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中越パルプ工業株式会社
2016.5.29作成開始 2016.8.13公開
<目次>
中越パルプ工業の概要
中越パルプ工業の沿革
中越パルプ工業のトピックス
 会社全体
 高岡工場

 生産本部 二塚製造部
 川内工場
中越パルプ工業の鉄道貨物輸送
 高岡工場
 生産本部 二塚製造部
 川内工場


■中越パルプ工業の概要  
 中越パルプ工業は、製紙業界の売上高ランキングで9位に位置付けられる。かつての製紙業界には山陽国策パルプ、東海パルプ、東洋パルプなど社名にパル プ≠ェ付く企業がいくつもあったが、現在、主な製紙メーカーでは、中越パルプ工業が唯一である。そのことが意味するのは、再編が進む製紙業界の中で独立を 保っ ているということであるが、決してこれまでずっと再編と無縁だったと言うわけではない。
 2005年には、三菱製紙との合併構想が新聞報道された。社名は「三菱中越製紙」になる予定とまで書かれ、もし実現していればパルプ≠ニ付く社名では なくなっていたことになる。結局、この構想は破談となり、その後、同社は王子製紙の出資により同社と業務提携を強化、王子製紙の持分法適用会社となってい る。

本 社所在地
(高岡本 社)富山県高岡市米島282
(東京本社)東京都中央区銀座2-10-6
設 立年月日
1947 (昭22)年2月20日
資 本金
188億 円(2015.5.29現在)
連 結売上高
999億 円(2016年3月期)
従 業員数
786名 (2015.3.31現在)


■中越パルプ工業の沿革  

1947 (昭22)年
高岡製紙 (株)として設立(資本金3百万円、本社:富山県出町)
伏木工場開業、グラウンドパルプ(GP)および仙貨紙生産開始
1949 (昭24)年
高岡製紙 (株)、「中越パルプ工業株式会社」に社名変更
1954 (昭29)年
川内工場 開業、クラフトパルプ(KP)生産開始
1955 (昭30)年
砺波製紙 (株)設立
1956 (昭31)年
旧能町工 場、1号抄紙機稼動、洋紙(ロール紙)生産開始
1957 (昭32)年
砺波製紙 (株)二塚工場開業、1号抄紙機稼動、新聞用紙生産開始
1967 (昭42)年
同社チッ プ専用船による北米チップ輸送開始
1969 (昭44)年
富山新港 チップヤード完成
1971 (昭46)年
王子製紙 (株)と業務提携締結
伏木工場閉鎖
中越印刷製紙(株)より新能町工場、鹿児島工場(川内工場、7号・現8号抄紙機(上質紙) )を買収
1984 (昭59)年
砺波製紙 (株)と合併
2009 (平21)年
営業部門 と一部機能を除き本社機能を富山県高岡市に移転


■中越パルプ工業のトピックス  

▼会社全体
◆戦略プ ラン投資650億円 中越パルプ (2013年5月18日付『北國新聞』)

 中越パルプ工業(高岡市)は17日、2017年度に連結売上高 1,100億円、経常利益55億円を目指す中長期成長戦略プラン「ネクストステージ50」の詳細を発表した。650億円を超える設備投資を行う。

 高岡工場は、約200億円を投じ、即席麺や飲料の容器に用いられ る高板系加工原紙の生産機械を導入する。15年度内の稼働予定で、販売促進部門を設置して医療品用途も探る。13年度は5%を見込む高板系加工原紙の生産 割合を17年度には12%へ拡大する。

 製袋事業の強化へ、3月に製袋メーカーの中部紙工(愛知県半田 市)を子会社化したのに加え、来年に中部紙工のベトナム子会社の新工場を稼働させる。中国・青島市の製袋工場は13年度中に稼働する。

 35億円のコストカット、木質バイオマス燃料や太陽光による発電 事業、繊維素材「セルロースナノファイバー」の製品開発などパルプの高度化利用などが盛り込まれた。

◆王子HD、中越パルプへの出資比率上げ 20.6%に  (2014年12月2日付『日本経済新聞』)

 王子ホールディングス(HD)は2日、来年5月末をメドに中越パルプ工業への出資比率を現在の9%から20.6%に高め、持ち分法適用会社にすると発表 した。原燃料の共同調達をはじめ、成長分野であるエネルギー事業や海外展開で連携する。紙の国内需要が減り続けるなか、提携関係を強化する。

 王子HDは中越パルプが実施する第三者割当増資などを約32億円で引き受ける。
 王子HDは中越パルプの筆頭株主だが、これまでは人事交流や資材調達などの協力にとどまっていた。チップ船の共同運航などで高騰する調達コストの圧縮に 取り組む。木質バイオマス発電など新エネルギー事業にも共同で取り組む。

 電子メディアの台頭に加えて、消費増税後に紙需要の減少が進み、提携強化が必要と判断した。

◆王子HD 中パを持分法適用会社に 業務提携で3事業会社設立  (2015年6月8日付『紙之新聞』)

 王子ホールディングスは中越パルプ工業との間で業務提携及び第三者割当引受による資本提携で、公正取引委員会から問題解消措置を前提に排除措置命令を行 わない旨の、条件付き出資引き上げを承認されていたが、5月29日開催の取締役会で第三者割当引受の実行の決議をした。
 併せて、中越パルプ工業との間で具体的な協議を重ねた結果、@輸入チップ共同調達に関する合弁会社の設立、A高級白板紙の生産に関する合弁会社の設立及 びB製袋事業における業務提携に関する基本合意書の締結を決議した。

 資本提携は中越パルプ工業が第三者割当により新株式(普通株式)1,689万2,000株の発行と自己株式10万8,000株の処分を実施し、王子HD がその全株式を引き受ける。
 これにより、王子グループの中越パルプ工業に対する持株比率は20.8%(王子HD20.6%、王子HD子会社0.2%)、所有議決権割合は20.9% となり、中越パルプ工業は王子HDの持分法適用会社となる。

@輸入チップ共同調達に関する合弁新会社の設立。
 合弁会社の名称=O&Cファイバートレーディング(株)、所在地=東京都中央区、資本金=1億円、出資比率=王子木材緑化(株)(王子HD100%子会 社)80%、中越パルプ工業20%、設立日=2015年6月予定

A高級白板紙の生産に関する合弁会社の設立は、王子HD100%子会社の王子製紙富岡工場内に合弁会社を設立し、同工場内の遊休マシンを活用して共同で行 うことで両社合意した。
 併せて、印刷情報用紙の需要変化で同工場の7号マシン(上質紙4.4万トン/年)及び9号マシン(塗工紙13.6万トン/年)の停止の検討を開始してい る。
 合併新会社の名称=O&Cアイボリーボード(株)、所在地=東京都中央区、資本金=1,000万円、出資比率=王子製紙(王子HD100%子会社) 50%、中越パルプ工業50%、設立日=2015年7月予定

B製袋事業における業務提携に関する基本合意の締結は、中越パルプ工業の製袋事業子会社6社(国内4社、海外2社)と王子HDの製袋事業子会社7社(国内 3社、海外4社)を共同持株会社の傘下に入れることに両社で基本合意した。
 共同持株会社は名称=O&Cペーパーバッグホールディングス(株)、出資比率=王子産業資材マネジメント(株)(王子HD100%子会社)55%、中越 パルプ工業45%、設立日=未定。 

◆王子HDと中越パルプ工業、紙袋事業で中間持ち株会社を設立へ  (2016年3月25日付『Fuji Sankei Business i.』)

 王子ホールディングス(HD)と中越パルプ工業は25日、紙袋を製造、販売する両社のグループ企業を傘下に収める中間持ち株会社、O&Cペーパーバッグ ホールディングス(東京)を共同出資で5月1日に設立すると発表した。

 紙袋の需要は国内では縮小しているが、新興国では経済成長で増加している。国内生産の合理化と海外事業の拡大を協力して進める狙い。王子の100%子会 社、王子産業資材マネジメント(東京)が55%、中越パルプが45%を出資する。

 傘下に入るのは王子製袋(東京)と中部紙工(愛知県半田市)、中越パッケージ(東京)。王子HDは中越パルプに20%超を出資している。


▼高岡工場  

◆製紙で重油使用せず 中越パルプ工業 高岡工場能町に新ボイラー  (2008年6月27日付『北國新聞』)

 中越パルプ工業(東京)は来年6月、主力工場である高岡工場能町(高岡市)の製紙工程を、重油を使用しない方式に転換する。廃材を燃料とする新ボイラー を建設し、同工場の二酸化炭素排出量を二割、エネルギー購入費用を3割削減。低コスト化と環境への低負荷化を進める。

 7月下旬着工のバイオマスボイラーは、北陸三県など近隣地域から収集する木質の建築廃材を主燃料とする。総工費は22億円。賃借した隣接県有地に建設す る。来年6月稼働を目指す。

 同工場は年間1万キロリットルの重油を、紙を乾かす高圧水蒸気を発生するリサイクルボイラーの助燃剤として使っている。重油の使用停止で、工場発生分の 20%、全社の6%にあたる年間2万9千8百トンの二酸化炭素発生を抑える。重油を用いていたボイラーは、樹木のやにを濃縮した黒液だけを燃料に運用す る。

 中越パルプ工業は、富山県が工業用地への転用を進める伏木港の能町整理場(貯木場)の取得に向け、入札に参加する方針を固めた。購入した場合は、新ボイ ラーの建設や、紙の原料となるチップのストックヤードとする計画。

 能町整理場は、同社高岡工場能町の東側にあり、水面の面積は4.2ヘクタール。原木輸入量の減少で近年は利用がなく、県地方港湾審議会が3月、工業用地 とする方針を決めている。

 中越パルプ工業は7月8日、高岡工場能町の南側駐車場で、本社ビルを着工する。3階建てで、総工費は約5億円。来年4月1日の執務開始を目指す。東京・ 銀座の本社ビルは2年後、賃貸ビルに建て替える。東京勤務の110人のうち、企画、総務、人事、資材、技術関連の社員40人が高岡に異動する。本社勤務の 営業社員は引き続き東京を拠点とする。


▼生産本部 二塚製造部  

◆中越パルプ 新聞用紙設備を増強 富山県の二塚工場 古紙配合率70%に  (2001年11月5日付『日経産業新聞』18面)

 中越パルプ工業は二塚工場の製造設備を増強する。新聞用紙を生産する3号抄紙機に「ソフトカレンダー」と呼ばれる設備を設置。仕上げ工程を担当するもの で、脱墨パルプ(DIP)を配合しやすくするのが狙い。総投資額は20億円。来月の稼動を目指す。現在、同工場での古紙配合率は60%弱だが、将来的には 70%を目標に配合を増やしていく考え。

 3号抄紙機は新聞用紙専用で、日産430トンの能力を持つ。ソフトカレンダーは、ロールの間に紙を通して、紙の厚さをできるだけつぶさないで紙を平滑に したり、紙表面に光沢を出したりする役目を果たす。

 設備導入によって後工程を強化することで、DIPの比率を上げても厚さが落ちるなどのトラブルを未然に防ぐことができるという。2号抄紙機にはすでに 1999年11月に設置しており、DIP100%配合も可能となっている。

 3号抄紙機のソフトカレンダーは今月中旬から取り付け工事を開始、月末をメドに試運転を実施した後、12月から本格稼動に入る予定。二塚工場のDIP製 造設備は1998年に能力増強を実施済み。ただ、今回のソフトカレンダー設置でさらにDIPの使用量が増加するため、能町工場(高岡市)から余剰分を調達 する計画。

 製紙業界では地球環境への負荷を抑える狙いのほか、コスト削減策の一貫としてDIP配合率を引き上げる動きが広がっている。中越パルプ工業もソフトカレ ンダー設置でDIP利用を促進していく方針。

◆中越パルプ、CO2削減へ二塚工場に新ボイラー設置 (2004 年1月20日付『日本工業新聞』)

 中越パルプ工業は、二塚工場(富山県高岡市)にタイヤチップなどを燃料とする高効率ボイラーを設置する。同工場1号ボイラーの老朽化更新に伴う措置で、 これによって年間約8万8,000トンのCO2(二酸化炭素)削減につながる、という。

 新ボイラーは2006年8月の稼働予定。発電設備は既存設備(発電能力は2万3,700キロワット)を利用し、燃料にはタイヤチップのほか、RPF(廃 プラ・紙混合の固形化燃料)、木質系燃料を使用する。タイヤチップで年間5万4,000トン、RPFで同1万8,000トン、木質系燃料で同3,600ト ン(絶対乾燥重量)の使用を計画している。総投資額は60億円。

 中越パルプは、環境保全活動として、地球温暖化防止、産業廃棄物の削減、副産物の発生抑制、化学物質の自主管理、古紙使用量の拡大、環境配慮型製品づく りなどを推進しており、今回の新ボイラー設置もその一環。これまでのオイルコークス、重油混焼のボイラーに比べて年間8万8,000トンのCO2排出削減 量が見込まれ、これは同社の1990年度の化石燃料使用によるCO2排出量の約12%に相当する。


▼川内工場  
◆素材ウォーズ 中越パルプ 竹製の紙「すき間」狙う (2004 年1月13日付『日経産業新聞』)

 紙の原料と言えばユーカリなどの広葉樹や古紙。竹から作った紙を新しい事業の柱に育てようとしているのが中堅製紙会社の中越パルプ工業だ。紙は商品の違 いを出すのが難しい素材だが、竹製の紙は吸水性などに優れ、箸袋や印刷用紙に適している。同社は大手が手を付けない特殊紙を武器に、需要を掘り起こしつつ ある。

 鹿児島県川内市にある中越パルプの工場。年30万トンの紙を製造している中規模の製紙工場だ。ここで竹を使ったパルプ開発が始まったのは5年ほど前。
 鹿児島県は国内最大の竹林面積を持ち、川内市はタケノコの産地。良質なタケノコをつくるのは5年以上生育した古い竹を伐採しながら竹林を維持する。とこ ろが伐採した竹は使い道が無く、放置していた。頭を痛めた鹿児島県から川内工場に紙の原料に利用できないかとの打診があったことがきっかけとなった。

 同社は1年ほどかけ既存設備を使い、竹をチップに加工する技術などを開発。原料の竹を安定確保するため、各地区のタケノコ生産組合などに協力を要請、農 家から伐採した竹を系列のチップ工場などに有料で搬送してもらう体制を整えた。
 紙の原料として竹に目を付けたのは地元の事情に配慮したからだけではない。竹は針葉樹や広葉樹を使った一般的な木材パルプの紙に比べ吸油性や吸水性に加 えて、抗菌効果も高い。

 日本では戦後間もなく竹製の紙が出回っていたが、1955年以後は安価な他の木材パルプに駆逐された経緯がある。中越パルプは竹の大量仕入れで原料コス トを抑え、竹製の紙を一般的な製品とほぼ同等の価格で提供できるようにした。
 同社はまず2000年7月から、箸袋の製造を本格化。その後は印刷用紙や紙コップ向けなど、自社生産している既存の紙の付加価値を高める一環として、用 途を拡大してきた。

 製紙業界は合併など再編劇を繰り返し、日本ユニパックホールディングと王子製紙の2強体制が出来た。中越パルプの連結売上高は1千億円強と業界中位だ が、主力は新聞用紙や印刷・情報用紙など上位メーカーとの競合品が大半。「大手は一定以上の販売量が見込める紙しかやらない」(川内工場長の中野達男取締 役)ことを逆手に取り、独自製品の品揃えを強化する戦略だ。

 竹製の紙の生産量は2001年の470トンから2003年に約3,000トンに増加。会社生産量(2003年で90万トン)から見るとまだまだ微量だ が、竹の素材イメージもアピールしながら、カタログやパンフレット、特産品のラベルなどに広げていく計画。
 菅野二郎社長は「工場の特徴を最大限生かした製品の開発力とコスト競争力を強化する」と強調。今後も多品種少量生産がしやすい小規模設備を活用するなど の創意工夫で、ニッチ(隙間)市場をさらに開拓しようとしている。(田中良喜)

◆ヤスハラケミカル、鹿児島の紙質改良剤工場を移転・増強へ  (2006年1月28日付『日本経済新聞』)

 天然テルペン樹脂製品製造のヤスハラケミカルは、紙質の向上に使う「サイ ズ剤」を生産する川内工場(鹿児島県薩摩川内市)を移転・増強する。新工場の敷地面積は約1万3,000平方メートルで、同市内にある従来 工場の約4倍。2007年末までに新工場を建設し、稼働する計画。

 サイズ剤は松の木から取れる松ヤニが原料で、印刷時の紙のにじみ止めに使われる。中越パルプ工業の川内工場(同)向けに供給してきたが、原料貯蔵タンク などのスペースが少なく手狭になったため移転を決めた。土地購入先は伊藤ハムの子会社のサンキョーミート(鹿児島県志布志市)で、取得金額は明らかにして いない。24日に土地売買契約を結んだ。

 ヤスハラケミカルはサイズ剤で年間約2億5,000万円の売り上げがあるが、新工場が稼働すれば生産額は3億円程度に高まる見通し。

◆板紙製造の子会社清算 中越パルプ 年度内めどに (2007年 4月13日付『北國新聞』)

 高岡市に生産拠点を置く中越パルプ工業(東京)は12日、連結子会社の九州板紙(鹿児島県薩摩川内市)を今年度中をめどに清算すると発表した。設備の老 朽化と原料の高騰などで不採算の状況が続いており、今後も回復が見込めないと判断した。生産は9月末で中止する。

 九州板紙は1958年に設立され、従業員数は今年3月末で45人。段ボール用原紙と化粧箱向けの白板紙を製造、加工している。2006年3月期の売上高 は20億4千万円、経常利益、純利益はともに2百万円。

 同社は中越パルプ工業川内工場の敷地内にあり、生産設備の撤去後は中越パ ルプ工業が敷地を取得し、川内工場の競争力強化につなげる方針。従業員は全員解雇する方針で、労働組合と協議中としている。

 これに伴い、中越パルプ工業は07年3月期の業績予想を修正した。連結の売上高、経常損益は前回予想と変更ないが、子会社清算で6億円の特別損失を計上 するため、純損失が4億円から10億円に拡大する見通し。単体に変更はない。

◆中越パルプ、環境対策を強化、鹿児島の工場、漂白、無塩素に  (2009年7月30日付『日本経済新聞』)

 中越パルプ工業は鹿児島県の川内工場(薩摩川内市)の設備を増強する。製紙原料パルプの漂白工程すべてを2010年春をメドに無塩素漂白に転換。パルプ を加工した後に残る廃液を燃料に転用して重油使用量を月間875キロリットル削減、二酸化炭素(CO2)排出量を年間3万1,000トン減らす。竹入り紙 の生産も強化する。投資額は約80億円。環境対策を強化し、企業価値を高める。

 無塩素漂白ラインに転換するのは川内工場のパルプ設備。パルプ設備ではチップ(木片)を高温・高圧で煮て取り出した繊維を漂白する。漂白には塩素ガスの 代わりに二酸化塩素を使う。主力の高岡工場(富山県高岡市)は04年に無塩素漂白に転換済み。

◆中越パルプ、鹿児島の2子会社統合 経営効率化 (2012年4 月11日付『日本経済新聞』)

 中越パルプ工業は年内にも鹿児島県内の子会社2社を統合することを明らかにした。紙製品や原料の運搬を手掛ける中越物産(鹿児島県薩摩川内市)が、紙製 品の選別・包装の鹿児島興産(同)を吸収する。中越パルプは2013年3月期に11年3月期比でコスト45億円削減の目標を掲げている。成熟した国内市場 で経営を効率化し、グループの収益力を高める。

 中越物産、鹿児島興産の統合で中越パルプの連結対象子会社は9社となる。グループ内の間接部門の合理化を進めるの主な狙い。中越物産は木材チップの仕入 れ販売から運送業、通関業など幅広い事業を抱えており、事業の繁閑にあわせて人材を有効に活用できる。今回の統合で人員は減らさない方針だ。

 07年10月に中越物産と九州流通を合併させており、生産拠点の川内工場がある薩摩川内市に本社を置く連結子会社は、今回の統合で1社に集約される。グ ループでの子会社の再編は08年4月の北陸紙工(現・中越ロジスティクス)と北陸流通の合併以来となる。

 コスト削減の目標を掲げた収益確保策「プラス30計画」は12年3月期にスタートし、目標達成時期を13年3月期とした。11年3月期の実績に比べ30 億円コストを削減する目標を掲げていたが、期中に原油価格の上昇や製品販売価格の下落が進み、コスト削減の目標を45億円に修正した。

 このうち子会社の合理化などを中心としたコスト削減の目標は5億円に設定している。13年3月期の連結純利益目標は50億円に設定している。
 生産工程でもコスト削減を進める。チップから紙にする工程で歩留まりを改善する施策や薬品の品質管理を徹底しコストを抑える。木材チップを機械ですりつ ぶした「機械パルプ」の生産を電力が安い夜間にシフトする体制も整備した。

 日本製紙連合会によると、紙・板紙の11年国内需要は前年比0.3%減の2,820万トン。リーマン・ショック直後の09年に9%減となり、その後はほ ぼ横ばいが続いている。12年の需要もほぼ横ばいの2,822万トンの見込み。今後、既存の製品で国内需要が右肩上がりに回復することは考えにくいとの指 摘が多い。
 国内市場が成熟する中で、中越パルプは中長期的にさらなるコスト削減に向けて、グループの再編を急ぐとみられる。

◆中越パルプ、未利用木材のバイオマス発電 川内工場に  (2013年4月12日付『日本経済新聞』)

 中越パルプ工業は約85億円を投じ、川内工場(鹿児島県薩摩川内市)で主に未利用木材を使ったバイオマス(生物資源)発電設備を建設する。発電した電気 はすべて九州電力に販売し、年約48億円の売上高を見込む。間伐材や残材などの未利用木材は森林環境を悪化させる恐れがあるため、政府は再生可能エネル ギーの買い取り制度で高値に設定している。国内の製紙需要が落ち込む中、エネルギー事業で収益確保を狙う。

 バイオマス発電設備の出力は2万5,000キロワットで、2015年11月に発電を始める。燃料は未利用木材を使った木質チップを約7割分使用する。残 りは製材過程で発生する木片などの一般木材を使う。年間発電量は1億5,400万キロワット時。買い取り価格が1キロワット当たり33.6円と高値の未利 用木材を主に使うため、年間の売上高は約48億円に上る見通しだ。

 未利用材のバイオマス発電を巡っては、製紙用に独自の木材調達網を持つ製紙会社の参入が相次いでいる。日本製紙は八代工場(熊本県八代市)で未利用木材 を100%利用するバイオマス発電設備を建設する。15年3月に発電を始め、売電で年64億円の売り上げを見込む。王子ホールディングスも国内2工場のバ イオマス発電設備で未利用木材を活用する。

 中越パルプはメガソーラー事業にも参入する。川内工場近くの遊休地に出力1810キロワットの太陽光発電設備を導入。投資額は約5億円で、今年8月に発 電を始める。
 同社の13年3月期連結決算では営業利益は前期比36億円減の見込み。国内の製紙需要が落ち込む中、エネルギー事業の強化を狙う。

◆中越パルプ、鹿児島で植物由来の新素材量産 プラント新設  (2016年4月1日付『日本経済新聞』)

 中越パルプ工業は31日、植物由来の軽量素材であるセルロースナノファイバー(CNF)の量産に向け、鹿児島県薩摩川内市の同社工場内にプラントを新設 すると発表した。設備などを含めて約12億円を投じ、2017年4月の稼働を予定する。軽くて強度があるCNFは自動車部品など様々な用途に使え、市場の 拡大が見込まれていることに対応する。

 CNFは木材パルプなどに含まれる植物繊維をナノ(ナノは10億分の1)レベルまで細かく解きほぐした新素材。新プラントは年約100トンのCNFを生 産できる能力を備える。今後、市場の拡大に応じて順次設備を増強するという。延べ床面積など詳細は未定とした。

 中越パルプは九州大学と共同でCNFの研究を進め、パルプと水だけでつくった環境配慮型の製品を製造している。原料も針葉樹や広葉樹に加え、竹も使える という他社にはない技術を持つ。13年3月から小型のプラントを使って試験販売していた。

 CNFは次世代の先端技術として世界的に注目されている。経済産業省は2030年に1兆円規模の市場に育てる目標にしている。自動車部品のほか、電機・ 電子素材としての利用が期待されている。


■中越パルプ工業の鉄道貨物輸送   
 中越パルプ工業は、北陸(高岡市)に2工場、九州(薩摩川内市)に1工場が立地しており、各工場で鉄道コンテナ輸送を活用し ている。同業他社と比べても比較的、鉄道貨物輸送への依存度が高い企業と言えそうではあるが、2015年に二塚製造部の専用線が休止となった。発送拠点を 高岡貨物駅に集約したのが理由とのことで、必ずしも鉄道貨物輸送の依存度が下がることを意味するわけではないが、今後の動向が気になるところである。

 さて同社の鉄道貨物輸送の経緯を下記の通り纏めておく。
年  月
内  容
1984(昭 59)年2月
川内駅が コンテナ取り扱い開始
1991(平 03)年7月
新湊駅所 管の能町工場専用線竣工。新座(タ)向けを中心にコンテナ輸送開始
1993(平 05)年6月
二塚駅所 管の二塚工場(現、二塚製造部)でコキ車入線試験実施
1994(平 06)年7月
二塚工場 は専用線発のコンテナ化第一弾として南松本向けを転換
1994(平 06)年12月
ダイヤ改 正より二塚工場は専用線発のコンテナ化
2002(平 14)年12月
新湊駅が 移転し、高岡貨物駅が開業
2003(平 15)年12月
高岡貨物 〜隅田川で新規の平判紙のコンテナ輸送開始
2004(平 16)年2月
高岡貨物 〜新座(タ)・越谷(タ)で新規の巻取り紙のコンテナ輸送開始
2015(平 27)年3月
二塚駅発 着のコンテナ列車が臨時列車化
2015(平 27)年7月
二塚製造 部 の専用線の運転が2往復から1往復に減
2015(平 27)年9月末
二塚製造 部の専用線が休止、高岡貨物駅に集約


▼高岡工場  

高岡工場 2011.10

高岡工場の専用線 2011.10

 中越パルプの主力生産拠点は高岡工場である。2014年の生産実績は、パルプ: 379,443トン、紙:305,500トン、板紙:30,521トンの 計715,464トン(『知っておきたい紙パの実際 2015』p106)

 まずは同社webサイ トから高岡工場(旧 能町工場)の沿革を纏めておく。
1949 (昭24)年
能町工場 開業、亜硫酸パルプ(SP)生産開始
1956 (昭31)年
旧能町工 場、1号抄紙機稼動、洋紙(ロール紙)生産開始
1960 (昭35)年
能町工 場、2号抄紙機稼動
1962 (昭37)年
能町工場 (当時中越印刷製紙(株)新能町工場)、クラフトパルプ(KP)生産開始
1967 (昭42)年
能町工 場、亜硫酸パルプ(SP)生産停止
当社チップ専用船による北米チップ輸送開始
1968 (昭43)年
能町工 場、3号抄紙機稼動、クラフト紙生産開始
1969 (昭44)年
富山新港 チップヤード完成
1971 (昭46)年
中越印刷 製紙(株)より新能町工場買収
1972 (昭47)年
能町工 場、5号抄紙機稼動、高級白板紙生産開始
1978 (昭53)年
能町工 場、2号抄紙機停機、6号抄紙機(上質紙)稼動
1991 (平03)年
能町工 場、N1号抄紙機(上質紙)稼動、No.2連続蒸解釜完成
1998 (平10)年
能町工 場、N1コーター稼働、DIP設備完成
2001 (平13)年
能町工 場、パルプマシン稼動、産業廃棄物焼却処理施設完成
2007 (平19)年
能町工場  全漂白設備無塩素化完了
能町工場と二塚工場を統合、高岡工場と改組
2013 (平25)年
高岡工 場、No2パルプマシン完成

 「昭和26年版専用線一覧表」には、能町駅所管の中越パルプ工業の専用線が存在することから、工場開設と同時期に専用線を敷設し鉄道貨物輸送の利用を開 始したものと思われる。

 また「昭和45年版」及び「昭和50年版」の専用線一覧表では、同専用線は「コンテナ貨物を取り扱う」となっており、同社は鉄道コンテナの活用に関して 国鉄時代から積 極的であったことが窺える。しかし「昭和59年版」の専用線一覧表では鉄道コンテナの取り扱いが無くなっている。その後、能町駅所管の専用線が廃止され、 1991(平 3)年に現在も使用されている新湊駅所管の専用線が新設されるという経緯を辿った。

◆専用線からコンテナ 中越パルプ工業 高岡市に新工場  (1991年7月15日付『運輸タイムズ』2面)

 中越パルプ工業は富山県高岡市の米島地区に新工場と新湊駅に連絡する専用線の建設工事を行っていたが、このほど完成し、9日に竣工式を行った。
 同社は新工場建設計画の段階から関東、関西向け出荷を鉄道で行うこととし、コンテナ及び車扱の荷役線を各1線整備した。また関東向けは着地に適当な倉庫 がなかったが、この輸送を行う日本通運(株)高岡支店が、着の新座(タ)駅近 くに2棟(両方で6,000トン保管)の倉庫を確保した。
 今月1日から、この専用線を使って新座(タ)駅向けに1日15〜25個のコンテナ(12ft)輸送を始めた。(発は新湊駅)
 金沢地区から新座(タ)駅へは今年3月のダイヤ改正後、東京(タ)駅行き列車の着駅変更で直通の8096列車が運転されており、新湊駅からも翌日到着す る。
 同工場の製品は上質クラフト紙、新聞巻取紙で日産能力は400トン。
 尚、中越パルプ工業では、同工場から関西地区(梅田駅着)へ車扱輸送する計画ももっている。

 日本通運(株)高岡支店は、1991年6月12日から1日35個のコンテナで紙の新規輸送を開始する。新座(タ)駅向けの25個を主体に隅田川富士梅小路熊本その他にそれぞれ1日2〜4個の輸送を計画している。(1991年 6月10日付『運輸タイムズ』3面)

◆新製品の紙誘致 JR貨物 高岡(営) エアバッグあて  (1998年12月14日付『運輸タイムズ』2面)

 JR貨物高岡営業所は管内荷主が今年7月製造開始した新製品を 鉄道コンテナに誘致、以来、前年を50%上回る輸送実績と なっている。
 能町駅から専用線出荷している製紙工場が今年新たに平判紙の生産を開始したもの。同社は従来から別の平判紙や巻取紙などを専用線でコンテナに車上荷役し て関東・関西方面に出荷している。新製品もコンテナに誘致できたため、JR貨物は専用線に入線するコキ車を1車増車してコンテナ輸送力を日発5個増強した。新製品は関東向けが多 い。

 この製紙工場では、以前パレット積みした紙製品にストレッチフィルムを巻いて荷崩れを防止していたが、廃棄物となるため、エアバッグをを使い始めた。パ レット積みした紙製品とコンテナの隙間をエアバッグで埋めて荷崩れを防ぐもので、エアバッグは回収して何度も使える点が評価された。

 1999年1月25日付『運輸タイムズ』3面から能町工場(現 高岡工場)の鉄道貨物輸送の現状を抜粋する。 
 中越パ ルプ工業の創業地で、中核工場に位置付けられる。「雷鳥上質紙」のブランド名で知られる製紙各種、一般に使われるPPC用紙、コンピュータ用紙、化粧品や アイスクリームの箱、紙コップなどの原紙となるロール紙を生産している。また1998(平10)年夏から主にカレンダー用となるコート紙の生産が始まり、 出荷量が増えた。
 同工場の1998年の月間生産量は2万9,000トン。これまでトラックで88%、鉄道コンテナで12%出荷していたが、コート紙の増加分を鉄道コンテ ナを利用することにしたため、現在はトラック80%、鉄道コンテナ20%と なった。
 鉄道コンテナの利用個数は月間1,200個で、能町駅から主に新座(タ)隅田川駅へ輸送されるが、他に福岡(タ)(1日平均4個)、札幌(タ)(月間 10個)、鹿児島経由で那覇(月間8個)などへも輸送されて いる。1991(平3)年に工場の設備を増設したことに伴い、工場の中まで専用線を延長し、集 荷にかかるコストを削減して車扱輸送を増加させたが、JR貨物が車扱輸送を廃止する方針を打ち出したため、1996(平8)年に全てコンテナ輸送に切り替 えた。

◆中越パルプ工業 北陸〜関東間紙コンテナ輸送 環境負荷低減モーダルシフト実証実験  (『JR貨物ニュース』2004年3月15日号、1面)

 中越パルプ工業は、2004年度国土交通省の実証実験に認定された「平判紙のラッシングコンテナによる能町工場〜関東間鉄道活用」と「関東地区向け巻取 り紙のJR貨物輸送活用実験」のコンテナ輸送が順調に進んでいる。
 実験は中央通運(株)、伏木海陸運送(株)の2社の利用運送事業者とJR貨物の共同参加。

 能町工場では、3年前にISO14001の認証を受け、それ以来環境負荷低減を推し進めてきた。大半の製品はトラックで長距離輸送しているが、コンテナ 輸送には納期が見合う巻取り紙で実績があり、今回の実証実験にも環境対策の一環として積極的に応募した。
2011.10 中越パルプ工業(株)能町工場内

新座(タ)・越谷(タ)へ 巻取り、平判両用フォークを活用
 2月から本稼働した新座(タ)・越谷(タ)への巻取り紙コンテナ輸送は年 間1万2千トンを見込んでいる。
 関東方面を中心に日発20個弱を集荷担当している伏木海陸運送(株)には、中越パルプ工業のN1マシン倉庫と高岡貨物駅の中間地点に保管倉庫がある。同 社大門次長は、「好立地にある総面積約1,000坪の倉庫に、巻取り紙、平判紙を保管することで集荷効率が上がった。トレーラー待機場には雨や雪による漏 損防止に、幅14mの屋根を設置して品質保持に努めている。庫内の製品移動からコンテナ荷役までの効率を考えて、巻取り紙用のクランプリフトとしても、平 判紙用のフォークリフトとしても使用可能なアタッチメントを増備した。コート紙は1巻約800kgの重さですが、倉庫内移動でも荷扱いがスムーズだ」と話 した。
 同社ではチップ専用船で輸入された紙原料を、富山新港から毎日能町工場へ納入している。トップリフターで荷役する海上コンテナの荷傷みの少なさと比較し て、「フォークリフト荷役時の傾きによって、荷傷みが起こるようだ。水平移動できる荷役機械があると、鉄道輸送の利用がもっと広がると思う」と田中専務取 締役は語った。

隅田川へ ラッシングベルトで荷傷み解消
 昨年12月から中央通運(株)で集荷を開始した平判紙輸送は、高岡貨物〜隅田川駅間で日発6〜7個の発送があり、年間9千トンを見込んでいる。
 同社は紙輸送の荷傷み防止対策としてラッシングコンテナU19A形式両側二方開きを開発、20個を製造した。このコンテナは、紙のサイズや積載量により 床面と側柱の多数のフックでベルトの固定位置を自由に変えられる。荷役時のコンテナ内移動やズレによる荷傷みを防止できると、試験輸送でも好評だった。養 生材での補強が必要ないことから、積込み時間の短縮、廃棄物の削減も可能にした。ベルトは返送時にはコンテナ内上部に収納、一部は原料の古紙やパレットと 一緒に返ってくる。

 高岡工場の専用線からは全国各地に紙製品の発送があるものの、原料となる薬品関係のタンク車の入線は確認されていない。現存の専用線 が1991年に敷設された比較的新しいもので、製品輸送に特化した専用線として敷設されたと考えられるが、製紙会社の専用線としては珍しいケースと言えよ う。

 しかし原料の薬品輸送で、鉄道輸送が無縁というわけでは無さそうで、高岡貨物駅構内で川崎化成工業(株)SAQ専用や日本ゼオン(株)ラテックス専用のタンクコンテナを目撃した。

高岡貨物駅 2011.10

高岡貨物駅 2004.8

 SAQは川崎化成工業が製造する蒸解助剤で、化学パルプの製造プロセスに用いられる。国内の殆どのクラフトパルプ工場で使用されているとのことで ある。

 ラテックスに関しては、2004年8月当時は高岡貨物駅構内で、東水 島(旭化成水島)→高岡貨物(日本製紙伏木)のラテックス輸送(NRS所有のISOタンクコンテナ)を目撃しており、日本ゼオンのラテック ス輸送が、荷票だけでは中越パルプ向けかどうか判断ができなかった。
 しかし2011年10月、日本製紙(株)伏木工場閉鎖後の高岡 貨物駅で、日本ゼオンのラテックス専用(UT11A-5030)を目撃しており、同社は中越パルプ向けのラテックス輸送を行っているよう だ。尚、同社は川崎貨物駅→川内でもUT5A形式によるラテックス輸送を行っていることからも、中越パルプ向けのラテック スは日本ゼオンが供給している可能性が高いと思われる

 また伏木駅に隣接して伏木海陸運送(株)が運営する過酸化水素の貯蔵タンクがあり、日本パーオキサイド(株)(2013年に親会社の保土谷化学工業に吸 収合併)のストックポイントとして機能している。ここは内航海運かタンクローリーによって過酸化水素は輸送されている模様だが、中越パルプもこの過酸化水 素の ユーザーであると思われる。
(詳細は、拙web「日本パーオキ サイド株式会社」を参照)



▼生産本部 二塚 製造部  

二塚工場 2004.8

二塚製造部 専用線 2011.10

 かつては二塚工場であったが、2007年に能町工場と統合され高岡工場二塚製造部となり、さらに2011年の改組により高岡本社生産本部直轄の工場と なった。砺波製紙(株)として設立以来、新聞用紙専抄工場と して操業を続けている。
 2014年の生産実績は、紙:172,504トンであ る(『知っておきたい紙パの実際 2015』p106)。生産量的には決して大きな製紙工場とは言えない。生産量で比較す ると、日本製紙(株)富士工場や丸住製紙(株)川之江工場と同水準ではあるが、大手製紙メーカーの主 力生産拠点は、年間50〜100万トンクラスの生産量があるので、むしろ製紙工場としては中堅以下の部類に入るかもしれない。

 まずは同社webサイ トから二塚製造部(旧 二塚工場)の沿革を纏めておく。
1955(昭 30)年
砺波製紙 (株)設立
1957(昭 32)年
砺波製紙 (株)二塚工場開業、1号抄紙機稼動、新聞用紙生産開始
1968(昭 43)年
砺波製紙 (株)二塚工場、2号抄紙機(新聞用紙)稼動
1979(昭 54)年
砺波製紙 (株)二塚工場、DIP設備(I系)完成
1984(昭 59)年
砺波製紙 (株)と合併
二塚工場、DIP設備(II系)完成
1986(昭 61)年
二塚工 場、TMP設備完成
1988(昭 63)年
二塚工 場、3号抄紙機(新聞用紙)稼動
二塚工場、DIP設備(III系)完成
二塚工場、1号抄紙機停機
2006(平 18)年
二塚工場  新エネルギーボイラー完成
2007(平 19)年
能町工場 と二塚工場を統合、高岡工場と改組
2008(平 20)年
新聞用紙 の微々塗工紙化対応の為、14,000トン/月生産設備更新を実施

 「昭和32年版専用線一覧表」では、二塚駅所管の砺波製紙(株)専用線が存在し、工場開業当初から専用線による鉄道貨物輸送が行われていたと思われる。


高岡通運(株)敷地内 2011.10
 高岡通運(株)は中越パルプ工業二塚工場から出荷する新聞巻取紙のコ ンテナ輸送を大きく増やしている。発駅は能町駅で、相模貨物東福島倉賀野などへ輸送しているもので、1988年度は266個、1989年 度は1,328個で、1990年度も増送が続いている。
 これは主力送り先の相模貨物駅の近くに新聞印刷工場が相次いで新規稼働し、東京都内へトラック輸送していたものを鉄道コンテナに切り替えたためである。
 同社は12ftタイプの両側面開き私有コンテナを10個新規に 投入して使用している。このコンテナは床面に滑り止めのゴムを敷くなどの荷崩れ防止策が施されており、現在はJR貨物所有の18Dコンテナと併用されてい る。
(1990年7月23日付『運輸タイムズ』3面)

 ちなみに相模貨物駅近隣の新聞印刷工場は以下
・読売新聞 (株)横浜プリントメディア 横浜工場:横浜市瀬谷区北町(1987年12月稼働)
・朝日新聞 (株)トッパンメディアプリンテック東京 座間工場:座間市東原(1988年稼働)
・毎日新聞 (株)毎日新聞首都圏センター 海老名工場:海老名市本郷(1988年厚木工場稼働、2007年海老名に移転)
・日本経済新聞 (株)日経首都圏印刷 横浜工場:横浜市瀬谷区目黒町(1988年5月稼働)
・神奈川新聞 (株)かなしんオフセット:綾瀬市深谷(1989年12月稼働)

 1980年代後半に相次いで神奈川県内に新聞印刷工場が稼働している。相模貨物駅よりも横浜羽沢駅が最寄りという印刷工場も含まれるが…。
 また同時期の情報として、丸全昭和運輸(株)相模営業所は1990年1月から新聞用紙のコンテナ到着が増えている。富山県高岡地区から30個/月到着 しているが、これに60個/月が新しく加わったもので、従来からの高岡から厚木紙センター納入分として30個/月あるが、1月から座間地区の倉庫納入分と して60個が加わった=i1990年2月12日付『運輸タイムズ』3面)というものがある。

 記事中にある「厚木紙センター」とは、日本紙パルプ商事(株)系列の物流拠点であった(株)厚木紙流通センターであると思われる。同社は1974年に設立、 2011年2月28日付で解散。物流拠点は売却されたとのこと。そのため現在は、この厚木向けの輸送は消滅したものと思われる。

◆二塚駅発 車扱輸送のコンテナ化計画固まる (1994年6月6 日付『運輸タイムズ』2面)

 JR貨物金沢支店は、二塚駅から車扱輸送している紙をコンテナ化したいと、荷主の中越パルプに以前から理解を求めてきたが、1994年7月から第一弾と して南松本駅向けがコンテナ化される。小名木川、飯田町両駅向けを除くその他についても1994年中の実施が決定した。同社専用線でのコキ車入線試験は既 に1993年6月に実施済み。

 当初、南松本駅向けも含め1994年10月実施で準備して いたが、南松本の受荷主である新聞社が郊外に移転し、コンテナでの配送を要請してきたため、発駅を能町として一足早く実施することになった。輸送量は月間 約800個。

 その他の新守山北長野新潟(タ)浪速梅田静岡貨物各駅向け、計6,700個のコンテナ化は10月又は次期ダイヤ 改正時に実施する。
 残る飯田町駅向け1万個はその次のダイヤ改正時にコンテナ 化。一方、小名木川駅向け3,300個は貨車の運用が可能な 限り車扱輸送を続けるという。

 1994年12月ダイヤ改正を機に二塚駅からの新聞巻取紙の車扱輸送の一部がコンテナ化された。1日にコンテナ20個を発送し、到着先は大阪(タ)新 潟(タ)静岡貨物名古屋(タ)南松本北長野の各駅である。(1994年12月19日付『運輸タイムズ』2 面)

 1999年1月25日付『運輸タイムズ』3面から二塚工場(現 生産本部二塚製造部)の鉄道貨物輸送の現状を抜粋する。
 二塚工 場は、新聞紙の生産が主体で、新聞のオフセット化、カラー化が進む中で設備投資し供給の安定化を果たした。
 同工場の月間生産量は1万5,500トン。トラックで3,000トン、鉄 道コンテナで1万2,500トン出荷している。鉄道コンテナは殆どが東京(タ)駅へ輸送され、大手新聞各社をはじめ多くの新聞社に納品され ている。形状はロール状で1本が1,620ミリの高さがあり、1コンテナに4本積載できる。
 このロールの芯は回収されて二次使用し、短くカットして封筒などの原料となるロール紙に使用される。製品を納める先で、まとまったら回収して引き取る。

◆二塚駅の貨物取扱量(トン)の推移
年 度
発 送
到 着
合 計
2005
152,000
25,400
177,400
2006
155,900
25,800
181,700
2007
162,515
27,650
190,165
2008
147,390
7,865
155,255
2011
112,305
10,100
122,405
2012
107,905
6,980
114,885
2013
101,880
4,915
106,795
2014
98,950
4,760
103,710
『高岡市統計書』より作成

 直近では、2007年をピークに貨物取扱量は減少傾向を辿り、先述の通り2015年9月末をもって専用線は休止となってしまった。

▼鉄道ファン名残惜しむ 高岡・中越パルプ二塚専用線 (2015 年10月1日付『北日本新聞』)

 運行休止が決まった高岡市二塚の中越パルプ工業生産本部二塚製造部の専用線で30日、最後の貨物輸送があり、鉄道ファンが名残を惜しんだ。

 同線はJR城端線二塚駅と二塚製造部を結ぶ約1キロの単線で、1957年ごろに整備され、主に新聞用紙を運搬してきた。JR貨物が同駅での貨物取り扱いを高岡貨物駅(同市吉久)に移すのに伴い、専用線の休止が 決まった。

 30日は午前8時半ごろ、10両編成で二塚製造部を出発。二塚駅で貨物を切り離した後、同9時半ごろに機関車が製造部への帰路に就き、輸送業務を締めく くった。

専用線での最後の貨物輸送を終えて戻る機関車=高岡市二塚

 そもそも二塚製造部は、新聞用紙専抄工場であり、昨今のインターネット普及による新聞発行部数の減少や所謂新聞離れ≠フ流れからすると、生産量そのも のが減少しているものと思われる。今後はむしろ、中越パルプとして二塚製造部の位置付けの検討を迫られる可能性がありそうである。



▼川内工場  
 2014年の生産実績は、パルプ:298,622トン、紙:247,842トンの 計546,464トンである(『知っておきたい紙パの実際 2015』p123)

 川内工場は、鹿児島本線川内駅から2kmほど離れた川内川沿いに立地しており、専用線は工場開業当時から現在まで敷設されていない。船舶輸送の拠点とな る川内港は、工場から13kmほど離れた川内川河口にあり、川内駅よりも遠い。

 まずは同社webサイ トから川内工場の沿革を纏めておく。
1954(昭 29)年
川内工場 開業、クラフトパルプ(KP)生産開始
川内工場、1号抄紙機稼動、洋紙(クラフト紙)生産開始
1955(昭 30)年
川内工 場、2号抄紙機(クラフト紙)稼動
1958(昭 33)年
川内工 場、3号抄紙機(クラフト紙)稼動
1960(昭 35)年
川内工 場、4号抄紙機稼動、上質紙生産開始
1963(昭 38)年
川内工 場、5号抄紙機(上質紙)稼動
1971(昭 46)年
中越印刷 製紙(株)より鹿児島工場(川内工場、7号・現8号抄紙機(上質紙) )を買収
1980(昭 55)年
川内港 チップヤード完成
1984(昭 59)年
川内工 場、連続蒸解釜完成
1986(昭 61)年
川内工 場、5号抄紙機停機
川内工場、6号抄紙機(上質紙、微塗工紙)稼動
川内工場、7号抄紙機停機
1987(昭 62)年
川内工 場、スーパーカレンダー完成
2001(平 13)年
川内工 場、スラッジ炭化設備完成
2003(平 15)年
川内港 チップヤード完成
2011(平 23)年
川内工 場、8号抄紙機停機


川内駅 2006.3
 JR貨 物の18B形コンテナは、18A形コンテナを両側面開きに変更し1988年に25個製造された。
 デザインは汎用の18A形コンテナと同様であるが、側面に「川内⇔東京間 専用」の表記がある。

 両側面開きのコンテナとしては、福島臨海鉄道が開発したUC1形があり、中越パルプ川内工場も同コンテナを試験的に利用していたようだ。その結果、使い 勝手が良いことから両側面開きコンテナの開発をJR貨物に働きかけ、18B形コンテナが誕生した。

 登場から10年強を経て、18B形コンテナは2001年には全廃されたが、2006年当時は川内駅構内に留置されていたものを撮影することができた。

 荷主の要望に応え両側面開きという技術開発に成功した18B形コンテナの登場は、国鉄からJR貨物への転換を強く印象付けるものであったし、中越パルプ にとっても、新生JR貨物となった鉄道コンテナ輸送を更に活用したいと思わせるインセンティブとなったことであろう。
 僅か25個しか製造されなかった18B形コンテナではあるが、きちんとその意義を記録し、語り継ぐべきコンテナであると思われる。

◆紙のコンテナ輸送増加 季節需要で出荷堅調 船舶からの転換も進む  (1997年2月10日付『運輸タイムズ』3面)

 製紙の出荷増で一昨年来コンテナ輸送個数を伸ばしている中越パルプ工業(株)川内工場は、現在も出荷増が続いており、1996(平8)年度コンテナ利用 個数は対前年110%の月間1,100個となる見込みであ る。一昨年以降の個数増加はパソコン説明書用紙を中心に紙全体の需要回復により出荷量が増加したこと、出荷量の約50%を占める関東向けは取引先倉庫が都内から外郭部へ移転したため、船舶輸送の見直しを行い鉄 道輸送に転換を図ったことの2点が要因。

 1996年度に入った現在も個数増加は続いているが、特に昨年秋冬期以降の需要増加が顕著となっている。この理由としては以下3点を挙げられる。
@就職学生用として企業が作成する会社案内用紙を中心に季節需要の紙出荷量が増加した
A年末年始の船舶輸送は、12月は年末まで運航したが、年始は1月上旬まで運休したため、1月6日に年末年始の計画運休が終了した鉄道を利用して、船舶の 代替輸送をコンテナで行った
B大量・低コスト輸送が可能な船舶を首都圏向けの主力輸送手段として利用してきたが、着港からトラックによる二次輸送が長距離化し、それに伴い輸送単位が 小ロット化し物流費負担が重荷となったため、引き続き船舶から鉄道輸送への転換を図った
――などである。

 季節需要の紙については、定期列車の指定枠だけでは送り切れないため1月19日には休日列車を利用して輸送した。個数は50個。
 関東向けの船舶輸送は東京・有明埠頭に着けるが、トラック による取引先への二次輸送は、都心を通過するため道路渋滞の原因になり、また交通混雑により納品時間が確保出来ないという問題点がある。 鉄道輸送に転換 することで指定時間に納品することが可能となり、物流費を節減することも出来る。

 また川内工場は南九州地区にあって長距離陸上輸送手段として鉄道の輸送機能を重要視しており、とりわけ発駅となる川内駅の存続(貨物取扱い)を将来にわたって強く求めている。 このためコンテナ個数を1個でも増やしても鉄道輸送の実績を上げ、JR貨物へ同駅の使命と役割を訴えるためコンテナ輸送個数の増大を図った―という背景も ある。

 月平均1,100個の川内駅発コンテナの個数は、約50%が関東向けで 東京(タ)駅他へ着けている。

 1999年1月25日付『運輸タイムズ』3面から川内工場の鉄道貨物輸送の現状を抜粋する。
 川内工 場は豊かな森林と水資源に恵まれ、輸入チップも最寄りの港に入港するなど、好立地条件下にある。
 鉄道コンテナの取扱駅は川内駅で、東京(タ)(全体の 60%)、札幌(タ)大阪(タ)名古屋(タ)の各駅へ発送している。通運事業者は子会社の中越輸送と、 100%子会社の九州流通。
 トラックは九州圏内の顧客への輸送に、船は一次輸送として使っているが、将 来的には船での輸送は減らす方向でいる。埠頭に入った荷物は倉庫に保管され二次配送をしなければならず、船輸送自体は運賃が安くてもトータ ルで割高になっているからだ。この船での輸送を鉄道コンテナに転換したいが、 川内駅は到着貨物が主体で、発貨物は同社だけとなっており、駅の存在が危ぶまれ、川内市もこの事態を危惧している。
 そこで同社としては何とか利用個数を、これまでの月間900個から1,300個にもっていく努力をしている。12月の数字(6,200トン)は、この努 力の結果で、今後もこの数字を維持しつつ、さらに伸ばす方向でいる。

◆全国各地へ年間10万トンをコンテナ輸送 (『Monthlyか もつ』2005年12月号、p10)

 川内工場は現在、年間約30万トンの各種紙製品を製造している。現在の川内工場からの製品の輸送状況は、トラック、船舶、鉄道コンテナ(年間10万ト ン)で、それぞ3分の1ずつの割合となっている。
 鉄道貨物輸送については、旧国鉄時代から取り扱ってきたが、コンテナ利用については1つのエピソードがある。
 「コンテナに製品を積む場合、片側扉開きでは積みにくい、両側,開きならばもっと利用しやすく輸送量も増やせると、JR貨物に相談し試作品を作り双方で 試行・研究し、現在の18Dコンテナの原型ができた。」
 「コンテナ利用では、積載効率を良くすればコスト減にもつながるため利用を増やせると思う。そのため、コンテナの種類の充実と輸送時の荷崩れ防止が課題 である。現在1%程度の荷崩れ事故があるが、これが限りなくゼロに近付いたらコンテナ輸送をさらに増やしたいと考えている」と同工場事務部の松元調査役は 話している。

 製品輸送において、鉄道コンテナ輸送を積極的に活用している川内工場であるが、原料輸送においても鉄道貨物輸送の活用が確認できている。

 川内駅には、日本ゼオン(株)川崎工場からUT5A形式で ラテックスが到着している。(※1999年3月に川崎貨物駅でUT5A-40が川内→川崎貨物に返空されるのを目撃)
 また鹿児島(タ)駅には、(株)住化物流西日本が借り受け るJOTのISOタンクコンテナでラテックスが到着しており、新居浜→鹿児 島(タ)で輸送されているものと思われる。
 いずれも中越パルプ向けのラテックス輸送と思われる。
鹿 児島(タ)駅 2006.3

 一方、川内港には中越物産(株)港町基地があり、苛性ソー ダ、濃硫酸のタンク基地がある。また同社の取引先に東ソー(株)旭化成ケミカルズ(株)パンパシフィックカッパー(株)等がある。同社は、1971年に、中越 パルプ工業(株)川内工場の製紙用の定着剤、および用水浄化・排水処理用の液体硫酸バンドを製造し、供給するために設立された鹿児島化成(株)が前身との ことである。


 一方、1989年8月当時、川内駅には、大牟田駅臨時常備の日本陸運産業(株)所有のタキ12819(苛性ソーダ液専用)幸崎駅常 備のカクタス化成(株)所有のタキ34052(濃硫酸専用)が 目撃されており、それぞれ三井東圧化学(株)、日本鉱業(株)から中越パルプ向けの薬品輸送がタンク車で行われていたと思われる。(「炭鉄別館」 さんのwebサイト参照)
 しかし1990年代半ばには、川内駅に到着するこれらタンク車輸送は廃止されたと思われ、苛性ソーダや濃硫酸の供給は中越物産の基地に集約されたと考え るのが、自然であろう。



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