日本の鉄道貨物輸送と物流:表紙へ
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旭化成株式会社
2016.10.30作成開始
<目次>
1.旭化成の概要
2.旭化成の沿革
3.旭化成のトピックス
4.旭化成の鉄道貨物輸送
 @川崎製造所
 A富士支社
 B鈴鹿製造所
 C守山製造所
 D水島製造所
 E延岡支社


@川崎製造所
 旭化成(株)は延岡・水島・四日市などを中心に鉄道コンテナ輸送を利用する荷主であり、千鳥町駅においても長年専用線を介して鉄道貨物輸送を行ってき た。残念ながら専用線は2006年8月に廃止されてしまったが、これは主要な鉄道輸送先であった日本曹達(株)二本木工場がメチオニン生産から撤退したた め、その原料である青化ソーダ輸送の需要が消滅した結果、専用線の維持コストが割高となり廃止されてしまったと考えられる。そういった意味では、旭化成の 鉄道貨物輸送に対する姿勢を責めるのは酷かもしれない。ただ、近隣の昭和電工(株)や(株)日本触媒の専用線が活用・増強されていることを比較すると、専 用線の廃止は早計でなかったかと、惜しまれる。

■旭化成(株)川崎製造所の沿革
年月
事   項
1952(S27).07
米国ダウ・ケミカル社と合弁で旭ダウ株式会社設立、川崎地区へ進出
1957(S32).02
旭ダウ株式会社、ポリスチレン製造開始、合成樹脂事業へ進出
1962(S37).06 川崎でアクリロニトリルモノマーを製造開始
1982(S57).10
旭ダウ株式会社を合併、合成樹脂事業を強化
2000(H12) 年末
スチレン系特殊透明樹脂「アサフレックス」の生産能力を2万トンから3 万トンに引き上げ(日刊工 業新聞2001.6.8付1面
2002(H14).01
青化ソーダ(年産1万トン)プラントの稼働開始(日本経済新聞 2000.8.24付13面)
2002(H14) 年春
スチレン系特殊透明樹脂「アサフレックス」の生産能力を3万トンから5 万トンに引き上げ(日刊工 業新聞2001.6.8付1面
2006(H18).7
合成ゴムのボトルネックを解消し、年産能力を1万トン増の16万トンと した(化 学工業日報2006.7.4付2面

■旭化 成 青化ソーダ事業参入 三井化学から営業権 (『日本経済新聞』2000年8月24日付、13面)

 旭化成は三井化学から青化ソーダ事業の営業権を譲り受け、同事業に参入する。
 青化ソーダは医薬、農薬の原料やメッキ処理用に使う。旭化成は繊維原料のアクリロニトリル(AN)で世界第2位のメーカー。ANの副産物である青酸を有 効活用し、競争力を高めるため同事業へ参入する。旭化成は当面、年間売上高で15億−20億を目指す。

 三井化学は10月1日付で営業権を譲渡する。旭化成は川崎工場(川崎市)内に青酸を原料にする年産1万トンの青化ソーダプラントを新設する。投資額は 10億円未満で、稼働は2002年1月の予定。完成までは三井化学に生産を委託し、販売する。

 旭化成の設備完成と同時に、三井化学は茂原工場(千葉県茂原市)内の年間1万1千トンの青化ソーダ生産設備を停止する。三井化学は茂原工場を高機能樹脂 や電子材料などの生産拠点に切り替える。
 青化ソーダの国内生産量は年間3万トン強。日本曹達がシェア1位で、三井化学、昭和電工が続いている。

■千鳥町駅から発送される旭化成(株)川崎製造所が荷主の車扱輸送

発 駅
発 荷主
品 目
着 駅
着 荷主
貨 車
目 撃・備考
千鳥町
旭化成
ラテックス
秋田港
東北製紙(株)?
タキ8360 旭化成(株)
1999.1.5千鳥町 2006年4月廃止
千鳥町
旭化成
ラテックス
岩沼
日本製紙(株)岩沼工場
タキ8359 旭化成(株)
2005.10.2千鳥町 2006年4月廃止
千鳥町
旭化成
青化ソーダ液
二本木
日本曹達(株)二本木工場
タキ22900形 日本曹達(株)
2003.8.3千鳥町 2006年8月廃止

 さて先に述べたような理由で二本木への青化ソーダの輸送の廃止は当然としても、ラテックス輸送はISOコンテナ等に転換されて鉄道輸送は継続されていな いのだろうか?
 ちなみに、2006年4月まで旭化成叶齬p線に入線し車上荷役されていたというセンコー鰍フ20ft有蓋コンテナ(U30A形式)は、川崎貨物駅構内に ズラッと並び、現在は川崎貨物駅から発送することで鉄道貨物輸送は継続していると考えられる。

 一方、ラテックス輸送に関しては、私が2009年11月に横浜本牧駅で目撃したJOTのラテックス専用のISOタンクコンテナの一部の荷票に「ゼオン」 の文字が確認できた一方で、旭化成と思われるISOタンクコンテナを見つけることはできなかった。
 但し、荷票が入っていないラテックスのISOタンクコンテナも多数あり、全てのラテックスのISOタンクコンテナが日本ゼオン鰍ェ荷主の輸送とは言い切 れない。

 また秋田貨物駅において、NRSのラテックス専用のISOタンクコンテナを目撃(2008.4など)しているし、仙台港駅においてもJOTのISOタン クコンテナは目撃(2009.7など)している。いずれも旭化成が荷主であるという証拠らしいものは全くないが、タンク車で行われていたラテックス輸送が ISOタンクコンテナ化されたような気配≠ヘある。
 さて文献面では、ポツポツと旭化成のラテックス輸送がISOタンクコンテナ化されて継続しているのではないかという間接的な情報とでも言うべき資料があ る。


■鉄道利用運送のニューウェーブ 共栄企業(株) (『JR貨物 ニュース』2002年4月15日号、3面)
 共栄企業(株)(本社・横浜市、熊澤良一社長)は創業50余年、関東甲信越・静岡で主に石油類、化成品・油脂類等液体貨物の一般貨物自動車運送業を営 む。輸送実績は約400名のドライバーと450台のタンクローリー、トレーラー等により年間250万キロリットルに及ぶ。
 同社は昨年10月、隅田川、神栖、京葉久保田、千葉貨物、東京(タ)、川崎貨物、 横浜本牧の各駅で、第2種鉄道利用運送事業(一般利用運送事業)の許可を、また同「利用の利用」運送事業許可を沼津、東水島、大阪(タ)の各駅でも取得し た。「長年希望していた参入がようやく実った」と語る熊澤社長に、参入意図を聞いた。 
 目指しているのは主にISO タンクコンテナのモーダルシフト。現在、同社では約50個のISOタンクをリースしているが、まず川崎〜石巻間(化成品)や川崎 〜大阪間(同 危険品)で運用中の10個程度について、鉄道転換し始めた。
 川崎側では同社が集配を担当、石巻側では仙台臨海通運、大阪側ではブルーエキスプレスに集配を委ねる。
 危険品の道路輸送では、400km以上走る時には2人乗務や途中休憩が必要だ。鉄道転換でこうしたコスト高の要因を排除できる。顧客にも「物流費を節減 できた」と喜ばれた。
 またNOxなどの排出抑制に効果があるので、運送業者には有効なNOx・PM法対策だ。このため残る40個のISOタンクも順次モーダルシフトを目指 す。実現すれば年間2万4千トンが鉄道に載る。
 また取引先のどんな貨物にも応じられる体制を作るため、JRコンテナによる一般貨物輸送や産業廃棄物の鉄道コンテナ輸送にも意欲的だ。ただ課題はリード タイムの合う列車の輸送枠をどこまで確保できるか、GW等の運休時にどう対処するか、だという。


■共栄企業 化成品輸送に資源投入 川崎、来月には石油類停止 複合一貫も積極展開  (『化学工業日報』2010年4月2日付、6面)
 日本石油輸送(JOT)グループの共栄企業(横浜市、松井重樹社長)は、タンクコンテナを活用した危険品物流に重点シフトする一方、今後の事業拡大の中 心軸を化成品輸送とし、経営資源を集中投入する。川崎営業所では、来月末で石油類の輸送を終了、今後は根岸、市川で石油類、川崎、五井、鹿島を化成品の輸 送拠点とし、事業育成を図る。同社はJOTの輸送部門として、全 国のJR網を活用した鉄道輸送との複合一貫も積極的に取り入れる方針で、モーダルシフトに伴う、様々なソリューションを提供していく。

 共栄企業は、関東を主要エリアとした化学品輸送を手掛ける。5営業所では旭化成ケミカルズ、インフォニ アムジャパンなど大手化学メーカーが荷主で、一部JR、船舶を含め北海道から九州まで配送を行っている。
 川崎営業所は、最大約120車両が駐車可能で、総計約60台の単車(タンクローリー)、トラクター、トレーラーがある。これまで月間、石油類で1万キロ リットル、化成品1万キロリットルの輸送実績があったが、5月末を もって石油類の輸送を停止する。石油需要は減少傾向にあり、新日本石油の商品に特化し効率化を図るという方針によるもので、共栄企業としては根岸、市川で 石油類を展開する。
 これまで五井、鹿島で切り替えを順次完了、今回の川崎の化成品集中で、 3営業拠点で化成品に特化した体制が整う。これらの拠点では、ローリーからタンクコンテナ関連に経営資源を集中、トレーラー・シャーシを増車するほか、 ローリー代替のための設備などを充実させる。
 モーダルシフトについては、JOTの協力を得て、積極的に取り入れる。着脱式ポンプの開発に続き、断熱を施した加温式ポンプを製造し、常温で粘性の増す 内容物でもスチーム加熱により、積み荷・積み降ろしをできるようにした。これにより、例えば中国地方からJR貨物を使い、関東まで配送、川崎で再加熱し届 け先に配送するといった手法も可能になる。単にモーダルシフトといっても既存設備では困難が伴うケースが多く、共栄企業ではキメ細かな対応力で、ソリュー ション提供、提案型営業を強化する方針だ。


 これらの情報から旭化成から日本製紙(株)石巻工場向けのラテックス輸送は、ISOタンクコンテナによって横浜本牧駅〜仙台港駅の鉄道貨物輸送で継続し ている可能性がある。
 またISOタンクコンテナは仙台港駅着なので、日本製紙(株)岩沼工場向けの輸送も行われていても不思議ではない。秋田向け(日本製紙)の輸送は文献の 情報は今のところ無いものの、秋田貨物駅にはラテックス専用のISOタンクコンテナがずらりと留置されており、このコンテナの輸送区間の解明が待たれると ころだ。


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