日本の鉄道貨物輸送と物流: 目次へ
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岩国駅 〜 紙輸送に活躍を続ける西日本最大級の専用線を擁する駅〜
2022.8.21作成開始

<目次>
■はじめに
■岩国駅の鉄道貨物輸送に関連する年表
■岩国駅の貨物取扱量(千トン)の推移
■岩国駅の日本製紙(株)の貨物輸送


▼日本製紙、専貨列車で紙輸送 岩国工場が首都圏へ 新鋭機稼働で増産開始  (1997年2月3日付『運輸タイムズ』3面)

 日本製紙は1997年5月、岩国工場が増産する年間24万トンの塗工紙の50%を首都圏へ出荷するが、輸送手段として鉄道コンテナを利用する。鉄道輸送 ではJR貨物が増強する輸送力を活動するが、計画では岩国駅〜新座貨物ターミナル駅間を直行する紙専用列車になる。専貨列車の輸送力はコキ20両編成、 12ftコンテナ100個の計画だ。専貨輸送が実現すると安定的な計画出荷と顧客への供給安定化が確保する。輸送所要日数も現行に比べ大幅に短縮する。 JR貨物は3月22日実施するダイヤ改正で専貨列車の輸送力、ダイヤ設定等を正式に決めるが、紙専貨列車の運行は改正新ダイヤの柱の1つとなる。


▽岩国−新座間 翌日着に短縮
 岩国工場が新規に生産する塗工紙は、年間24万トンの生産量となる。1日700トン、月間2万トンの生産能力を持つ新鋭マシンは5月に稼働する。紙需要 の伸びに伴い生産設備の増強を進めていたが、本格稼働の運びとなった。

 大手製紙メーカーは生産設備の増強を進めているが、日本製紙岩国工場が最初の新鋭機稼働となる。製紙業界では6年ぶりに本格的な増産体制に入ることにな る。新鋭機はフル稼働した場合の生産能力が日量700トンと大きいのが特徴で、増産体制に入る5月以降、同工場の生産能力は月間6万5千トン(現在4万5 千トン)となる。

 新鋭機が生産する塗工紙は通販カタログ、ワープロ説明書、折込広告などの分野で顕著な需要増を示している。塗工紙は首都圏、中部、関西圏及び九州地区へ 出荷する。首都圏への出荷比率は約50%で、この輸送手段として鉄道コンテナを利用する。鉄道輸送は岩国駅発、新座(タ)駅着の紙専用列車を利用すること になる。

 新座(タ)駅へ着けるのは、都内にあった印刷、製本、紙問屋などの紙ユーザーが埼玉県下ほか外周部へ拠点を移したためだ。岩国工場はユーザーが郊外へ移 転したことに伴い数年前に海上輸送を鉄道輸送に切り替えて現在は鉄道輸送主体の輸送を行っている。そして東京(タ)、隅田川、越谷(タ)などの各駅へ定期 列車で分散的に輸送している製品を5月以降は新座(タ)着の専貨列車輸送に集約する。

 この輸送集約に伴い日本製紙は、埼玉県下に拠点倉庫を新増設して物流効率化とユーザーへの安定供給に努めているが、新たに4月を稼働目標とする大規模な 倉庫を現在、建設中である。新設倉庫は新座(タ)に至道距離(約4km)の所沢地区に立地しており、鉄道輸送を重視した物流体制確立を目的としたものだ。

 紙専貨列車はコキ20両編成となり、12ftコンテナ100個の輸送力を有する。3月に実施するダイヤ改正でJR貨物は、紙専貨の運行ダイヤ、輸送力等 を正式決定するが、紙専用コンテナ列車は全国的に例が少ない。飯田町駅を着駅とする車扱紙専用列車は、コンテナ化が進む中で、コンテナ輸送に切り替わって いる。このため長距離拠点駅間を直行運転するコンテナによる紙専貨は、新ダイヤの柱的な存在の1つとなる。


▽拠点倉庫の整備進む 物流効率化に役割担う
 岩国工場の首都圏向けコンテナの輸送枠は5月以降、現行の1日コキ21両、12ftコンテナ105個が、同36両、同180個となる(中部ほかを含 む)。現在、岩国駅から8両を直行列車で首都圏へ輸送しているが、13両は広島(タ)駅中継となっている。5月以降は20両が専貨で直行し、専貨に集約で きない中部地区ほか各駅向けの16両を中継輸送する。

 専貨列車による鉄道輸送は物流費削減、輸送時間短縮、荷痛み解消に効果が期待できる。物流費は荷揚港(着港)から内陸地倉庫へ長距離二次輸送を伴う海上 輸送及びトレーラー車による陸上輸送に比較して、鉄道輸送には運賃競争力があり、相対的に若干のコスト削減が可能となる。

 ユーザーが都心から郊外に移転し、長距離二次輸送が発生した結果、海上輸送のコストメリットが縮減したことの影響は大きい。一方、内陸地倉庫の最寄駅へ 直行列車で輸送する鉄道は、コスト的な優位性を大きくした。またトレーラー車による輸送は、コスト上昇要因と輸送力の問題があるほか、環境、騒音など公害 の課題がある。鉄道輸送はモーダルシフト促進にもなる。

 日本製紙は特に、系列の物流業者、十条運送(株)に1996年12月、第二種通運免許を取得させ新座(タ)、越谷(タ)、東京(タ)、隅田川各駅で紙限 定の通運業務ができるようにした。そして総重量25トンに規制緩和した中でコンテナ3個積トレーラー車導入による配送の効率化、物流費圧縮に取り組む体制 固めを行った。物流費は十条運送を中心とした物流効率化推進の側面からも節減を図っていくことになる。

 輸送所要日数は、専貨列車(1064列車)の岩国駅発が15時50分、新座(タ)着は翌日10時59分となる。現行輸送〔岩国駅発16時48分、新座 (タ)着翌日20時〕に比較すると配達含めて約1日の時間短縮となる。中継輸送〔翌々日20時新座(タ)着〕との比較では約2日の大幅な時間短縮が実現す る(配達を含む)。

 現在の中継輸送は、積替時(コンテナ)の衝撃に起因する荷痛みの問題が課題として残っている。専貨による拠点間直行輸送は、中継によるハンドリング作業 が省略するため破損問題が解消し、安全で良質な紙輸送の実現に期待が持てる。

 専貨列車を主体とした岩国工場の鉄道輸送は、岩国駅分岐の工場専用線の有効活用にもなる。今回の専貨輸送では留置線及び授受線の増設、延伸を始め路盤補 強、切り替えポイント改良、動車能力アップなど専用線の強度を高めた。

 また出荷量が1日700トン増加するため専用線ホームのある倉庫南側は、高床ホームから車上荷役でコンテナ積みができるようにした。倉庫出荷の円滑化と コンテナ積み作業の効率化を兼ねたレイアウトが特徴だ。また倉庫北側は近中距離出荷のトラック輸送に配慮した設計を行った。

 一方、新鋭マシンが生産する塗工紙は、残り2割を中部地区、3割を阪神、九州地区へ出荷する。中部向けの輸送は船舶か鉄道か確定していない。名古屋地区 でも需要家は内陸地へ移転しており、小牧地区ほかへ拠点を替えた。名古屋港へ着ける船舶輸送には首都圏同様に二次輸送に伴うコスト上の問題がある。鉄道輸 送を検討しているがコストと荷痛みがクリアすべき課題だ。コストはJR貨物との折衝の中で決める。荷痛みは着駅となる新守山が3月ダイヤ改正後、自動車代 行駅となり名古屋(タ)からトラック輸送するが、この積替えで発生を危惧するものだ。

 関西向けは、現在トラック主体の輸送を行っている。道路網の整備、翌日早朝到着する速達性、関西へ上る帰り便トラックのコストメリットが理由。しかし定 期・大量出荷となる新規輸送では、鉄道を視野に入れた輸送機関選定の検討を行っている。



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