検討している。東京港に陸揚げした国際海上 コンテナの福島への輸送は現状、トレーラーによるドレージ輸送を実施。東京〜東北地方を結ぶ海上コンテナ列車の運行が始まったことで、この部分のトレー ラー輸送を鉄道にシフトする計画である。(『カーゴニュース』2010 年3月30日付、p53)
 2010年3月から東京〜盛岡間を結ぶ海上コンテナ列車の利用をスタート。東 京〜福島を結ぶ区間は従来まで、トレーラによるドレージ輸送を展開していたが、40ftの国際海上コンテナをそのまま鉄道輸送できるサービスが始まったこ とから、同区間での鉄道利用を開始した。同ルートでは京浜港で陸揚げした製品を国際海上コンテナ列車で福島まで輸送。帰り荷は福島地区で生産した製品を海 上コンテナ列車で東京方面へと輸送しており、月間10本程度を利用中だ。
(『カーゴニュース』2011年7月7日付)

 2010年5月12日に東京大学で開催された「海洋技術フォーラム」の資料によると、キヤノン鰍ヘタイやベトナムから東京港に輸入された KD部品を福島 まで運ぶ際に、東京(タ)〜郡山(タ)で海上コンテナの鉄道輸送を行っているとのこと。


D東京 (タ)〜神栖

2003.5神栖駅
 神栖駅は、1997(平9)年11月5日に20ft海上コンテナの取 り扱いを開始した。(Wikipediaよ り)
 20ft型の海上コンテナの荷役に対応できるように、神栖駅にトップリフターを整備した。このトップリフター主に輸出用の20ft海上コンテナと、 特定の化成品メーカーが使用するISOタンクコンテナの積み下ろしに利用してきた。しかし許容荷重が22トンと、20ft以上の海上コンテナや総重量24 トンのISOタンクコンテナには少し小さいので荷物をフル積載できず、ユーザーには全て20トン以内に抑えてもらっていたが、大手化成品メーカーから ISOコンテナにフル積載して輸送したいとの打診があり、2001年春にフォークリフトにも兼用できる24トン対応の特殊なトップリフター「フォーク&ス プレッダ車」を導入した。(『JR貨物ニュース』2001年5月1日 号、2面)

 2003(平15)年5月当時は東京(タ)〜神栖間の海上コンテナ輸送が行われていたのを確認できたが、2008(平20)年7月に神栖駅を訪問した際 は、駅構内 に海上コンテナの姿は見当たらず、それ以降の訪問の際も海上コンテナの姿を確認できなかったため、中止になったものと思われる。
 鹿島港は1999〜2002年にかけて相次いで国際定期コンテナ航路が休止となったが、2008年8月には内航フィーダー航路が開設され、2011年に は韓国・中国定期コンテナ航路が開設された。2013年速報値によると同港の海上コンテナの取扱量は2,696TEUと微々たるものなのだが、鉄道による海上コ ンテナ輸送が中止になったのはこのような鹿島港における海上コンテナの取り扱いも関係しているのかもしれない。

2003.5神栖駅

2003.5神栖駅


E横浜 本牧・本牧埠頭〜仙台港
▽ 横浜本牧〜仙台港の海上コンテナ輸送
 横浜本牧〜仙台港間で1998(平成10)年3月23日より海上コンテナ(40ft)輸送が始まった。([5]p26)
 1998年4月から本格的輸送を開始し、同年10月3日には10両編成から20両編成としたが、2000(平12)年1月から実績不振で15両編成と なった。海上コンテナは背高の9.6ftまでのドライコンテナ輸送を可能にした。さらに2000年10月から冷凍海上コンテナ輸送を開始した。([6] p13-14)

 神奈川臨海鉄道とJR貨物が樺村荷役と数年前から取り組んできた冷凍海上コンテナの鉄道輸送が2000年10月下旬にスタートする。冷凍海上コンテナ の脇に電気を供給する特殊コンテナを併載して輸送する方式。
 当初は船舶で使われているランドセル型の発電機の利用を検討したが、稼働音が大きく騒音の原因になるとして断念。その後にヤンマーディーゼル鰍ェ協力し て、貨車積載した冷凍海上コンテナの横に置く特殊コンテナ型発電機が開発された。
 現在この特殊コンテナは2個製造されており、10月下旬から横浜本牧〜仙台港駅間で冷凍海上コンテナ輸送を開始する。特殊コンテナは2001年1月中に 3個増備され計5個になる予定。(『JR貨物ニュース』2000年10 月15日付、1面)

(2000年11月1日『日刊運輸新聞』)
 JR貨物・神奈川臨海鉄道、冷凍海上コンテナ輸送も。横浜本牧〜仙台港で来年、月間70個に。

([5]巻頭カラー)

▽国際コンテナの区間別輸送量(単位:TEU)
年  度
横 浜本牧〜仙台港
1998 (平10)
8,136
1999 (平11)
11,520
2000 (平12)
6,221
2001 (平13)
7,192
2002 (平14)
9,072
2003 (平15)
10,055
([2]p416)


2009.11横浜本牧駅

2009.11横浜本牧駅

▽ 冷凍コンテナ鉄道輸送/3モードで最適物流…中村荷役 (『物 流ニッポン新聞』2000年9月1日)
 中村荷役(東京都港区)は来月末から、日本貨物鉄道(JR貨物)グループと共同で、冷凍専用コンテナの鉄道輸送サービスを開始する。荷主 や船会社にトラック、内航船、レールの3輸送モードを組み合わせて、最適な物流サービスを提供。リーファーに関する輸出入貨物の海コン鉄道輸送は、業界で 初めて。近年、関心が高まる環境対策の一環でもある。

 同社は1998(平10)年から、ドライコンテナの鉄道輸送をスタートさせ、現在、横浜本牧から仙台港と東京貨物ターミナルの2路線で運行。貨物の引き 取り、戸口配 送までの業務を行っている。
 新サービスでは、これにリーファー貨物の取り扱いを追加した。1.ダイヤの正確性 2.輸送品質の安全性 3.大量貨物による物流コスト削減 4.環境 負荷の軽減…といった鉄道輸送のメリットを活かす。料金体系は、船会社が利用しやすいように、多様な販売方法を設定。既に、外航船社数社の海上コンテ ナ を扱うことが決まっている。

 今後、保税上屋の許可を仙台港駅でも取得し、輸入貨物の処理能力を高める。また、ターミナルをヤード代わりにして、内陸にある工場への輸送をレールでカ バーしたい考え。
 冷凍コンテナは、東急車両製造、ヤンマーディーゼル(大阪市北区)と共同開発し、5個投入。移動コンセントとして活用すれば、物流業務の 幅が広がる。同社では「鉄道輸送に対するニーズは高い。JR貨物グループと協力しながら、サービス地域を拡大したい」と話している。

▽海コン輸送に力 仙台行きなど毎日運転 保税蔵置場設置で効率化 (『交通新 聞』2002年7月3日付、2面)
 現在、横浜本牧発の海コン専用列車は仙台港行きを毎日運転。この列車には、途中の宇都宮貨物ターミナル郡山貨物ターミナル止まりの海コンも積載。この ほか専用列車に仕立てるほどのボリュームはないものの、新潟貨物ターミナルは じめ各地区向け輸送も徐々に増えて、横浜発の海コン鉄道輸送は軌道に乗り始めたところだ。
 神奈川臨海鉄道では、海コン輸送に更に弾みをつけるためサービス向上策を推進。1つは一昨年春、横浜本牧駅構内に保税蔵置場を開設したことで、輸入貨物 の通関業務のための蔵置場は駅構内の2カ所合わせて約990平方mのスペース。それまで鉄道輸送する海コンは、いったん別の地区のコンテナヤードにトレー ラーで運んで通関を済ませた後でないと駅に持ち込めなかったが、開設後は船から直接駅に搬入できるようになってコスト削減と時間短縮を実現。蔵置場はコン テナ100個分に相当する保管能力を持ち、ストック基地機能を兼ねるほか、JR規格の12ftコンテナへの積み替えも可能。
 この保税蔵置場は昨年、着側の仙台港駅にも開設され、両端が揃ったことで鉄道の使い勝手は格段に向上した。
 また当初は20ftだけだった取扱い海コンは同じく一昨年から40ftタイプにも拡大。この40ftコンテナは高さが8.6ft(2.59m)の標準タ イプのほか、背高ハイキューブと呼ばれる9.6ft(2.9m)サイズの2種類があるが、JR貨物で調査したところ両タイプとも問題無く運べることが分 かった。最近は冷凍装置付きのリーファーコンテナの取り扱いも始めたところだ。
 こうした海コンのオンレール化を後押しするのが、港湾都市を標榜する地元横浜市。神奈川臨鉄の株主でもある同市は、港に直結するレールのメリットをア ピール。環境負荷軽減や道路混雑緩和に直結する貨物鉄道事業に、熱い視線を注いでいる。

▽海コン列車で″`と鉄道を直結 横浜本牧〜仙台港 平日デーリー運行 (『交通新聞』2005年10月3日付、2面)
 神奈川臨海鉄道とJR貨物、仙台臨海鉄道の3社が海上コンテナを主に運ぶ海上コンテナ列車≠登場させたのは1998年3月。国際海上コンテナが到着 する横浜港と神奈川臨海鉄道が直結している強みを生かし、横浜本牧〜仙台港間に平日1往復のデーリー運行を始めた。
 1列車20両編成で、コキ106形式限定。このうち3両は、途中の郡山貨物ターミナル駅止まりで、残り17両が仙台港に直通する。コンテナ貨車1両につ き、40ftコンテナを1個積載する。
 20ftコンテナについては、総重量24トンの場合は1個、同20トンは2個、空コンテナは3個積める。高さ9ft6inの背高コンテナ、総重量24ト ンのISO規格タンクコンテナにも対応する。郡山発着の貨車は20ftコン テナ限定となっている。
 運行開始当初は、内航海運からそのままシフトする貨物が多 かったが、最近ではトラックから移ってくるケースが増えてい るという。
 下り列車には、横浜港を経由して輸入された雑貨や飲料水など様々な物資が積み込まれ、仙台から更に各地の消費地へ送られる。上り列車は、リコーキヤノンソニーなど大手電機メーカーの製品が多く、横浜港から各国へ輸出されて いる。
 同列車のセールスポイントの1つは、横浜本牧、仙台港の発着駅とも、構内に「保税蔵置場」を設置していること。同置場では、外貨の積み卸しや運搬、蔵置 が可能で、駅でそのまま通関できることから、トータルでの輸送時間や費用も節約する。
 横浜本牧駅には、輸出入貨物の積み替え施設もあり、大容量の海コンから12ftのJRコンテナに積み替えることもできる。

▽鉄道〜港直結 輸送システム構築へ 神奈川臨海鉄道 海コン鉄道輸送 実証実験の出発式 (『交通新聞』2008年4月18日付、1面)
 神奈川臨海鉄道は14日、横浜港本牧埠頭BCコンテナターミナルに隣接する本牧埠頭駅で「海上コンテナ鉄道輸送実証実験」の出発式を開催した。
 同社とJR貨物、仙台臨海鉄道の3社では1998年3月から「海上コンテナ列車」(20両編成)を横浜本牧〜仙台港間で運転している。海コンは、本牧埠 頭から約2.5km離れた横浜本牧駅までトラックで輸送しているが、ショートドレージ(横持ち輸送費用)が発生し、非効率な輸送となっていた。

 実証実験の事業主体は横浜市港湾局で、本牧埠頭駅に海コン専用の積み替え施設を整備し、同駅まで海コン列車5両を延長。鉄道輸送と海上輸送のシームレス化を図り、効果や課題など を検証する。期間は今月から2010年3月まで2年間の予定。鉄道駅と港を直結する海コン輸送システムの構築は、全国でも初めての試み。
 積み替え施設は、国土交通省の補助を受け、神奈川臨海鉄道が2008年1月末に着工した。同駅3番線の南側に荷役ヤード(長さ177.5m×幅 13.2m、敷地面積約2,300平方m)を整備し、大型荷役機械のリーチスタッカーを1台配置する。総工費は約6,000万円。

 
2010年3月の実証実験終了に伴い横浜〜仙台間の海上コンテナ列車は廃止され、代わりに2010年3月のダイヤ改正で誕生したのが、東京 (タ)〜盛岡(タ)間の海上コンテナ専用列車である。(H参照)
 この海上コンテナ専用列車は、途中の郡山(タ)でも海上コンテナを取り扱うが仙台圏の貨物駅は取り扱いが無くなった。
 しかし『2014貨物時刻表』(p40)によると東京(タ)〜仙台港・盛岡(タ)の各駅で40ftハイキューブ(高さ9ft6in)の利用が可能となっ ており、仙台港駅における海上コンテナの取り扱いが再開された模様。


1998.4仙台港駅

2007.5仙台港駅


F 東京(タ)〜黒井
 黒井駅は2000年春から40ftと総重量24トンの20ft海上コンテナの取り扱いが可能になった。これまで同駅は総重量20トンまでの海上コンテナ の取り扱いしか行っていなかった。総重量24トンのタンクコンテナはダイセ ル化学工業が使用。内陸鉄道輸送して欧州に向け輸出することを検討中。 40ft海上コンテナは現在折衝中で、家電製品を欧州、米国 に輸出する予定。鉄道での輸送区間はどちらも黒井〜東京(タ)駅間で、その後は東京港から各仕 向け先港へ運ばれる。(『JR貨物ニュース』2000年4月15日号、 4面)


G横浜 本牧〜新潟(タ)
 2002年7月3日付『交通新聞』2面の記事において、横浜本牧駅は 新 潟貨物ターミナルはじめ各地区向け輸送も徐々に増えて≠ニある。
 また『JR貨物ニュース』2004年10月1日号4面では、横浜本牧駅の保税蔵置場で輸出通関手続きを行っているのは、ISOタンクコンテナで新潟から月間5〜6個到着する化成品。台湾や中国、米国方面輸出用≠ニ のこと。

 横浜本牧駅構内には三菱 瓦斯化学の「超純アンモニア水」のISOタンクコンテナが留置されている のをしばしば目撃している。同社は 新潟工場で高純度アンモニア水を製造しているのだが、需要拡大に伴い2005(平17)年3月には製造設備が増強され、年産15,000トンの能力を持 つ。尚、高純度アンモニア水は半導体の洗浄液に使用される。

 そのため新潟(タ)〜横浜本牧間で輸出用の高純度アンモニア水の輸送が行われているようだ。 一方で新潟工場のアンモニア生産は2015年7月 末をもって生産装置を停止することになった。停止後はアンモニアを外部購入に切り替え、「液体アンモニア」「アンモニア水溶液」の外部販売は継続するとの ことなので、この輸送も継続される可能性があると見ている。

2015.1横浜本牧駅


H東京 (タ)〜盛岡(タ)/I東京(タ)〜新潟(タ)
▽国際コンテナ 東京〜盛岡を鉄道輸送 来年3月から (『河 北新報』2009年12月19日付)
 JR貨物は18日、来年3月のダイヤ改正で、東京貨物ターミナル(東京)と盛岡貨物ターミナル(盛岡市)間で国際海上コンテナの鉄道輸送を始めると発表 した。盛岡ターミナル内に、貨物駅構内としては国内初のインランド・デポ(内陸通関施設)を設ける。

 京浜港の機能強化のための国土交通省関東地方整備局のモデル事業。東北からの京浜港への国際貨物の鉄路輸送を強化する。新路線の運用は3月13日から。 これに伴い、東北と京浜港を結ぶ既存の仙台港(仙台市宮城野区)〜横浜本牧 (横浜市)間の路線は廃止する。

 輸送に使用する列車は20両編成で1日1往復。積み込み可能な貨物駅は、盛 岡貨物ターミナル郡山貨物ターミナル(郡山 市)で、仙台圏は除かれる。
 関東地方整備局は「トラック輸送からの切り替えを含め、東北からの京浜港利用の荷主をさらに集めたい」(港湾物流企画室)としている。

▽国際コンテナ 盛岡に拠点…JR貨物 (『読 売新聞』2010年1月7日付)
 JR貨物 東京経由の輸出で3月開始

 JR貨物は3月13日のダイヤ改正から、盛岡〜東京間で、国際海上コンテナの鉄道輸送を開始し、「インランド・デポ」(内陸通関基地)を岩手県盛岡市永 井の盛岡貨物ターミナル駅に新設する。
 鉄道の駅構内への設置としては全国で初めて。通常は港湾近くで行う通関などの業務を駅の中で行うことで、県内陸部から東京を通じての輸出がより便利にな るという。鉄道輸送はトラック輸送に比べ、CO2削減なども見込めるが、これまで外国への物流を担ってきた港湾を抱える沿岸の各地域からは、「利用減につ ながる」と懸念する声も出ている。

 JR貨物によると、新設する海上コンテナ列車は、盛岡貨物ターミナル駅と、臨海部にある東京貨物ターミナル駅間を、平日に夜行で1往復する。15両編成 で、1両当たり、長さ約6メートルのコンテナに換算して最大3個を積載できる。

 国土交通省は、近隣の韓国・釜山、中国・香港、上海、台湾・高雄などの各港に対する国際物流の競争力を維持するために、京浜、伊勢湾、阪神の3港湾を 「スーパー中枢港湾」に指定して、機能の集中と強化を図ろうとしており、今回の措置もそのモデル事業の一環。貨物収入の目標と実績に応じて、国交省関東地 方整備局が補助金を出す。JR貨物では、「東北地方の物流の活性化に役立つ。鉄道輸送は一般的に、トラック輸送に比べてCO2を7分の1に抑え、環境保全 に貢献できる」としている。

 ただ、海上コンテナを取り扱ってきた三陸沿岸からは、戸惑いの声が上がっている。釜石港には、コンテナ船の定期航路はまだなく、寄港誘致を進めていた釜 石市は昨年9月、コンテナ専用のクレーンを設置したばかり。下沢治産業振興部長は「突然の話でびっくりだ。新たな荷主を探している市にとって、非常に厳し い」と頭を抱える。
 大船渡港は釜山との定期航路があり、2週間に1回、コンテナの積み下ろしを行っているが、1回の取り扱い量はまだ少ない。大船渡市の室井良雄・港湾経済 部長は「岩手のものは岩手の港から、という気持ちでやってきた。地元企業にどれだけ影響があるのか今後注視したい」としている。

▽給電コンテナ営業運用開始 東京(タ)からISO規格リーファーコンテナで 輸入冷蔵食品を 盛岡(タ)へ鉄道輸送 (『JR貨物ニュース』2012年3 月15日号、3面)
横浜港に水揚げされたTRITONの40ftリーファーコ ンテナは東京(タ)にドレージされ8075列車に積載

 開R貨物・インターナショナル(JRFI)では、ディーゼルエンジン発電機搭載の給電コンテナの本格運用を開始した。
 国土交通省関東地方整備局「京浜港における海上コンテナ貨物の鉄道輸送モデル事業」は2010年3月〜2012年3月までを実施期間とし、JR貨物国際 物流開発部と開R貨物・インターナショナルでは次の取り組みを行った。
◆盛岡(タ)に盛岡インランドコンテナデポ事業所、東京(タ)に東京インランドコンテナデポ事業所を設置し、インランドデポに保税蔵置場の許可を取得
◆2010年3月より20両編成の「海上コンテナ列車」の運行を開始

 その結果、東北内陸部〜京浜港間において鉄道での保税輸送と海上コンテナの往復実入り運用が可能となり、利便性の向上とコスト削減効果等により、海上コ ンテナの鉄道輸送量が増加した(輸送開始当初の月間350TEU前後から、震災期間を除いた今年度は月間800〜1,000TEU超で推移)。
 京浜港が「国際コンテナ戦略港湾」として選定されたことを背景に、これまでに東南アジア・北米・豪州などからの輸入貨物(家庭用品、電気製品部材、牧草 など)、東南アジア等への輸出貨物(産業用機械、電気製品、化学製品など)の国内フィーダー輸送を鉄道で行う実績が積み上がった。

 今後は化学薬品、水産加工品など温度管理が必要な貨物の需要を見込んでおり、給電コンテナの運用で海上コンテナ鉄道輸送サービスの商品力が更に強化され る。
 今回はアメリカから輸入された冷蔵食品を盛岡(タ)まで鉄道輸送し、JRFIのシャーシで青森県三沢市までドレージした。
 三沢市までアメリカから輸入された冷蔵食品を輸送したということは、米軍三沢基地向けの輸送だろうか?

▽トラック不足、環境配慮で鉄道輸送へモーダルシフト拡大=タニタ (『カー ゴニュース』2014年5月8日付、第4279号)
 タニタ(本社・東京都板橋区)では、鉄道輸送へのモーダルシフトを拡大する。第1弾として、東京港から秋田工場(秋田県大仙市)向けの部品の輸入で国際海上コンテナの鉄道輸送を 行ってきたが、昨秋から、新たに東京港から新潟ハブ倉庫(新潟運輸・東港物 流センタータニタ事業所)向けの商品の輸入でも鉄道輸送をスタートさせた。新潟ハブ倉庫からの名古屋以西の出荷でもJRコンテナの利用を増 やしており、深刻化するトラック不足への対応を図るとともに、環境配慮型の物流を推進する。

 同社では、2010年3月にJR貨物・盛岡貨物ターミナル駅にインランドデポが開設されたのを機に、鉄道輸送を本格的にスタート。国際海上コンテナで香 港から輸入された部品は、従来、秋田工場までドレージされていたが、これを鉄道輸送に切り替えた。秋田工場でデバンニング後の空コンテナは盛岡インランド デポに返却し、東北圏の輸出メーカーが再利用する“ラウンドユース”が行われており、国際海上コンテナのラウンドユースを絡めた鉄道輸送が実現した。

 東莞工場(中国広東省)で製造された商品は、東京港から新潟ハブ倉庫にいったん保管されるが、東京港から新潟ハブ倉庫への輸送はドレージで対応してい た。昨年秋から、東京港揚げの20ftコンテナについて、東京貨物ターミナ ル駅〜新潟貨物ターミナル駅まで鉄道輸送する取り組みをスタート。デバンニング 後の空コンテナは、新潟東港コンテナヤードに返却され、それまで釜山港から空コンテナを調達していた新潟県内の輸出メーカーが最寄りの港から調達・再利用 できるようになり、鉄道を活用したラウンドユースにつながった。

 なお、国内輸送距離を短縮するため、東京港揚げではなく、新潟ハブ倉庫の最寄港である新潟港揚げに変更することも検討したが、深セン〜新潟港は釜山港経 由となり、リードタイムが長くなることから、東京港を利用している。

 国内出荷においても12ftのJRコンテナによる鉄道輸送を拡大している。近年、ドライバー不足が顕在化し、今後はトラックの調達が難しくなるとの見方 から、輸送能力を補うのが狙い。現在、新潟ハブ倉庫から名古屋、大阪、九州向けの商品出荷についてJRコンテナを活用している。列車の遅れがあった場合に 倉庫での作業に影響するといった課題もゼロではないが、ハンドリングのクレーム等もほぼなくなったことから、顧客との調整により、可能な限り鉄道輸送に切 り替えていく方針だ。

▽インランドデポ機能の整備が国際海上コンテナの鉄道輸送を促進 (『カー ゴニュース』2013年3月28日付、第4171号)
 タニタ(本社・東京都板橋区)では秋田工場(秋田県大仙市)で香港から部品を輸入する際、JR貨物盛岡インランドデポを活用し、東京港大井埠頭から国際 海上コンテナを鉄道輸送している。JR貨物盛岡インランドデポの開業により、10年来の構想が実ったもの。とくに昨年は輸送量が増え、順調に推移してい る。

 かつて同じルートで、JR貨物東京貨物ターミナル駅〜仙台貨物ターミナル駅の幹線で鉄道輸送に挑戦したこともあったが、仙台貨物ターミナル駅から秋田工場までのドレージの距離とコストがネックとなって断念し た。2010年に盛岡貨物ターミナル駅にインランドデポが開設されたことを受け、鉄道輸送を本格的にスタートさせた。

 タニタも輸出企業との国際海上コンテナのラウンドユースを行っている。秋田工場でデバンニングした後の空コンテナを盛岡インランドデポに返却した後、輸 出メーカーが再利用する。その輸出メーカーが、アシックスとのラウンドユースをはじめ、ラウンドユースを絡めた形で国際海上コンテナの鉄道輸送を年々拡大 してきたJUKIだ。

 JUKIでは秋田県横手市の工場(秋田県横手市)から京浜港への輸出貨物の輸送で、JR貨物の盛岡インランドデポを活用することで、鉄道輸送比率を大幅 に高めることに成功した。従来は秋田港または仙台港から空コンテナをピックアップしていたが、輸入者が船社を指定する場合でも、盛岡デポから空コンテナを 調達できるようになったため、鉄道輸送できるようになった。


J東京(タ) 〜仙台(タ)・仙台港
 2012年3月29日付『カーゴニュース』47頁によると、2010年3月から東京(タ)と盛岡(タ)間で始まった海上コンテナの鉄道輸送モデル事業に ついて、11年度には東京(タ)、郡山(タ)、盛岡(タ)に加え、7月から 仙台(タ)での貨物取り扱いを開始するなど取り組みを拡充している。また『2014貨物時刻表』(p40)によると東京(タ)〜仙台港・盛 岡(タ)の各駅で40ftハイキューブ(高さ9ft6in)の利用が可能となっていることから、東京(タ)〜仙台港駅での海上コンテナ輸送が行われている 模様。
*京浜港〜東北圏間の輸送ダイヤ (『カーゴニュース』2014年3月27日付、p46)
 ダイヤ:1往復/日(月〜金)

下り(輸入) 東京(タ)駅発20:22 ⇒ 仙台港駅着9:20 ⇒ 盛岡(タ)駅着7:15
上り(輸出) 盛岡(タ)駅発20:14 ⇒ 仙台港駅発19:25 ⇒ 東京(タ)駅着10:02
 おそらく2011年7月時点では、仙台港駅は東日本大震災による被災で営業を休止しており、2012年4月の営業再開後に海上コンテナの取り扱いを仙台 (タ)駅から移す形で再開したものと思われる。2013年11月現在の大型コンテナ荷役機器配置駅では、仙台港駅は35トン積の40ft級コンテナを取り 扱えるのに対して、仙台(タ)駅は24トン積の40ft級コンテナまでしか取り扱うことができない。この点からも仙台港駅が仙台圏の海上コンテナ取扱駅と して機能していることが窺える。


Kポジショニング
▽鉄道で海コンをポジショニング 東京(タ)発月間200個超える (『JR貨物ニュース』2000年11月1日号、5面)
 昨年度来、海上コンテナ専用列車以外の東京(タ)発列車で 国際海上コンテナを空回想するケースが増えた。空の状態だと20ft国際海上コンテナも、JR 規格の20ftコンテナと同じくコンテナ貨車に3個積みできる強みを生かして、静岡貨物名古屋(タ)神戸港下関などの駅着でそれぞれの最寄港に回送されていく。今年度上半期だけ で1,240個、月間200個を超える輸送個数だ。
 世界各国で輸出入貨物に使われる海上コンテナだが、各港の発着需要には当然格差がある。船会社ごとの格差は一層大きく、それぞれ各港のコンテナヤード間 を移動させながら調整している。船会社にとり、こうした「ポジショニング」は不可欠な業務だけに、その効率化やコスト削減は希求度は高い。
 従来、ポジショニングは内航船やトレーラーで行われているが、内航船で輸送するには一定量まとめる必要があるほか、船の運用上、就航日も限られる。一 方、トレーラーでは1回に1個の海上コンテナしか輸送できない。
 その点鉄道は、まとめやすい個数を一括輸送できる、また定時性に優れていると、複数の船会社が鉄道を専用列車によるフィーダーサービスばかりでなく、ポ ジショニング用の手段として新たに注目し始めた。
 横浜本牧〜東京(タ)間の海上コンテナ専用列車「よこはまシャトル便」も、横浜港と東京港間のポジショニング需要を見込んで設けられ、両港間で発生する ニーズに応えている。しかし別に専用列車でなくとも、国際海上コンテナを鉄道で運べるし、まして空回送時の鉄道利用には制約が少ないことが、周知されてき た結果といえよう。
 つまり空の海上コンテナは、重さを顧慮せずコンテナ貨車に3個積載できるので、貨車の運用効率がよい。またドライ貨物用のボックス型海上コンテナはフォークポケット付きだから、トップリフターを持たない10トンコンテ ナ(JR規格)取扱駅のフォークリフトでも積み下ろし作業ができる。

 さらに現在、船会社はJR貨物に40ftタイプ海上コンテナのポジショニングも鉄道で行いたいと要望している。20ftタイプと異なり40ftタイプの 海上コンテナは空でもコンテナ貨車に1個ずつしか載らないので、輸送力の確保が鍵だが、JR貨物はお客様の要請に応える方策を模索中だ。

▽P&O Nedlloyd Japan梶@国際海上コンテナのポジショニングに鉄道も (『JR貨物ニュース』2004年7月1日号、3面)
 P&Oネドロイドジャパン鰍ナは、日本国内のコンテナ動向を一括コントロールしている。
 本船が到着し、コンテナを積み下ろしするメインポートだけでも、仙台・東京・横浜・清水・名古屋・大阪・神戸・門司・博多の9港。それ以外に地方港が約 30カ所ある。各港で、輸出入のバランスは異なり、輸入は原材料・食料品が多く、関東を中心とした大消費地に偏る傾向にあり、輸出は工場のある国内各地に 分散している。つまり、中京や関西地区では輸出用空コンテナが不足しがちだ。

 ポジショニングはトラックや内航海運と共に鉄道輸送も活用されている。鉄道の場合、空回送時はコンテナ自重だけなので、コキ車に20ft国際海上コンテ ナを3本載せられる。
 「荷を下ろしてデポに戻ってきた空コンテナは、当社の費用で管理・回転させるため、低コストが必須条件。オンレールの時間もインバランス調整に役立てて いるため、コスト的にも時間的にも、長距離になればなるほど鉄道はメリットが出る」と同社。ポジショニングは輸出入の予約状況を見ながら綿密に計画を立て るが、予約変更などにより急に足りなくなることも。最重要課題はコストとタイミングだ。「北から南まで、各地向けに鉄道を利用している。1つの向け地で月に 20〜30本。一番多い清水港向けには、殆ど鉄道で輸送して おり、月平均100本ほど送っている。もう少し、一度にたく さんのオーダーを受け付けてくれるといい。発着のデポを連絡するのみで、その他集配等の手配はJR貨物に任せている。現在、鉄道に載っているのは20ftコンテナのみ。40ftは近距離なら陸 送、長距離なら海上輸送だ。40ftも鉄道輸送できれば」と同社は話す。

 P&O Nedlloydのコンテナは世界中で数十万TEU。コンテナそのものに設備投資のコストがかかっている上、置いておくだけで保管料もかかる。ポジショニ ングは日本国内のみならず、世界中のコンテナ動向を予測しながら行う。8〜6週間前から大まかな動きを掴むが、予約が頻繁に変更になるため予測がつきにく い。できるだけ確実に動きが把握できる1週間前から10日前に、「AデポからBデポへ1週間に30本」というようにJR貨物へとオーダーを入れる。それで も経験に基づく予測に頼るところが大きく、実際に過不足が出てしまう場合があるという。


L東京 港及び横浜港の海上コンテナ輸送に関するその他トピックス
▽ 海運・鉄道利用を促進、リサイクル物流で実証実験/運輸省、「家電法」へ対応急ぐ  (『輸送経済新聞社』2000.3.19〜3.25)
 運輸省は、環境負荷を軽減する物流システムを構築するため、来年度初めにも検討 会を立ち上げる。研究するテーマは、(1)船舶と鉄道を利用した家電リサイクル物 流(2)海運と鉄道を組み合わせた海上コンテナの複合一貫輸送――の二つ。テーマ ごとに、それぞれワーキンググループを設置する。各ワーキンググループのメンバー の選定は現在詰めている。(1)では関係省庁や家電メーカー、物流事業者などが参加。(2)では通運事業者や海運事業者などが参加する見込みだ。来年度前 半には議論を終了し、来年度中には民間企業による実証実験を開始する。

 家電リサイクル物流のワーキンググループでは、排出ガスなどの環境負荷が少ない物流モデルを研究・構築する。リサイクル品の特徴である「時間的制約がな い」という点を生かし、大量に運べる海上輸送や鉄道輸送を利用した物流システムを構築する考えだ。

 検討する項目は、現在稼働中の家電リサイクル工場へ輸送されている廃棄物の量や大きさ、輸送モードや輸送ルートなど。その上で、どのような条件が整え ば、海上輸送と鉄道輸送を利用したリサイクル物流システムの構築が可能かを議論する。検討対象となる工場は、北九州にある東芝のリサイクル工場と、苫小牧 にある三菱電機・日立製作所のリサイクル工場となる見込み。

 ワーキンググループのメンバーは現在選定中だが、通産省や厚生省などの関係省庁 、家電メーカー、物流事業者、コンサルタントなどで構成されるもようだ。 一方、海上コンテナのワーキンググループでは、船舶と鉄道の二つのモードが、一貫して海上コンテナを利用できる物流システムについて討議する。港湾への引 き込み線敷設も含め、どうすれば海上コンテナの鉄道利用が促進できるか、可能性を探る。検討項目は、現在の海上コンテナの輸送量や、 鉄道で海上コンテナを輸送する際の障害な ど。検討対象となる港湾は、大井埠頭本牧埠頭が候補に挙がっている。

 メンバーは、港湾業者や通運業者、学識経験者などで構成される見込みだ。 両テーマとも、来年度前半には議論を終了。来年度中に民間企業による実証実験に移行する考えだ。

▽ 海コン鉄道輸送へ検討会/シフト目指しトラックと比較/運輸省 (『輸 送経済新聞社』2000.9.5)
 運輸省は今月中旬、国際海上コンテナを鉄道で効率的に輸送する可能性を探るため、検討会を設置する。現在、国際海上コンテナの多くがトラックで陸送され ている。これを鉄道輸送に切り替えることで、道路渋滞の緩和やディーゼルトラックによる環境負荷を軽減する。検討会では、モデルルートを抽出してトラック 輸送と鉄道輸送を比較。鉄道輸送が利用されていない理由を明らかにする。その上で、障害となっている部分の改善を促す。また、今回の調査結果に基づき、来 年度は首都圏に限定して国際海上コンテナ輸送のモーダルシフト策を検討する予定だ。

 国際海上コンテナの陸上輸送には現在、輸出入ともにトラックが利用されることが多い。しかし統計を取ったことがないため、客観的なデータが存在しないの が 実情だ。運輸省でも「9割以上がトラック輸送だろう」と推測するにとどまっている。そこで、検討会ではまず、輸出入を手掛けるメーカーなど荷主企業に対し てヒアリングを実施。国際海上コンテナの国内での流動実態を把握するため、どのよ うなルート、モードを使って国際海上コンテナを陸送しているかを調査する。その上で、国際海上コンテナが最も多く流動しているルートをモデルケースとして 抽出。トラックで輸送した場合と鉄道で輸送した場合とで、コストや時間に どのくらいの違いがあるかを比較する。

 その場合、鉄道輸送にはトラックに比べて何らかの問題点があることが予想される。そうした問題点を整理した上で、問題が発生する原因を明らかにする。 JR貨物のダイヤや、コンテナ積載可能な貨車の台数、港湾荷役の効率性などが課題として検討される見込みだ。その上で改善可能なものについては、改善を促 して いく。今回はあくまでも既存インフラを活用したモーダルシフト促 進策の検討であるため、港湾への引き込み線敷設な どは議題としない
 検討会の委員長には、流通経済大学の野尻俊明教授が就任する。このほか、JR貨物、日本通運や丸運などの通運事業者、港湾関係者などがメンバーに加わる 予定だ。
 
 さらに来年度は、今回の調査を基に、首都圏に限ってインフラ整備にまで踏み込んだ調査を実施する。
 今年5月に経団連から、「東京都内を通過するトラック量を減らすために、国 際海上コンテナを鉄道で運べる施策を講じるべきだ」 との提言があった。具体的には、「武蔵野線三郷の操車場跡に保税蔵置場も含 めたインランドポート(内陸港湾)建設」「東京貨物ターミナ ルに引き込み線敷設」などのインフラ整備を提案している。運輸省では、トラックの迂回輸送の可能性も含め、首都圏で国際海上コンテナを効率 的に陸上輸送する方法を検討してい く。

▽ 首都圏の鉄道利用着々/運輸省など、港湾への引き込み線調査も (『輸 送経済新聞社』2000.9.19)
 首都圏における鉄道貨物輸送への見直し機運が高まっている。経済団体連合会(経団連)が今年5月にまとめた「東京圏新生プロジェクト」で、首都圏の鉄道 の有効活用を提唱したことなどを受け、運輸省は港湾への貨物引き込み線に関する調査に乗り出す。首都圏エリアで鉄道貨物輸送とのアクセスをバックアップす るもので、実現すれば、コスト削減など荷主 にとってメリットが期待できる。
 経団連が5月にまとめた「東京圏都市新生プロジェクト」では、首都圏の内陸部に物流拠点を設置して、鉄道網を活用した効率的な物流ネットワークの構築を 提唱した。

 都内を通過するトラック数を減らすために、国際海上コンテナを鉄道で輸送できるような施策を講じるべきだとしている。例えば、埼玉県三郷市の武蔵野操車 場を活用した「インランドポート構想」は、三郷操車場跡地に保税蔵置場も含めたインランドポート(内陸港湾)建設、また東京貨物ターミナルに引き込み線を 敷設するなどのインフラ整備について提案した。

 運輸省は、これを受けて鉄道による海上コンテナ輸送の効率化を図るため、JR貨物や通運業者、港湾関係者らで構成する専門の検討会を設置。鉄道輸送が利 用されない理由などの調査に乗り出した。この検討会では、輸出入を手掛けるメーカーなどにヒアリングを実施。これまで把握していない海上コンテナのルート など流動実態のほか、コストやリードタイムなどをほかの輸送モード゛と比較したデータを集計する。



▼神戸港〔神戸港・神戸(タ)駅〕  
 東の横綱・東京港及び横浜港(京浜港)に対して、西の大関・神戸港及び大阪港(阪神港)。特に神戸港は古くから臨港線が敷設されていただけなく、国鉄が 海上コン テナ輸送に力を入れ始めた昭和40年代には、その輸送を主目的に「摩耶埠頭駅」が設置されるなど、港と鉄道の接続には一角の歴史がある。かつては国内最大 の海上コンテナ取扱量を誇った神戸港だが、1990年代に入るとアジア各国の港との競争が激化、阪神大 震災による被災が追い打ちをかける形で西日本のハブ港としての地位を韓国・釜山港などに奪われており、取扱量が伸び悩んでいる。更に大阪港のコンテナ取扱 量の伸びは、神戸港のそれ を上回り、近いうちに大阪港のコンテナ取扱量は神戸港を凌駕する勢いである。

▽コンテナ取扱個数の推移(単位:TEU)

2003 年
2013 年
伸 び率
神戸港
205 万
255 万
125%
大阪港
161 万
249 万
154%

 このように神戸港の相対的地位が低下している状況ではあるが、港と鉄道貨物の連携に強いという歴史的経緯があるためか、神戸港駅からの海上コンテナ 輸送はJR貨物としての取組みは比較的早かった。阪神地区において大阪港は貨物駅までの距離が神戸港と比べ遠いということもあり、神戸港の方が鉄道へのシ フトが容易だったという理由もあるだろう。しかし昨今の阪神地区における大阪港の相対的地位向上を考えると、大阪港と鉄道貨物の連携強化も重要であると思 われる。大阪港に最寄りの貨物駅である安治川口駅の整備が必要であると考えられる。
 
 1997(平9)年4月1日から神戸港〜浜小倉・福岡(タ)間 で、神戸港・博多港発着の輸出入貨物を扱う海上コンテナ輸送列車「三井物産 号」の運転が開始された。列車単位で1日あたり20 フィート換算往復80個の輸送を目指し、土・日曜日も営業するというもの。(『鉄道ジャーナル』通巻368号、1997年、p104)
 しかしこの列車は収入がコストを割り込んだため、1998(平10)年6月30日を最後に運転を取りやめた。しかしコキ3車分の輸送力を一般列車で確保 し海上コンテナの輸送は継続する。(『運輸タイムズ』1998年7月6日付)

 神戸港駅発着では広島関東方面に輸送ルートが広がり、1998(平10)年10月現在で月々3,000トン近くの海上コンテナ輸送量を確保できるようになっ た。広島や九州地区に向けては、更なる輸送量アップも計画されている。(『交通新聞』1998年10月6日付、2面)

▽国際海上コンテナの区間別輸送量(単位:TEU)
年  度
神 戸港〜福岡(タ)
1998 (平10)
5,252
1999 (平11)
3,640
2000 (平12)
2,860
2001 (平13)
560
2002 (平14)
63
2003 (平15)
75
([2]p416)

 神戸港〜福岡(タ)間の海上コンテナ輸送は上記の通り年々先細り状態 になっていたが、2008(平20)年3月現在では休止状態とのことである。(資料参照

 一方、2002年3月4日付『交通新聞』3面によると、神戸(タ)〜広島(タ)間では国際海上コンテナによる輸入自動車部品の輸送が行われているとのことで、マツダに供 給する自動車部品の輸送であろう。
 実際、神戸(タ)駅構内には数はそれほど多くはないが、海上コンテナが積まれている。

 神戸港は西日本のハブ港としての地位を取り返そうという取組みを始めている。「西日本内航フィーダー」という会社が設立され、西日本各地の港から釜山港 に流れている海上コンテナの積み替え拠点を神戸港に戻そうと取り組んでいるわけだが、内航海運だけでなく鉄道貨物輸送の活用も有効な筈である。
 山陰地方や滋賀県など内航海運よりも鉄道貨物輸送が優位と見られる地域は西日本にもあり、トレーラーとの競争はもちろんあるだろうが、計画中の米原貨物 ターミナル駅から神戸(タ)まで海上コンテナ専用列車が設定されたりすると素敵なのだが…と妄想している。

2011.8神戸(タ)駅

▽JUKIとアシックスが鉄道を活用した共同物流をスタート (『カー ゴニュース』2012年6月26日付、第4096号)
 JUKI(本社・東京都多摩市)とアシックス(本社・神戸市中央区)は、鉄道を活用した共同物流をスタートさせた。JR貨物の米子ターミナル駅を基点 に、山陰アシックス工業(本社・鳥取県境港市)が輸入で使ったコンテナをJUKI松江(本社・島根県松江市)が輸出に使うスキームを構築。フォワーダー、 JR貨物、船社の協力により海上コンテナのラウンドユースと鉄道輸送へのモーダルシフトを実現し、物流コストと二酸化炭素(CO2)を削減している。

 JUKIはJUKI松江で製造した製品の一部を神戸港から20ftコンテナ単位で輸出している。従来、JUKI松江近くの物流会社の倉庫で製品を保管 し、トラックで神戸まで輸送。神戸の通関業者がバンニングし、通関後、コンテナヤード(CY)に搬入していた。ただ、JUKIでは特定輸出者(AEO輸出 者)の承認を受けており、その特例措置(特定輸出申告制度)を活用した効率的な物流体制の構築を検討していた。

 アシックスでは、山陰アシックス工業で海外から大阪港を経由して輸入したパーツをアッセンブリングし、主に国内向けに製品を生産。LCL(小口貨物)に ついて海外で貨物を集約してFCL(フルコンテナ)化(20ft単位)するなどの物流効率化を進めてきた。ただ、コンテナ単位での輸入が増え、工場から帰 りのドレージが空輸送となっていたため、空コンテナを利用するパートナーを模索していた。

 JUKIとアシックスでコンテナのラウンドユースを検討するにあたって、当初はドレージによる実施を想定していた。ただ、「輸入と輸出のタイミングを合 わせるためにコンテナを保管する場所が必要」、「両社が使っている船社が違う」という課題が浮上。JR貨物の米子ターミナル駅に一時コンテナを保管し、輸 出入のタイミングを調整するというスキームにフォワーダーの郵船ロジスティクス、JR貨物、船社のOOCLが協力する形で、鉄道輸送を絡めたコンテナのラ ウンドユースを5月から開始した。

 具体的には、アシックスは輸入の実入りコンテナを大阪港から米子ターミナ ル駅まで鉄道輸送し、山陰アシックス工業にショートドレージで搬入後、空コンテナを米子ターミナル駅に返却。JUKIは輸出時に米子ターミ ナル駅から空コンテナをピックアップし、倉庫でバンニング(当面、通関はCY通関)。実入りコンテナを米子ターミナル駅に輸送し、神戸ターミナル駅まで鉄道輸送し、神戸港 CYにショートドレージで搬入する。

 この新しいスキームにより、JUKIがコンテナの復路を利用することになるため、アシックスはドレージコストを削減。JUKIは、神戸の通関業者でか かっていた倉庫への搬入・搬出、バンニングが不要になり、その分のコストを抑えられる。JUKIでは「物流費を約2割下げられ、神戸〜松江間でCO2を排 出量を大幅に削減できる」(縫製機器ユニット営業推進部・貿易業務グループ)としている。

▽インランドデポ機能の整備が国際海上コンテナの鉄道輸送を促進 (『カー ゴニュース』2013年3月28日付、第4171号)
 アシックス(本社・神戸市中央区)は2012年から、JUKI(本社・東京都多摩市)と共同で国際海上コンテナのラウンドユースと鉄道輸送をスタートさ せた。JR貨物の米子ターミナル駅を輸出入のタイミングを調整する基地とし、山陰アシックス工業(鳥取県境港市)が輸入で利用したコンテナをJUKI松江 (島根県松江市)が輸出に使うというスキームで、輸送コストの削減とCO2削減を実現した。

 山陰アシックス工業は国内で唯一のシューズの製造拠点で、材料を海外の協力工場から輸入している。既に東日本では輸入ロットがフルコンテナ(FCL)に まとまった場合、輸出荷主とコンテナのラウンドユースを行っており、西日本でも検討してきたところ、船社からの情報でラウンドユースのパートナーを探して いたJUKI松江に遭遇、2011年8月から準備に入った。

 ラウンドユースにあたって課題になったのが、山陰アシックス工業の輸入とJUKI松江の輸出のタイミングが合わないこと。そこでJUKIから発案された のが「鉄道輸送」だった。山陰アシックス工業への輸入の幹線を鉄道輸送し、空になったコンテナをJR貨物米子ターミナル駅で一時保管。JUKI松江が必要 なタイミングで同ターミナル駅からコンテナをピックアップするという案だ。

 従来、山陰アシックス工業では神戸港を利用していたが、鉄道輸送ダイヤの関係で神戸港を利用すると米子ターミナル駅に到着するのが1日遅れるため、輸入 港を大阪港に変更。船社(OOCL)、フォワーダー(郵船ロジスティクス)、JR貨物など関係者の協力を得て、2012年5月から本格運用。現在、フルコ ンテナで輸入した分の5割でラウンドユース、鉄道輸送が実現。コンテナ1本あたり2万円程度のコストダウンになるという。
(『JR貨物ニュース』2013年10月15日号、2 面)


▼室蘭港〔陣屋町駅〕  
 室蘭港は1965(昭40)年に北海道・東北地方で初の「特定重要港湾」に指定されるなど、古くから北日本の重要な港湾に位置付けられてい た。室蘭港には新日鐵住金梶A鞄本製鋼所、日鉄住金セメント梶AJX日鉱日石エネルギー鰍ネどの素材系大手メーカーの事業拠点が立地し、年間約 3,000万トン(2012年)に及ぶ膨大な貨物が取り扱われている。
 しかし海上コンテナの取扱量に着目すると、4,746TEU(2013年速報値、以下同)に過ぎず、道内最大の取扱量を誇る苫小牧港の32万8千TEU と比較すると、その僅か1.5%程度の量でしかない。ちなみに道内のランキングでは以下、石狩湾新港が4万4千TEU、釧路港が1万8千TEU、小樽港が 1万6千TEUとなり、室蘭港は道内5位という位置付けである(もっとも道内で室蘭港以下の取扱量は函館港と稚内港の2港しかないのだが…)。
 そのような室蘭港なのだが、現在就航している国際定期コンテナ航路は釜山との間の韓国・中国航路が隔週1便のみで、それ以外は横浜港との国際フィーダー コンテナ航路が1便のみとなっている。過去には東南アジア航路もあったのが、1992(平4)年に休止となったままである。また近年は室蘭〜大畑、大洗、 青森といった各フェリー航路が相次いで休止となっており、苫小牧港への集約化が進み室蘭港の相対的地位低下が進んでいるものと思われる。

 室蘭港の海上コンテナは崎守埠頭で荷役が行われており、そのすぐそばにJR貨物の陣屋町貨物駅があるという好立地ではあるのだが、海上コンテナについて 言えば室蘭港自体の機能が低迷しており海上コンテナの鉄道輸送への展開を図るには厳しい現状と言わざるを得ない。
▽JR 貨物、北海道で海コン輸送開始/12日に室蘭〜札幌 (『輸 送経済新聞社』1997.11.30〜12. 6)
 日本貨物鉄道(JR貨物、本社・東京)は12日から、北海道で海上コンテナの試験輸送を開始する。輸送区間は、室蘭港に隣接する陣屋町 駅から札幌貨物ターミナル駅まで。雑貨をはじめ、北米、豪州などから輸入される紙・パルプの原料(ウッドチップ)を白老町にある大昭和製紙(本社・富士 市)北海道工場などに輸送する計画。輸送コスト削減のほか、リードタイムの短縮などの効果発現も期待できそうだ。JR貨物は、室蘭港で陸揚 げされる20ftコンテナの輸送を手掛ける。同港内にある陣屋町駅は、港湾施設内にヤードを確保する道内唯一の貨物駅。同駅を利用することで、従来の 港〜貨物駅間のトラック輸送も不要となり大幅なコスト削減につながる。

 下り便(札幌行き)では、本州からの雑貨をはじめ、北米、豪州から輸入される紙・パルプの原料であるウッドチップを輸送する予定。同区間の沿線には製紙 工場が立ち並ぶ。一方、札幌発の上り便では空コンテナ、紙・パルプ製品などを輸送する。

 当面、同区間では需要があれば、通常列車に海上コンテナ用貨車を設けていく。12日の試験輸送には、海上コンテナ用として貨車3両を設置する(1両あた りの積載量は20ftコンテナ2個)。試験輸送後、「取扱量の推移を見ながら車両編成、運行便数を決めていく」(JR貨物北海道支社)方針。

 今回海上コン輸送を行う区間には、既に時速100kmで約1,000トンのけん引が可能な新鋭車両(DF200型)を導入。輸送時間の大幅短縮 も可能な体制を整えている。
 農産品の輸送量減少が続いているJR貨物北海道支社では、「新たな営業展開として海上コンテナ輸送に大きな期待を寄せている」(同)。

2008.3陣屋町駅
 海上コンテナの輸送実験が行われたと思われる側線。
 上記記事の輸送実験を行って以降、特に活用された気配は無く荒れるに任せたままである。


▼秋田港〔秋田北港駅〕  
 北東北の代表的な港湾と言えば、八戸港というイメージがある。 1994年に東北地方初の国際定期コンテナ航路が就航したのは八戸港であるし、工業都市・ 八戸の工業地帯と言えば何と言っても八戸港の周囲である。製紙、セメント、化学、飼料などの大手メーカーの事業拠点があり、石油やガスの油槽所やタンクも 多数立地している。ポートアイランドや八戸大橋などのインフラ整備も進んでいる。しかし海上コンテナ取扱量に着目すると、秋田港が7万4千TEU (2013年速報値)に対して、八戸港は4万6千TEU(同)と秋田港が八戸港を大きく上回っている。東北地方では仙台塩釜港に次ぐ第2位の海上コンテナ 取扱量は秋田港なのである。

 そのような秋田港では、更なる基盤強化の取り組みとして鉄道と港の結節強化が図られており、各種実証実験も実施された。秋田臨海鉄道を活用したこの取組 みは興味深く、構想が実現することを期待したい。

@秋田港シーアンド レール構想について
Aコンテナヤードの 整備
B定 期コンテナ航路
C鉄 道輸送の実証実験

2010.10秋田港の大浜コンテナヤード

@秋田港シーアンドレール構想につ いて  
▽シーアンドレール構想 秋田港拠点化へ推進協 (『河 北新報』2008年5月22日付)
 秋田商工会議所や秋田県など秋田県内外の官民14団体は6月下旬、鉄道輸送ルートと組み合わせることで秋田港の拠点性を高めようと、「秋田港シーアンド レール構想推進協議会」(仮称)を設立する。東北地方整備局が実施した輸送実験が成功し、構想の実現性が高まったことから、秋田港再整備などの課題に官民 挙げて取り組む。
 協議会は秋田商議所、県のほか、県貿易促進協会、秋田市、東北地方整備局、日本通運、JR貨物、秋田臨海鉄道、地元金融機関などで構成する。

 実務担当者による幹事会を設けるほか、県や東北地方整備局が事務局となり、行政支援や秋田港再整備、ポートセールスの方策などを検討する組織も発足させ る。構想に詳しい大学教授を顧問に迎える計画もある。構想の実現にはロシア・沿海州との定期航路開設や、鉄道輸送コストと船賃の圧縮などが課題となる。今 後整備される秋田港の新コンテナヤードまで、臨海鉄道を約1キロ延長させることも必要になり、各検討組織で実態調査や計画の具体化を話し合う。

 協議会は当面、トヨタ系生産子会社セントラル自動車(神奈 川県相模原市)が2010年、宮城県に進出することなどをにらみ、自動車や自動車部品のロシア、欧州への輸出をターゲットに構想の実現を目指す。日本海側 の他港を経由し、秋田港に寄港してもらう「三角航路」開設が近道と の指摘もあり、同じくセントラル自動車の進出を受け、完成車の積み出し拠点 を目指す酒田港との連携も模索する。

 東北地方整備局が今年1月、仙台港や秋田港で実施した輸送実験では、秋田北港駅でのコンテナ積み替え、鉄道輸送による振動や温湿度に問題点は見つから ず、構想の有益性が明らかになった。協議会事務局の秋田商工会議所は「県内経済が落ち込む中、シーアンドレール構想は唯一の明るい希望で、県民の期待も大 きい。官民挙げて山積する課題を一つずつ解決したい」と話している。

[秋田港シーアンドレール構想]秋田港までの鉄 道輸送ルートを確立し、宮城県や岩手県のほか首都圏や中京圏からも貨物を集め、ロシア・沿海州との貿易を活発化させる。沿海州のボストチヌイなどからシベ リア鉄道を使えば、日本の自動車工場が林立するロシア・サンクトペテルブルクまで貨物を輸送することができ、日本と欧州を結ぶ一大物流ルートが確立するこ とになる。


Aコンテナヤードの整備  
▽秋田港 コンテナヤード移転拡張 取扱量増加に対応 (『河 北新報』2008年2月21日付)
 秋田県は新年度、秋田港(秋田市)の大浜地区にあるコンテナヤードを移転し、外港地区に拡張整備する方針を固めた。輸入を中心にコンテナ取扱量が増加 し、大浜地区のヤードでは収容しきれなくなった。今後も自動車部品の輸出など、取扱量の増加が見込まれるため、ヤードの収容量を広げて、秋田港の拠点性を 高める狙いがある。秋田港のコンテナ取扱量は2006年、5万1,000TEU(20ftコンテナ換算の取り扱い個数)を突破した。現在は貨物積載分を大 浜地区のヤード(約5ヘクタール)に収容し、空コンテナは外港地区の一角で保管している。

 計画では、新ヤードは外港地区の北側(約14ヘクタール)に整備する。同地区は最も海側にあり、岸壁へ押し寄せる波が高い。入港した船が揺れるのを防ぐ ため、県は本年度から対策工事に着手している。新年度は新ヤードの施設計画や運営計画を策定し、着工は09年度を目指している。新ヤード整備で、秋田港の コンテナ収容量は11万TEUとなり、現在の2倍以上に増加する。工業用地を挟んで北側にある飯島地区の岸壁工事も進め、将来のヤード拡張にも対応できる よう準備する。

 トラックごと輸送するフェリー貨物の取扱量も増えており、ターミナルの中島埠頭の機能強化も図る。大浜地区のヤードには、秋田港内に収容場所が点在する 砂利、鉄くずなどのバルク貨物を集約する。秋田港の貨物取扱総量は製材輸入 の好調などにより、コンテナは10年前の5倍以上に増加し、フェリー貨物は5年前の2倍以上に伸びている。

 仙台港(仙台市)との鉄道輸送ルートを確立し、首都圏や中 京圏から自動車部品などを秋田港へ集める「環日本海シーアンドレール構想」も実現へと動きだし、コンテナ取扱量のさらなる増加が期待されている。県港湾空 港課は「新たなヤードには、コンテナの迅速な積み替えが可能な体制を整えたい。秋田港の利便性が向上すれば、ロシア貿易の拠点性も高まる」と話している。

▽秋田港再整備が必要 検討委が報告取りまとめ (『河 北新報』2008年3月21日付)
 「環日本海シーアンドレール構想」で、東北地方整備局が設置した有識者の検討委員会は21日、秋田市で最終会合を開き、構想実現には臨港道路の移設や秋 田臨海鉄道の延伸など、秋田港の再整備が必要とする報告を取りまとめた。

 検討委は、鉄道とコンテナヤードが接する利点を生かすため、現在の大浜ヤードを東側へ広げ、秋田臨海鉄道の秋田北港駅と一体化させる必要性を指摘し、臨 港道路を臨海鉄道より東側へ移設するよう提案した。秋田県が現在の港湾計画で、コンテナヤードを外港地区へ移転新築する方針のため、臨海鉄道を外港地区ま で約2.8キロ延伸する案も併記。構想実現の経済効果や将来見通しを把握し、整備時期を検討することも求めた。

 2月に実施した実証実験で、「鉄道輸送の有効性は確認できた」と結論付け、ロシア・サンクトペテルブルクに進出するトヨタや日産など、日系自動車企業へ の部品輸出を対象に、官民挙げた貨物量確保と秋田港の売り込みが必要と強調した。委員長の稲村肇・東北大大学院教授は「サンクトペテルブルク港の貨物取り 扱いはもう限界で、2年以内にシベリア鉄道を使った輸送は始まる。今後5年以内が秋田港の好機とみられ、今すぐ道路移設に取り組み、優位性をアピールすべ きではないか」と指摘した。

[環日本海シーアンドレール構想] 仙台臨海鉄 道の仙台港駅から、JR北上線や東北線、奥羽線を使い、秋田臨海鉄道の秋田北港駅まで、コンテナを輸送するルートを確立し、秋田港の物流拠点化を図る。シ ベリア鉄道と連動させ、ロシア東部や中央アジア、欧州までの一大物流ルートを確立する構想もある。

▽県、外港への鉄路延伸調査費を計上 環日本海シーアンドレール (『秋 田魁新報』2008年6月5日付)
秋田臨海鉄道線路の延伸を含め、シーアンドレール構想の実 現に向け、整備方針が検討されている秋田港のエリア
 秋田港を活用した「環日本海シーアンドレール構想」の実現に向け、秋田臨海鉄道北線の秋田北港駅から秋田港外港地区のコンテナヤードまでの線路延伸の可 能性などを探る調査費約500万円を、県が6月定例県議会に提出する補正予算案に計上する方針を固めたことが4日、分かった。県の港湾計画でコンテナ貨物 を集約する予定の外港地区に、貨車を直接乗り入れさせることも視野に入れ、秋田港の利便性を高めようという狙いがある。

 シーアンドレール構想は秋田港まで鉄道輸送した海上用コンテナを、船で極東ロシアのボストーチヌイ港まで運び、シベリア鉄道を利用してロシア、中央アジ ア、欧州に運ぶ計画。国土交通省東北地方整備局が提唱し、今年2月に実施した実証試験で実現が可能なことが分かった。

 試験でコンテナの積み替えを行ったのは、秋田北港駅に隣接する大浜コンテナヤード。しかし、4.6ヘクタールと手狭な上、岸壁の水深も浅く、鉄道とコン テナヤードの間に臨港道路があることから荷役に支障をきたすとの指摘もあった。国と県、運輸業者らでつくる環日本海シーアンドレール構想検討委員会は▽臨 港道路を付け替えて大浜コンテナヤードを拡大し、線路を引き込む▽県が国際貿易拠点として拡大・整備に向けて調査を進めている秋田港外港地区コンテナヤー ドまで線路を延伸する−という2つの改善策を提案していた。

 今回の調査は、この指摘を受けて実施する。秋田臨海鉄道の北線を現在の終点の秋田北港駅から、大浜コンテナヤードと停泊地を挟んで向かい合う秋田港外港 地区コンテナヤードまで延伸することが可能かどうかなど、秋田港全体の整備方針を探る。線路と両コンテナヤード、臨港道路の位置関係を踏まえ、延伸する場 合のルートや費用など具体的な調査項目を今後決める。

▽秋田県、秋田港の鉄道延伸検討 6月補正予算案に調査費 (『日 本経済新聞【東北】』2008年6月12日付)
 秋田県は11日、6月補正予算案を議会各派に提示した。鉄道と船を使ってコンテナをロシアなどに運ぶ「環日本海シーアンドレール構想」を支援するため、 秋田港内の秋田臨海鉄道(秋田市)の北線(2.5キロ)を、コンテナヤードを拡充する計画の外港地区まで延伸する調査費532万円を盛り込んだ。

 県は外港地区の1.2ヘクタールのコンテナヤードを14ヘクタールに拡大するため、2008年度当初予算に事業計画の策定費を計上している。国土交通省 は2月の同構想の実証実験で、臨海鉄道の駅に隣接する大浜地区のコンテナヤード(4.6ヘクタール)を使ったが、貨物の積み替えが不便で外港地区までの鉄 道延伸(約2.8キロ)などを提案していた。

 調査するのは費用やルート、事業主体など。セントラル自動車(神奈川県相模原市)が宮城県で工場を稼働する2010年までに、コンテナ輸送の優位性を売 り込めるようにする考え。

▽秋田港コンテナターミナル整備へ調査費 県、12月補正に (『秋 田魁新報』2008年9月20日付)
 県は19日、秋田港外港地区の国際コンテナターミナルの実施設計に向けた調査費を12月定例県議会の一般会計補正予算案に盛り込む方針を明らかにした。 寺田典城知事は「早急に整備が必要な施設については、来年度からの事業化に向けて取り組む」とし、環日本海シーアンドレール構想の早期実現に取り組む姿勢 を示した。9月定例県議会の一般質問で、知事が中泉松司氏(自民)の質問に答えた。

 県は、コンテナヤードの手狭さの解消と荷役作業を効率化することで港の物流拠点機能を強化するため、外港地区の国際コンテナターミナルの拡大整備に向け た基本計画を年内をめどに策定する。さらに、秋田臨海鉄道北線の秋田北港駅から、コンテナターミナルまでの線路延伸の可能性とルート設定、コンテナ積み替 え施設の機能や規模の調査なども行っており、年内に延伸ルートが決定される見通しとなっている。

 県は、これらの調査を踏まえ、国際コンテナターミナルの実施設計に向けた測量や地質調査などの費用を計上する方針。早急な整備が必要な施設は、来年度か らの事業化に向けて取り組むことになる。鉄道の延伸について寺田知事は「整備手法や関連施設との調整に時間を要することから、既存施設の活用についても検 討する」とした。

▽秋田港新コンテナターミナル、2011年度供用開始めざす (『日 本経済新聞【東北】』2009年2月7日付)
 秋田県は6日、秋田港の外港地区に建設する新コンテナターミナルの概要を明らかにした。約35億円を投じて、まず10ヘクタールのターミナルを設置。 2011年度の供用開始を目指す。取り扱い可能なコンテナ個数は年間7万TEU(20フィートコンテナ換算)で現在の2倍以上となる。

 鉄道と船を使って秋田港からコンテナ貨物をロシアに運ぶ構想の推進組織「秋田港シーアンドレール構想推進協議会」で説明した。新ターミナルは09年度中 に着工。コンテナを運ぶ込むためにターミナルに接続する鉄道駅は、17両編成で全長500メートルの貨物列車が収まるスペースを想定している。ターミナル に隣接する3ヘクタールは将来拡大する用地として確保する。

 ターミナル設置の事業費は09年度の県の補正予算案に計上する予定。

▽県、コンテナヤード整備前倒しへ 秋田港外港、取扱容量大幅増に (『秋 田魁新報』2011年6月4日付)
 県は3日、2014〜18年に整備、完成させる予定だった秋田港外港地区の国際コンテナターミナルを早ければ、13年中にも完成させる方針を明らかにし た。新ターミナルが完成すればコンテナヤードの年間の取扱可能容量は10万本(20ft換算)となり、現在のコンテナヤード(大浜地区)の容量の2.5倍 になる。

 県は現在、外港地区整備の1期計画として来年3月末までの完成に向けて、南側10ヘクタールに容量7万本のコンテナヤードを建設中。東日本大震災後、太 平洋側の代替港として秋田港の利用度が高まり、貨物量が増えていることから、14年からの2期計画を前倒し、北側5ヘクタールに3万本分のコンテナヤード を建設、13年中の完成、供用を目指す。

 6月定例県議会に提出する港湾整備事業特別会計の11年度補正予算案に2期計画の調査費として1,500万円を計上する。早ければ、今夏にも地盤調査を 行い、地盤改良の検討などに入る。本格着工は来春の見込み。

 佐竹知事は同日の会見で「太平洋側の港が復旧すれば、秋田港で増えている貨物は元に戻るが、一度使った実績があれば船会社も秋田港のことが分かる。秋田 港の存在感を高めるため、県ができることをやる」と話した。

▽秋田港に国際コンテナターミナル完成 対岸貿易拡大へ期待 (『秋 田魁新報』2012年4月12日付)
 秋田港の国際物流の拠点港化を目指し県が同港外港地区に整備していた国際コンテナターミナルが完成し、12日、コンテナの積み降ろしが始まった。現地で は記念式典が開かれ、出席した県や船舶会社の関係者、荷主ら約150人が、経済成長の著しい中国や韓国、極東ロシアなどとの対岸貿易拡大へ期待を膨らませ た。

 ターミナル整備は、秋田港の利便性と競争力を高める狙いで2009年度に着手。荷役効率化と荷主のコスト低減でコンテナ取扱量の拡大を図り、対岸航路の 拡充や環日本海シーアンドレール構想の実現を目指す。

 県によると、これまでのコンテナヤードは大浜地区約4ヘクタール、外港地区約1ヘクタール。昨年のコンテナ取扱量は、東日本大震災で被災した太平洋側の 港湾の代替需要もあり、両地区合わせて前年比約27%増の約6万2千本だった。今回の整備で外港地区は約11ヘクタールに拡大され、年間約7万本の取り扱 いが可能になる。大浜地区は、コンテナ以外の積み降ろしに使用する。

 県は14年度までに、ターミナルに隣接する約5ヘクタールをさらに整備。年間取扱量を10万本に増やす方針だ。
 ターミナルには高機能ガントリークレーンを新設し、大型船舶(4万トン級)からの積み降ろしが可能になった。コンテナを整理するトランスファークレーン も2基導入し、荷役効率がアップ。青果物の殺菌・消毒用の薫蒸施設や税関検査などを行う多目的施設、コンテナ表面の放射線量を測る装置も設置した。


B定期コンテナ航 路  
▽秋田―ロシア 定期航路、年内開設で合意 (『河 北新報』2008年7月9日付)
 秋田県とロシアの船会社「フェスコ」は8日、秋田港とロシア・ボストチヌイ港を結ぶ定期航路を年内に開設することで合意した。佐藤文一副知事がウラジオ ストク市の同社を訪れ、ドミトリィ・マスロフ執行役員と覚書を締結した。秋田港シーアンドレール構想の骨格をなす航路で、東北とロシア、欧州をつなぐ一大 物流ルートの確立へ大きな一歩となる。

 覚書によると、フェスコ社は定期コンテナ船を2週間に1度、秋田港へ寄港させる。1回当たり50TEU(20ftコンテナ換算の積載能力)以上の輸送を 目標とし、年内にサービスを始める。
 同社は現在、ボストチヌイ港から富山、門司、神戸、名古屋、横浜などの港を回る定期コンテナ船を商船三井(東京)と共同運航している。この寄港先に秋田 港が加わるとみられる。

 県と同社は今後、1回目の寄港時期の協議に入る。同社から輸送運賃が示され、県は民間組織の秋田沿海州航路誘致推進協議会、県貿易促進協会などと連携 し、幅広い荷主に働き掛けてコンテナの確保に取り組む。

 県によると、秋田港では韓国・釜山港を経由し、北欧から年間1万 5,000TEUの製材が輸入されている。国内には北欧ではなく、中央アジアの製材輸入を希望する業者も多く、1割がボストチヌイ港経由に 切り替われば、目標の1回50TEUは確保できるという。
 ロシアとの定期航路は2003年まで、中国東北部向けにポシェット港との航路があったが、シベリア鉄道に直結する主要港とは初めて。

[秋田港シーアンドレール構想] 秋田港までの 鉄道輸送ルートを確立し、宮城県や岩手県のほか首都圏や中京圏からも貨物を集め、ロシア・沿海州との貿易を活発化させる。ボストチヌイからはシベリア鉄道 を使い、日本の自動車工場が林立するサンクトペテルブルクへ貨物を輸送する。

▽秋田―ロシア定期航路 年内開設は困難 金融危機影響 (『河 北新報』2008年12月5日付)
 秋田港とロシア・ボストチヌイ港を結ぶ定期航路の年内開設が困難になったことが4日、分かった。世界的な金融危機の影響で、ロシアからの製材輸入需要が 低迷し、開設条件の貨物量を確保できなくなったことが主な理由。

 秋田県とロシアの船会社「フェスコ」は今年7月、一回当たり50TEU(20ftコンテナ換算の積載能力)以上の輸出入貨物を確保することなどを条件 に、定期航路の年内開設で合意した。ところが、県が主要貨物と見込む中央シベリアからの製材輸入は、金融危機に伴う円高ユーロ安の影響で、北欧からの製材 輸入より割高となった。ロシアが丸太の輸出関税引き上げを延期し、輸出の中心が丸太から製材にシフトしなかったこともあり、需要は北欧からの製材輸入に流 れた。

 県によると、現時点で確保できた貨物量は、中古自動車部品などの輸出で25TEU、製材などの輸入で5TEU程度。当初予測の3分の1にも満たず、航路開設の最低条件にすら達していない 状況だ。県は金融危機以前、ロシアからの製材輸入は北欧からの輸入より安く、優位性がある上、建築基準法改正に伴う国内の住宅着工減も回復しており、1回 当たり100TEUの確保は可能と見ていた。

 ロシアとの定期航路開設は、秋田港シーアンドレール構想実現の第一歩として期待されている。県流通貿易課は「航路開設がいつになるかは予想不可能で、い まはポートセールスに歩くしかない」と話している。

[秋田港シーアンドレール構想]秋田港までの鉄 道輸送ルートを確立し、ロシア沿海州・ボストチヌイからはシベリア鉄道を使ってサンクトペテルブルクへ貨物を輸送する。2010年のセントラル自動車(神 奈川県相模原市)の宮城県進出などをにらみ、当面は製材輸入で航路を維持し、いずれはロシア向け自動車輸出で、秋田港の拠点化を目指す。

▽中国・台湾とも直行航路 秋田港シーアンドレール構想 (『河 北新報』2009年2月28日付)
 秋田港シーアンドレール構想の実現に向け、秋田県は新年度、中国や台湾との直行航路開設に乗り出す。同構想の核はロシア・沿海州を結ぶ航路だが、中国や 台湾との輸出入を拡大し、秋田港のコンテナ貨物取扱量を増やすことで、秋田港までの国内鉄道輸送ルートの確立につなげる。

 開設を目指すのは、秋田港と中国の大連、上海、それに台湾の台北をそれぞれつなぐ直行航路。今夏、韓国の船会社数社に対し、航路開設を要請するミッショ ンを展開する。秋田港には韓国・釜山との航路があり、中国とは釜山経由で貨物を輸出入している。取扱量は年間7,000TEU(20ftコンテナ換算の積 載能力)。秋田港全体の約25%を占め、国別貿易額では最も多い。

 釜山経由での中国への輸送日数は最短8日間。これが直行航路では半分の4日間に短縮され、輸出入の需要はさらに伸びるとみられる。現在はほぼ皆無の台湾 との輸出入も、航路が開設されれば1,200TEUは見込めるという。秋田港には08年2月まで、中国との直行航路が断続的に設けられてきたが、需要の多 い大連や上海に寄港しなかったり、経由地が多く輸送日数が長かったりして、輸出入増にはつながらなかった。

 11年の実現を目指すシーアンドレール構想の課題の一つは、日本国内の鉄道輸送コスト縮減。県はJR貨物と協議を進めるが、運賃引き下げは秋田港の貨物 量拡大が前提となっており、直行航路の開設で突破口を開く。構想の骨格をなすロシア・ボストチヌイ港との定期航路は、県が08年7月、1回の寄港当たり 50TEU以上の貨物量確保を条件に、ロシアの船会社「フェスコ」と開設することで合意した。だが、世界的な金融危機の影響で、主要貨物と見込んだ中央シ ベリアからの製材輸入が低迷。航路開設の条件をクリアできなくなり、08年度中の開設は断念した。

 県は09年度、沿海州航路に限り、秋田港の入港料(1トン当たり2円20銭)、コンテナクレーン使用料(30分当たり3万3,200円)の半額を補助す る方針で、定期航路開設の呼び水にする。県流通貿易課は「国内の鉄道輸送ルート確立は、シーアンドレール構想を実現へと大きく近づけることになる。あらゆ る手段を尽くして、秋田港の取り扱い貨物を増やしたい」と話している。

[秋田港シーアンドレール構想] 秋田港までの 鉄道輸送ルートを確立し、ロシア沿海州・ボストチヌイからはシベリア鉄道を使い、サンクトペテルブルクへ貨物を輸送する。2010年のセントラル自動車 (神奈川県相模原市)の宮城県進出などをにらみ、当面は製材輸入で航路を維持し、いずれはロシア向け自動車や部品の輸出で、秋田港の拠点化を目指す。

▽秋田港―ロシア定期航路、開設めど立たず 積み荷確保に苦戦 (『秋 田魁新報』2009年10月18日付)
 秋田港とロシア・ボストーチヌイ港を結ぶ定期コンテナ航路の開設にめどが立たず、県と県内民間団体などが目指す本年度内の実現が厳しい状況となってい る。ロシアの船会社が条件提示した1回の寄港当たりコンテナ50本の積み荷確保が、不況の影響で困難な見通しとなっているためだ。こうした中、佐竹敬久知 事は20日から5日間の日程でロシア入りし、昨年の航路開設の合意を再確認するほか、地元行政府に対し、経済交流促進の協定締結を呼び掛ける。航路開設は シーアンドレール構想の前提でもあり、積極姿勢をアピールする考えだ。

 県とロシアの船会社フェスコ社は昨年7月、同年内にも定期航路を開設することで合意した。交わした覚書は「フェスコは航路開設の準備ができており、年平 均でコンテナ最低50本を目標とする」という内容。しかし、昨年秋以降の景気後退により、現在まで輸出入でコンテナ50本の貨物は確保できていない。

 特に苦戦しているのは輸入の積み荷確保。メーン貨物と目されたロシアからの製材が、国内の住宅着工戸数の低迷などで期待できない状況となっている。

▽台湾・香港へ物流ルート 来月新コンテナ航路 秋田港 (『河 北新報』2009年12月22日付)
 秋田港と基隆(台湾)、香港の両港を結ぶ新たなコンテナ定期航路が来年1月8日、開設される。

 開設する陽海海運(韓国)の日本総代理店、葵海運(東京)によると、新航路は秋田―新潟―富山―釜山―神戸―大阪―釜山―木浦(韓国)―基隆―香港。香 港からは基隆や釜山を経て、国内では苫小牧に寄港し秋田に戻る。約8,000トンの貨物船など3隻が就航し、秋田へは週1便で寄港する予定。3隻のコンテ ナ取扱量は約700TEU(20ftコンテナ換算の積載能力)。秋田港から基隆、香港両港への輸出品は、紙や自動車部品、機械などで、輸入品は電子部品、 衣類などを想定している。陽海海運は近く、釜山港と東南アジアを結ぶ航路も新設する方針。実現すれば、釜山経由で秋田と東南アジアの物流ルートができる。

 秋田港と海外の港を結ぶコンテナ定期航路は現在、釜山や中国の青島、大連間の4便のみ。秋田海陸運送(秋田市)によると、弘前市のリンゴ業者はリンゴを名古屋港へ陸送し、同港から台湾へ出荷し ていたが、新航路に切り替える意向という。
▽秋田港、台湾・香港へ直行便 週1便、1月に初の開設 (『日 本経済新聞【東北】』2009年12月22日)
 秋田県は秋田港から香港、台湾へ積み替えなしで到着する直航便の航路が来年1月に開設されると発表した。韓国の陽海海運(ソウル)が運航するコンテナ船 が週1回、秋田港に寄港する。東京や名古屋港など経由で輸出する県内や近県の荷主に、トラック輸送の短縮による二酸化炭素(CO2)排出削減効果などを訴 えることで、集荷力を高める。

 秋田から香港、台湾に向かう直航便は初めて。1月8日に秋田港に初寄港する。ルートは金曜日に秋田港に寄港した後、国内各港や釜山(韓国)などを経て翌 々週の月曜日に基隆(台湾)、水曜日に香港に到着する。

 運航するのは700TEU型(TEUは20ftコンテナ換算)のコンテナ船3隻。県は香港との貿易で紙や機械、自動車部品、衣類、雑貨など、台湾とは紙 や自動車部品、電子部品などの貨物を想定している。運航には、陽海海運の子会社で日本総代理店の葵海運(東京・港)と、秋田港代理店として秋田海陸運送 (秋田市)が協力する。秋田港の国際コンテナ航路はこれにより4社の週5便となる。

▽コンテナ航路、年度内開設を要望へ 副知事、17日ロシア訪問 (『秋 田魁新報』2010年10月16日付)
 中野節副知事は17日から23日までの日程で、ロシアを訪問する。18日にはウラジオストクの船会社フェスコを訪れ、秋田港とロシア極東のボストーチヌ イ港を結ぶ定期コンテナ航路の年度内開設を要望する。フェスコ社が航路開設の条件に挙げている1寄港当たりコンテナ50本(20ftコンテナ換算)を上回 る潜在的貨物量があることを示し、前向きな回答を得たい考えだ。

 県は今年4月から8月末まで国内外の295社を対象に、秋田港へのロシア航路誘致を想定した貨物量を調査。輸入用木材、輸出用中古タイヤなど年間 1,222本の需要が見込まれるとの結果が得られた。月2回の寄港とすれば、1寄港当たり50本の貨物量を上回ることになる。

 中野副知事はフェスコ社幹部との会談で、県が実施した貨物量調査の結果を説明し、航路開設を要望する。貨物確保を確実にするため、輸送料金の低減も併せ て要請する方針だ。18日には、本県と友好協定を締結した沿海地方行政府も訪問。本県側が協力する医療、農業両分野での技術者の派遣、受け入れなどの具体 的スケジュールを協議する。

▽秋田―上海にコンテナ航路開設 韓国の船会社、震災の影響で (『秋 田魁新報』2011年3月24日付)
 県は23日、韓国の船会社「南星海運」が来月上旬から秋田港と中国・上海港を結ぶコンテナ航路を開設すると発表した。本県から上海への航路ができるのは 初めてで、秋田港への初寄港は来月6日となる見込み。東日本大震災の影響で、同社が従来運航していた仙台港や八戸港を巡る航路を休止することになったため で、新ルートの運航期間は未定。

 新航路は、中国の寧波を皮切りに、上海―釜山(韓国)―新潟―苫小牧―秋田―釜山―蔚山(同)―光陽(同)を2週間で巡るルート。約700本のコンテナ (20ft換算)が積載可能な2隻を運航し、各港に週1回寄港する。秋田港から上海港への運航日数は7日。同社は震災以前、苫小牧から青森の八戸港―宮城 県の仙台港に寄港。両港では、上海からは主に日用品を輸入、国内からは紙や化学薬品を輸出していた。しかし震災によって両港にコンテナ船が入港できなく なったため、代替となる港を検討していた。

 同社は秋田港への寄港を決めた理由について「仙台や八戸周辺の顧客から輸入を続けたいと要望が出ている。秋田港の利便性向上による集荷の促進も見込め る」としている。ただ、八戸、仙台両港が復旧した後の航路は未定という。

▽秋田港の国際コンテナ便数、過去最多に 県、港湾機能拡充へ (『秋 田魁新報』2011年5月17日付)
 秋田港の国際定期コンテナ便数が今春、週7便と過去最多になり、釜山港(韓国)を経由した貨物の最終目的地が31カ国に上るなど秋田港の利便性が高まっ ている。県内外の企業が積極的に同港を利用し始めているほか、東日本大震災以降は同港の貨物量が増えていることから、県は年度内に港湾機能を拡充する。

 秋田港の国際コンテナ便は1995年に釜山便が就航して以来、今年3月まで週1〜5便で推移した。震災で仙台港や八戸港に入港できなくなったため、韓国 の船会社が4月に新たな路線を開設した。現在月〜土曜日まで週7便が往来している。このうち2便は中国の上海、寧波まで延伸している。

 県商業貿易課によると、2010年のコンテナ取扱量は3万4,563本(20ft換算)に上った。00年(1万8,656本)の約2倍、95年(346 本)の100倍だ。輸出の主要品目は紙・パルプや中古車部品など。輸入では原木・製材が中心。

 コンテナ取扱量の増加を受けて県は本年度、秋田港外港地区に約10ヘクタールのコンテナ置き場を整備するほか、高さ82メートルのコンテナ専用積み下ろ しクレーン1台を新たに導入する。県港湾空港課は「港湾整備を進めて、(国の)日本海側の拠点港選定に向けてのセールスポイントにしたい」としている。

▽秋田〜青島・大連にコンテナ新航路 韓国の2社、7月から (『秋 田魁新報』2011年6月22日付)
 県は21日、韓国の船会社「興亜海運」と「高麗海運」が、秋田港と中国の青島・大連両港を結ぶ国際定期コンテナ航路を新設すると明らかにした。東日本大 震災の影響による日本海側の港の貨物量急増を受けた措置で、来月から運航を始める。

 航路は釜山を始発点に新潟〜秋田〜直江津〜蔚山〜釜山〜光陽〜青島〜大連を2週間で運航する。両社がコンテナ787本(20ftコンテナ換算)を積載で きる貨物船1隻ずつを投入し、週1便体制とする。秋田港への寄港は毎週金曜日。初寄港は来月8日を予定している。

 震災後、八戸、仙台両港などで荷受けされていた日用雑貨をはじめとする貨物は日本海側の港に集中。秋田港の先月の輸入コンテナの取扱本数は前年同月の 2.4倍の3,346本と大幅に増えた。

▽釜山航路、週6便体制に 秋田港の国際コンテナ (『秋 田魁新報』2011年12月6日付)
 韓国の船会社「南星海運」は今月、秋田港と釜山港を経由する国際定期コンテナ航路を新設する。東日本大震災後、被災した太平洋側の港の代替として秋田港 向けの貨物が増加していることを受けた対応。これで秋田と釜山を結ぶ国際コンテナ航路は4社の週6便体制となる。

 新航路は釜山〜釜山新港〜秋田〜八戸を1週間で巡り、本県には毎週木曜日に寄港。コンテナ430本(20ftコンテナ換算)を積める船を投入する。初寄 港は今月15日の予定。
 同社は八戸港の復旧が進み、航路再開に向けて運航経路を検討する中で秋田港に注目。南星海運ジャパン(東京)は「秋田港では震災後、製材や日用雑貨など の輸入が増えている。製材は今後も震災復興で需要が見込める」と説明する。

▽秋田港、ロシア航路開設難航 原発事故の風評響く (『河 北新報』2012年5月9日付)
 日本海側の貿易拠点を目指し、秋田県が進める秋田港(秋田市)とロシアを結ぶコンテナ定期航路の開設交渉が難航している。主要輸入品目の木材の需要減少 に加え、東日本大震災や福島第1原発事故による風評被害が影を落としている。

 県が交渉しているのは、ロシアの船会社「フェスコ」と韓国の「南星海運」の2社。フェスコとは2008年、1寄港当たり50TEU(20ftコンテナ換 算の積載能力)以上の貨物を確保することを条件に、ロシア・ボストチヌイ港との航路を開設することで合意した。

 その後、住宅着工数の減少で木材輸入が落ち込み、航路開設のめどが立たなくなった。それでも県が輸出する貨物集めに乗り出し、震災前には条件を上回る約 54TEUを確保した。
 福島第1原発事故が発生して以降は、ロシア側が放射能汚染を懸念して東北の農海産物を輸入禁止品目に指定した。想定した貨物のうち8TEUは岩手県沖の 海産物だったため、航路開設の条件に届かなくなった。

 県商業貿易課によると、チェルノブイリ原発4号機爆発事故を経験したロシアは放射能問題に敏感だという。担当者は「日本では安全だとされてもロシアには 通用しない。東北の農海産物を輸出するのは至難の業だろう」と嘆く。

 南星海運との交渉は、韓国の釜山港経由でロシア・ウラジオストク港とつながる航路を目指す。10年に協議を始め、11年2月には貨物の種類や量を話し 合った。
 この交渉も震災で中断した。7月に再開したが、南星海運側は「震災から復興し、貨物を安定的に確保できることを確認する必要がある」と指摘。次回交渉の 日程は決まっていない。

 県貿易促進協会は「県はまとまらないフェスコとの交渉から、主軸を南星海運に変えたのだろうが、震災が影響してすぐに決まるような話ではなくなった」と 説明する。
 県は秋田港について、被災地への物流拠点となった実績や国際コンテナターミナルが4月に完成したことをアピールする考え。「震災で交渉は大幅に遅れた が、何かの弾みで進むこともある」と粘りの交渉を続ける方針だ。

▽秋田〜ウラジオ航路開設 定期コンテナ船、韓国の船会社 (『秋 田魁新報』2012年8月4日付)
 韓国の船会社「長錦(シノコー)商船」は3日、秋田港〜韓国・釜山港の間で運航している既存の国際定期コンテナ航路をウラジオストクまで延伸し、釜山経 由で秋田とウラジオストクを結ぶ新航路を開設すると明らかにした。秋田に週1回寄港する。ロシアへの定期コンテナ船の運航は、1999年開設の秋田〜ポシ エト間が2003年に積み荷不足のため休止となって以来9年ぶり。

 新航路は秋田港を出て新潟、直江津、富山新の国内各港に寄港し、釜山を経由してウラジオストクへ向かうルート。ウラジオストクからは釜山経由で秋田に入 り、再び国内各地に寄港する。秋田からウラジオストクへの輸出にかかる日数は7日間、ウラジオストクからの輸入にかかる日数は5日間。

 これまでは本県からロシアに荷物を運ぶ際は秋田〜釜山間、釜山〜ウラジオストク間で別々の船を使用。釜山で荷物を積み替える必要があったが、新航路は秋 田からウラジオストクまで同じ船を使うため、積み替えは不要となった。

▽秋田〜上海、新コンテナ航路開設へ 韓国大手、既存ルートを延伸 (『秋 田魁新報』2014年10月7日付)
 韓国大手の海運会社・シーケーライン(ソウル)は6日、秋田港と中国・上海港を結ぶコンテナ航路を同業のシノコーマーチャントマリン(同)と共同で開設 すると明らかにした。シノコー社が秋田港〜韓国・釜山港間で運航している既存の航路を上海まで延伸することで新たな需要掘り起こしを狙う。上海への定期コ ンテナ船は、東日本大震災により太平洋側の代替ルートとして開設された2011年3〜8月以来、3年ぶり。

 新航路は、秋田港から苫小牧、韓国・蔚山(ウルサン)、釜山を経由して、中国・寧波、上海へ向かうルート。上海からは釜山経由で新潟港に寄港し、秋田港 に入る。シーケー、シノコー両社が貨物船を1隻ずつ投入し、週1便体制とする。コンテナ800本(20ft換算)規模の貨物船が運航される見込み。シー ケー社は「秋田は日本海側の拠点港の一つであり、需要が見込めると判断した」と話す。秋田港への寄港は毎週水曜日。上海への輸出にかかる日数は8日間、上 海からの輸入は7日間を見込む。初寄港は29日の予定。


C鉄道輸送の実証 実験  
▽仙台〜ロシア「シーアンドレール構想」 秋田北港駅で実証実験 (『河 北新報』2008 年2月13日付
 仙台港(仙台市)と秋田港(秋田市)を結ぶ鉄道輸送ルートを確立し、ロシア・沿海州との貿易を促進する「環日本海シーアンドレール構想」で、東北地方整 備局が取り組んでいる実証実験が12日、秋田臨海鉄道の秋田北港駅で行われた。

 40ft海上コンテナを載せた貨車2両が午後零時半、機関車に牽引されて秋田北港駅へ到着。線路と並行する県道を封鎖し、重機を貨車へ横付けしてコンテ ナを持ち上げ、80メートル先の大浜コンテナヤードへ降ろした。所用時間は30分足らずだった。

 自動車部品を積んだコンテナは8日と10日、それぞれ仙台臨海鉄道の仙台港駅を出発。貨車1両はJR東北線東青森駅経由で、もう1両はJR北上線回り で、いずれも11日に秋田臨海鉄道の秋田港駅へ到着した。コンテナは16日、神戸港から名古屋港や横浜港へ立ち寄り、秋田港にも臨時寄港する貨物運搬船に 積み替える予定で、17日にロシア・ボストチヌイ港へ到着すれば、輸送実験は終了する。

 東北地方整備局は「仙台から秋田まで、40ftコンテナを鉄道輸送したのは初めてだったが、外見的な問題は見当たらない。今後、コンテナに積んだ震度計 や温湿度計を分析し、構想の可能性を検証したい」と話した。構想は、首都圏や中京圏の自動車部品などを鉄道で秋田港に集め、ロシア極東へ運び、シベリア鉄 道で欧州まで輸送するルートの確立を目指す。

▽国交省のシーアンドレール構想、営業貨物で実験 秋田港で2回目 (『日 本経済新聞【東北】』2009年7月22日付)
 国土交通省は今秋にも、鉄道と船を使って秋田港からコンテナ貨物をロシアなどに運ぶ「シーアンドレール構想」の2回目の実験をする。昨年は実験用の貨物 1便で終えたが、今回は営業用貨物を荷主から募り、一定期間に繰り返し輸送する。鉄道から船への円滑な積み替えやコスト節減策などを調べ、構想の具体化を 促す。

 東北地方整備局秋田港湾事務所が21日発表した。実験はJRと秋田臨海鉄道(秋田市)を利用してコンテナを港内の秋田北港駅に運び、同駅に隣接する大浜 地区コンテナターミナルから船に積んで海外に輸送する。逆の経路で輸入も実験する。3カ月間か半年間、週1回か月2回のペースで実施し、来年3月までに終 える計画だ。

 貿易相手国はロシアや中国、定期航路のある韓国などを想定。秋田県は「さらに一歩進んだ形の事業が国で採択された」(佐竹敬久知事)と歓迎しており、荷 主開拓などで協力する。

▽紙や中古タイヤなど輸出へ シーアンドレール試験 (『秋 田魁新報』2010年1月23日付)
 国土交通省秋田港湾事務所は22日、秋田港と鉄道を活用して海外への新物流ルートを築くシーアンドレール構想で、来月上旬から3月まで実施する実証試験 の内容を明らかにした。県内外の企業4社の協力を得て、中古タイヤ、ビールなど実際の輸出入用貨物4品目を2回ずつ計8回輸送する。貿易相手はロシア、韓 国、台湾の3地域で、複数ルートの輸出入で輸送コストなど商業化への課題を検討する。

 輸出用貨物はロシア向けの中古タイヤ、韓国向けの紙、台湾向けの珪藻(けいそう)土の3種類。輸入は韓国からのビールを使用する。
 中古タイヤ輸出では、サンパワー(横浜市)が仙台市などで集めた中古タイヤを鉄道で秋田北港駅まで運び、トレーラーに積み替えて秋田港に運搬。釜山航路 のコンテナ船でロシアへ輸出する。実証試験に向けて約2千平方メートルの仮設積み替えヤードを北港駅に整備。2008年の前回試験では貨物積み下ろしの 際、付近の道路を一時封鎖したが、今回は封鎖せずに積み下ろしが可能になる。

▽秋田港シーアンドレール構想 コンテナ輸送を実験 来月から (『河 北新報』2010年1月27日付)
 秋田港(秋田市)を拠点とした鉄道輸送路を確立し、ロシアなどと貿易を促進する「シーアンドレール構想」で、東北地方整備局は2〜3月、同港大浜コンテ ナヤードと秋田臨海鉄道の秋田北港駅で、コンテナ輸送の実証実験を行う。2008年2月に続く2回目の実施。

 貨物駅とコンテナヤードの間の道路を一時封鎖して積み降ろし作業をした前回と異なり、秋田北港駅にコンテナを積み替える仮設のスペースを設け、トレー ラーでコンテナヤードに移す。
 扱う荷物は中古タイヤとビール、けい藻土。荷主の協力を受け、仙台、福島両市や秋田県北部から荷物を鉄道で運び、ロシアのウラジオストク、台湾の基隆に 船で輸送するほか、韓国・釜山からの荷物を仙台市に運搬するケースを実験する。

 コンテナヤードと鉄道が近い秋田港の特徴を生かし、国内では道路で運べない45トンコンテナを鉄道で輸送する可能性も調べる。東北地方整備局秋田港湾事 務所は「構想の実現に向けて課題を見つけ、実現の可能性を高めたい」と説明する。

▽国交省の実証試験始まる シーアンドレール構想 (『秋 田魁新報』2010年2月9日付)
秋田臨海鉄道・秋田北港駅で行われた、通常のコンテナより 一回り大きい45ftコンテナの積み替え試験
 秋田港と鉄道を活用した海外との新たな物流ルート構築を目指すシーアンドレール構想で、国土交通省の実証試験が8日始まった。従来の40ftコンテナよ りも容量が27%大きく、荷主の輸送コスト削減効果を期待されている45ftコンテナを先行的に使用し、実際の貨物を輸送した。

 2009年度内に計8回の輸送試験が予定されており、今回はその1回目。北秋田市の中央シリカが協力し、同社が台湾に輸出する珪藻土(けいそうど)を貨物に使用した。45ftコンテナは40ftコ ンテナよりも長さが約1.5メートル長い約13.7メートルで、今回の試験のために韓国から取り寄せた。

 試験は、秋田港大浜コンテナヤードから空の45ftコンテナをトレーラーと鉄道で秋田臨海鉄道・秋田港駅に輸送するところからスタート。秋田港駅でコン テナに珪藻土を積み込んだ後、約2.5キロ離れた秋田北港駅へ貨物列車が出発した。

 到着後、秋田北港駅では、鉄道からトレーラーへのコンテナ積み替えスペースを確保するため、試験用に整備した約2千平方メートルの仮設積み替えヤードを 利用。リーチスタッカーと呼ばれる専用機械が台車からコンテナをゆっくりと持ち上げ、トレーラーの荷台に積み替えた後、トレーラーが道路を挟んで向かいの 大浜コンテナヤードまで輸送した。

▽協力企業5社に、シーアンドレール 潟上市の1社も参加 (『秋 田魁新報』2010年2月18日付)
 秋田港と鉄道を活用して海外との新たな物流ルート構築を目指すシーアンドレール構想で、国土交通省が実施している実証試験の協力企業に潟上市の高橋商事が新たに加わった。17日には同社の中古タイヤ輸出に向け、仙 台へ空コンテナの輸送が行われた。

 国交省秋田港湾事務所によると、同社は宮城、福島両県で収集した中古タイ ヤを3月上旬に仙台港駅から鉄道で秋田北港駅まで運搬し、釜山航路を利用してベトナムに輸出する。
 17日は、輸出に使用する40ftコンテナ2本を秋田北港駅でトレーラーから貨物列車に積み替え、仙台港駅へ送り出した。

 同社が加わったことで、実証試験の協力企業は5社に増加。一連の試験は計8回の輸送を予定していたが、協力企業の増加で少なくとも1回の試験が増加。た だし、全体の輸送試験の回数は今後の荷主との調整で変動する可能性がある。

▽横開きコンテナ使い実証試験 シーアンドレール構想 (『秋 田魁新報』2010年2月24日付)
貨物列車の台車にサイドオープンコンテナを載せたままで行 われた貨物の積み込み作業
 秋田港と鉄道を活用した新たな物流ルート構築を目指すシーアンドレール構想で、国土交通省は24日、海上コンテナとしては国内で使われていない横開きの サイドオープンコンテナを鉄道輸送に使用した実証試験を行った。

 通常のコンテナは鉄道に積んだ場合に後方になる面が開閉するのに対し、サイドオープンコンテナは側面が開閉する仕組み。このため、鉄道の台車に複数のコ ンテナが連なっている場合でも、台車からコンテナを降ろすことなく貨物の積み込みができる。試験には、構内の倉庫まで鉄道の引き込み線が延びる日本大昭和板紙秋田工場(秋田市)が協力。鉄道と秋田港を利用して印刷 用ロール紙を韓国へ輸出するため、倉庫内で積み込み作業を行った。

▽3試験重なりフル稼働 シーアンドレール (『秋 田魁新報』2010年3月4日付)
コンテナ4本を積んだ貨物列車からの積み降ろし作業
 秋田港と鉄道を活用し、海外との新たな物流ルート構築を目指すシーアンドレール構想の実証試験で、国土交通省は3日、貨物の輸出に向けて秋田北港駅でコ ンテナの積み替え作業を行った。1日に3種類の輸送試験が重なり、この日の積み替えコンテナは計7本。一連の実証試験で最多となった。国交省秋田港湾事務 所の小澤敬二所長は「構想実現時に近い形での試験となった」と話した。

 この日の試験には、珪藻(けいそう)土を台湾に輸出する中央シリカ(北秋田市)、ベトナムに中古タイヤを輸出する高橋商事(潟上市)、ロシアに中古タイ ヤを輸出するサンパワー(横浜市)が協力した。3社の貨物をコンテナ4本に積んだ貨物列車が同日、仙台港駅から秋田北港駅に到着。コンテナをトレーラーに 積み替えて秋田港へ輸送した。さらに、空になった貨物列車の荷台には、次の輸出に向けて3本の空コンテナを載せ、仙台港駅へと送り出した。作業では、コン テナを運ぶリーチスタッカーと呼ばれる荷役機械がフル稼働し、積み替えは30分程度で終了した。

▽国交省が実証試験の中間報告 シーアンドレール構想 (『秋 田魁新報』2010年3月20日付)
 秋田港と鉄道を活用し、海外との新たな物流ルート構築を目指すシーアンドレール構想で、国土交通省秋田港湾事務所は19日、2月から実施している実証試 験の中間報告を行った。輸送試験を行ったロシア、ベトナムなどへの中古タイヤ輸出、韓国からのアルコール飲料輸入の輸送コストに関し、通常ルートの2倍程 度の掛かり増しとなっていることを報告。構想実現に向け、十分な貨物量を確保し、コスト低減を図る必要性を指摘した。

 この日、秋田市の秋田ビューホテルで開かれたシーアンドレール構想検討会議(秋田商工会議所主催)で、国交省秋田港湾事務所の小澤敬二所長が報告した。
 仙台方面からのロシア、香港、ベトナムへの中古タイヤ輸出、韓国から宮城県内へのアルコール飲料輸入といった各ルートの輸送コストについて、「概算だ が、いずれも通常ルートより2倍程度のコストとなっている」 と指摘。荷主が普段使用していない秋田港を利用したため、ルートが遠回りになったことや、少量の貨物での鉄道輸送になったことなどを、コスト増の要因に挙 げた。
 ただし、「今後、輸送貨物量を十分確保できれば、通常ルートと競えるコストになり得る」と述べ、輸送ロット確保の必要性を強調した。



▼新潟港〔新潟県営鉄道〕  
 本州の日本海側を代表する港湾と言えば、何と言っても新潟港であろ う。例えば幕末の日米修好通商条約による開港五港のひとつという歴史もあり、古くから重要な港湾として栄えてきた。新潟港には新潟の市街地に近い古くから の西港区(西潟西港)と掘り込み式港湾を整備した新しい東港区(新潟東港)に別れ、コンテナターミナルは東港区に存在する。

 そして新潟東港と鉄道の関わりとしては、貨物専用の「新潟臨海鉄道」の存在があったが、放水路建設に伴う路線分断などの事情で輸送を維持することが困難 となり、経営を断念。2002年に会社は解散してしまった。しかし新潟臨海鉄道の線路はコンテナターミナルの中を横断するように敷設されており、会社解散 後も海上コンテナの鉄道輸送への誘致を念頭に線路等の設備を新潟県が引き続き所有し、鉄道輸送の模索を続けている。コンテナターミナルに直結という点で は、秋田港以上に既存インフラの活用が容易な状態であり、期待したいところである。

2010.8新潟臨海鉄道 線路跡(藤寄〜太郎代) 鉄道による海上コンテナ輸送のため復活なるか

▽ 鉄道輸送へ初の試み/新潟東港 (『新潟日報』2000年3月 21日)
 県と新潟臨海鉄道は21日、新潟東港の外貿コンテナターミナル内で、臨海鉄道の貨車から海上コンテナを取り出し、中国向けのコ ンテナ船に積み替える作業を試験的に行う。環境に配慮したトラック輸送から鉄道輸送への将来的な切り替えを視野に、鉄道線路がコンテナターミナル内を走る 全国唯一の港湾である同港のPRを狙う。

 臨海鉄道は同ターミナル内を通っているものの、鉄道駅がないためコンテナの搬出入はすべてトラック輸送で行っている。21日の試みは、上越市黒井駅で化 学製品を入れた20フィートコンテナ1個を貨物列車に積み、JRと臨海鉄道を経由して列車をコンテナターミナル内で停車させ、コンテナを降ろして貨物船に 積み替える。

 第一港湾建設局と県などは1997年に鉄道を使った海上コンテナ輸送についての可能性を調査した。新潟、伏木富山、秋田の3港について調査したところ、 ターミナル内に鉄道がすでに敷設されている新潟港の可能性が最も高く、3億円程度の費用で駅などを整備すれば実現できるとの結果が出ている。さらに、 2002年度中の通水を目指す福島潟放水路によって臨海鉄道は分断されるが、ターミナルは水路の手前にあって分断の影響が少ないため、ターミナル内での鉄 道活用が検討されてきた。

 鉄道輸送は長距離を運ばないとトラック輸送に対してメリットが生じないため、現在まだこの方式を導入したいという荷主からの具体的な要望はない。新潟臨 海鉄道の若月実総務課長は「課題は多いが、この試みを契機にして将来的には海上コンテナを扱えるようにしたい」と話している。

▽新潟東港活性化へ鉄道利用 (2009 年1月14日付『新潟日報』)
 国内鉄道とシベリア鉄道を活用することで新潟東港(新潟市北区、聖籠町)の貨物量拡大を図ろうと、県が2009年度から需要調査や輸送実験に乗り出すこ とが13日、分かった。09年度一般会計当初予算案に関連経費を盛る方針。旧新潟臨海鉄道の復活も模索する。東港まで鉄道で国内貨物を集め、海路でロシ ア・ボストーチヌイに送った後、シベリア鉄道でモスクワや欧州などに送り出す「動脈」を育てる狙いだ。

 東港の岸壁まで鉄道が乗り入れられるように整備して利便性を高めた場合に、どれだけ新たな貨物を取り込めるか、県内外の企業のニーズを探りながら需要調 査を行う。
 また、北関東など県外からコンテナを鉄道輸送し、新潟で積み替えた上でロシアなどに送る社会実験も計画。具体的な課題整理と同時に、東港の「後背地」と の連携をアピールしたい考えだ。

 同年度一般会計予算案に1千数百万円を計上する方向で調整している。
 東港周辺まではかつて、第3セクターの新潟臨海鉄道があった。放水路建設で線路が分断されるなどの事情で02年度に解散したが、現在もJR白新線・黒山 (新潟市北区)から藤寄(同)まで4.4キロの線路は残る。藤寄から東港岸壁までの0.8キロは抜本的な整備が必要だが、いずれも県有地のため「線路の改 修自体は容易。需要がどれだけあるかが鍵」(県交通政策局)とされる。

 東港の貨物の国内輸送は現在、トラック輸送が大半。液化天然ガスなど一部はJR貨物の新潟貨物ターミナル(新潟市東区)を使って鉄道輸送しているが、同 ターミナル〜東港間はトラック輸送となるため、積み替えコストがかさんでいる。

▽北陸整備局 欧州むけ複合一貫輸送実験、シベリア鉄道使い展開 (2010 年1月4日付『物流ニッポン新聞』)
 北陸地方整備局は、欧州向けの輸出貨物を日本海側の港湾を経由してシベリア鉄道で運ぶ、複合一貫輸送の実験に取り組む。船舶だけを使った既存のケースに 比べ、到着までの日数が短縮できるだけでなく、二酸化炭素(CO2)削減にもつながるのがメリット。北陸の拠点性を高め、地域の活性化に結び付ける。

 自動車の使用を極力抑えて、鉄道と船舶をメーンに展開する新たな試み。今回の実験は、港湾近くまで既にレールが敷かれ、インフラも整備されていることか ら、新潟東港で実施する。
 JR白新線黒山駅から新潟東港鉄道に乗り換え、旧藤寄駅まで輸送。コンテナターミナルまでの残り800メートルほどは、トレーラに積み替えて乗り入れ る。新潟東港からロシアのウラジオストク港へ船舶で運んだ後、シベリア鉄道でモスクワやサンクトペテルブルグなどへ向かう。

▽環日本海複合一貫輸送の輸送実験について (北 陸地方整備局 港湾空港部 平成22年1月7日)
 平成21年12月17日付け記者発表で延期をお知らせしました「環日本海複合一貫輸送の輸送実験」につきまして、以下の内容で実施致しますのでお知らせ します。
 本実験では、コンテナを関東から鉄道輸送により、JR白新線黒山駅を経由して新潟東港鉄道旧藤寄駅まで輸送します。その後、旧藤寄駅でコンテナを降ろ し、新潟東港国際コンテナターミナルにコンテナを搬入した後、ウラジオストク港へ海上輸送し、シベリア鉄道を利用してロシア内陸部まで鉄道輸送します。
 本実験にて、輸送における問題点を抽出し、その対応結果をまとめるとともに、利便性向上に向けた課題の整理を行います。

【輸送実験の概要】
◆輸送実験公開日時(予定)
 ・平成22年1月14日(木)12時00分〜
 ・新潟東港鉄道旧藤寄駅積おろし、新潟東港国際コンテナターミナル搬入
『新潟港・直江津港 日本海側拠点港の形成に向けた計画 書』(新潟県)より抜粋

▽全国初 コンテナターミナルに乗り入れ (2011 年10月19日『読売新聞』)
 新潟東港のコンテナターミナルと、JR白新線の黒山駅(新潟市北区)を鉄道で結び、港の利便性を高めるという港湾計画の変更案が18日の県地方港湾審議 会(会長=栢原(かやはら)英郎・日本港湾協会名誉会長)で承認された。コンテナターミナル内に貨物列車が乗り入れるのは全国初。

 変更案は、同港西埠頭1号岸壁のコンテナターミナルと黒山駅間の4.4キロを鉄道で結ぶもので、12月に開かれる国土交通省の審議会で承認さ れれば正式に決まる。鉄道輸送は、トラックと比べ二酸化炭素の排出量が5分の1程度に抑制できる上、災害時のトラック輸送の代替などとして見直されてい る。県は数年後の利用開始を目指している。

 この路線は2002年まで、第3セクター「新潟臨海鉄道」が化学製品を運搬していたが、需要が減ったことなどから廃止された。線路は県が引き継いだが、 国道7号バイパス東港インターチェンジ脇の藤寄駅までの0.8キロ区間は利用を休止。藤寄〜黒山間は近くの列車メーカーが使用している。

 このほか空のコンテナを仮置きできるスペースを2.4ヘクタール増やすなどの案も承認された。昨年のコンテナ取扱量(20ft=約6m換算) は、東アジアの経済発展などから16万8,809個と過去最多。今年も東日本大震災の復興需要などで上半期は前年比20%増となっていることに対応する。



▼四日市港〔四日市駅〕  

▽【愛知】コンテナターミナルへ貨物鉄道引込を検討 (2006 年12月19日『 建設業界ニュース中部版』)
 伊勢湾スーパー中枢港湾連携推進協議会で組織する伊勢湾シー&レール物流戦略部会は、伊勢湾スーパー中枢港湾のコンテナターミナルへの貨物鉄道の引き込 み可能性についての検討結果をまとめた。四日市港の三岐鉄道への引き込みを例に、既存ストックが活用可能と仮定した場合、年間片道5,000個程度のコン テナ貨物量で可能となることが確認された。また、国際海上コンテナの輸送では、内陸部で鉄道貨物駅に近接したインランドデポ(内陸部における国際物流拠 点)の併設も必要とした。これら検討結果は今日19日に開催する第3回伊勢湾スーパー中枢港湾連携推進協議会で報告する。

 同部会は、伊勢湾スーパー中枢港湾連携推進協議会の鉄道物流部門の検討部会で、日本貨物鉄道、四日市市、名古屋港管理組合、四日市港管理組合、国土交通 省中部地方整備局と中部運輸局で構成する。昨年10月の協議会で委員から「伊勢湾における鉄道のターミナル引き込みについて検討すべき」との意見を受け て、検討を進めていたもの。

 海外では、多くのコンテナターミナルで鉄道が引き込まれており、伊勢湾では日本政策投資銀行東海支店が「四日市港−今後の発展に向けた課題」(2006 年5月)の中で、コンテナターミナルへの鉄道の引き込みを提案している。また、内陸部では鉄道輸送と連携したインランドデポ設置の検討が進められ、滋賀県 米原 市の「滋賀統合物流センター」(SILK)構想によるJR貨物のターミナルと連携した効率的な製造・物流統合システムの実現に向けた取り組みが進められて いるなどの背景がある。

 こうした背景を踏まえ、同部会では、三岐鉄道や四日市商工会、愛知県などもオブザーバーとして参画してもらい、検討を進めてきた結果、機関車などのス トックや人的なコスト負担を除いた専用線だけを用いた場合、年間20フィートコンテナ換算個数で片道5,000個の貨物量で運用が可能であることを確認し た。イメージ図は三岐鉄道の駅から専用線をコンテナターミナルに敷いた場合の想像図で、延長約2キロ程度(可道橋あり)の引き込み線を想定している。概算 事業費は数十億円

 協議会には、このほかコンテナターミナルへの鉄道のみならず、既存の貨物駅との間をトラックで結ぶ一般的な鉄道貨物輸送形態も検討した上で、既存の貨物 駅が移転する際などには国際海上コンテナの取り扱いに対応した施設整備の検討の必要性も報告することにしている。同部会では今後、港湾と鉄道とのシームレ スな連携の実現に向けて、鉄道を利用した国際海上貨物輸送に対する荷主などのニーズや、国際海上コンテナの鉄道 輸送の効果や課題の把握に引き続き努めることにしており、その一環として荷主などからの相談窓口を設置する。

▽四日市港埠頭に貨物鉄道構想 船荷積み降ろし全国へ  (2007 年1月23日付『中日新聞』)
 四日市港にまで貨物鉄道を敷き、埠頭で荷物を積み降ろしする全国初の構想実現に向け、関係機関が協議を進めている。トラック輸送から切り替えられれば、 コスト削減だけでなく、道路の渋滞緩和や二酸化炭素の排出削減など環境面での利点も多い。国は事業化に必要な貨物取扱量を試算するなど課題をまとめ終え た。今後、荷主のニーズ把握に乗り出す。

 鉄道を使った貨物輸送は、欧米など内陸部が広い大陸で発達。国土交通省中部地方整備局の担当者は「コンテナターミナルに貨物鉄道が引き込まれている港は 世界に多い」と話す。
 名古屋港と四日市港の在り方を検討する伊勢湾スーパー中枢港湾連携推進協議会の2005年10月の会合で「鉄道のターミナル引き込みについて検討すべき だ」という意見が委員から出され、同整備局が実現可能性の検討に着手した。

 鉄道は輸送コスト自体はトラックに比べ安いが、貨物の積み降ろし込みにコストがかかる。このため「輸送距離が片道400キロ以上なければトラックよりも コストが高くなる」(同整備局)とされ、狭い日本では敬遠されてきた。しかし、埠頭内に線路を引き込めば、貨物の積み降ろしのどちらかのコストはほとんど 省くことができるのでは−という発想だ。

 鉄道事業者を交えた検討の結果、年間のコンテナ貨物取扱量が20フィート(1フィートは約30センチ)コンテナ換算で約5,000個あればコスト的に事 業が成り立つことが判明した。四日市港の年間集荷量は約15万個前後で、わずか3%が転換すればいい計算だ。同整備局の担当者は「関係者が 一堂に会して 『可能性がある』と合意した。前向きな話だ」と手応えを感じている。

 今のところ正式には、四日市港を前提にした話し合いにはなっていない。具体的にどの程度の環境負荷を削減できるかの精査もこれから。しかし、同港の霞ケ 浦地区北埠頭からJR関西線の富田駅までは約2キロの近さ。線路を敷設するにも少ない投資で済み、同整備局は「地の利はある」と認めている。
 一方で、実現性に慎重な意見も。「レールは造ったが利用がない、では困る」と、四日市港管理組合の担当者。鉄道がトラックに価格競争で勝てる400キロ 以上もの遠方の荷主がどれほどいるのか−。同組合は楽観的な予測を立てられないでいる。 (加藤益丈)

▽CO2やコスト低減へ 四日市港から鉄道でコンテナ輸送実験  (2007 年9月8日付『中日新聞』)
貨車に積み込まれる海上コンテナ=四日市港千歳第一埠頭の 引き込み線で
 二酸化炭素(CO2)排出量の削減や物流コストの低減を図るため、港に船で運び込まれた海上コンテナを、従来のトラックではなく、鉄道網を使って全国に 輸送する社会実験が7日、四日市市の四日市港千歳第一埠頭で始まった。国土交通省中部地方整備局や愛知、三重両県などでつくる「伊勢湾スーパー中枢港湾連 携推進協議会」のチームが10月末まで実施。来年1月に開催予定の協議会で結果を報告する。

 チームには、四日市市、四日市商工会議所、JR貨物東海支社などの物流企業や港湾関係団体が参加。港湾内にある引き込み線でコンテナを貨車に載せ、10 月末まで計30本以上を宮城福岡県など全国7地域に輸送する。コストや所要時間、CO2排出量を検証、コンテ ナを置く荷置き場の設置の必要性など、鉄道 のインフラ整備などの課題も探る。
 実験初日の7日は、中国から輸入された国際海上コンテナ1本と四日市市内のメーカーの国内JRコンテナ5本を貨車に積載した。8日朝、鉄道で茨城県内の 荷物倉庫などに運ぶ。

 四日市商工会議所によると、四日市港からは昨年、約6万8千本のコンテナがトラックで国内輸送された。今年4月から一定量以上の輸送量がある物流業者に 環境への取り組みを義務づけた改正省エネ法が施行されたこともあり、トラックと比べCO2排出量の削減が期待できる鉄道での輸送を実験することにした。
 同商議所の小菅弘正会頭は「環境、コスト面のメリットを明らかにし、将来は全国のネットワークを整備して利用企業を増やしたい」と実用化への期待を述べ た。 (山田浩平)

▽四日市駅 港線で海上コンテナのシー&レール実験 (『JR貨物ニュース』2007年11月1日号、4面)

千歳第一埠頭で

 四日市駅の港線は、駅の構内線で、埠頭行きの港線は年に数回、輸出用変圧器などの特大貨物輸送に使われている。
 2007年9〜10月にかけて、この千歳第一埠頭で国土交通省中部整備局や愛知・三重両県の関連事業者で構成する伊勢湾スーパー中枢港湾連携協議会によ る海上コンテナの「シー&レール社会実験」が行われた。四日市港にコンテナ船で着く国際海上コンテナを、港の側線から鉄道でフィーダー輸送する試みだ。
 千歳第一埠頭では、草の生えた線路に20ft級海上コンテナを積んだコキ車が2両入線した。同埠頭は喫水が浅く、大型のコンテナ船が着岸できないため、コンテナ船 の影すら見えない。船から陸揚げした海上コンテナを、コンテナターミナルから持ってくるにはトレーラー輸送するしかない。
 スーパー中枢港湾で提供するシー&レールサービスという壮大な構想とは裏腹、手作り感一杯だが、実験とは案外こんなものかもしれない。埠頭から 2.4kmの四日市駅のヤードでコンテナ列車に連結、名古屋(タ)中継、静 岡貨物駅に向かった。
 コンテナターミナルから離れた千歳第一埠頭の側線で荷役する意味は全く無さそうだが、まぁ社会実験なので将来的な埠頭への鉄道乗り入れをイメージしたの かもしれない。



▼伏木富山港  
 日本海側の港湾では秋田港や新潟港が鉄道による海上コンテナ輸送に対して積極的な取組みを始めている。それに続いて富山県の伏木富山港も検討を開始した のだが、いかんせん伏木富山港の場合は既存の鉄道からの距離が離れ過ぎているという弱点がある。新たに5km以上の貨物鉄道を敷設するというのは、莫大な 資金と地元の充分な理解が必要で、LRTなど鉄道に対する姿勢が手厚い∴象の富山と言えども、容易なことではないだろう。

▽伏木富山港に鉄道引き込み検討 富山県が新年度にルート調査 (『北 國新聞』2009年2月21日付)
 富山県は新年度、JR北陸線と伏木富山港を利用して貨物を輸出する「環日本海シーアンドレール」構想の実現に向け、新たな鉄道敷設も視野に港湾整備のあ り方を調査、検討する。ロシア極東の港からシベリア鉄道を利用して輸送する「シベリア・ランド・ブリッジ」の実証事業も始まっており、県はロシア向けの輸 出産品を発掘する事業にも乗り出す構えで、極東ロシアに照準を合わせた取り組みが本格化する。

 県は新年度当初予算案に環日本海シーアンドレール構想検討調査事業として500万円を計上した。
 シーアンドレールは鉄道と海上航路を組み合わせることで、コンテナなどの貨物を大量かつ迅速に輸送できる。「シベリア・ランド・ブリッジ」で日本からロ シア西部への輸出日数が短縮されるため、中京方面の企業などの関心を集めている。

 しかし、伏木富山港でコンテナ貨物を積み下ろしできる富山新港の多目的国際ターミナルは、直線距離でJR北陸線と5km以上離れている。このためコンテ ナヤードまで鉄道を引き込んだり、港の後背地に中継地を設けるためのコストやルート設定などを検討する。貨物の積み替えに伴う時間ロスなども調べる。

 伏木富山港ではロシアの関税引き上げで中古自動車の輸出量や原木の輸入量が激減するなど、貨物の需給環境が急変しており、伏木富山港全体の港湾整備計画 の見直しも合わせて検討する。
 輸出産品発掘では、ロシア極東地域の輸入業者を招き、同国内で需要の可能性が高い産品をモデル輸送する。トライアル事業費として当初予算案に170万円 を盛り込んだ。このほか、国の雇用交付金事業を活用して二人をロシアに駐在させ、市場の最新情報を収集する。

▽小型コンテナ輸送探る伏木富山港湾事務所がロシア向け実験開始 (『北 國新聞』2011年2月16日付)
積載されるコンテナを見守る関係者=高岡市吉久1丁目の JR高岡貨物駅
 国土交通省伏木富山港湾事務所の小型コンテナを活用したロシア向け貨物の国際複合一貫輸送実験が15日始まった。初日は高岡市吉久1丁目のJR高岡貨物駅で、12ftの鉄道貨物用コンテナを国際規格に合わせて 輸送するため積み替え作業が行われた。

 現在のロシア向け貨物は国際規格の20、40ftが主流だが、容量が大きいため、複数の業者が一つのコンテナを共同で使うケースが多かった。実験では、 貨物の仕分けの手間が省ける12ftの鉄道貨物用コンテナを伏木富山港からウラジオストク港に輸送し、ロシア国内での効率的な物流が可能か確かめる。

 同日は小型コンテナを、国際規格である40ftのラックコンテナに合わせて運ぶため、1基に3つずつ並べて搭載。トレーラーで射水市の伏木富山港国際物 流ターミナルに運んだ。
 19日は同ターミナルでラックコンテナをコンテナ船に積み込む作業が行われる。

▽ロシア航路活用探る 射水の富山新港 モスクワへ輸送実験開始 (『北國新聞』2011年2月20日付)
 ロシア極東定期コンテナ航路とシベリア鉄道を活用した県のトライアル輸送実験は19日、射水市の富山新港で始まった。モスクワに運ぶ県内外5社の貨物が 定期コンテナ船ベガ・ダボス号に積み込まれ、出港した。

 県によると、シベリア鉄道活用の実験は2009年にノボシビルスクまで運んだのに続いて2度目で、モスクワへの輸送は初めて。ロシア定期コンテナ航路で は伏木富山港が国内最後の寄港地であり、同港の活用により輸送時間が短縮される利点を最大限に活用するため実験が行われた。モスクワに到着するまでの日数 や貨物の安全性などを確かめる。

 貨物は23日にウラジオストク港に運ばれ、シベリア鉄道に積み替えて早ければ3月5日にモスクワに到着する。
 国土交通省伏木富山港湾事務所の小型コンテナを活用したロシア向け貨物の輸送実験も同時に行われ、12ftの鉄道貨物用コンテナも船に積み込まれた。ウ ラジオストクに輸送され、輸送時間や費用などを検証する。

 伏木地区での線路延長(=伏木駅に接続)は、富山新港への線路敷設と比べれば現実的と言えそう。
▽伏木港耐震など要望 来県の国交政務官に知事 (『中 日新聞』2011年12月5日付)
 室井邦彦国土交通政務官が4日、県庁を訪れ、日本海側の総合的拠点港に選ばれた伏木富山港に関して石井隆一知事と意見交換した。

 石井知事は、新湊地区の富山新港で3万トン級のコンテナ船が同時に20隻着岸できるよう197メートルの岸壁延伸を、伏木地区では岸壁の耐震化のほか、鉄道と船を使う一貫輸送「シーアンドレール」実現のための線路延長を求 めた。

 室井政務官は、5日に伏木富山港を視察するために来県。意見交換で「財政や税制の改革で協力できるよう取り組みたい。モデルとなる港に成長してほしい」 と期待した。



▼下関港〔下関駅〕 
 下関港の海上コンテナ取扱量は、約6万4千TEU(2013年速報値)で中国地方の港湾の中では広島港、水島港、徳山下松港、福山港に次ぐ第5 位の取扱量である。しかし対岸の九州側には約50万TEUを扱う北九州港があり、取扱量の上積みは難しいと思われる。
 東京(タ)〜下関間でポジショニング用に海上コンテナ輸送 が行われているが、市当局としては海上コンテナの発送拠点として貨物駅を活用したいものと思われる。
▽下関人工島の施設整備本格化 (『中 国新聞』2007年4月26日付)
 下関市垢田沖の響灘に市と国が建設を進める下関港沖合人工島で、2009年春の一部の利用開始に向けて施設整備が本格化してきた。市は鉄道貨物ターミナルの整備も計画し、船と鉄道輸送の結節点として拠 点性を高め、利用促進を狙う。09年春に利用できるのは、10年代半ばの完成を目指す第一期整備区の7.2ヘクタール。3万トン級のコンテナ船が停泊でき る水深12メートルの多目的バースを備える。



▼ 北九州港〔浜小倉・北九州(タ)駅〕  

▽三井化学椛蝟エ田工場 北九州港海コンフィーダーサービス 130kmでも鉄道シフト有利 (『JR貨物ニュース』2000年12月15日付)
 三井化学椛蝟エ田工場は、北九州港から輸出する工業薬品用の海上コンテナ鉄道輸送をこのほど本格化した。大牟田駅と繋がる同工場の構内専用線から、浜小 倉駅までの約130kmを鉄道に載せて北九州港日明埠頭のコンテナターミナルへ持ち込むもので、1999年11月来、日発3個で試行していた。それが 2000年秋、当初目標としていた毎日5個の輸送体制が整い本格化したもので、返路は空の海上コンテナを持ち帰る往復輸送だ。
 海上コンテナはISO規格のボックス型20ftタイプ、総重量は24トンである。
 発送時の荷役機械は大牟田工場構内で発送作業等を行う大牟田運送鰍ェ24トン用の大型フォークリフトを用意、港側では北九州市の第3セクター・日明コン テナ埠頭が、浜小倉駅からコンテナターミナルへの配送・集荷作業と通関などの各種業務をトータルでサービスする体制を整えた(浜小倉駅には従来から海上コ ンテナ用荷役機械がある)。
 また構内専用線を持つ大牟田工場では、以前から車扱列車で原料を調達しているので、JR貨物は、この車扱列車に106形式コキ車を連結して海上コンテナ を輸送することとした。既存列車の編成余力を活用してコンテナ貨車を一緒に輸送すれば、短距離でも鉄道転換のメリットが出るだけでなく、列車の運転コスト も相対的に下がる。

▽国際海上コンテナの区間別輸送量(単位:TEU)
年  度
大 牟田〜北九州(タ)
1998 (平10)
0
1999 (平11)
492
2000 (平12)
2,171
2001 (平13)
2,875
2002 (平14)
3,815
2003 (平15)
4,679
([2]p416)

2013.4 大牟田駅・三井化学叶齬p鉄道



▼その他の海上コンテナ取扱駅〔盛岡(タ)・静岡貨物・西大分駅〕  

盛岡(タ)駅
▽盛岡にインランド・デポ JR貨物が3月開設 (『盛 岡タイムス』2010年1月24日付)
 盛岡市永井にあるJR貨物の盛岡貨物ターミナル駅隣接地に3月からインランド・デポ(内陸税関)が開設される。国土交通省が今年度から2012年度まで の3カ年のモデル事業で、JR貨物の子会社のジェイアール貨物・インターナショナルに委託する。インランド・デポは港湾を持たない地域に設けられる通関基 地で、県内に初めて設けられる。盛岡と東京湾の京浜港を鉄道貨物で結び、海上航路に中継する。

 JR貨物によると事業は東京港、横浜港の活性化と物流の効率化を目的に、東北地方の海上コンテナ鉄道輸送の拡充を狙い、盛岡貨物ターミナル駅に設置す る。国土交通省関東地方整備局が京浜港の機能集中を図り、ジェイアール貨物・インターナショナルに事業を委託する。同社はJR貨物が国際物流業務のサービ ス向上と収益力強化を図るため、国際貨物鉄道システムを完全子会社化して、昨年6月設立された。

 盛岡貨物ターミナル駅と東京貨物ターミナル駅を1日1便のコンテナ列車で往復し、ターミナル駅の隣接地に整備するインランド・デポで通関、保税する。こ れまで県内からのコンテナの輸出入は八戸、仙台、京浜などにトラック輸送するか、外貿航路を持つ大船渡港を利用していた。盛岡貨物ターミナル駅にインラン ド・デポを開設することにより、鉄道によるフィーダー輸送で東北一円の輸出入需要を掘り起こす。JR貨物では「東京港、横浜港の活性化、物流を効率化する と聞いている。取扱量の見込みはこれからとなる」と話している。県内で初めての海外貿易の窓口を通じて、北東北の物流の活性化を図る。


静岡貨物駅
 静岡貨物駅は2003年6月1日、トップリフターを稼働し始めた。同駅で期待されているのが、国際海上コンテナ貨物の取り扱いだ。清水港を控え、これま でも船社が空の海上コンテナを同駅着で回送してきている。トップリフターの導入で、今度は実入りの海上コンテナ取扱いも可能だ。(『JR貨物ニュース』2003年6月15日号、1面)


西大分駅
 空の海上コンテナも福岡、浜小倉、大牟田へ向けて日発3個送られているとのこと。(『JR貨物ニュース』2000年11月1日号、8面)



■港湾別の海上コンテナ取扱量  

▽港湾別コンテナ取扱量ランキング(2013年速報 値) 〔単位:TEU〕
順 位
港 湾名
取 扱量
順 位
港 湾名
取 扱量
順 位
港 湾名
取 扱量
順 位 港 湾名
取 扱量
順 位 港 湾名
取 扱量
1
◎東京(京 浜)
4,860,784
11
○新潟
247,362
21
 福山
76,570
31
 松山
52,297
41
 細島
32,096
2
◎横浜(京 浜)
2,888,220
12
○四日市
241,096
22
 三島川之 江
74,834
32
 岩国
48,719
42
 直江津
31,159
3
○名古屋
2,708,653
13
○仙台塩釜
206,363
23
 秋田
73,643
33
 伊万里
47,513
43
 釧路
30,688
4
◎神戸(阪 神)
2,553,257
14
○広島
205,605
24
 新居浜
72,425
34
 高松
46,761
44
 三田尻中 関
29,244
5
◎大阪(阪 神)
2,485,019
15
○水島
162,933
25
○下関
68,472
35
 八戸
45,636
45
○堺泉北
28,612
6
○博多
926,948
16
○徳山下松
125,468
26
 三河
66,939
36
 石垣
45,149
46
 茨城(常 陸那珂)
27,962
7
○清水
498,726 17
○千葉
100,118
27
 両津
66,882
37
 石狩湾新
44,260
47
 今治
27,640
8
 那覇
490,946
18
 志布志
88,852
28
 敦賀
64,029
38
 大分
41,185
48
 宇部
22,786
9
○北九州
487,669 19
 鹿児島
85,703
29
◎川崎(京 浜)
62,318
39
 平良
40,608
49
 小名浜
22,074
10
○苫小牧
327,294
20
○伏木富山
76,904
30
 金沢
52,998
40
 御前崎
32,599
50
 川内
19,538
※◎は国際戦略港湾、○は国際拠点港湾
国土交通 省資料より作成

 1位の東京港の取扱量が群を抜いて多いことがまず注目される。2位〜5位まではそれほど大きな差が無く、むしろ6位の博多 港が100万TEU目前で、7位以下を大きく引き離していることに注目。更に北九州港も50万TEUクラスであり、博多・北九州の両港を合わせると150 万TEUレベルとなる。京浜、名古屋、阪神の3大港とは依然差はあるものの、4大港という位置付けで捉えることが可能な水準であると言えよう。
 8位の那覇港は、国内コンテナが40万5千TEUと取扱量全体の82%を占め、国際海上コンテナの比率が大部分を占める上位港湾とは様子が異なる。この ような傾向 は17位の千葉(国内比率48%、以下同)、19位の鹿児島(100%)、27位の両津(100%)、29位の川崎(49%)、32位の岩国(55%)、 36位の石垣(98%)、39位の平良(100%)でも見られる。鹿児島港は、南西諸島の内航コンテナの一大拠点となっているようで、意外にも国内比率が 100%となっている。一方、工業港としての性格が強そうな川崎、千葉の両港も国内比率が比較的高いのだが、首都圏における輸出入港は東京港や横浜港がメ インになっているものと思われる。

 また四国の取扱量トップは、22位の三島川之江港であるが、取扱量は10万TEUにも満たない。もっとも近隣の新居浜港と合わせれば約15万TEUレベ ルにはなるが、瀬戸内海に面し海 運が発達している印象のある四国地方だが、意外にも海上コンテナ取扱量という観点で見ると、本州の瀬戸内沿岸港と比べ少ない水準である。
 北陸地方は20位の伏木富山、28位の敦賀、30位の金沢まで8万弱〜5万強TEUの取扱量となっているが、これは北陸3 県で集荷競争をした結 果、いずれの港も中途半端な取扱量になっている感が否めない。名古屋港や阪神港を利用する荷主も少なくないと思われる。



■海上コンテナの国内輸送に関するその他トピックス  

▽ 山九と信州名鉄運輸、共同で海コン輸送開始  (『輸送経済新聞社』1998. 3. 8〜3.14
 山九(本社 東京)と信州名鉄運輸(本社 松本市)はこのほど、国際海上コンテナ貨物輸送業務を共同で開始した。5月下旬をめ どに、諏訪市に保税蔵置所を設け、中国・東南アジア・北米と日本の内陸を結ぶ国際海上コンテナ貨物輸送を本格化する予定。現在、保税許可や通関免許の取得 を計画しており、10年度は輸出入合わせて2,000TEU(20ftコンテナ換算)の取り扱いを目指す。
 新サービスは、山九が持つ海外ネットワーク・港湾機能と、信州名鉄運輸が持つ甲信越地区の集荷力や国内ネットワークを一体化。「ウイークリー混載 &FCL(コンテナ一本を満たす大口貨物)サービス」として商品化したものだ。
 山九はこれまで、内陸に海上コンテナの営業を展開したことはあるが、それほどの実績を上げていなかったのが実情。一方、信州名鉄は国内輸送に定評がある ものの、海外ネットを持たない弱みがあった。信州名鉄の平沢則利常務は「これまで既存荷主から国際物流業務に対する要望があったが、海外ネットのための投 資を行うわけにもいかない。そこで両社の強みを生かし、共同で取り組むことにした」と語る。山九と信州名鉄は1997年9月、国際海上コンテナ貨物輸送に 関する 共同事業で提携。両社とも社内にプロジェクトチームを結成し、1997年11月下旬から営業に乗り出した。これまで食品関連の荷主2社、雑貨を扱う荷主3 社を獲 得し、1998年2月末から食品関連の荷主2社を対象に輸入業務を開始した。
 現在、中国からの輸入食品を横浜港で陸揚げした後、山九が長野県内にある荷主の工場2カ所にドレージ輸送(海上コンテナを港湾から直接、目的地まで輸送 する方法)をしている。週1〜2便の割合で、月間20ftコンテナ10本を取り扱う。東南アジアや東アジアからの輸入雑貨についても、4月中に東京 港・横浜港で陸揚げし、長野県内にドレージ輸送する予定だ。
 両社は、提携の狙いであるインランドデポ(内陸通関拠点)を活用したサービスを本格化するため、5月下旬までに保税上屋の許可取得、通関業務のための営 業所の設立、通関免許の取得を共同で行う考え。通関営業所は信州名鉄運輸の諏訪支店内に設置する。許可・免許を取得次第、現在京浜港で行っている輸入貨物 の通関を諏訪の拠点に移管する予定。

▽ 回送海コンで混載輸送/OOCLジャパンと提携…福山通運  (『物 流ニッポン新聞社』1999. 7. 4〜7.10)
 福山通運鰍ヘ1日、香港の大手海運会社OOCLの日本法人、鰍nOCLジャパン(東京都品川区)と業務提携を結び、同社が空で回送 する海上コンテナを混載貨物の拠点間輸送に利用することにした。相互の輸送効率の向上とともに、環境対策を推進するのが狙い。
 OOCLジャパンは仙台港から出発する国際貨物を積むため、東京港から月間30個の海上コンテナを回送している。福山通運は、この空コンテナに宅配便な どの荷物を積み込んで輸送し、トラック輸送で発生する二酸化炭素(CO2)や 窒素酸化物(NOx)を削減する。
 当初は東京〜仙台間など1、2ルートでトライアル運行を実施し、結果が良ければ利用ルートを増やしていく。また、OOCLジャパンとは空コンテナの利用 以外の国際海上貨物輸送に関しても広く提携関係を結び、荷主のサプライチェーン.マネジメント(SCM)支援に向けた国際一貫輸送体制を拡充していく。
 福山通運では「40ft空コンテナを利用した場合、10t車換算で1.5両分となり、通常のコンテナ輸送の半分のコストで輸送できる」と、環境対策 と合わせ一石二鳥の効果に期待をかけている。



■ISOコンテナ輸送  

2011.9 ISOコンテナが目立つ東水島駅構内
 ISOは国際標準化機構(International Organization for Standardization)の略称であり、ISO規格に則ったコンテナをJR規格のコンテナと区別して、ISOコンテナと称している。
 国際海上コンテナもISO規格のコンテナであるが、ここで纏めたいのは輸出入に供される国際海上コンテナではなくて、主に国内物流に使用されるISO規 格コンテナである。ISO規格コンテナの特徴はJR規格コンテナと比べて、例えば同じ20ftサイズであっても積載可能重量が全くことなり、JR規格では 最大10トン程度あるのに対して、ISO規格では24トンとなる。つまりそれだけ輸送効率に優れているということになるが、近年は特にタンクコンテナの分 野でISOコンテナが増加しておりトップリフターを備えた取扱駅も増えている。

 ISOコンテナを取り扱うが海上コンテナは取り扱わない駅は多いし、JR規格の20ftコンテナは扱うがISOコンテナの取り扱いは無いという駅も多 い。そこでここでは国際海上コンテナを除くISOコンテナの輸送を纏めておきたい。基本的には国内輸送に使用されるISOコンテナに着目しているが、一部 輸出入に使用されるものも含まれてしまうだろう。

 まずは、時系列にISOコンテナの取り扱い駅・輸送区間が拡大していった歩みを纏めておく。

取扱開始
年月日
取扱駅
荷 主
輸送区間
輸送品目
備 考
1997.07
東水島
出光石油化学梶H
東京(タ)〜東水島
合成樹脂
20ftドライコンテナ(『交通新聞』1997年8月8日付、1面)
2000年12月に発駅を京葉久保田駅に変更(『JR貨物ニュース』2000年12月1日号、1面)
1998.04
東水島
日本ゼオン
東水島〜郡山(タ)
ジシクロペンタジエン
国内初のISOタンクコンテナ輸送
1999.10
京葉久保田
日本A&L
東レ・ファインケミカル
京葉久保田〜新潟(タ)
京葉久保田〜梅田
ラテックス
DMSO
北越製紙褐け輸送
輸送品目は予想
2000.7
大竹
三井化学
大竹〜東京(タ)
4メチルペンテン1
(『JR貨物ニュース』2000年7月15日号、1面)
(『JR貨物ニュース』2000年8月1日号、2面)
2000.11
小名浜
不明
北陸〜小名浜
化成品
(『JR貨物ニュース』2000年10月15日号、1面)
2001.3.26
新南陽
潟gクヤマ
日本ポリウレタン工業
新南陽〜東北・関東・東海
新南陽〜東北・関東・東海
化成品
化成品
(『JR貨物ニュース』2001年4月15日号、1面)
2001.11.1
四日市
不明
不明
化成品
(『JR貨物ニュース』2001年10月1日号、4面)
2004.6.12
新居浜
住友化学梶H
新居浜〜宇都宮(タ)
化成品
(『JR貨物ニュース』2004年7月1日号、2面)

▽水島臨海鉄道が海上コンテナの取扱スタート (『交 通新聞』1997年8月8日付、1面)
 水島臨海鉄道は1997年7月から海上コンテナの取扱を始めた。定時性と大量高速輸送という鉄道貨物のメリットを武器に、ライバルの内航海運からのシェ ア奪取を目指す。
 海上コンテナは従来の鉄道コンテナに比べて内容積が大きく、積み降ろしの簡素化や鉄道とその両端のトラック輸送部分も含めてコスト削減が図れるなどで鉄 道、荷主の双方にメリットが少なくない。同社では主な荷主になる水島臨海工業地帯の企業で海上コンテナが普及したのを受け、半年間にわたる検討を経て今回 積み降ろしのためのトップリフターを導入、新コンテナの扱いに踏み切ることにした。
 具体的には汎用の20ftコンテナを使用し、東水島駅と東京貨物ターミナル駅との間を往復。主な積載貨物としては合成樹脂を中心とした化学工業品 や化学薬品などを見込むが、今後は瀬戸内内陸エリアの企業にもセールスを強化していく方針。 1997年度の輸送量見通しは、着発合わせ11,700トンだが、1999年度には25,000トン、さらに2001年度には35,000トンを目指す。

▽合成樹脂もコンテナ輸送 出光石化、独自に初開発 空荷減らし 物流費20%減 (『朝日新聞』1999年5月26日付、12面)
 積み荷が空っぽのままでは輸送しない−−−。大手化学メーカーの出光石油化学は独自開発したコンテナを使い、販売先と手を組んで物流費の大幅カットに乗 り出した。高度な品質管理が必要な合成樹脂は、輸送や保管に手間がかかるのが難点。アジアとの競争が激化する中、流通コストをいかに減らすかが、日本の石 油化学の生き残りのカギになっている。
石油化学メーカーは普通、生産したポリスチレンやポリプロピレンを素材ごとにタンクローリーに直接詰め込んだり、専用の袋に入れてトラックに積んだりして 取引先に運ぶ。合成樹脂は品質管理上、他の物質と混ぜることが出来ないので、多くの輸送車が必要となり、帰路も何も積まずに走っている。
 このため出光石化は業界で初めてコンテナ輸送に着目。コンテナ内部に17トンの合成樹脂を充填できる頑丈な袋を据え付け、千葉工場からトレーラーなどに 載せてコンテナごと取引先に運ぶ。独自開発したコンテナは側面が全開する設計になっていて、合成樹脂を運んだ後の帰り道は、取引先が加工した樹脂製品を首 都圏に運ぶのに使える。またコンテナは野ざらしで放置できるため、そのまま倉庫に早変わりする。
 同社によると、合成樹脂の物流費は1キロ当たり10−12円が相場だが、独自開発のコンテナで物流費は20%減る。

▽ISOコンテナ輸送列車、新潟・大阪向け出荷…京葉臨海鉄道  (『物流ニッポン新聞社 』1999.11. 7〜11.13)
 京葉臨海鉄道(株)(千葉市中央区)は5日、千葉県袖ケ浦市の京葉久保田駅コンテナホームで、ISOコンテナ輸送列車の出発式を行った。 同社は10月から、新潟と大阪に向けて、ISOコンテナの鉄道輸送を開始。その祝初出荷を祝うとともに安全祈願が行われた。
 昨年、荷主や運送業者へアンケートを実施。ISOコンテナ鉄道輸送への需要増を見込み、事業化を検討してきた。今年4月には、30ft、24トン対 応のトップリフター(荷役機械)を導入するなど、10月からの本格的輸送に備えてきた。
 新潟向けは、京葉久保田駅から、コキ106型台車1両に、総重量20トンのISOコンテナを2個積載して出発。都内の隅田川で、ほかの貨物列車に連結し て、新潟貨物ターミナル駅まで輸送する。
 大阪へは、京葉久保田駅から、コキ104型台車2両に、ISOコンテナを各1個積載して出発。埼玉県の越谷貨物ターミナル駅で連結して、梅田駅に向か う。両ルートとも、千葉県の蘇我駅からはJR貨物が担当する。
 京葉臨海工業地帯は、ケミカル薬品工場などが集中する地域で、当面、石油類などタンク型のコンテナ輸送を中心とするが、今後、箱型も取り組んでいく。中 村社長が「ISOコンテナの鉄道輸送は、モーダルシフトに最適。環境にも大きく貢献する。みなさんに利用してもらえるサービスを提供していきたい」とあい さつ。また、JR貨物の岡野忠雄常務は「JR貨物でもISOコンテナ輸送に力を入れている。現在、箱型コンテナは7ルート、タンク型コンテナは3ルートで 展開しており、今後もルートを広げていく」と語った。

▽ 京葉久保田駅でISOタンクコンテナ輸送開始 (『カーゴニュース』1999年11月9日付)
 11月5日に京葉臨海鉄道京葉久保田駅においてISOタンクコンテナ積載列車の出発式が開催された。
 荷主は日本エイアンドエル東レ・ファインケミカルで、京葉久保田駅から新潟と大阪に輸送される。
 このうち、日本エイアンドエル社は、ラテックスの東日本の製造拠点として今年4月から住友化学工業(株)千葉工場で生産を開始しているが、 北越製紙などへの安定供給のために鉄道輸送を選択した。出発式に出席した日本石油輸送からは「ISOタンクコンテナのさらなる拡充のために、秋田 などにもトップリフターの配備をしてほしい」などとJR貨物に 対して注文をした。


▽化学製品複合輸送協力会スタート/NRS、中堅8社と企業連合体  (『物流ニッポン新聞社』1998. 2.15〜 2.21)
 日本陸運産業(株)(NRS、東京都千代田区)は13日、記者会見を開き、中堅同業他社8社と「化学製品複合輸送協力会」を設立したこと を明らかにした。化学品の鉄道、道路、海上による複合輸送を協力して全国展開することで、より効率的な物流サービスを顧客に提供するのが狙い。当面は ISOタンクコンテナの輸送が中心となるが、業界初の企業連合体として、今後の活動が注目される。
 協力会は、NRSが各地の中堅同業他社に呼び掛け発足。先月28日に行った設立総会で、同社の萬歳社長が会長に就任した。
 今後は、協力会社相互のコンテナ、倉庫、車庫など施設その他を共同利用しながら効率輸送を図り、物流情報、営業情報を交換して顧客サービス向上を目指 す。



[1]『日本国有鉄道百年史 第13巻』日本国有鉄道、1974年
[2]『貨物鉄道百三十年史(中巻)』日本貨物鉄道株式会社、2007年
[3]『近代日本輸送史−論考・年表・統計−』(財)運輸経済研究センター編、1979年
[4]『神奈川臨海鉄道30年史』神奈川臨海鉄道株式会社、1993年
[5]『創立40周年を迎えて(最近10ヵ年のあゆみ』神奈川臨海鉄道株式会社、2003年
[6]『仙台臨海鉄道のあゆみ−10年間(平成2年度〜平成11年度)の資料を中心として−』仙台臨海鉄道株式会社、発行年不詳


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