日本の鉄道貨物輸送と物流: 表紙へ
とはずがたりな掲示板  鉄 道貨物輸送研究スレ
丸昭興業株式会社 (岩沼駅)
2012.11.25作成 2017.2.5訂補

1998.4 岩沼駅に留置されたタキ18600形

2008.3 岩沼駅の丸昭興業(株)専用線  カバーがかけられたアントらしきものが見える

 仙台都市圏には仙台(タ)駅や石巻港駅、名取ORS、古川ORS、仙台 臨海鉄道など鉄道貨物輸送の拠点がいくつも点在するが、岩沼駅もコンテナのフロント扱いと日本製紙(株)専用線が存在する貨物取扱駅である。
 
 岩沼駅は、東北本線と常磐線の分岐駅であり仙台近郊の主要駅として古くから多数の利用客を抱える一方で、LPGや小麦粉、液化アンモニア、紙・パルプな どの専用線が多数敷設されるなど貨物輸送の拠点としても重要な位置付けにあった。岩沼駅を巡る鉄道貨物輸送には語るべきものが多いのだが、第6回「専用線 とその輸送」は、岩沼駅の丸昭興業(株)を取り上げることにしたい。

 これまでに鉄 道貨物輸送研究スレッドにおいて、何度も扇町〜岩沼間で 行われていたタキ18600形による昭和電工(株)液化アンモニア輸送のことは書き込んできた。2008年3月に廃止とな るまで、タキによる最後の液安輸送ということもあって、鉄道貨物輸送趣味者の間でも知名度はそれなりにあった輸送と言えるため、目立たない輸送を発掘する とした「専用線とその輸送」の趣旨にはそぐわないかもしれない。

 しかし、その輸送の顛末が新聞記事になるという珍しい ケースであり、鉄道貨物輸送の弱点や船舶輸送に依存することのリスクを露呈したこの輸送事例は、今なお非常に興味深い。丸昭興業(株)だけで1つの独立し たページを作っておきたいと以前から考えていたのである。


 丸昭興業(株)は、2013(平25)年4月25日に親会社の昭和電工 (株)に吸収合併されたため法人としては既に存在しない。(→プ レスリリース参照)
 プレスリリースによると、丸昭興業(株)の設立は1964(昭39)年10月1日となっている。

 一方、タキによる液化アンモニア輸送がいつから行われていのかは、明らかではないが、「専用線一覧表」を確認すると、岩沼駅に丸昭興業(株)の専用線 が登場するのは「昭和42年版」からであり、「昭和39年版」〜「昭和42年版」の間に専用線が敷設されたことになる。会社設立と同時期に専用線も完成 し、液化アンモニア輸送が始まったと考えて、ほぼ間違いないだろう。


専 用線
番号
所 管駅
専 用者
第 三者使用
作 業方法
作 業キロ
総 延長キロ
記   事
昭 和42年版
専用線一覧表
832
岩 沼
丸 昭興業(株)
国 鉄動車
0.2
(共用0.2)

ゼ ネラル瓦斯線に接続
昭 和58年版
専用線一覧表
725
岩 沼
丸 昭興業(株)

国 鉄動車
移動機
0.2
(共用0.2)
0.1
ゼ ネラル石油線に接続

 つまり1964(昭39)年頃にスタートしたとすると、2008(平20)年3月に廃止になるまで、実に40年以上も同じ輸送体系で継続したことにな る。

 これは例えば、大川〜岩沼間で行われていた日清製粉のホキによる小麦粉輸送は1974年から1997年までの約20年間継続し、その後タンクコンテナ輸 送に転換された(拙web参 照)のと比べても、よくも残ったものだと嘆息せざるを得ない。その間の社会情勢の様々な変化を考えると信じられない気もするが、それくらいよく完成され た@A送 だったとも言えるのかもしれない。


 そんなタキによる液化アンモニア輸送にも、ついに終焉の時が訪れた。工 場移転を伴う鉄道から船舶への輸送体系の抜本的変更が実施された。

▼相馬港にタンク2基 昭和電工グループ (2008 年11月11日付『河北新報』

 昭和電工の子会社で、液化アンモニア(高圧ガス)の貯蔵・出荷などを手掛ける丸昭興業が、宮城県岩沼市の本社工場を福島県新地町の相馬港に移転すること を決め、10日、同県、同町と立地基本協定を締結した。昭和電工が川崎市で製造した液化アンモニアを一時貯蔵し、新潟を含む東北7県に供給する物流拠点を建設し、来年8月にも操業を始 める。

 立地予定場所は相馬港5号埠頭の危険物取り扱い施設用地。約1万平方メートルを購入し、来年1月、貯蔵タンク2基などの建設工事に着手する。事業費は約 10億円。

 丸昭興業によると、工場移転に合わせて来年8月に本社も移し、現本社工場は閉鎖する。従業員14人も移る予定。

 同社が扱う液化アンモニアは、主に火力発電所や清掃工場などで排煙に含ま れる窒素酸化物の除去に使われている。製品を川崎市から鉄道輸送していたが、今年3月に鉄道会社が取り扱いを中止需要増もにらみ、船舶輸送が可能な新拠点の 適地を探していた。同社は立地場所について「相馬共同火力発電など大口の顧 客に近い利点がある」と話す。

 5号埠頭の用地(約9万平方メートル)は、県が1993年度、石油・ガスや化学薬品などを扱う企業を想定して分譲を開始。今回が初の分譲決定となる。

 液化アンモニアの大口顧客が、相馬共同火力発電所ならば、相馬港に物流拠点を設けるというのは、至極自然な方針である。

 また「鉄道会社が取り扱いを中止」とあるため、昭和電工の意思でタンク車輸送を廃止したわけではないのかもしれない。JR貨物 の経営方針として、化成品タンク車輸送の廃止があり、この輸送体系の継続を荷主に断念させた可能性はある。

▼昭和電工、相馬港に物流拠点新設 液化アンモニア供給 (2008 年11月11日付『日本経済新聞(東北版)』

 昭和電工は10日、福島県新地町の相馬港に液化アンモニアの物流拠点を新設すると発表した。総投資額は約10億円。来年1月に着工し、8月の運営開始を 目指す。液化アンモニアは火力発電所の排煙に含まれる窒素酸化物(NOx)の除去などに使われる。近隣に火力発電所がある相馬港に拠点を設けることで輸送 効率を高めるとともに、東北での需要増加を見越し供給体制を強化す る。

 同日、県と新地町のほか同社と完全子会社の丸昭興業(宮城県岩沼市)4者で立地に関する基本協定を結んだ。丸昭興業が相馬港の分譲地のうち約1万平方 メートルの敷地を取得し、容量120トンの貯蔵タンクを2基設ける。昭和電工が川崎製造所(川崎市)で製造する液化アンモニアを船舶で運び込み、火力発電所や合成繊維メーカーなどの取引先に向けて出荷する。

 丸昭興業は従来、宮城県岩沼市内に敷地面積約7500平方メートルの物流基地を設けていたが、30トンの貯蔵タンク1基のみで、「入出荷機能が限界に近づきつつある」(同社)。新拠点の運営開始に伴 い、同社は本社機能を移転、既存の物流基地は閉鎖する見通し。

 ただタンク車輸送に問題が無かったわけでは無さそうで、「需要増加を見越し供給体制を強化」したいという昭和電工の戦略もあるし、既存の設備では「入出 荷機能が限界」になりつ つあったことも事実のようで、JR貨物の方針に関わらず輸送体系の見直しは不可避であったと言えよう。

 実際、丸昭興業(株)の工場が位置する岩沼駅の南西部(地図) は、筆者が初めて現地訪問した1998(平10)年頃は、周囲にまだ未開発の更地が広がっていたが、駅のすぐ近くということもあり、宅地開発が急速に進み 今では完全に住宅に囲まれてしまった。この場所で更なる敷地や設備の拡張が困難なのは当然で、そういった観点では、岩沼からの移転はやむを得ないだろう。

 鉄道貨物輸送の弱点の1つはまさにここで、利用客の多い鉄道駅周辺と言うのは商業地化・宅地化が進みやすく、自ずと工業立地に適さない土地となってしま う。貨物専用駅ならば、物流拠点としての位置付けが明確だが、岩沼駅のように都市圏の主要駅で鉄道貨物輸送を維持していくことの難しさの一例である。かつ ては新宿駅や品川駅といった都心の巨大旅客駅も、国鉄末期まで鉄道貨物の一大拠点だったとは今となっては信じられないものである。


2006.9 扇町駅の昭和電工(株)専用線

2007.5 岩沼駅


 さて、ここから岩沼駅の丸昭興業(株)専用線とは直接関係無いが、新し い基地についても見ておく。
 昭和電工によるプレスリリースによると、タンク車輸送が廃止されてから2年後に相馬港の物流基地が完成した。

▼液化アンモニア「エコアン®」 東北圏 新物流基地稼動開始 (2010 年3月25日

 昭和電工株式会社(社長:高橋 恭平)は、火力発電所の排煙浄化などで使用される液化アンモニアの物流基地の建設を、2009年より福島県新地町の相馬港において進めてまいりましたが、 このたび工事が完了したことから、本日3月25日に竣工式を行いました。本物流基地は、当社100%子会社のアンモニア販売子会社である丸昭興業株式会社 (本社:福島県新地町、以下、丸昭興業)が所有し運営いたします。

 当社は、川崎事業所(川崎市)において製造した液化アンモニア「エコアン®」を、これまでは、内陸に立地する丸昭興業の既設物流基地(宮城県岩沼市)を 使用して東北圏のお客様へ配送してまいりました。今回、船舶輸送が可能な臨海部に立地する新物流基地が完成したことから、輸送効率とサービスレベルの向上 を図ってまいります。また今回の完成にあわせて、丸昭興業は本社機能を新物流基地に移転いたしました。

 使用済みプラスチックを原料として製造する「エコアン®」は、大手電力会社よりグリーン調達品としての認定をいただいており、火力発電所等の排煙に含ま れる窒素酸化物(NOx)の除去に使用されています。このほか、ナイロンやアクリロニトリル等の合成繊維製造、自動車・建機部品の金属表面処理など一般工 業用途をはじめ肥料用途などに幅広く使用されております。

以上

【新物流基地概要】
・所在地:福島県新地町今泉字新港2地内(相馬港5号埠頭福島県分譲地内)
・敷地面積:約10,000u
・取扱品目:液化アンモニア、アンモニア水

【新物流基地出荷設備】


【丸昭興業株式会社概要】
・本社所在地:新物流基地と同じ
・社長:野口 進(昭和電工(株)化学品事業部ガス・化成品部長)
・資本金:1000万円
・出資比率:昭和電工(株) 100%
・事業内容:液化アンモニア、アンモニア水の販売
・従業員数:12名

 ところが稼働からおよそ1年後、東日本大震災に見舞われてしまい、2011年8月末には休止に追い込まれた。
▼昭和電工 東北地方でのアンモニア供給体制を再検討 (2011 年11月14日『化学工業日報』

 昭和電工は、東北地方でアンモニアの供給体制を再検討する。東北地方への供給拠点に位置付けていた福島県内の物流基地が東日本大震災で大打撃を受け、8 月末で休止に追いやられたためで、当面は川崎事業所(神奈川 県)からの出荷で対応中。今後、復興にともなう火力発電所向けなどの需要増に備え、同基地の再建も視野に、最適な供給体制の構築を 急ぐ。
(写真は震災前の相馬物流基地)



(※参考)2010.7川崎貨物駅 日産化学工業の液化アンモニア専 用のUT10C形コンテナ
 このように港湾にアンモニアの物流基地を立地させたことが、津波被害 を受けることになり完全に裏目 に出た形だが、未曽有の大地震を想定しなかった昭和電工を責めることは、さすがにできまい。

 むしろ今後の供給体制をどのように検討しているのかが気になるところだ。筆者の立場からは当然、鉄道貨物輸送の活用を訴えたいところである。日産化学工 業が所有するようなタンクコンテナで液化アンモニアを輸送することも是非とも検討して頂きたい。

 相馬港の火力発電所が主なユーザーとなると、 港湾に ストックポイントを置くことが最適と思われるが、相馬の基地とは別にリスクヘッジのために鉄道コンテナ輸送も活用するというのも良いのではないだろうか。

 昭和電工は千鳥町にある専用線を 活用して鉄道によるモーダルシフトを始めている企業である。また同社の液化アンモニアについては「エコアン」と名付けて環境に優しい商品であることをアピールしている。 そのような企業戦略の一環として鉄道貨物輸送を活用した液化アンモニア輸送の展開を是非とも期待したい。まぁ内航海運を利用している時点で、モーダルシフ トを行っていると言えるのだが…。

 と、2012年11月時点で書いていたのだが、2014年3月には相馬港の液化アンモニア基地は再建された。鉄道コンテナ輸送の活用は叶わなかったが、 相馬港を拠点に東北各地への輸送に鉄道輸送の可能性はないだろうか。相双地区には、丸三製紙(株)や(株)IHIなどの工場が立地するほか、相馬港に LNG基地が建設されるなど物流需要の増大が期待できる。液化アンモニアの輸送もそのような相双地区の物流体系構築の一環として着目していきたい。
▼液化アンモニア「エコアン®」、東北圏への拡販体制を構築 (2013年2月14日
−相馬港 物流基地の再開と100%子会社の合併を決定−

  昭和電工株式会社(社長:市川 秀夫)は、東日本大震災の津波により被災した液化アンモニアの物流基地(福島県相馬郡)を再興し、運営を再開することを決定しました。再建のための工事を 本年6月から開始し、2014年3月に運営を開始する予定です。

  液化アンモニアは、合成繊維の製造や自動車・建設機械部品の金属表面処理などの工業用途の他、火力発電所やゴミ処理施設の排煙に含まれる窒素酸化物 (NOx)の除去に使われており、ライフラインに欠かせない役割を担っています。また、当社の液化アンモニア「エコアン®」は、使用済みプラスチックを原 料の一部に使用した製品で、大手電力会社からグリーン調達品として認定を受けるなど、高い評価を得ています。今後火力発電は高稼働が予想されることから、 液化アンモニアについても、堅調な需要を見込んでおります。

  旧物流基地は、東北6県および新潟への出荷基地として、2010年3月に当社子会社の丸昭興業株式会社(以下、丸昭興業)の運営により相馬港で操業を開始 しました。しかし東日本大震災が発生した2011年3月以降は、製造拠点である昭和電工 川崎事業所(川崎市)から直接、お客様に製品をお届けしています。大震災から約2年が経過し、操業を再開されたお客様や稼動を高めている火力発電所に対 し、液化アンモニアの安定供給体制を整えるため、今般、同基地の再興を決定しました。

  さらに当社は、エコアン®を基礎化学品事業における主力製品として、さらなる販売強化を図るため、物流基地を当社本体の事業所として運営することを決定し ました。本施策にともない、当社は丸昭興業を4月25日付で吸収合併いたします(注 1)。

  当社は製品・事業を通じた社会貢献を経営理念として掲げ、事業運営を行っています。今後もエコアン®をはじめとする環境・社会基盤に不可欠な製品の販売を 通して、お客様・地域の期待に応えて参ります。

以上

▼昭和電工、被災アンモニア基地再建 福島・新地 (2014 年05月10日付『河北新報』


再建された昭和電工の液化アンモニア基地

 昭和電工が福島県新地町の相馬港で再建を進めていた液化アンモニア基地「東北アンモニアセンター」が完成し、現地で9日、竣工式があった。既に試運用を 始めており、6月下旬に本格操業に入る。施設は東日本大震災の津波で被災。残った貯蔵タンク2基を生かして再建した。投資額は約7億円。

 液化アンモニアは、火力発電所などで排煙に含まれる窒素酸化物の除去に使われる。同社川崎事業所(川崎市)で製造して海上輸送し、センターに貯留。専用 ローリー車で東北各県と新潟県に供給する。供給量は年7,000〜1万トンを見込む。

 同社は震災前、鉄道輸送が困難になったため、東北地方向けの海上輸送の中継基地を新地町に整備。2010年3月から同社子会社の丸昭興業(新地町)が運 営を始めたが、施設が震災の津波で流失した。昭和電工は13年2月に丸昭興業を吸収合併し、直轄基地として再整備した。



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